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2009年7月15日 (水)

ラスト、コーション 

★★★★

 舞台は1940年前後、日本占領下の上海で、日本軍寄り特務機関のリーダーであるイー(トニー・レオン)と、抗日運動組織の女スパイ・ワン・チアチー(タン・ウェイ)の禁断の愛を描く名作である。
 そもそも普通の学生だったチアチーだが、演劇仲間のクァンに惹かれ、そして彼に感化されて次第に抗日運動に巻き込まれてゆく。クァンはイーを売国奴として憎み、暗殺の機会を狙っていた。そしてチアチーを説得し、イーの家へスパイとして送り込むのである。

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 まず最初に感じたのは、2006年にオランダで製作された、ヴォーホーヴェン監督の『ブラックブック』によく似ているということかな。ブラックブック』のヒロインも、レジスタンスのスパイとして、ナチス将校に近づいてゆくのである。
 ただサービス精神旺盛なヴォーホーヴェンは、第二次大戦やナチという重い背景を背負いながら、『ブラックブック』をサスペンス味のするヒューマンドラマに仕上げている。
 一方、本作のアン・リー監督は、あくまでも史実とテーマに忠実で、じっくり・こってり・辛辣に語り続けるのだ。そしてこの作品の中に、幾層にも亘って皮肉を塗り込めている。そこに欧米人とは異なる東洋人の繊細さと執念深さを、しみじみと感じざるを得ないだろう。
 まずスパイとしてイーの懐へ潜入したチアチーだが、知らぬ間にイーを愛してしまった皮肉。
 チアチーに好意以上の心を抱いていたクァンだが、処女のチアチーが自分以外の仲間とセックスの訓練をしたり、イーと濃厚なセックスを重ねていることに激しい葛藤を拭えない。そこで終盤になってチアチーにキスをするのだが、彼女に「どうして3年前にしてくれなかったの?」と責められる皮肉。
 処女のチアチーは、唯一性体験のあるというだけで、好きでもない演劇仲間と義務的にセックスの訓練をする。ところが結局、全くその嫌な訓練自体が、無意味なものに終ってしまうという皮肉。
 唯一心を許せると思った女が、実は暗殺者のスパイだと判ったが、既に憎しみはなく、お互いに愛が芽生えていることを理解しているイー。それでも処刑許可書にサインしなくてはならない皮肉。
 同胞に裏切り者と蔑まれ、常に暗殺者に怯えながらも日本軍に協カするイーだが、米国の参戦により既に日本軍は死に体だと確信する皮肉。
 などなど皮肉のオンパレードに、アン・リー監督の怨念のようなものを感じるのだが、そこに彼の人生感が存在しているのだろうか…。

 また映像が超美麗であること、中年女性達のおおらかな麻雀シーン、チアチーのチャィナドレスと濃い口紅の色、などが非常に印象的に写った。
 そして『レッド・クリフ』の周瑜の印象とは、全く別人のようなトニー・レオン。その演技力の奥深さには舌を巻いてしまった。一方、ヒロインのタン・ウェイは、オーデションで約1万人の中から選ばれたという。過激な性描写をものともせず、日本人似の童顔とのアンバランスな役柄が魅力的である。
 ただ気の毒なことに、本作で大胆な性演技をしたため、中国政府に問題視され、つい最近まで女優活動を自粛していたという。これって監督の責任であって、別段彼女の責任じゃないのにな…。
 それにしてもタン・ウェイは勇気があるよね。とにかく全世界に素顏と全裸を晒しているのだから、素性を隠してコソコソしているAV女優達より遥かに度胸が据わっていることになる。
 最近になりやっと女優活動が再開されたタン・ウェイ。ハリウッドでは彼女を第二のチャン・ツィイーとして期待しているという。めでたしめでたしだね…。それでは、彼女の今後の活躍を祈りながら、そろそろ筆を置くことにしようか。

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