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2010年2月24日 (水)

人間失格

★★★★

 太宰治の原作を読んだのは高校時代だから、もう気が遠くなるくらい昔のことである。だから原作の細かい筋書きなどは、ほとんど記憶していない。というより、もともと筋書きなどなにもない「狂人の日記」ともいえるだろう。しかし「道化」という騙し言葉と、心中し自分だけ助かり、女が死んでしまったくだりだけは覚えていたようだ。

Ningenshikkaku
 映画を観終わったとき、後ろの座席で若い女の子の声が聞こえた。「原作は難しくて全々分からなかったけれど、この映画は分かり易かったね」。
 確かにその通り。だがそれは原作を読んだ者にしか通用しないだろう。原作の文章は平易ではあるが、主人公の心情がなかなか理解出来ないし、人によって感じ方も異なるはずだからである。

 一方映画のほうは、美しい北国の景色と懐かしい昭和初期の東京風景。主人公は超美貌を誇る青年で、次々と個性的な女性が登場し、主人公に夢中になるという展開だ。実に分かり易いし、主人公をとりまく女性陣の配役陣がまた凄い。
 バーのマダムに大楠道代、カフエの女給に寺島しのぶ、薬屋の女主人に室井滋、母親のような女中に三田佳子といったべテラン女優に加え、坂井真紀、小池栄子、石原さとみ、などが色を添える。だがこれだけの女優を揃えても、なぜかラブシーンがほとんどないのだ。そのあっさりしたような女性関係の描き方が、太宰のイメージと何となく調和してくるから不思議である。
 だがさすがに、モルヒネを注射するシーンは悲惨であった。そういえば、原作でのこのシーンの描写も、いまだ私の記憶に残っている。ということは、かなり印象的な描写だったということなのだろう。

人間失格 (集英社文庫) Book 人間失格 (集英社文庫)

著者:太宰 治
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 中原中也とのシーンは、原作には全くないのだが、実物の太宰自身は、酒の席で中也に絡まれたことがあるという。原作の大幅改編ではあるが、中也との遭遇を折り込んだのは正解だったのではないか。
 鎌倉のトンネルで、中也が火の水を飲み込むシーンがある。もしあそこで「汚れちまった悲しみに」がスクリーンに流れたら、僕の心は熱く燃え上がって暴発したかもしれない。だがそれでは太宰ではなく、中也の映画になってしまうので、筋違いというものなのだろう。
 原作とは異なる展開が目立つものの、それはそれで映画としての完成度を損なうものではない。ただ主人公が唯一愛した「良子」の描き方がお粗末だし、原作の最大テーマである「道化」についてもほとんど触れていないのが残念である。
 主人公大庭葉蔵役には、ジャニーズ系の生田斗真が抜擢され、そのイケ面振りを120%発揮していたが、演技力のほうはいまいち物足りない。一方、主人公を憎み切っている堀木と平目を演じた、伊勢谷友介と石橋蓮司には、力量と存在感をひしひしと感じてしまった。
 いずれにせよ、太宰治の原作にとらわれてはいけない。これは小説とは異なった視線と感性で観る「現代映画」なのである。

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コメント

残念ながら原作未読の私にはサッパリでした。なんというか、「こうなんだよ。」と言われたので「はぁ、そうですか。」という感じです。ただそれにしても突発的に物事が起こりすぎで、再三「え?」とか「は?」とかなってしまったのが残念です。
既読者が対象ならそういってくれたら観なかったんですけどねぇ。(苦笑)

投稿: KLY | 2010年2月24日 (水) 21時58分

KLYさんこんにちは
もともと主人公の心情が不可解な原作ですが、それでも未読だと判りにくいですね。ただ原作とはかなり異なるところがあるので、原作は無視して楽しむのも有りではないでしょうか。

投稿: ケント | 2010年2月26日 (金) 22時11分

原作読みましたが、原作はというか、太宰は読んでいてつらく、暗くなるので、途中で放り出す、というか、深い眠りにというのが、ほとんどでした。
この映画を知ったとき。
そりゃ無理だわと思いました。
原作とやはり変わってしまいましたか。
このごろ会社でも映画の機会がなく残念です。
なかなか自分で見に行くことは時間的にできないので。ボケの親がいるので。( ̄▽ ̄)

投稿: v740gle | 2010年2月27日 (土) 22時02分

v740gleさんご無沙汰しています
コメントありがとう
親の介護ですか?なんだか気の毒ですね。
僕も暗い映画は余り好きではないのですが、太宰に限ってはオールドファンなので、それほど嫌にならないから不思議ですね。

投稿: ケント | 2010年2月28日 (日) 16時40分

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