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2009年10月の記事

2009年10月25日 (日)

沈まぬ太陽 

★★★★☆

 山崎豊子の社会派小説を、壮大なスケールで描いた会心の大作である。また映画の背景が、1985年に実際に起きた「日本航空123便墜落事故」を題材にしたものなので、説得力もあるし迫力も満点であった。久々に凄い映画に触れることが出来て、今感動に打ち震えている。

      Shizumanu

 この歴史的な事故の主原因は、ボーイング社へ依頼した修理が不適切だったことによる金属疲労だと結論付けられた。だがその他にも、様々な仮説や推測が飛びかっているが、適切な証明が出来ないまま現在に至っているのである。
 事故が起きたのは夏休み中ということもあり、帰省客や甲子園に出場する高校の関係者、東京ディズニーランドからの帰宅客など多くの乗客で満席状態だったという。また有名人では、歌手の坂本九、女優の北原謡子、阪神タイガース球団社長の中埜肇、ハウス食品社長の浦上郁夫などが搭乗していた。
 もちろんドキュメンタリーではないので、映画でそれらの有名人の名前は一切出てこない。また事故の原因についても余り詳しく触れていない。ストーリーの主眼は、労働組合委員長恩地元の苦難の人生と、悪徳経営者たちと政治家たちの暗躍などを並べて描いてゆくのだ。
 キャストは、主演・渡辺謙のほか、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二、大杉漣、香川照之、小林稔侍、加藤剛、宇津井健など、かなり贅沢な配役がズラリと並ぶ。そして舞台も日本、イラン、パキスタン、アフリカ、米国と果てしなく続く。
 また旅客機はCGだが本物そっくり、空港や御巣鷹山での墜落現場、数百の棺桶が並ぶ体育館などの空前のセットなど、邦画とは思えないスケールの大きさに度肝を抜かれることだろう。日本航空の協力もなく、よくこんな壮大な映画を創れたものである。きっと今年の日本アカデミー賞N01候補になるに違いない。途中休憩が入るほどの大長編だが、常識的な大人なら、是非必見の映画といえよう。

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2009年10月24日 (土)

ラスト・ブラッド

★★★☆

 ネットでの評価が余り良くないので、ある程度覚悟をしていたが、そこそこ楽しめる作品に仕上がっていたと思う。主役のサヤを演じたチョン・ジヒョンのセーラー服アクションもほぼ期待通りだし、セピア系に染めた映像も押井守エッセンスが十分に漂ってくる。

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 押井守の熱狂的ファンには申し訳ないが、アニメと実写とが異なる展開であったとしても、原作の雰囲気と実写の持ち味を生かせれば良しとしたい。ただオニのキャラが余り面白くないのと、CGの出来にも不満が残る。それから、オニと忍者がゴチャ混ぜの、相変わらずの米国流日本誤解システムにも呆れてしまったな。
 アクションシーンでは、サヤの育ての親であるカトウの殺陣が光っていた。一体誰なのかと思って、エンディングクレジットを注視していたら、なんと倉田保昭ではないか。老いても、いまだ健在な見事な職人アクション。さすが世界の倉田さんである。

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2009年10月23日 (金)

通勤地獄 優先席の定義

 この席が始めて登場したときは、シルバーシート』と呼んでいた。多分お年寄りの白髪をイメージして名付けたのだろう。だからお年寄りに席を譲るということが、一番の目的だったのだろう。
 ところがいつの間にか、優先席』とか、おもいやりシート』という呼称に変わってしまったよね。もはやこのシートの存在意義は、お年寄りというよりも、体の不自由な方や、妊婦さんへの配慮に変りつつあるのだ。

  To_2

 言ってみれば誰だって年をとるのだし、昨今は若者よりもお年寄りのほうが元気がありそうだ。また誰もが了解するお年寄りって、一体何歳位からなのだろうか。
 昔は60歳を過ぎればお年寄りに間違いなかったが、今は皆若造りなので、60歳位では年寄りに見えない。90歳以上になって腰が曲がり、杖でもつかなくては、誰もお年寄りとは認めないだろう。だがそうなれば、もうめったに電車になんか乗っていられないよね。
 だからここは『優先席』なんだぞと威張っても、誰も「中途半端な年寄り」には席を譲らないのだ。ましてやすでに、団塊の世代が大量にお年寄りの仲間入りをしているのである。
 そして、少子化で若者の数が減り、年金生活を送る年寄りが激増してゆく。だから逆に、若くてよく働く者をいたわらねばならぬのだ。きっと我々年寄りは鼻つまみ者になる。そしてやがては、優先席』からお年寄りの名が削られる日がやってくるのだろう。

