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2010年3月22日 (月)

雷電本紀

 江戸時代に、優勝28回・勝率9割6分2厘という、とてつもない成績を残した史上最強の力士がいた。そう雷電為右衛門である。その体駆は、身長六尺五寸(197cm)、体重は46貫(172kg)の筋肉質であったという。
 現代の力士でも、これだけ均整のとれた巨漢力士はなかなか見当らない。私の記憶にある日本人力士でいえば、双羽黒(北尾)と水戸泉(現・錦戸親方)くらいだが、スピード、パワー、安定感のどれをとっても雷電には、違く及ばない気がする。現役の外人力士では、関脇の把瑠都が雷電とほぼ同じ体格のようだ。

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 江戸相撲は、もともと巨人の見世物小屋から始まった。これを実力本位の格闘技に変革したのが、第四代横綱の谷風梶之助(二代目)であるという。そして有力力士は藩の士分へ抱え上げられ、滞刀が許されるのだった。
 雷電の幼名は太郎吉(樽吉)といい、信濃の豪農関家の長男に生まれ、幼少のころから数々の伝説を残している。17才のときに、浦風林右エ門に見出されて江戸に上り、谷風の預り弟子になる。
 当時はきわどい勝負で勝っても、藩待のものいいが入り、ほとんどが預り無勝負とされてしまう。従って勝ち名乗りを受けるには、圧倒的に相手を叩きつけるしかない。
 また余りにも雷電が強過ぎるため、鉄砲、張り手、かんぬき、鯖折りが禁じ手になったという逸話もある。そのような制約の中、また当時は年2場所制だったことも考えると、もし現代であれば、雷電の優勝回数は、100回近くに達したのではないかと思われる。

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 また雷電は、生涯に10回だけ負けたというが、そのほとんどは、藩の陰謀やとりこぼしなどで、正面から攻められて力負けしたことはないという。それを証明するものとして、当時最高位だった大関戦では、誰にも負けていない。だから運よく雷電に勝った力士は、雷電に勝ったということだけで、大相撲史上に名を残している者が多いのだ。
 ここまで書くと、いかにも大剛力だけの怪物のようだが、雷電は文武両道で人格者だったらしい。まさに怪物というより正真正銘、正義の人スーパーマンだったのであろう。

 この小説のタイトルからしても、雷電が主人公ではあるのは間違いないが、実はもう一人の主人公がいるのだ。それは雷電の贔屓筋である「鉄物問屋」の鍵屋助五郎である。雷電を表の主役とすれば、助五郎はあきらかに裏の主役といえよう。
 この鍵屋助五郎の話がかなり面白い。芸妓だった女房さよとの出会いと、身受けまでのいきさつなどは、なかなか粋な江戸っ子振りなのだ。また終盤に、雷電達をかばって自分ー人だけが罪をかぶるなど、まるで歌舞伎や講談の世界の、男の中の男一匹なのである。
 雷電の話は誰でも知っているので、それだけでは単調になってしまう。そこで鍵屋助五郎の話を同時進行させたのだろう。これが見事にはまって、飽きずにこの分厚い本を読むことが出来た。

 また江戸相撲界の内輪事情などもよく描かれていて、大相撲の歴史がよく分かったのも嬉しい。谷風や小野川が横綱になったのに、彼等を凌ぐ雷電が横綱になれなかったのは未だに相撲史上最大の謎である。
 当時番付上は大関が最高位で、横綱の免許はいわゆる名誉名人のようなものだったという。従って、雷電の場合は、藩の事情などで横綱免許申請が出来なかったという説が有力である。それにしても、雷電のような偉大な力士は、もう永遠に現われないのだろうか。

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書評欄で星野博美が作者を紹介していたので、読んでみた。 江戸時代の伝説的な強豪力士・雷電為右門を描いた歴史小説である。 力士の伝記ではあるのだが、いわゆる武勇伝や豪傑談のたぐいとはまったく違う。まあ今どきそんなもの読む人いないしね。 雷電が活躍した天明・..... [続きを読む]

受信: 2010年3月23日 (火) 15時46分

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