孤高のメス
★★★★☆
いきなり葬式シーンから始まり、喪主である息子が、看護師だった亡母(夏川結衣)の日記を読み、回想シーンに突入してゆく。
そこでは、手付きの悪い医者が、内臓にメスを入れているのだが、どうやらメスの入れ方が間違ったようで、患者の血しぶきが医者の目に飛んでくる。そして手術室は医者の怒号でバタバタになる。
ここは地方の市民病院なくだが、難しい手術は全て大学病院へたらい回し。その大学病院から腰かけ気分で出向してきた医者がこの下手クソ外科医で医長なのだ。彼等は出向期間だけ大過無く、お気楽に過ごすことだけが目的なので、医師本来の役割など全く考えてもいない。またそうした自分達にとって、風当たりが悪くなる原因となる邪魔な存在は、徹底的に排除する。
ドラマだからこうしたとんでもない医師が存在するのか、それともそれが現実なのか。原作者が医師であることを考えると、たぶん後者のほうが実態なのだろう。
ある日のこと、心ある市長の意見で、この荒れ果てた市民病院に、ズバ抜けたメスさばきと、医療に対する真摯な考えを持つ医師が赴任してくる。彼こそが、この物語の主人公となる当麻鉄彦(堤真一)なのだ。
各地を転々とし、ちょっと変わり者の当麻医師だが、彼の仕事ぶりは素晴らしく、まるでブラックジャックのようであった。そして次第に若い医師やナースも、彼の見事な仕事ぶりに心酔してゆく。
どこかで見たようなストーリーかもしれないが、手術中の映像はかなり生々しく、まるで本物の臓器を切り開いているようだった。また堤真一の手の動きも素早く正確であり、かなり練習したのではないかと思われる。さらに手術中の彼の鋭い目付きがなんとも言えない。おもわず往年の田宮二郎が演じた『白い巨塔』を思い出してしまった。
いまさらであるが、この作品を観て、医療制度のあり方、医師とは一体何をする仕事なのかを改めて考えさせられた。そして金のかかる医学部への入学が仇になり、医者の子供ばかりが医者になっている現状を憂う気持ちが強くなった。
この医学界の現状は、やはり金のかかる政治家とどこか似ているじゃないか。医者や政治家は、国民にとって重要な職務である。だからこそ、本来はその職務に適した人物がやるべきであり、決して金や親の七光でなるべき職業ではないはずである。
話は少しそれるが、そうした意味で親がサラリーマンで、大きな資産も有していない菅直人が、首相になったという意義は大きいのだ。私自身は決して彼や民主党を支持する者ではないが、日本がやっと本来の方向へ旅立とうとしている姿には拍手を送りたい。
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» どこの世界にも共通する事。『孤高のメス』 [水曜日のシネマ日記]
地方の市民病院を舞台に外科医療に携わる人たちの姿を描いた作品です。 [続きを読む]
受信: 2010年6月17日 (木) 21時11分
» 命をつなぐ〜『孤高のメス』 [真紅のthinkingdays]
急死した看護師の母の葬儀のため、新米医師の弘平(成宮寛貴)は寂れた漁
師町に帰って来る。母の遺品を整理するうち、彼は「1989」と書か... [続きを読む]
受信: 2010年6月17日 (木) 21時59分
» 孤高のメス [そーれりぽーと]
いろんな意味でネームバリューの大きな話題作が目白押しだった週末、上映館数も回数も少なくないし、個性派俳優で固めたキャスティングも面白そうなのに、埋もれそうになってた『孤高のメス』を観てきました。
★★★★★
本を読まなくなって久しいもので、この映画の原作もベストセラーだったとは知りませんでした。
失礼。
観にいっておいて良かった。
人の死に関して改めて考えさせられる、感動の医療ヒューマンドラマでした。