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2009年10月21日 (水)

パンドラの匣

★★★★

 太宰治の作品は、高校時代に貪るようにして読み漁ったのだが、この作品のタイトルは記憶に残っていなかった。サナトリウムの患者と看護婦の恋物語で、太宰の作品の中ではポジティブな作品かもしれない。
 とにかくオープニングの昭和天皇敗戦宣言のあと、最初から最後まで山奥のサナトリウムだけの狭い舞台が続く。前半はやや退屈なのだが、少しずつ少しずつ太宰の感性が僕の心に染み込んで来るのだ。

          Pandora

 後半になるに従って、もしかすると、大昔にこの作品を読んだような気がしてきたが、確信するには至っていない。サナトリウムという舞台背景、時々一人淋しく死んでゆく患者たち…。
 本来暗く重い気分になるはずなのだが、どこかお茶目でポップな香りがする。そこが太宰の魅力であり、本作もなかなか味わい深かい映画に仕上がっていた。
 まず患者と看護婦のあだ名が楽しい。患者側は、つくし・ひばり・越後獅子・かっぽれ・固パン、看護婦側は竹さん、マア坊、孔雀など。また彼らの挨拶も面白い「やっとるか」、やっとるぞ」、がんばれよ、「ようしきた」というパターンなのだ。
 また登場人物も個性的で、「一目惚れ」、「憧れ」、「ひいき」、「可愛い」、「好感」、「尊敬」などなど微妙な心の綾や、人物間の相関関係も楽しめる。また『乳と卵』で芥川賞を受賞した川上未映子の演技もみものだったが、無難にヒロイン「竹さん」を演じていたのは立派だったね。
 太宰治生誕100年ということで、とにかくここのところ太宰作品の映画化ラッシュが続いている。本作のほかには『斜陽』、『ヴィヨンの妻』、『人間失格』と続くからね。 
 余り期待していなかったのだが、そこはかとなく太宰の世界を再現した演出は見事だし、音楽の使い方もなかなか絶妙であった。太宰ファンなら、観て損のない一本といえよう。

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2009年10月20日 (火)

悪夢のエレベーター

★★★★

 見知らぬ男女四人が、突然深夜のマンションのエレベーターに閉じ込められてしまう。悔しいことに、非常ボタンは故障し、唯一の携帯は電池切れで、外部との連絡が全くとれない。さらに不運なことに、エレべーターが2台あり、住民たちは他の1台に乗るため故障に気が付かないのだ。
 またこの四人は、それぞれワケありな人物ばかり。極限状態の中で、だんだん神経が異常になり、お互いに不信感を募られてゆく。そしてある出来事がきっかけとなり、全員が隠し事を暴露し始めるのだった。

     Akumu_2

 まっとうな出演者はたったの7人。そのうちほとんどがエレべーターの中での密室シーンなのである。従って会話劇が中心であり、普通なら退屈してしまうのだが、本作は退屈する暇がない。それほど超面白いのである。
 ジャンルとしては、ブラックユーモアというか、コミカルミステリーといったところで、コメディとシリアスな展開が微妙にブレンドされている。そしてとにかく脅威的なドンデン返しの連発が見事なのだ。少なくとも6回はドンデン返しが続くのである。
 こんなの生まれて初めて観たよ!製作費をかけなくとも、これほど楽しませてくれたのだから、脚本と演出の大勝利といってよいだろう。
 また俳優陣も、チンピラヤクザの内野聖陽、超能力おじさんのモト冬樹、ゴスロリ少女の佐津川愛美、不気味な管理人の大堀こういちなど、演技派や個性派たちが並ぶ。ことに佐津川愛美と大堀こういちの狂気にはまいってしまった。
 アイデアとネタが勝負の作品なので、木下半太の原作は先に読まないほうがよいし、余りレビューを書き過ぎてネタバレになるのもまずい。アクの強さが臭うものの、とにかく今年観た中では、一番面白い映画だったかもしれない。

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2009年10月18日 (日)

