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2010年6月 1日 (火)

RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

★★★★

 中井貴一演ずるところの主人公・筒井肇は、大手家電メーカーでバリバリ働き、次期取締役を約束されていた。ところがある事件をきっかけに、会社を辞めてしまう。
 そして母の入院で故郷に戻り、少年時代にあこがれていた、地元ローカル線の運転士に志願するのである。50歳間近でエリートコースを捨て、これまた一からやり直しの電車の運転士とは、まっこと信じられないと思うだろう。ところがこれは実話なのだというから驚きである。
 果してどこまで実話に忠実なのかは判らないが、そんな詮索はどうでもよく、とにかく映画として、きちっと創られているところを評価したい。

Railways_3
 これは決して鉄道オタクのための映画ではないので、勘違いしないで欲しい。主人公が電車の運転士を選んだのは、単なる鉄道オタクということではないような気がする。描き方としても、前半は全くの会社人間であり、電車のデの字も出ていないからだ。
 きっと会社人間に染まりきった彼は、本当は自分が何をやりたいのかなど、考えたこともなかっただろう。それがエリートと呼ばれる会社人間の実態である。
 夢を叶えたいと言った友人が急死してしまったこと、故郷から出たがらない病床の母親のこと、仕事のために壊滅状態の家族のこと。この三つが彼の脳裏で重なり合って、今までの生き方を大きく変えようと決心したのだと思う。
 始めから電車あリきではないのだ。たまたま帰った故郷で、子供の頃の宝物だった電車の切符と、運転士募集の広告を見てひらめいたに違いない。ある意味偶然なのである。そしてそのとき、その偶然こそが、自分を変革するための手段であると確信したのだろう。
 この映画で一番感動したのは、ローカル線でも、島根県の神秘的な風景でもなく、主人公が鎧兜を脱ぎ捨て、一糸まとわぬ姿で、人生をやり直そうするひたむきな姿である。

 そして次に奈良岡朋子が演ずる、年老いた母親の言葉である。「どぎゃん親でも、子供が嬉しそうにしとーのが一番だわねえ」。そうどんなに子供が大きくなっても、親にとって、自分の子供はいつまでも子供なのだ。この言葉に、いつまでも涙が止まらなかった。
 それからこの作品では、登場人物の心が少しずつ変化してゆく。それが実に巧く描かれている。とくに箸にも棒にも掛からぬような一人娘が、祖母の病気と父親の決意により、だんだん変化してゆくさまが実によかったな。
 また終盤に近づいて、物語の締め方と夫婦の溝が気になり始めたが、これも実に見事な収束だった。そしてこれこそが、これからの夫婦のあり方のひとつなのかもしれないと感じた。
 ALWAYS三丁目のタ日のスタッフと、地元島根の人々が一緒に創った、全くCGの無い手づくりの優しい心に響く映画である。

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コメント

KLYさんこんにちは
そうですね。中井貴一は貴重な俳優の一人になりましたね。しみじみと淡々とこの役を演じていましたからね。
KLYさんの故郷はどちらでしたか?


投稿: ケント | 2010年6月 2日 (水) 12時31分

全く持ってこんな役をやらせたら日本で中井貴一の右に出る人はいないんじゃないでしょうか。実に等身大で方に力の入ってない好演でした。
いい加減実家にも帰っていない自分がちと恥ずかしいです。

投稿: KLY | 2010年6月 1日 (火) 23時46分

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