★★★☆
私は白土三平の熱狂的ファンであり、白土作品とは約50年に亘るお付き合いである。もちろん貸本時代の作品も含めて、白土作品の殆どが私の蔵書に連なっている。
白土作品の中でも最高峰で、未だに末完の作品といえば『カムイ伝』である。こちらは江戸時代の身分制度に主軸をおきながら、武士・百姓・商人・非人・忍者などに、それぞれ複数の主人公を配置した壮大な時代劇である。
だが『カムイ伝』は余りにもスケールが大き過ぎて、かつ超大長編のため、映画化は絶対不可能であると思い込んでいた。ところが2年前に、崔洋一監督による実写映画化の発表に度肝を抜かれたものである。
よく考えてみると、『カムイ伝』の映画化は無理でも、『カムイ外伝』のほうならなんとかなるかもしれない。さすが崔監督である。それにしてもなぜ今、カムイ外伝なのだろうか…。
たぶん在日である崔監督は、青少年時代にかなり差別を受けていただろう。その悲しみと怒りが、当時圧倒的な人気を誇っていた『カムイ伝』と共鳴し、生涯忘れ得ぬ愛読書として崇拝していたに違いない。そして黙々と映画化のチャンスを狙っていたのだろう。やっとその時期が来たのだ!
さて本伝である『カムイ伝』は、1964年に執筆開始され、第二部が2000年に終了したが、最終章の第三部がやっと10年振りに登場する予定なのだ。途中何年も筆を置いてはいるが、半世紀に亘って執筆が続けられているという、他に例をみない超怪物コミックなのである。
一方『カムイ外伝』は、『カムイ伝』の主人公の1人である忍者カムイの動向だけを追ったスピンオフ作品であり、いくつかの独立したストーリー構成となっている。今回の映画化は、その中でもスケールの大きな『スガルの島』が選ばれた。これなら実写映画にしても、何とかなるに違いない。
そして私はこの映画が上映される日を、延々2年間も待ち続けた。もっとも『カムイ伝第三部』を約10年間待っていたのに比べればたやすいものだが…。
そしてやっと9月19日に、待望の上映開始となる。初日に観るつもりが、2日後になってしまった。…それにしてもネットでの評価が酷過ぎるのが気になってしょうがなかった。一体どんなに酷い映画になってしまったのだろうかと、恐る恐るこの映画を観たのだが、ネットで書き込みされているようなおかしなシーンはほとんどなかった。
CGが最悪だという人が多い。確かに海の色が鮮やか過ぎるが、酷評するほどではないし、動物や鮫のCGはまずまずの出来だったと思う。また酷評タラタラのスローモーション多発や、ワイヤーアクションなども全く気にならなかった。
また首の展示や腕が斬られるシーンが残酷といえるかもしれないが、原作と比べればまだ可愛いくらいである。ましてや外国のホラー映画では、もっと激しいスプラッターをよく見かけるじゃないの。
だからといって、絶賛出来るほどの出来栄えでないことも確かである。原作の重要な部分をかなりカットしてしまったり、原作には登場していない不要な人物が現れたり、出演者の選択が不適切だったという問題があった。ピタリと役にはまって印象深かったのは、サヤカの大後寿々花と、半兵衛の小林薫くらいだろうか。
ケントの絵手紙小屋から
それにしても、ネットでの容赦なき酷評を読むにつれ、白土信者として悲しくて堪らない。またこの作品に限らず、昔流行ったマンガの実写版には、ことごとく酷評の屍が累々と連なるのだ。『デビルマン』、『鉄人28号』、『キャシャーン』、『どろろ』と、救いようのないほど容赦なく徹底的に痛ぶられるのは一体全体どうしてなのだろうか。その昔、『大忍術映画ワタリ』なんて映画もあったよ。
おそらく、お母さんが娘に『赤毛のアン』や『キュリー夫人』を読みなさいと言っても、娘たちは反抗して読まないのと同じで、マンガも時代という流れとともに、価値観や興味が大きく変革しているのだろう。もうひとつ、最近は「満点か零点」という極端な判定を下す人が増えていることも見逃せない事実である。現実には、少なくともメジャー作品なら、その両極に評価される作品などほとんどないはずだと思うのだが…。
さて映画の話はさておいて、マンガの『カムイ外伝』の新作が、10月25日に22年ぶりに発表されるというニュースが伝わってきた。これはきっと映画の副産物であろう。こういうこともあるので、映画のほうも是非続編を製作してもらいたいものである。
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