ミスト

★★★☆

 映画化しても、はずれのないスティーブン・キング原作のパニックミステリー。なんとなく『クローバーフィールド』のような設定だが、心理的な深みやドンデン返しで、圧倒的にこちらの作品に軍配があがるはず。

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 前夜の嵐のあと、突然濃霧が村中を包み込む。そして数十人の買い物客がスーパーマーケットから出られなくなってしまうのだ。無理に出てゆくと、霧の中に潜む恐ろしい生物に食い殺されてしまうからである。
 とにかくストーリー展開といい、出現するクリチャーのグロさといい、まるで『遊星からの物体X』のようであったが、映画の中でもそのセリフが飛び出していたね。ただしこの作品は単なるパニック映画ではなく、極限状態にまで追い詰められた人間たちの群像劇とも言えるだろう。果たして極限状態の人間は、助け合うのか、他人を見捨てて自分だけ助かろうとするのか、それとも人間以外の何者かにすがるものなのか。
 少年の「僕を怪物に食べさせないでね」という最後の願いが、結局ラストの悲劇に繋がるのだが、そのあとに待っていた皮肉なエンディングは、実に後味が悪いのである。この後味の悪さと後半のテンポの悪さに、思わずワンランク減点してしまった。
 

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2009年10月17日 (土)

さまよう刃

★★★

 東野圭吾の原作なら外れはないだろう、ということでほとんど予備知識なしに劇場に足を運んだ。事前に判っていたのは、40過ぎて生まれた一人娘を殺害された父親(寺尾聰)が、犯人の少年達に復讐するというストーリーだけであった。

       Yaiba

 ところがこの映画テーマは、復讐劇や謎解きではなかった。結局は正義を守ることの意味と、繰り返される悪と少年法における矛盾と限界を訴えたかったのだろう。
 重くのしかかるテーマと、寺尾聰の持ち味がぴたりと重なって、なかなか歯ごたえのある作品に仕上がるはずだった…。ところが脚本と演出のまずさが、全てをぶち壊してしまったのである。
 エンターティンメントではなく、このような剛球一直線の社会派作品には、辻褄合わせは必須なはず。それにしては余りにも突っ込み処が多過ぎるのだ。なんといっても、警察の捜査方法が単純過ぎるし、主人公の動きにも無駄が多いのが気になってスクリーンに没頭出来ないのである。
 テーマと俳優が良かっただけに、実に残念であった。だが余り神経質にストーリーを追わない人ならば、そこそこに満足出来るかもしれない。

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2009年10月15日 (木)

ラン・ローラ・ラン

★★★★

 ドイツで大ヒットになったゲーム感覚のハイテンションなアクション・ラブ・ストーリーといったところか。いずれにせよ、従来観たこともない風変わりな映画である。
 またア二メを多用した荒唐無稽なオープニング映像は、なんとなくタランティーノ風味。思わず『キル・ビル』を想像してしまったが、内味は全く異なるアイデアがびっしり。

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 午前11時40分。ローラの家の電話が鳴る。相手は裏資金の運び屋をしている恋人のマ二からである。
 ローラのバイクが盗まれて、彼を迎えに行けなかったため、彼は10万マルクを地下鉄に置き忘れたという。そしてその金はホームレスに盗まれてしまった。12時までに金を用意しないとボスに殺されるというのだ。
 12時といっても、あと20分しかない!ローラは、恋人を助けるためにべルリンの街を走る走る走る、まずは父親の勤務する銀行に向かって走りまくる。
 ところがローラの行動は全て裏目に出て、最後は警官に撃ち殺されてしまうのだ。これでジ・エンドかと思ったら、すぐにリセットされて第2ラウンドが開始され、途中までは前回と同じ行動が続く。
 なぜリセットされるのかは分からない、もしかしてこれはゲームの世界のお話なのかもしれない。だから上手く行くまで何度でもリセットボタンを押すことが出来るのだろう。
 そういえば、ローラの紅い髪にしても軽快な服装にしても、ゲームのキャラそのものじゃないか。やっとこれが擬人化されたゲーム映画なのだと気がついた。
 なかなか面白い発想と視点である。ただ主人公ローラのオバさん顔が余り好みではない。もう少し可愛い女の子を使えなかったのだろうか。それだけが心残りである。

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2009年10月12日 (月)