脳死と尊厳について描かれた話だなんて全く知らなかったもので(汗)
現在でも脳死に関する考え方... [続きを読む]
受信: 2010年6月17日 (木) 22時36分
» 「孤高のメス」 [お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法]
2010年・日本/東映配給監督:成島 出原作:大鐘 稔彦脚本:加藤 正人 現役の医師である大鐘稔彦の同名ベストセラー小説の映画化。監督は「フライ、ダディ、フライ」、「ミッドナイト イーグル」等の成島出... [続きを読む]
受信: 2010年6月17日 (木) 22時57分
» 孤高のメス [LOVE Cinemas 調布]
自身も医師である大鐘稔彦の同名ベストセラー小説の映画化。脳死肝移植というタブーに挑んだ一人の外科医を描いた社会派医療ドラマだ。主演は『クライマーズ・ハイ』の堤真一。共演に夏川結衣、吉沢悠、中越典子、成宮寛貴、余貴美子、生瀬勝久、柄本明など若手・中堅・ベテランにバランスの良い布陣。監督は『クライマーズ・ハイ(脚本)』、『ミッドナイトイーグル(監督)』の成島出。... [続きを読む]
受信: 2010年6月17日 (木) 23時44分
» 孤高のメス [だらだら無気力ブログ]
現職医師である大鐘稔彦のベストセラー小説を基に、地方の市民病院を舞台に 目の前の患者を助けることだけに全力を尽くす一人の医師の真摯な姿を描き ながら今の日本の医療問題に浮き彫りに描く医療ドラマ。 主演は、『クライマーズ・ハイ』の堤真一。共演には、『BALLAD ..... [続きを読む]
受信: 2010年6月18日 (金) 01時50分
» 「孤高のメス」レビュー [映画レビュー トラックバックセンター]
映画「孤高のメス」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *出演:堤真一、夏川結衣、吉沢悠、中越典子、松重豊、成宮寛貴、矢島健一、平田満、余貴美子、生瀬勝久、柄本明、他 *監督:成島出 *原作:大鐘稔彦 感想・評価・批評 等、レビューを含む記事・ブ..... [続きを読む]
受信: 2010年6月18日 (金) 02時09分
» 孤高のメス [迷宮映画館]
いまや、日本映画に欠かせないおばちゃんになってしまった余さんがすごい! [続きを読む]
受信: 2010年6月18日 (金) 08時08分
» 映画:「孤高のメス」♪。 [☆みぃみの日々徒然日記☆]
平成22年6月11日(金)#63647;。 映画:「孤高のメス」レポ。 監 督:成島出 脚 本:加藤正人 原 作:大鐘稔彦 キャスト:堤真一、夏川結衣、吉沢悠、中越典子、生瀬勝久、柄本明 余貴美子、成宮寛貴、松重豊 【ストーリー】 医師の派遣に始まり..... [続きを読む]
受信: 2010年6月18日 (金) 09時33分
» 「孤高のメス」:森下五丁目バス停付近の会話 [【映画がはねたら、都バスに乗って】]
{/kaeru_en4/}きょうもまた、救急車が町を走っていく・・・。
{/hiyo_en2/}無事に治療を受けられるといいわね。
{/kaeru_en4/}しかし、医療現場には大きな問題が山積しているからな。
{/hiyo_en2/}うん。「孤高のメス」なんか観ちゃうといっそう強く感じちゃう。
{/kaeru_en4/}成島出監督の「孤高のメス」は、地域医療に身を捧げた医師の物語。
{/hiyo_en2/}ちょっとでも危ない患者は大学病院へ送ってしまおうとする日和見な医師たちの中で、それでは間に... [続きを読む]
受信: 2010年6月20日 (日) 23時25分
» 『孤高のメス』(2010)/日本 [NiceOne!!]
