時空を超えて
60才になる医師のエリオットは、肺がんを患い余命数ヶ月の運命であった。カンボジアのジャングルで命がけで医療に専念したお札にと、原住民の村長から不思議な薬をもらう。この薬は全部で10錠。薬を服用して眠りにつくと、数十分間だけ30年前にタイムスリップすることが出来るのだ。
自分の責任で最愛の恋人だったイレナを亡くしてしまったエリオットは、死ぬ前に一目だけでも生前の彼女に逢いたいと、半信半疑で薬を飲み、30年前にタイムスリップする。そしてそこで最初に出逢ったのは、30才の若かりし日の自分自身であった。
時空を超えて (小学館文庫) 著者:ギヨーム ミュッソ |
30年前にイレナを事故から救えば、20年前に行きずりの女性との間に出来た愛娘のアンジーが生まれてこない。この矛盾した二つの命を救うことが可能なのか…。
タイムトラべルと恋愛を組み合わせたラブ・ファンタジー作品は、ハーレクインものを含めて山ほどある。大体がハッピーエンドのラブファンタジーか、切なさの残るリリカルファンタジーのどちらかである。
だが本作はそのどちらにも属しているうえ、ファンタジーにサスペンスとアドベンチャーをブレンドした魅力を併せ持っているのだ。またテンポが良くリズムカルなので、まさに映画を観ているのかと錯覚してしまう。
映画と言えば、本作はフランスで映画化されることが決定しているという。早くこの映画を観たいなぁ…。だがネットを探した限りでは、いまだ具体的な映画化の話は見つけられなかった。
ここまでは、良いことずくめ作品のように書いてしまったが、気になることもいくつかある。まず過去の自分自身と逢って、会話までしているのは、非常に不自然ではないか。60才のエリオットは、30才のときに未来の自分とは逢っていないからである。
このように、過去の自分と逢ってしまうと、タイムパラドックスが発生してしまうので、通常はこの状況を避けるか、過去の自分には気づかれない配慮が施されているものだ。まあ本作は、過去の自分との接触がないと成立しないので、ここは目をつぶるしかない。
もうひとつ腑に落ちないのは、過去のエリオットが、未来のエリオットの言うことを、苦悩しながらもことごとく守るということだ。イレナとは結婚しても、いいじゃないの。20年後に行きずりの女性と浮気すれば、娘のアンジーも無事生まれるはずである。
また浮気をせずにアンジーが生まれなかったとしても、それはパラレルワールドでの話なのだから、深刻に考えることもないと思うのだが…。
この二点だけが、どうしても納得出来ない。だが、著者の巧みなストーリー展開のため、イレナが登場するあたりから、グイグイとお話の中に惹きこまれてしまった。そして終盤は、通勤電車の中にもかかわらず、涙々の大感動で読了したわけである。
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コメント
ケントさん、失礼しました。
そのとおり邦題は「あなた、そこにいてくれますか」です。
私はシネマート新宿で先月観てきました。
原作同様ドラマチックな展開なので、ストーリーを知らないほうがより楽しめたかな、という感じです。
それでは、また。
投稿: しょーすけ | 2017年11月 9日 (木) 07時28分
しょーすけさんこんにちは、お久し振りですね。コメント頂いてとても嬉しいです。
「時空を超えて」の韓国映画化のタイトルは『あなたそこにいてくれますか』でしょうか?それなら是非観たいのですが、まだミニ映画館だけで上映中で、DVDは発売されていないみたいですね。
またしょーすけさんのブログが開始されるとのこと、楽しみにしています。
ケントより
投稿: ケント | 2017年11月 6日 (月) 11時25分
ケントさん、おひさしぶりです。
タイムトラベルもの好き仲間として、今もブログを拝見させていただいております。
自分のブログを中断してはや5年経ちますが、そろそろ再開すべく準備中です。
さて、この「時空を超えて」は私も好きな小説で映画化を待望していましたが、結局フランスで映画化はされず、韓国で昨年映画化および公開されています。
今月の14日から日本公開とのことですので、ぜひケントさんにもご紹介したいと思い、ここに書かせて頂きました。
題材的には韓国映画が得意とするジャンルですね。
投稿: しょーすけ | 2017年10月 8日 (日) 18時40分