引出しの中のラブレター

★★★☆

 常盤貴子演ずるラジオパーソナリティーは、絶縁状態の父と死別し、最近は恋人とも余り進展がない。そのうえ命ぜられるまま無難にこなしている仕事も、いまひとつ乗りが悪いのだ。
 それは過去をいつまでも引きずって生き、自分の思いを他人にしっかりと伝えようとしない彼女の性格が災いしているのだが、本人はそのことに気付かない。

     Hikidashi

 ある日実家から荷物が届き、その中から、父親が生前彼女宛てに書いて、投函しなかった手紙が見つかる。その手紙を読んだ彼女は号泣し、今までの自分の生き方を反省するのだ。
 そして誰もが心の奥に隠し持っている「大切な人に対する思いを」をラジオで届けようという企画を考えることになる。
 この作品が面白くなるのはここからの後半であり、前半は少し分かり難く、退屈なシーンが続くのが残念であった。もし前半をもっと上手にまとめていたら、評価のほうもワンランク上がっていただろう。
 主演は常盤貴子であるが、主役は頑固な老漁師を演じた仲代達也だと思った。常盤貴子は、あくまでもパーソナリティーの粋を出ていない。
 それでこの映画が、上映初日だというのに観客15人で、そのほとんどが年配の夫婦であった理由が分かる気がした。つまり若者たちには、仲代達也演ずるところの頑固な老人の真意が理解出来ないのだろう。
 また悪人が一人も登場せず、余りにも教料書的な展開に反発してしまうのかもしれない。だがそれを責める気はない。自分の若かりし日を思い返しても同様だったからである。
 少なくとも若いときは、言いたいことを言えるのだが、いろいろな経験を重ねるうちに、だんだん言いたいことが言えなくなるものだ。真面目で堅実でプライドが高い人ほどその傾向が強いものである。
 だが必ずしもそれが良い生き方という訳ではない。人間は、何年生きても未熟で弱い生きものである。だから少なくとも、本当に大切な人には、自分の心をきちっと伝えておかなくてはならないのだ。
 恥ずかしさやプライドを打ち捨てて、大切だと思う人に自分の本心を伝えるとき、そこに大きなパワーと感動が生まれるものである。まさにこの映画での仲代達也の決意こそが、大切な人々に与えた光のエネルギーだったのであろうか。

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2009年10月11日 (日)

ドラゴンボール EVOLUTION

★★

 ネットでの悪評は承知のうえでDVDをレンタルしたのだが、やはり評判通りのつまらない映画であった。ハリウッド映画ということで、少なくともSFXの完成度だけでも、と期待したのだが、これも絶望的な出来で、全搬的に迫力が感じられないのが悲しい。

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 またスケールも小さく、登場する敵もたった二人という寂しさ、これでは、お子様向けのTVヒーロードラマより酷いじゃないの。またストーリーのほうも詰め込み過ぎで、後半は断片化しただけのシーンを、単にダイジェスト版にしただけという趣きであった。
 少なくともパーティー会場の前で、悟空が怒り心頭、防御だけで不良達をKOしてしまうところまでは、まずまずなのだが、そのあとは全くストーリーになっていない。
 エンディングクレジットの途中で、続編を示唆したシーンが写されたが、とてもじゃないが続編を観る気になる人は、ほとんどいないだろうね。

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2009年10月10日 (土)

ドラゴン・キングダム

★★★★
 
 アメリカの少年が、現代のチャイナタウンで、孫悟空の如意棒と巡り合い、不良青年に追われるうちに、古代中国へとタイムスリップしてしまう。彼の役割は、ここで石化された孫悟空に、如意棒を渡すこと。
 孫悟空はもとより、不老不死の霊薬とか、天使とか仙人とか荒唐無稽な話と大げさなアクションシーンが続く。だがこの映画が全くチンケにならないのは、ジャッキー・チェンとジェット・リーの夢の競演があったからである。

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 ジャッキー・チェンはあの酔挙の使い手、一方のジェット・リーは、白い僧衣姿で『少林寺』を彷彿させられた。とにかくこの二人のアクションは素晴らしく、まさに神技といえよう。この二人がいなかったら、たぶん子供騙しのつまらない映画で終わっていたかもしれない。それほど二人のアクション技術はハイレべルで、本格的に完成されていることを再認識してしまった。
 ラストに少年が現代に戻ってからの展開は、読み筋通りというか、こうした映画のお約束事といったところである。タイムトラべルものに分類されてはいるが、古代中国に行ったのは、気絶したときの夢とも考えられる。いずれにせよ、タイムトラべルだけに期待すると失望するので、あくまでもジャッキー・チェンとジェット・リーのアクション映画なのだという認識で本作を観る必要がある。

