劍岳 点の記
★★★★
原作は新田次郎の小説であるが、主人公の柴崎芳太郎は実在人物であり、小説同様、陸軍参謀本部陸地測量部の陸地測量官だったという。そして劍岳における功績等についても事実そのものであるから、これはある意味歴史ドキュメンタリーといっても過言ではないだろう。
それにしても凄い映画である。大自然の撮影にはCGと空撮は一切使用せず、スタッフ・キャストには命がけの苦行ロケだったという。事実スタッフ一名が、落石で重傷を負ってへリコプターで病院に運ばれている。
まさに真摯で厳格な作品であり、木村大作監督の並々ならぬ気迫と決意を感じることだろう。そして大自然の映像が驚くほど美麗であり、バックに流れるクラシック音楽と見事にリンクし、さらに画質の格調を高めているかのようだ。流石カメラマン出身の監督だと、誰もがきっと唸るはずである。
物語は面白いというものではなく、淡々と登山と測量が続いてゆく。だが謎の行者の登場、日本山岳会との競合、宇治長次郎と長男とのからみなど、ドラマ仕立てで感動出来るシーンもきちっと用意されている。いずれにせよ、雄大な自然の中で必死で生き抜く男達の人間ドラマであることは間違いないだろう。
ところがネットでの評価等を覗いてみると、現代の若者達には大味過ぎて物足りないようである。逆に年配の人々には大受けしているようで、平日だというのに、朝から映画館は大行列。満員御札で上映3時間以上前にチケットを購入しないと、良い席がとれない。
そして館内はどちらを向いても年配者ばかり、日本には年寄りしかいないのかと錯覚するほどのシルバーパワーである。そして何十年も映画館に来たことのないような「山好きのおじさん」らしき人も多かった。
アカデミー賞を受賞した『おくりびと』のときも同様の現象が起き、映画発展のためには非常に喜ばしいことなのだが、映画を観るエチケットも知らないおじさんが数人いたのは残念である。
まずシネコンでのチケットの買い方も知らず、注意しても並ばず平然と横入りしてくるおやじがいた。それから僕の隣りで観ていたおじさんは、ブツブツ独り言を言ったり、ビニールの袋でバリバリ音を立てたかと思うと、席から乗りだしてスクリーンを見つめたりと、かなりうざったい。そのうえ朝から酒を飲んでいたのか、オヤジ臭がプンプンと臭ってきて堪らないのだ。もう!何とかしてくれと叫びたくなってしまった。もちろんこうした観客は、ほんの一部なのでご誤解なきよう。
最後にキャストについて… 柴崎芳太郎役の浅野忠信は、まさにハマリ役で、寡黙で真面目な山男役をしっかりと演じていた。また準主役の宇治長次郎を個性派の香川照之が、これまた見事に味のある役柄に徹している。
逆に平成感覚プンプンの松田龍平、宮崎あおいには、背景である明治時代の香りが全くしない。どちらかというと、この二人は若者集めのキャスティングなのかもしれないね。あとせっかく芸達者の笹野高史と渋味に磨きのかかった國村隼の個性が生かせず、ただの悪軍人にしか描かれていないのが非常に残念であり、こんな役をさせてはもったいなさ過ぎるのではないか。
信念と勇気を失なわず、過酷な環境を乗り越えて真摯に生きることの素晴らしさ、日本人が失なってはならない精神を描いた作品であり、是非とも現代の若者たちにこそ観てもらいたい映画のはずである。ところが観客は年配者ばかり、という皮肉な結果となってしまった。だがいまだ上映開始してまもないので、今後若者達の観客が増えてくれることを期待してやまない。
最後にクリックしてランキングを確認してくれると嬉しいな↓↓↓
↓ブログ村とクル天↓もついでにクリックお願いします(^^♪
| 固定リンク | 0
| コメント (10)
| トラックバック (24)
最近のコメント