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2010年2月 6日 (土)

1Q84の世界

 やっとこの怪物小説2冊を読み終わった。さすが売り切れ続出で、なかなかBOOK1が手に入らなかっただけのことはある。とにかくストーリーも面白いし、発想がユニークであり、味わいある文体も健在である。もちろん『海辺のカフカ』『ねじまき鳥クロニクル』で味わった、あの摩訶不思議で美味な、村上流エッセンスも全編に漂っている。
 ストーリーのほうは、スポーツジムのインスラクターをしている青豆という女性と、予備校で数学を教えている天吾という男性との話がパラレルに展開してゆく。この流れがとても居心地よく、飽食感が沸かないしくみになっている。

1Q84 BOOK 1 Book 1Q84 BOOK 1

著者:村上 春樹
販売元:新潮社
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 ミステリー、SF、ファンタジー、アダルト、社会派とあらゆる要素を折り込んでいる作品だが、究極のテーマは「永遠の愛」なのだろうか。青豆と大吾は少年期に同じような体験を経ているせいか、他人には理解し得ない連帯感のようなものを共有している。
 二人はたった一度の接触以外、ほとんど口を聞いたこともない。さらに二人は、青豆が転校したあと、20年間も会ったこともないのだが、なぜかいつまでも心の奥底で、それぞれの存在を感じ合っていた。これこそが究極のナルシシズムなのであろう。
 お互いに心のヒダに自已愛を蓄積しながら、別々の世界で生きてきた二人だが、ある日突然、「二つの月が存在する世界」に迷い込んでしまう。そのパラレルワールドのような、混迷の世界こそ『1Q84』年の世界だったのである。

 二人がこの摩訶不思議な世界に入り込んだきっかけは、おそらく青豆が殺し屋になり、天吾がゴーストライターになったためだろう。要するに本来真面目な二人が、ともにアウトローな世界に足を踏み入れてしまったことと関連しているのは間違いない。
 そして『1Q84』の世界で彼等に深く関わってくるのが、カルト教団「さきがけ」の存在である。この教団のあり方を読んでみると、すぐに「オウム真理教」がモデルになっていることに気付くはずである。また少女時代の青豆が、無理やり母親に連れ回された布教活動は、「エホバの証人」が下敷きになっているのはいうまでもない。
 いずれにせよ、少年時代に自分の意思に反して、無理やり強制労働させられるのは非常に辛いし、一生心の中にある種のわだかまりが残るはずである。そしてそれがナルシシズムの源泉となるのだ。またそのことは青豆と天吾の出会いにも影響力を持ち、『1Q84』の扉を開くパワーを開放させたに違いない。

村上春樹『1Q84』をどう読むか Book 村上春樹『1Q84』をどう読むか

販売元:河出書房新社
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 かくいう私も、実家が和菓子屋を営んでいたため、小学生の頃から家業を手伝わされている。毎朝小学校に行く前に店の掃除をしたり、朝食に添える味噌汁を作るのは、小さな私の役割であった。また学校から帰ってくれば、店番に配達やあんこの製造の手伝いなどに追いまくられられる日々が続いた。
 また日曜日や祭日は稼ぎどきなので、ほぼ一日中店の手伝いのため、私の自由な時間は拘束された。遊びたい盛りである。それで親の目を盗んで、近所の子らと遊びに呆けるのだが、監視役の妹が必ず私を探し出して親にタレ込む。といった蟻地獄のような循環が続いていたのである。

 だから青豆と天吾の抑圧されていた少年時代の鬱積が、まるで自分のことのように、身に染みて感じられるのだ。この抑圧されていたエネルギーが開放されたとき、人はとんでもないパワーを発揮することになるのかもしれない。
 また天吾と青豆だけでなく、ふかえりも拘束から逃れてきた者であり、この少女が『1Q84』で二人を結び付ける重要なピボットになっている。そしてそのふかえりこそ、「矛盾と循環の渦中」から生まれ落ちた存在であり、この作品の強烈なスパイスとなっているのだ。

 著者の村上春樹が、この作品を書く際にジョージ・オーウェルの『1984年』を意識していたのは間違いない。1949年に刊行された『1984年』のほうは、核戦争後の絶望的な世界を描いた近未来小説だが、『1Q84』は逆オマージュ視点で、近過去世界を描いている。
 『1984年』では、ビッグブラザー党による全体主義体制が世界を制覇してゆくのだが、『1Q84』ではリトル・ピープルという謎の生命体によって世界が侵食されてゆく。このリトル・ピープルは、異性人なのか、人間の妄想から生まれた存在なのか、あるいは神か死神なのか・・・。この作品の中ではその謎は解明されていない。
 BOOK2で完結かと思っていたら、2010年4月にBOOK3が出版されるという。たぶんBOOK3においても、リトル・ピープルについての謎は解明されないだろう。また解明する必要もない。それが村上ワールドであるし、解明してしまうと文学性が損なわれてしまうからである。

 この作品に関するブログ記事は山ほどあるし、解説書まで何冊も発売されている。従ってド素人の私が、ここでつまらない解説をクドクドと書き連ねる気持ちはない。またいまだ完全完結していないので、完全なレビューも不可能である。いずれにせよ、本作が読者に優しく、著者の作品群の中でもかなり完成度が高いことだけは否めないだろう。そしてただ、BOOK3の発売をジリジリしながら、ひたすら待ち続けるほかないのである。

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コメント

こんばんは。
お返しがだいぶ遅くなってしまって本当にすみません!
この本のレビュー、書きにくかったですよねぇ。
BOOK3待ち遠しいですね♪

投稿: masako | 2010年3月 2日 (火) 21時50分

masakoさんこんにちは
そうですね。いろいろな感じ方があるので、皆が納得できるレビューは誰も書けないと思います。
でもそれはそれで良いのではとも思っています。
BOOK3まであと1ヶ月と迫りましたね。

投稿: ケント | 2010年3月 3日 (水) 13時00分

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