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2009年10月 5日 (月)

色即ぜねれいしょん

★★★☆

 みうらじゅんの自伝風青春小説の映画化である。彼は1958年生れだから、彼の青春時代といえば、1970年代のお話であり、スクリーンの風景や服装はなんとなくダサイ。まさにおじさんの創った青春映画という雰囲気である。
 主人公の乾純は、ボブ・ディランにあこがれ、ギターで何十曲も自家製ロックを作っていたが、未だに他人の前で歌ったことがない。そんなある日、フリーセックスの島だと友人に誘われて、フェリーに乗って隠岐島のユースホステルに向かうのだった。

          Shikisoku

 この年代の男子の脳みそは、90%がセックスで固まっており、悪気はないのだが、なんでもかんでもそこに結びつけないと気が済まないのだ。まあ、自分の青春を振り返っても、なんとなく分かる気がするのが怖いよね。
 おかん役は堀ちえみで、昔アイドルだった頃は余り可愛いと思わなかったのだが、中年のおかん役をしてみるとメチャ可愛いので驚いてしまった。そしておとん役のリリー・フランキーは、ほとんど無口なのだが、肝心なときにポツリとカッコ良いセリフを吐く。良い役だね。

 高校の仲間たちは余りパッとしないが、ヒッピーの家庭教師や、ユースホステルのヒゲゴジラといった兄貴たちが魅力的である。そしてユースで知り合ったオリーブ役の臼田あさ美ちゃんが最高!

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 明るくて優しくて、そのうえ憂いがあってイロッぽいのだ。まさに男性のあこがれを集約したような女の子を演じていたな。あの京都でのデートシーンは、ドキドキはらはら、そして最後はとても切ないね。僕ならあんな分かれ方をしないけどなぁ~と思いつつも、おかんとおとんの顔が浮かんでくるので仕方ないか。
 そしてなんといっても圧巻は、ラストの文化祭でのロック演奏シーンだろうな。いゃ~あ、とにかく良くやったよ。主演の純くんを演じた新人の渡辺大知に拍手・拍手。
 ただ未だにどうしても意味不明なのが、恭子が白血病で死ぬオープニングシーンである。これがどう考えても本編とは結合しないのよね。

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2009年10月 4日 (日)

6時間後に君は死ぬ

★★★

 原作は高野和明のミステリー中編小説である。そして映画も小説も『3時間後に君は死ぬ』と連作構成になっている。小説を読んだときもタイトルの作品より『3時間後に君は死ぬ』のほうが面白かったが、映画のほうも同様であった。

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 『6時間後に君は死ぬ』のほうは、原作で結末が判っていたことに加え、登場人物が少なく映画としての迫力を発揮出来なかったのが、さらに致命傷となってしまった。いずれにせよ、このような小説を映画化するのはかなり無理があるよな。
 内容については、こちらを参照してね。
『6時間後に君は死ぬ』高野和明

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2009年10月 3日 (土)

リターン

★★★☆

 日本では余り知られていないコリアンシネマだ。それもそのはず、日本では劇場未公開作品だからである。
 麻酔をかけたのに、手術中に意識が残ったままの状態を「術中覚醒」と言うようである。この状態で手術をされたら堪ったものではないだろう。
 この映画のオープニングでは、「術中覚醒」状態で少年が手術を受け、内臓をメスや電動ノコで切り刻まれる。ギャーッ、痛い、痛い、痛い、痛い」と少年は泣き叫ぶが、全身麻酔で声も出ないし、体も動かせないのだ。ただじっと手術が終わるのを堪えるより方法がない。

