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2010年7月21日 (水)

必死剣 鳥刺し

★★★★

 必殺剣ではなく必死剣、この技を使うときは、使い手はほとんど死んでいる」という。またやき鳥じゃあるまいし、「鳥刺し」というのも妙な名前である。もしかすると長刃で自分を貫きながら、同時に串焼きのように、2~3人まとめて刺し貫く剣技なのかもしれない。などと勝手に想像していた。
 だがその予想は、見事に外れてしまった。中盤に子供たちが、とりもちを使って鳥を捕獲しようとするシーンがあり、それを見た主人公が、とりもち竿を使った素早い動作で鳥を捕る。この素早い瞬時のタイミングが、この秘剣を完成させたヒントになったのだろう。

Torisashi
 それにしても久々に本格的な時代劇を観た気がする。藤沢周平シリーズは、少々食傷ぎみになっていたが、本作は「たそがれ清兵衛」と並ぶ名作として記憶に残るだろう。
 藤沢周平シリーズのお約束である、東北の小藩と美しい四季の風景に加え、時代考証や武士と武家の女たちの立ち振る舞いにも細かく気を使っている。

 藤沢周平シリーズの主人公たちは、無口で野心もなく、淡々とした人生を送っている。ただし剣の達人なのである。本作においても、この条件は全てクリアしている。
 この条件を現代サラリーマンにあてはめると、出世欲はないが仕事の出来るプロビジネスマンということになる。ただそうした人物が、社会の中では不遇なことも事実であろう。だからこそ好感を持てるのであり、自分も常にそうありたいと祈り続けている。

 また本作のオープニングがなかなか洒落ている。格調高い能舞台が終了し、それが終って奥向きに戻る藩主の妾を、主人公の兼見三左ェ門が、あっさり刺し殺すところから始まるからである。
 だがそれだけの大罪を犯しても、打ち首にもならず、禄高半減とたった1年間の閉門蟄居で済んでしまうのだ。いきなり謎が謎を呼ぶような展開である。そして蟄居しながらの回想シーンで、謎のひとつが解明されるというなかなか洒落た手法。
 さらに2年後に禄高が戻り、藩主のボディガードという出世コースに抜擢されるのだ。ここでさらに謎は深まり、同時に「必死剣鳥刺し」の正体という謎が追加されることになる。
 武家のしきたりとその生き方、淡い恋、ミステリアスな展開、そしてラストの身震いするような殺陣。まさに邦画でしか製作不可能な、最近稀にみる凄い時代劇だ。これなら、きっと海外での評価も高いことだろう。
 ただ残念なことは、主役が時代劇に慣れていない豊悦だということ。そしてヒロインの池脇干鶴に、凛とした哀愁が漂わないし、心底のめり込むほどの魅力を感じなかったことだろう。もっとも現代は時代劇専任の俳優が不在なので、仕方がないといえば仕方がないのだが…。ただそんなもの足りないキャストの中で、唯一吉川晃司の迫力と存在感だけが光っていた。

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コメント

豊悦、似合いませんでしたか?
「椿三十郎」でも、結構似合ってたと思ったのですが、ちょっとストイックな感じは似合ってたと思いますが、いかがでしょう。
吉川君は、よかったですね。昔の彼からは、想像もつかないです。

投稿: sakurai | 2010年7月26日 (月) 18時06分

sakurai さんこんにちは
いつもありがとう
私にとってトヨエツは、現代劇のイメージが強くて、それに昔の時代劇俳優のように本格的な殺陣が出来ないのも今ひとつでした。その点、吉川くんは凄い迫力と存在感でした。

投稿: ケント | 2010年7月27日 (火) 10時27分

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