リセット
北村薫の同名小説とはかなり趣きが異なり、スバッと本音で切り込んでくるので、なかなか説得力があり、小説の中にぐいぐいと引き込まれてしまう。最近読んだ小説の中では抜群の面白さを感じた。
ストーリーのほうは、高校の同期会に遅れた三人のおばさん達が、不思議なレストランの中で、三人揃って30年前にタイムスリップするところから始まる。
リセット 著者:垣谷 美雨 |
三人の身分は、専業主婦の知子、キャリアウーマンの薫、苦界に身を落とした晴美である。それぞれが現状に大いなる不満を抱いており、人生をもう一度やり直せたらと願っていたのだ。
三人の中で一番の美貌を誇る知子の不満は、高校時代のイケメン同級生と結婚したため、専業主婦となってしまい、あこがれの女優になれなかったこと。それでも理解のある夫なら、ある程度の許容範囲におさまっただろう。だが自分本位で、意地の悪い舅・姑の世話まで押しつけて、知らん顔をしている夫が許せないのである。
長身で男性顔負けに仕事をこなし、一見充実したキャリアウーマンライフを送っているかのように見える薫も、実は男性中心の社会に不満ダラダラなのだ。
そして男に騙されて妊娠し、高校を中退してからというもの、荒さんだ生活を続け、身も心もズタズタになったまま、独身の貧困生活にあえいでいる晴実。彼女こそ不満がないはずがない。
そして同時に意識が高校時代に戻ってゆく三人。彼女たちは、記憶のかなたにあった30年前の世界と、現実の30年前とのギャップの大きさに驚きながらも、今度こそはと新しい人生を必死でやり直すのである。
結果は読んでのお楽しみだが、人生の面白さと難しさ、人間の優しさと我がままさが交叉していてなかなか考えさせられる。また女性たちの赤裸々な告白も実に歯切れよい。
努力や運によって人生インフラの中味は大きく変えることは可能だ。しかし自分自身の価値観なり生活態度が変わらない限り、本当の満足感は得られないということである。
この小説の著者である垣谷美雨は50歳前後で、主役の三人の年令とほぼ重っている。著者も実生活でいろいろ苦労したのであろう。この小説を書くには、そうした人生経験が必要であるが、一方読む側にもある程度の人生経験がなくては共感出来ないかもしれない。
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