扉をたたく人
★★★★
妻を亡くして心を閉ざしている62歳の大学教授ウォルターは、ふとした出来事からジャンべを弾く移民青年タレクと親しくなる。だがある日、地下鉄乗り場で無賃乗車を疑られたタレクが、逮捕されたまま刑務所から出られなくなってしまう。
実は彼は不法滞在のシリア人だったのである。その後ウォルターは弁護士を雇って、何も悪い事をしていないタレクを釈放しようするのだが、状況は全く好転しないのだった…。
かつては全世界の人たちが自由に闊歩し、夢を与えてくれたアメリ力だが、あの9.11テロ事件以後は、急に外国人に対して厳しくなってしまった。まるで心を閉ざしていた主人公ウォルター同様、態度を硬化して国の扉を固く閉ざしてしまったかのようである。そういう意味でも、原題は「THE VISITOR」であるが、この邦題のほうがぴったりしているね。
無愛想で嫌味な爺さんが、移民青年と親しくなり、生き甲斐を見出し次弟に心を開くという展開は、イーストウッドの『グラン・トリノ』とそっくりである。ジャンべを通じたタレクとの世代と人種を超えた交流は、とても心温まる展開だった。そうタレクが逮捕されるまでは…。
逮捕され拘束されたタレクは、不安と苛立ちが交錯し、ジャンべも叩けず、次第に白人であるウォルターとの距離を感じ始める。このあたりからストーリーは、徐々に暗雲が立ち始めるのだ。
しかしながら、タレクの美しい母モーナの登場で、一気にラブロマンスの香りが漂い始める。このあたりの転換が難しいのだが、ごく自然にストーリーが流れてゆく様は見事だ。二人の中高年は、それぞれ惹かれ合ってゆくものの、激しい感情表現や露骨なラブシーンもない。これが良かったのだろう。そうしないと、この映画は全く違う作品になっていたからである。
そしてアメリカ映画らしからぬラストも、なかなか渋くて心に残る締めくくり方であった。観た後に、アメリカの現状をいろいろ考えさせられ、また登場人物たちのその後の行動が気になる作品でもある。
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コメント
kikuy1113 さん
懐かしいのは「夏への扉 」、「 幼年期の終り」
「 マイナス・ゼロ」でしょうか?
もしブログをお持ちならご紹介ください。
投稿: ケント | 2010年3月 7日 (日) 21時28分
NARCYさん、ご訪問ありがとうございました。
さっそくお伺いしますね。
投稿: ケント | 2010年3月 7日 (日) 21時26分
映画とは関係ないのですが、SFの愛読書というのが右端に載っていまして、懐かしく拝見しました。
投稿: kikuy1113 | 2010年3月 7日 (日) 12時27分
初めまして、東京在住のNARCYと申します。
現在、映画サイトを勉強中です。こちらはすごい情報量ですね。参考にさせて頂きます。
最近、オムニバス映画のサイトを開きました。もしよろしければご覧頂き、感想などをお聞かせ下さい。
オムニバス映画ワールド
http://web.me.com/omnibusworld
アクセスお待ちします。
宜しくお願いします。
投稿: NARCY | 2010年3月 6日 (土) 19時06分
タれクの笑顔、ホントにいい表情でした。実はタレクとウォルターはそんなに長い時間一緒にいた訳ではないのに、偏屈ジジイだったウォルターの心を開いたのはタレクのあの顔でしたよね。
あの顔を見てしまったら、不法滞在が犯罪だと理屈では解っていても、感情が納得出来ないです。
ヒアム・アッバスは『シリアの花嫁』同様、とても素敵でした。イスラエル出身でパレスチナ紛争を肌で感じて育った彼女だけに、芯の強い女性の役がぴったりでした。^^
投稿: KLY | 2010年3月 6日 (土) 18時07分