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2009年5月の記事

2009年5月31日 (日)

まだ見ぬ冬の悲しみも

 少しきどり過ぎの感があるタイトル作品を始め、『奥歯のスイッチを入れろ』、『バイオシップ・ハンター』、『メデューサの呪文』、『シュレディンガーのチョコパフェ』、『闇からの衝動』と長いタイトルの中編小説が並ぶ。

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション) Book まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

著者:山本 弘
販売元:早川書房
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 『奥歯のスイッチを入れろ』は、バトルスーツに身を固めた超最新サイボークのアクションシーンに終始する。まるでマンガのワンシーンを丁寧に再現したかのような小説で、かなり面白いのだが、バトルシ一ンを詳細に描き過ぎていて、読者はいつまでもお預けを食らい続ける。まるで、板垣恵介のマンガのようでストレスが溜まってゆく。
 『バイオシップ・ハンター』は、宇宙ものでバイオシップという生物宇宙船にまつわる話。『メデューサの呪文』は、言葉を兵器に出来る異星人のお話。『闇からの衝動』は地下室にある穴の奥に潜む怪物のお話で、SFチックなホラーである。
 そしてタイトルの『まだ見ぬ冬の悲しみも』と『シュレディンガーのチョコパフェ』の二作こそが、目的の時間テーマ小説なのだ。どちちも時間や次元を操ることにより、この世が破壊されるというネガティブポリシーをテーマとしている。
 著者の新感覚パラドックス理論と、明快なストーリー展開には、絶大なる拍手を送りたいが、中編ではなく長編作品も読んでみたいものである。

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2009年5月30日 (土)

インスタント沼

★★★★

 カッパが見えるとはしゃぐ母親と、絶対に現実しか信じない頑固娘のハナメ。彼女は売れない雑誌の編集長だが、この雑誌の廃刊と同時に、あっさり出版社を辞めてしまうのだ。
 さあそれからが大変、ジリ貧状態が延々と続く毎日。ひょんな事から30年前の手紙が発掘されるのだが、それが見ず知らずの父親から、母親宛てに投函されたものと知り大ショック。
 手紙の差出人住所を頼りに、やっと見つけたのがオンボロ小屋の骨董品屋だった。そこに頭ぐしゃぐしゃ髭ぼうぼうの、得体の知れない「電球オッさん」が現われる。

         Numa

 主なキャストは、主人公ハナメに麻生久美子、その母親に松坂慶子、父電球に風間杜夫、人のいいパンクロッカー・ガスに加瀬亮と、個性的な俳優達が並ぶ。
 ことに最近の麻生久美子は、シリアスもコミカルも器用にこなす演技力を身に付けたよな。今回は能天気で無責任で感情のまま走り続ける女の役柄だが、なかなかキュートで憎めない女を面白おかしく演じ切っている。これは彼女の当たり役になりそうだ。
 さて、荒唐無稽でハチャメチャな展開のこのおかしな映画。これをバカバ力しいと観るか、面白いと感じるかは、観る人の自由であり感性の違いだが、僕には滅茶苦茶面白かったね。

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2009年5月26日 (火)

スラムドッグ$ミリオネア

★★★★

 さすがアカデミー作品賞受賞は、伊達ではなかった。低予算でシンプルなストーリーなのだが、とにかく文句なく面白いのだ。
 インドの国民的人気クイズ番組で全問解答し、巨額の賞金を手にしたスラム街出身の青年ジャマール。なぜ貧困の中でゴミのように育った彼に、難解なクイズの解答が判るのか。初めは誰も信じず、警察の取り調べまで受けるのである。

         Slumdog

 クイズの解答を出すたびに、ジャマールの過去がフラッシュバックしてゆく。そして物語の核心は、クイズに正解するか否かではなく、フラッシュバックするジャマールの人生そのものへと移行する。
 幼い頃に暴漢達に母親を殺害されたり、子供を悪事に利用するとんでもない組織に拉致されたりと、苦難の人生が続く。だが兄サリームの強烈な生命力のお陰で、何とか兄弟揃って生き抜いてゆくことになる。
 しかしこの兄が曲者で、生きるためには、悪魔にさえ心を売るのだ。優しいジャマールは、兄の強烈過ぎる感性についてゆけない。憎たらしい兄なのだが、肝腎なときには命を張って弟を助けてくれる。

