依存
登場人物と場所はほぼ限定的で、埋屈っぽい会話が延々と続く。まるで舞台劇のような展開である。
会話というよりは討論会といった趣きだが、テーマはおおむね二つの事象に絞られる。ひとつはタックの母親の件で、これは禁断の性愛が絡んでくる。そしていまひとつは、ルルちゃんのマンションでの鍵事件で、こちらはストーカーがテーマだ。
いずれにせよ、なにかに依存しなくては生きられない人間の弱さに起因している。この作品では、いくつかの物語を提示しながら、依存性について、その原因と結論について、全負で徹底的に論じてゆくのである。
この議論のメンバーは安規大に通う酒呑みグループ達であり、中心的な役割は、ボアン先輩、タカチ、タック、ウサコの4人が演じている。ほとんどのメンバーが本名ではなく、あだ名で呼び合っているところが若々しくて、いかにも学園ドラマを感じさせられる。
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依存 (幻冬舎文庫) 著者:西澤 保彦 |
実に600頁を悠に超える長編であり、議論づくめの展開となれば、とても最後まで読み抜けないだろう。しかし本作は、その議論自体がミステリーの謎解きも兼ねているので全く退屈せず、知らぬ間に依存性世界の怖さを認識することになるのだ。
こうした手法はなかなかユニークであり、本作は著者の作品の中でもかなり秀逸な出来ではないかと感じた。なお本作の中心人物達が活躍する匠干暁シリーズは、本作で五作目になっている。
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スコッチ・ゲーム (幻冬舎文庫) 著者:西澤 保彦 |
また完結シリーズではあるが、背景を知る意味でも、本作を読む前に前作『スコッチ・ゲーム』を先に読んでおいたほうがいいだろう。その『スコッチ・ゲーム』では、タカチ(高瀬千帆)自身に起きた事件が中核となっていたが、本作ではタック(匠干暁)自身の複雑な過去が解明されているのである。
かなり陰湿でへビーな記憶を、無理やり告白させられるような後味の悪さが残るものの、ボアン先輩の包容力には癒されるはずである。
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コメント
hitoさんこんにちは
そういえば、昔の学園ものかもしれませんね。と言っても、今はどうなのか良く分かりませんが・・・
hitoさん、ビール党みたいですね。
投稿: ケント | 2009年8月 3日 (月) 21時28分
こんにちはー♪
全体的に現代の学生っぽくは全然ないですよね!
ひと昔前の学生風な雰囲気がちょっと良かったりします。そしていつでもいつでも飲んでいる彼ら、シリーズ通して読んでくると段々愛しくなってきちゃって・・つい自分もその場に参加しているような気にさえ。
ビール片手じゃないとこのシリーズ読んでいられません(笑)
投稿: hito | 2009年8月 3日 (月) 14時17分