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 このオープニングでは、これでもかと恐怖感を煽りたてる。そしてこの「術中覚醒」は、現実にも発生しているという。もし自分が手術するときに、「術中覚醒」になったらどうしょう。誰もがそう感じて鳥肌が立つに違いない。
 少年は無事退院するが、手術をした医師の娘で、自分と同じ小学校に通う少女をトイレ突き落として殺害する。その少女の糞まみれの顔が実に恐ろしいのだ。この事件が発覚し、少年は精神病棟に隔離される。
 このオープニングが終了すると、スクリーンはすぐに25年後の世界へ跳んでゆく。そして精神病棟を出た少年が、自分の手術をした医者とその家族たちに復讐するのである。
 ここまではホラー映画のような展開なのだが、観客は少年の成人した姿を知らないので、登場人物の誰がその少年なのか判らないのだ。
 主な登場人物は、ある病院の外科医、麻酔医、催眠医、アメリカ帰りの風来坊といったところである。この中の一人が、あの少年のような気がするのだが、犯人は二転三転してゆく。このあたりでは、ホラータッチから、だんだんミステリータッチに変換してゆく。
 なかなかしっかりした脚本と映像なのだが、なにか物足りない気分を感じた。その原因は、女性がほとんど登場しないこと、テーマが残酷で後味が余りよくないことだろうか。
 それにしても、「術中覚醒」という言葉さえ知らなかったので、医学的な知識を得たという成果は残る。だが逆に言えばそんな事実は知らなかったほうが良かったのかもしれない。いつか外科手術を受けざるを得ないときがきたら、一体冷静に手術を受ける気になれるのだろうか。

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2009年10月 2日 (金)

DーWARS ディー・ウォーズ

★★

 主な舞台はロサンゼルス、主演はアメリカ人、またSFXも『トランスフォーマ』や『スパイダーマン』を手掛けたスタッフと、全てアメリカづくしの韓国映画である。さすがハリウッド資本が入っているだけに、CGや戦闘シーンは抜群の出来であるが、ストーリー展開は「ほんまにもうー、メチャクチャでごじゃりまする」。

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 まるで小学生が創ったような脚本で、恐竜を操る中世の騎士に、アメリカ軍隊が翻弄されるという荒唐無稽で、全く現実感のない狂気の物語なのだ。それにしても、こんな映画に大金をつぎ込むハリウッド資本が恐ろしいね。
 そしてその見事なSFXシーンも、『GODZILLA』、『ハムナプトラ』、『キングコング』、『ロード・オブ・ザ・リング』などの焼直しに過ぎない。ただラストの、龍への変身と昇天シーンだけは、東洋的で美しいCGだったな。
 せっかく『グエムル~漢江の怪物~』で好評を得た韓国怪獣映画だったのだが、この一本で再び『ヤンガリー』の世界に逆戻りしてしまった。怪獣映画はSFXにさえお金をかければ良いという発想は、もう過去のものである。高度なSFXを見慣れてしまった観客にとっては、SFXが素晴らしいのは当り前。脚本や演出、登場人物などに魅力を感じなければ評価されない時代なのだ。
 そうした時の流れを掴めないこの監督の罪は大きい。これでは、単に怪獣オタク監督としか言いようがないし、韓国映画界にとってもイメージダウンの被害は甚大なはずである。

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2009年10月 1日 (木)

カムイ外伝の酷評分析と本当の評価

「ネタバレのオンパレードにつきご注意ください!」

 二年前から死ぬほど期待して、じっと恋焦がれて待ち続けた実写版『カムイ外伝。松竹が熱意を持って宣伝活動を行ったためか、いまのところ興行的にはまずまずのようであります。ところが、ネットでの評判がすこぶる良くない。ことに若い人達が投稿する掲示板などで、そのような傾向が目立ちます。

 私にとって「白土三平とカムイ」は青春そのものであり、たとえ原作ではなく映画といえども、このような感情的で一方的な酷評は許しがたいし、私自身の全人格を否定されているようでやるせなく悲しくてたまりません。この映画に対する私自身の評価も3.5と、それほど高いものではありませんが、前述したネットでの酷評者の評価は1で、そのコメントにもただならぬ気配が感じられます。

 さてここで私自身が熱くなっては、ミイラとりがミイラになってしまう。もう少し冷静になって、原作の解説を交えながら、具体的に酷評コメントの分析をしてゆきたいと思います。

カムイ外伝-スガルの島- (ビッグコミックススペシャル) Book カムイ外伝-スガルの島- (ビッグコミックススペシャル)

