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2009年9月30日 (水)

Love history

  天文台に勤める由希子は、いつの間にか33才になってしまった。明日は10才年下の加納との結婚式である。だがずっと気になっている荷物が、押入れの奥で眠っているのだった。
 恋多き由希子だが、一体何人の恋人が彼女のそばを通り過ぎて行ったのだろうか。気になる荷物とは、過去の恋の思い出が詰まった品々なのである。

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著者:西田 俊也
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 由希子は決意を固め、ダンボール箱に詰まった大切なものを車に運んだ。燃やすには惜しいが、いつまでも手元に置いておく訳にはゆかない。それで山の中に埋めておこうと、雪道の中を走り始めたのだ。
 このあと、由希子は事故を引き起こし、意識が朦朧とする中で、意識だけが過去へタイムスリップしてゆくのである。それも音楽を媒介として、過去に経験した全ての恋を辿ってゆくのだった。
 一方、現在の時間では、結婚式を前日に控えた花嫁が急に行方不明になり大騒ぎとなる。そして新郎の加納は、必死になって由希子の行方を探すのであった。
 過去に戻った由希子は、それぞれの恋人との別れのシーンを再経験するのだが、今回も同じ別れを繰り返すのか、それともそれを阻止して別の人生を歩むのだろうか。
 タイムスリップものというよりは、恋愛小説であり、過去へのタイムスリップも、どちらかと言えば、死に際に見る記憶のらせん現象とも考えられる。
 巧みな構成力とメルへンチックで叙情詩のようなストーリー展開。なかなか興味深い内容であり、中編なのであっという間に読破してしまった。ただ残念ながら、男性視点でのロマンを書き綴っているだけなので、共感とか感動という心の琴線に触れる熱いものを全く感じなかったのが残念である。

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