 それから、ジャマールがクイズ番組に出演したのは、決してお金のためではない。離れ離れになってしまった幼な馴染みの少女ラティカを探すために、彼女がよく観ていた国民的人気番組に出演したのである。
 クイズの解答とジャマールの人生が、神がかり的にリンクしてゆく。そしてラストの二問は、まさに神が乗り移ったかのようだ。

 とにかくこの低予算映画には、いろいろな味わいがある。インドのスラム街の貧困を描いた社会派タッチ。クイズをクリア出来るか否かのエンターティンメント風味。切っても切れない血の繋がりを感じる兄弟愛。そして何よりもジャマールとラティカの運命的な恋愛。
 これら全てをひっくるめて、楽しく、面白く、切なく、激しく、そしてドキドキさせてくれるのだ。まさに映画の王道である。
 さらには、ラストのおまけが『座頭市』と『電車男』なのだ(笑)。ただ惜しむらくは、面白すぎてほとんど涙を流す余裕を与えてくれなかったことだろうか…。

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2009年5月23日 (土)

タイム・ジャンパー

★★★☆

 珍しいロシア映画であるが、ポスターが米国映画『ジャンパー』をパクリまくっているのはいかがなものか。『ジャンパー』は、テレポート能力を身につけた青年のお話。この作品は、現代から第二次大戦中にタイムスリップする話で、タイムスリップは小道具として利用しているだけの「戦争映画」である。
 従ってタイムパラドックスなどを期待すると、カタルシスが得られない。だがそのことは別にして、ストーリーはなかなか面白いし、戦闘シーンもリアルで迫力がある。

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販売元:カルバークリーク
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 ネオナチや戦争崇拝、拝金主義と自己中心的な若者たちが、もし本当の戦争を体験すれば、愛国心を取り戻し、きっと今迄の浅はかな行動を反省するに違いない。…と言いたかったのだろう。現代ロシアが抱える悩みの一つを垣間見た気がする。

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2009年5月22日 (金)

夕陽のガンマン

★★★★

 『グラン・トリノ』を観て、無性にクリント・イーストウッドの若かりし日の雄姿を拝みたくなり、本作品を何十年振りかで再観してみた。イタリア製作の西部劇であることから、マカロニウェスタンと呼ばれ、大ブームを巻き起こしたものである。
 黒沢明の『用心棒』に影響を受けた作品で、それまでの西部劇とは打って変わり、舞台はニューメキシコで砂ぼこりの舞う暗い荒野だ。そしてあのエンニオ・モリコーネの懐かしいエレキギターの演奏が荒野に鳴り響く。このオープ二ングだけで胸が一杯となり、僕の脳裏を青春時代のホロ苦い思い出が駈け巡る。

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販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2007/02/02
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 当時ハリウッドでは売れなくなったクリント・イーストウッドだが、この映画に出演して男を上げた。その渋い風貌にくわえタバコが良く似合う。そして共演のリー・ヴァン・クリーフがさらに渋い。彼の共演があってこそ大ヒットに繋がったのであろう。
 ストーリーのほうは、二人の凄腕賞金かせぎが、賞金首を探して町から町へと渡り歩き、危機一発のピンチをも乗り越え、協カして悪人を退治してゆくというシンプルな構成である。 
 起承転結を絵に描いたような構成と、アウトローだが悪人を次々と退治してゆくという展開は、まさに『用心棒』や『座頭市』を髣髴させられ、ことに当時の日本人の心にピタリとはまってしまったのだ。
 そして製作後40年以上たった現在でも、少しも陳腐化していないし、判りきった結末であっても、飽きずに観ることが出来たのである。やはり名作は素晴らしい。ダーティ・ハリーを崇拝する世代も、是非本作をもう一度じっくり観直して欲しいものである。

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2009年5月20日 (水)

リセット

 北村薫の同名小説とはかなり趣きが異なり、スバッと本音で切り込んでくるので、なかなか説得力があり、小説の中にぐいぐいと引き込まれてしまう。最近読んだ小説の中では抜群の面白さを感じた。
 ストーリーのほうは、高校の同期会に遅れた三人のおばさん達が、不思議なレストランの中で、三人揃って30年前にタイムスリップするところから始まる。