監督:成島出原作:大鐘稔彦出演:堤真一、夏川結衣、吉沢悠、中越典子、矢島健一、成宮寛貴、平田満、松重豊、余貴美子、生瀬勝久、柄本明試写会場 : よみうりホール公式サイト... [続きを読む]
受信: 2010年6月22日 (火) 00時28分
» 『孤高のメス』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「孤高のメス」□監督 成島 出 □原作 大鐘稔彦 □脚本 加藤正人□キャスト 堤 真一、夏川結衣、余 貴美子、柄本 明、吉沢 悠、中越典子、松重 豊、成宮寛貴、平田 満、生瀬勝久■鑑賞日 6月13日(日)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>
確かに法律は大切なものかもしれない。 しかしながら、一つの命を助けるために、最愛の息子の肝臓を活かしてと望むものと、 提供者がいるならば(家族の臓器は不具合)父親の延命を... [続きを読む]
受信: 2010年6月22日 (火) 12時15分
» 孤高のメス [映画的・絵画的・音楽的]
『孤高のメス』を渋谷TOEIで見ました。予告編を見たときから、この映画の真摯さが伝わってきたからですが。
(1)実のところ、この作品のストーリーは極めて単純です。
20年ほど前、ある地方都市の市民病院に、米国帰りのバリバリの外科医・当麻(堤真一)が赴任し、それまでこの病院では手がつけられなかった外科手術を次々に成功させ、挙句は肝臓移植手術までやってしまうというお話です。
これを、仕事中に亡くなった同病院の看護婦・浪子(夏川結衣)の息子(成宮寛貴)―新米の医者―が、遺品の中にあった母親の日記を... [続きを読む]
受信: 2010年6月29日 (火) 06時15分
» 孤高のメス (堤真一さん) [yanajun]
映画『孤高のメス』は、実際に医療に携わる大鐘稔彦氏の同名小説を映画化した作品です。堤真一さんは、主人公の外科医・当麻鉄彦 役で出演しています。先日、劇場に観に行きました。●導入部のあらすじと感想... [続きを読む]
受信: 2010年6月29日 (火) 10時31分
» 『孤高のメス』 試写会鑑賞 [映画な日々。読書な日々。]
1989年、ある地方都市。市民病院に赴任した外科医の当麻は病院の体制に不満を感じながらも、次々と困難なオペに取り組み、医師としてやるべき仕事にまい進していく。しかしそんな中、病に倒れた市長のために、違法となっている肝臓移植手術を施すべきか否かの選択を迫られ... [続きを読む]
受信: 2010年7月 7日 (水) 12時27分
» 孤高のメス [映画、言いたい放題!]
堤真一主演の硬派な医療モノ。
気になりますね。
看護師の母・浪子の葬式を終えた新米医師の息子・弘平は、
整理していた母の遺品から一冊の古い日記帳を見つける。
1989年。
浪子が勤めるさざなみ市民病院は、大学病院に依存し、
外科手術ひとつまともにできない地方病院... [続きを読む]
受信: 2011年4月26日 (火) 00時04分
コメント
亮さんこんにちは
今更ではありますが、本当に医者の仕事の大切さを痛感しましたね。金がなくても医者の資質があれば誰でも入学出来るシステムが必要ですよね。もし入学後に不適切な人物と判明したら卒業させなければいいわけですから。政治家もインターネットと政権放送以外は選挙運動が出来なくし、投票もインターネットで行えば誰でも立候補出来るのでは。ただ有名というだけで投票する単純な人は、だんだん少なくなると思います。国民はそれほどバカではありません。
投稿: ケント | 2010年6月20日 (日) 18時19分
こんにちは。
医者という命を預かる仕事について、今一度、考えることができた作品でした。
まっすぐな良い映画だと思います。
政治家一家でない人が総理大臣になるのは久しぶりですね。
あんな状態の民主党なのに、支持率が高い理由は、そういった部分ではないかと自分も感じていました。
投稿: 亮 | 2010年6月19日 (土) 06時46分
sakuraiさんこんにちは、裏のドロドロネバネバを描いちゃうと、まさに「白い巨塔」になっちゃいますから、これはこれでそれなりにオリジナリティーがあって良かったと思いました。
原作を読んだら是非感想を教えてください。
投稿: ケント | 2010年6月18日 (金) 20時44分
KLYさんこんにちは
それにしても映画だけでなく原作までよく読んでいますね。もちろん仕事もしているわけでしょうから、一体KLYさんの毎日はどのようになっているのか不思議ですね。まさかサイボーグKLYではありませんか?
さて、おすすめの原作も是非読んでみようかと思っています。
投稿: ケント | 2010年6月18日 (金) 20時42分
とても素直に感動させられました。
ひねくれもんなので、もっと裏の裏やら、ドロドロネバネバの話かと思っていたもんで、ちょっと物足りなかったのですが、KLYさんのお勧めで、今度本を読もう!!と思ってます。
投稿: sakurai | 2010年6月18日 (金) 08時08分
是非原作をおススメしますよ~。
原作では医療を取り巻く様々な問題点を幅広く網羅しています。映画では脳死肝移植に絞ったのが正解で、短い時間内にきっちり訴求できていたのではないかと思いました。
あの手術シーンはかなり練習したんだそうです。本当に手術できるかもしれないとか思っちゃったそうですよ。^^;
投稿: KLY | 2010年6月17日 (木) 23時55分