著者:白土 三平
販売元:小学館
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  まず原作を読んだことがないのに、クドカンの脚本が悪いと勝手に決め付けている人に
 ストーリーが判り難く話が急に飛ぶのは、白土三平の作風でありクドカンだけの責任ではないことをまず理解してください。半兵衛が領主の馬の足を斬ったのも、突然渡り衆が現れたのも、不動が仲間の渡り衆をまとめて殺害したのも、ラストで不動の両手が吹っ飛ぶのも全て原作通りなのです。
 もちろんクドカンの脚本ミスもあります。その理由としては、まず島民全員が毒殺されていたこと。これはちょっと不自然ですね。半兵衛の家の水かめに毒を入れたのに、なぜ島民全員が一斉に他人の家の水を飲んで死んだのか、と突っ込まれてしまいます。
 原作では半兵衛一家だけが全員殺害されています。これは、米の炊き出しに「かめの水」が使われることを知っている不動が、油断したスガルとカムイを殺害する目的で使った非道な術なのです。そのため、家族全員が巻添いを食って毒殺されるはめになってしまいましたね。

 この暗殺手法は同じく白土三平の『忍者武芸帳』で、最強忍者集団である影一族の大半が、蛍火という女忍者一人に一瞬のうちに殺害された手法と同じであります。このような無差別殺害を狙った方法は、毒ガスや細菌兵器同様、仕掛けるほうは無傷で済みますが、これ以上最悪最凶で非人道的な殺人手法はありません。ですから、カムイはこのような悪質な術を施した不動を心底憎み、不動の両手を切断したあとにも、生きたままサメに食わせるという、異常な復讐を成し遂げています。もちろんサメに食わせるシーンは残酷過ぎて、実写で上映することは出来なかったのですが、カムイの憎悪と悲しみの葛藤については、クドカンの脚本では描き切れなかったようですね。

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 それから、あくまでも外伝なのですから、アクションや主な登場人物の個性や感情などをもっと掘り下げて描いて欲しかった・・・という要求が多数ありました。これは私も同感で、いきなりカムイと敵との戦いを挿入するのではなく、まず敵の怖さや強さを誇示するシーンを創ってからカムイ戦に望むというパターンが白土三平の常套手段であります。そのほうがカムイ戦における期待度と興奮が高まるはず。
 またカムイとスガルの関係が希薄だったし、彼ら追われる者たちの心理状態も観る側に伝わってきません。裏を返せば、抜忍を追う忍者達の必然性と、その心理状況なども全く説明されていないところに問題があります。
 結局のところ、在日だった崔監督は、本当は差別を描いた本伝の『カムイ伝』のほうを創りたかったのだと思いました。しかし膨大でスケールの大きすぎる『カムイ伝』をいきなり創るのは、現実問題として実現不可能と判断し、とりあえず様子見というか試作品として『カムイ外伝』のほうを選択したのではないでしょうか。ところが『カムイ伝』を知らない人達は、『カムイ外伝』のほうが理解し辛いという矛盾のトラップにはまり込んでしまったのです。

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著者:白土 三平
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 もともと『カムイ外伝』は、マイナーな青年誌『ガロ』において、カムイ伝が大人気を博したため、メジャー出版社である小学館がこれに目を付け、カムイと彼に群がる忍者達との秘術合戦を中心とした一話完結の短編ものとして『カムイ外伝』を少年サンデーに連載したわけです。従って読者の対象は少年であり、忍法の面白さを爽快にスピード感溢れるストーリーで構成されていました。
 具体的には、第1話の「雀落し」から第20話の「憑移し」までの20話をいい、これが『カムイ外伝第一部』といわれる作品群となります。これでおしまいならまだ判り易いのですが、このあと発表場所を『ビックコミック』に移し、内容も人間性と心情を中心とした「中編社会派ドラマ」として成人向けに大改装したのです。これが本作の『スガルの島』を含む全18話となり、『カムイ外伝第二部』と呼ばれている作品群なのです。

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 というわけで、その構成と内容から絵柄までがらりと変わってしまったのであります。従って『カムイ外伝』と一口で簡単にくくる事もできないのです。また当時『カムイ外伝』を読んでいる人達のほとんどは、『カムイ伝』も読んでいる訳であり、いちいちカムイが抜忍になった理由など説明しなくても、承知の助だったのであります。そうしたバックボーンを一切承知していない現在の若い世代に、いきなり『カムイ外伝』を理解しろというのも無理があると思いました。