リセット Book リセット

著者:垣谷 美雨
販売元:双葉社
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 三人の身分は、専業主婦の知子、キャリアウーマンの薫、苦界に身を落とした晴美である。それぞれが現状に大いなる不満を抱いており、人生をもう一度やり直せたらと願っていたのだ。
 三人の中で一番の美貌を誇る知子の不満は、高校時代のイケメン同級生と結婚したため、専業主婦となってしまい、あこがれの女優になれなかったこと。それでも理解のある夫なら、ある程度の許容範囲におさまっただろう。だが自分本位で、意地の悪い舅・姑の世話まで押しつけて、知らん顔をしている夫が許せないのである。
 長身で男性顔負けに仕事をこなし、一見充実したキャリアウーマンライフを送っているかのように見える薫も、実は男性中心の社会に不満ダラダラなのだ。
 そして男に騙されて妊娠し、高校を中退してからというもの、荒さんだ生活を続け、身も心もズタズタになったまま、独身の貧困生活にあえいでいる晴実。彼女こそ不満がないはずがない。
 そして同時に意識が高校時代に戻ってゆく三人。彼女たちは、記憶のかなたにあった30年前の世界と、現実の30年前とのギャップの大きさに驚きながらも、今度こそはと新しい人生を必死でやり直すのである。

 結果は読んでのお楽しみだが、人生の面白さと難しさ、人間の優しさと我がままさが交叉していてなかなか考えさせられる。また女性たちの赤裸々な告白も実に歯切れよい。
 努力や運によって人生インフラの中味は大きく変えることは可能だ。しかし自分自身の価値観なり生活態度が変わらない限り、本当の満足感は得られないということである。

 この小説の著者である垣谷美雨は50歳前後で、主役の三人の年令とほぼ重っている。著者も実生活でいろいろ苦労したのであろう。この小説を書くには、そうした人生経験が必要であるが、一方読む側にもある程度の人生経験がなくては共感出来ないかもしれない。

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2009年5月17日 (日)

美女缶

★★★★

 なにやらいかがわしいタイトルと、桃太郎よろしく缶詰から裸の美女が生まれてくる怪しげなポスター。何か気になって、そうとうDVDをレンタルしてしまった。
 はじめに断っておくが、これはアダルトDVDではないし、美女はウジャウジャ登場するシーンはあるものの、裸やセックスシーン等は全くない。また演技をしている俳優さんは、僅か4人程度という超低予算の自主製作映画なのである。

 美女缶 美女缶
販売元:セブンアンドワイ
セブンアンドワイで詳細を確認する

 だがアイデア抜群で、ストーリーが結構面白いのだ。そしてラストのドンデン返しにもハッと息を飲んでしまった。ジャンル的にはSFファンタジーロマンといったところか…。
 低予算でも面白い映画を創れるといった見本のような作品であり、2003年に「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」オフシアター部門グランプリをはじめ、数々の映画賞を立て続けに受賞している。
 その後ドイツ、フランス、韓国などでも上演され、日本では2004年に渋谷シネ・ラ・セットで上映が行われた。またさらに翌2005年には、フジテレビ系列の『世にも奇妙な物語 春の特別編』として妻夫木聡主演でリメイク放映されている。

 この一本で一躍有名人となってしまった筧昌也監督だが、少年時代には漫画家をめざし、ビックコミックスピリッツの月例新人賞を受賞した経験があるそうだ。社会人になってからは、CGやアニメーション関連の仕事を経て、2008年に『死神の精度』で本格的に劇場用映画監督デビューを果たしている。今後のさらなる活躍が楽しみな監督の一人でもある。

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2009年5月15日 (金)

おっぱいバレー 

★★★★

 かなり気になるタイトルが話題を呼んでいる反面、逆に引いてしまう女性たちも多いようだ。だからかチケットを買うときに恥かしい人のため、「0PV」でOKという配慮がされているという。
 映画の中身は、綾瀬はるかのおっぱいが見られる訳でもなく、スポコンものでもなく、どちらかというと「熱血新人教師奮闘記」といった趣きである。ことに教師になる決意をした少女時代、恩師との回想シーンでは胸がジーンとくる。

