ニセ札
★★★☆
木村祐一は器用な男だ。辺見えみりの元旦那で、アホなお笑いタレントだと思ったら大間違いである。なかなか演技はしぶといし、とうとう監督までやり遂げてしまった。監督としても、たけしや松ちゃんより、ずっと才能があるような気がする。
戦後まもない時期、京都郊外の静美な風景に、敗戦を受けとめながらも、純なしたたかさを失わない人々の心が良く似合う。
当時の最高紙幣は千円札で、肖像は聖徳太子だった。1万円札が発行されるのは、昭和33年まで待たなくてはならない。ちなみに干円札の肖像は、日本武尊、聖徳太子、伊藤博文、夏目漱石、野口英世の順で移り変わってゆく。
主演は久々の賠償美津子。小学校の教頭で、村人の誰からも尊敬される人柄を持ちながらも、ニセ札創りの資金集めに奔走するのだ。そして逮捕されるときの潔さ、裁判での凛とした態度。まさにこの人にしか出来ない役である。
もう一人、村の名士で主犯格の元軍人を演じた段田安則も、なかなか説得力のある渋い演技力を発揮していた。また監督の木村祐一は、共犯の印刷屋を演じているが、いつも通りのワキ役に徹し、たけしのようにしゃしゃり出ないところに好感を持てた。
それにしても、ある意味これは村ぐるみの犯罪なのだが、ニセ札犯人グループにしろ、村人たちにしろ、まるで悪びていない。ニセ札を創っても、誰にも迷惑はかからないし、戦争中は日本軍が中国のニセ札を創っていたのだと開き直る。
また彼等は、私利私欲だけではなく、敗戦のウサばらし、不要となった技術力の復活、貧困と疲弊にあえぐ村の活性化、子供たちへの愛など、様々な思いを胸に抱きながら、自己実現をめざして、この犯罪に参加しているのだ。
この作品は、山梨県で実際に起きたニセ札偽造事件が、モチーフになっているという。かつては日本にも、こんな大胆で粋な人々が存在したのだと、妙に感心してしまった。
最高傑作とまではいかないものの、まさに当時の拝金主義とエセ民主主義を痛烈に笑い飛ばす悲喜劇に仕上がっている。ところが新宿テアトルの観客数は、僕を含めてたったの4人なのだ!。一体どうしちゃったの。やはり創り方が地味だったからであろうか…。
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