  ワイヤーアクション、CGなどSFXの出来映えの悪さを必要以上に非難している人に
 確かにハリウッドの最新SFXと比べると、スピード感に乏しく映像の粗さも見られます。ですが全世界を配給対象としている怪物ハリウッドと、日本だけの興行収入に頼る邦画の製作費の違いくらいは理解しましょうよ。SFXのワイヤーアクションはもともと香港発だし、CGに至っては日本人のクリエーターが中心になってハリウッドで製作しているのです。
 従って日本の技術が稚拙なのではなく、ハリウッドという巨大資本に全世界の技術を買収されただけなのです。いまやSFXなどは、金さえ出せばどうにでもなるのです。少なくとも高校生くらいならこの辺りの論理は分かりそうなものだと思うのですが。
 だからといって、この作品のSFXがこのままで良いと甘やかしている訳ではありません。もし次回作が製作されるのなら、もっとスピード感あふれるアクションとカムイの強さをもっと強調した戦い方にしてもらいたいと思います。またアクションシーンの長さについても、緊張感を失わない程度にもう少し長い時間配分を考えて欲しいですね。

  総括として
  私のような「白土教カムイ命」のような輩には、今回の実写映画『カムイ外伝』は、神からの授かりもののようで、諸手を挙げて雄叫びをあげるほど嬉しかったのです。またストーリーは承知の上なので、実写でのカムイやスガルの容姿、飯綱落としや変移抜刀霞斬りの映像を確認するのが目的でした。しかしながら『カムイ』も『白土三平』も知らない世代にとっては、まず「なぜ今頃カムイなの?」という素朴な疑問が湧き出ていることでしょう。これについては、前述した通り、『カムイ伝』に対する崔監督の強烈な思い入れがあったからだと考えたい。監督とほぼ同年代の者として、痛いほど監督の執着心が伝わってくるからであります。

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 それはそれとして、裕福で平和な日本に生まれ育った若者達に、『カムイ伝』の中核的ポリシーとなっている「身分制度と差別」について語ること自体に無理があったのです。また彼らには愛と平和と笑いが必須であり、それらの要素をことごとく排除した本作品が、そもそも受け入れられるはずもないのでしょう。ですがそれは承知の上で、どうしても映像化したかった崔監督は、若者に圧倒的な人気を博している松山ケンイチをカムイに仕立てる事で、そのリスクを回避しようと図ったわけです。
 それは一方では成功したものの、超美貌でひたすら強く逞しいカムイに比べて、かなりイメージが異なってしまう結果を招いてしまいました。さらには本来「男の映画」であるべき本作品に、マツケン目当ての若い女性が乱入したため、「判らない、怖い、残酷」という罵りの嵐と化してしまったのです。原作はもっと残酷でエロいシーンが沢山あります。映画化にあたって、それらをだいぶカットしたのですが、やはり平和な世代の女性には耐えられなかったのでしょう。

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 また最近の若者たちの気質として、じっと辛抱する事が出来ないため、好き嫌いが激しく結論を急ぎ過ぎる傾向にあります。それでちょっと気に入らないことや理解出来ないことがあると直ちに「×××××」で、逆に好きなことや気に入ったことには、どっぷりと漬かり切って「○○○○○」だという、極端な判断を直感的に下してしまう人が増えていることも見逃せない事実であります。
 もうひとつ、マンガの原作ものが実写化されると酷評されるというジンクス。しかしそれは団塊の世代が子供のころや青春時代に夢中になって読み漁った作品に多くみられます。具体的には、『キューティーハニー』、『デビルマン』、『鉄人28号』、『キャシャーン』、『どろろ』と、救いようのないほど容赦なく徹底的に叩きのめされて、累々たる屍をさらしています。これらの例を見ても、ただ人気俳優を配しただけではリスク回避には繋がらないことが分かるはずです。

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 さすがに崔監督といえども、そこまで最近の若者の心理状態を読み切れなかったようですね。その現代若者気質が、今回も例外なく発動されただけであり、この作品の完成度の高低とは無関係に酷評の嵐が流れる事になったのでしょう。それでも今のところ興行ランキング三位と健闘しています。思うにこの3位という評価こそ、この作品の本当の評価なのかもしれませんね。
 崔監督は『カムイ外伝』をあと2作創り、そのあと『カムイ伝』を創る事が夢のようであります。それが実現すれば私も非常に嬉しいのですが、現状の酷評の中ではかなりその実現は厳しいものになりそうです。あとは「トロント国際映画祭」と「ロンドン国際映画祭」でのニンジャ評に期待するばかりです。

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