        Opv

 また時代背景が1970年代で、バックに流れるピンクレデイーやキャンディーズの音楽が、ぴったりとはまっていて爽快だった。そしてあの時代の中学生の純情なこと。深夜にこっそりとTVをつけて、11PMを必死になって観た少年達は多いはず。そしてお目当てのエロシーンはなかなか始まらず、いっも前半は「釣り」が多くて、イライラしたのも笑える想い出だよな。

 ある意味、熟年向けの人情ドラマに仕上がっているようだ。そしてネットでの評価もなかなか高い。だが残念なことに、そのエキセントリックなタイトルが災いし、興行成績は余りパッとしないようである。
 ただ、たぶんDVDが発売されれば、レンタルはかなり好調に推移するのではないかと予測しているのだが…。そして綾瀬はるか、だんだん素敵な女優に成長してゆくよね。

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2009年5月13日 (水)

タイムトリッパー 幻遊伝

★★

 珍しい日本と台湾の合作映画。主演は田中麗奈で、その父親役に大杉漣がキャスティングされている。
 台湾で漢方薬局を営む父と二人暮しをしている小蝶は、日本へ帰ることばかり主張し、いつも父に反抗的でわがままな娘だ。
 ある夜に、友達と忍び込んだ屋敷で、突然体が二人に分裂し、一方の体が過去の世界へタイムスリップしてしまう。そこで瓜二つの女義賊と間違えられるのだった。

タイムトリッパー 幻遊伝 GEN・YU・DEN [DVD] DVD タイムトリッパー 幻遊伝 GEN・YU・DEN [DVD]

販売元:ポニーキャニオン
発売日:2007/03/07
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 そこで彼女は、脱獄した二人組の若者と、キョンシー二体を操る道士と知り合い冒険の旅を続けるのだ。現代に取り残されたもう一方の体は、眠ったまま動かず、父親が心配して見守っている。
 果たして彼女は現代の世界に戻って来ることが出来るのか。彼女が元に戻るには、過去と現代で同時に同じ呪文を唱えなくてはならないのだ。
 タイムスリップすること自体に意味があるのか疑問な作品。またアクションシーンも地味だし、ラストの捻り技もない。田中麗奈ファンにならお勧め出来るが、今一つ乗りの良くない映画である。

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2009年5月12日 (火)

陽だまりの彼女

 広告会社に勤務する奥田浩介は、クライアントの担当者との顔合わせで、偶然にも中学の幼馴染である真緒と10年振りで再会する。
 中学時代は少し頭の足りない少女だった真緒は、バリバリ仕事をこなす立派社会人に成長していた。大変身した真緒を目の当たりにした浩介は、次第に惹かれてゆき、ついには彼女の虜になってゆく。

陽だまりの彼女 Book 陽だまりの彼女

著者:越谷 オサム
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 最初から最後まで、これでもかと言わんばかりの甘いムードと、イチャイチャの連続に、読んでいるほうが恥かしくなってしまう。だが主人公同様読者のほうも、少しずつ彼女の謎めいた行動が気になってくる。
 裸で町を歩いていたという少女時代の噂。里親に引取られる前の中学以前の記憶が全くないこと。あれほど低能だったのに、東大をめざすほど優秀になったこと。などなどまた浩介と結婚した後も、次々と不可解な行動をする真諸…。
 一体彼女は何者なのだろうか。異星人なのか、タイムトラべラーなのか、それとも何か特別な事情があるのか。中盤くらいまでは彼女の正体と、この小説の括り方に大いに興味を持った。

 だが結局は『鶴の恩返し』だったのだ。表紙をみればすぐ判るし、タイトルもそのことを示唆している。これでは余りにも素直過ぎるじゃないの、もう少し捻りの効いたエンディングを期待していたのにね。
 でも恋する嬉しさ、楽しさ、切なさ、哀しさがひしひしと伝わってくる、青春時代が甦る心温まるお話であることは確かである。このお話を読んだ読者は、きっと妻や恋人が愛しくなるはずである。

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2009年5月11日 (月)

アインシュタインガール

★★

 大層なタイトルの割にはお気楽でマンガチックな作品である。主な出演者は、岩佐真悠子、小松愛、福士誠治といったところ。ことに主演の岩佐真悠子の我がまま振りが、演技というより地のままのようで、まさにはまり役であった。

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 ユー力リが丘に住む女子高生の今西薫が、通学途上のモノレールの中で、1年前の世界へタイムスリップするお話である。またそれは母親が交通事故死する二日前の世界でもあった。
 二日後に母の死を阻止するため、薫は事故現場に向かうのだが、そこにはタイムスリップする前に何度か見かけた「髪の長い少女」が現われるのだった。この少女の顔はハッキリせず、なんとなく不気味なのだ。
 SF、ホラー、学園ドラマをごちゃまぜにし、テーマの定まらない、訳の判らない作品に仕上げたスタッフたちの罪は大きいよな。またラストに「つづく」と表示されていたのも、全く意味不明である。

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2009年5月10日 (日)

ある公爵夫人の生涯

★★★★

 故ダイアナ妃の祖先である「デヴォンシャー公爵夫人ジョージアナ」の半生を描いた作品である。主演のジョージアナには、キーラ・ナイトレイ、その母親役にシャーロット・ランプリング、そして淡白で冷たい感じのデヴォンシャー公爵には、レイフ・ファインズと、これ以上の適役はない顔ぶれが揃う。
 自由奔放に育ったジョージアナは、若干17歳で最も裕福な公爵と言われるデヴォンシャー公爵の元に嫁ぎ有頂天になる。だが公爵が若妻に望むものは、恋愛感情ではなく、後継者となる男子の誕生だけであった。

   Koushakufujin

 ところがジョージアナが身ごもるのは女子ばかり…。イライラするデヴォンシャーは、娘や妻に見向きもしなくなり、とうとうジョージアナの友人であるエリザベスと関係を持ってしまうのである。そしてエリザべスはいつの間にか公爵愛人となり、三人は同じ屋根の下で暮すことになるのだ。
 この二重の裏切りに怒りまくったジョージアナは、青年政治家グレイと愛し合ってしまう。しかしその関係は社交界での大スキャンダルとなり、やがて母親やデヴォンシャーの知るところとなってしまうのである。
 それにしてもキーラ・ナイトレイは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』、『プライドと偏見』、『つぐない』、『シルク』など、時代ものがよく似合うよな。本作でもその豪華絢爛な衣装を実に見事に着こなし、当然のようにアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞している。
 また多少脚色があるにしても、この男性中心の時代に、社交界の華と呼ばれ、賭け事に溺れて借金地獄にはまり、挙句の果てに堂々と不倫をする女性が実在していたことに驚愕するばかりだ。またそれがあの故ダイアナ妃の祖先だとは、皮肉な運命にもて遊ばれているとか言いようがない。
 この映画でのデヴォンシャー公爵は、冷血で身勝手な男として描かれているが、それは余りにもジョージアナ寄りの描き方ではないか。当時の貴族なら誰でも結婚は、「お世継ぎ創りのため」と考えていただろうし、それは洋の東西を問わず彼等の宿命とも言える。また程度の差はあるにしても、現在の皇室でも基本は同じであろう。彼らもある意味気の毒な存在なのである。
 この映画の見所は、古城でのロケーションや豪華絢爛な衣装だけではなく、閉鎖的な貴族社会のドロドロとした人間ドラマを垣間見ることにもあるのだろう。
 

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2009年5月 6日 (水)

EVENT16

★★

 なんだか米国TVドラマシリーズのようなタイトルだが、れっきとしたニュージランドの完結作品である。評判の悪い作品であることは承知していたが、テーマが僕の好きなタイムトラベルなので、見逃す訳にはゆかないのだ。
 オープニングで、三菱パジェロが掘りだされるシーンが飛び込んでくる。この理由は中盤に明かされるが、とにかく驚いたよね。つまり三菱自動車がスポンサーなのであろう。

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 低予算映画ではあるが、セピア色の過去の世界はなかなか趣きがあった。ただタイムパラドックスには、余り期待しないほうが良いだろう。それから、腕輪をすることにより顔を変えられるという設定に至っては、もうハチャメチャである。分身の術よろしく三人の同一人物が、同画面に一斉に現われたり、未来の自分だったり、全く訳がわからない。
 観ていて退屈はしないが、ストーリー展開も演出も、まるで思い付きのようで、知らぬ間に終ってしまったという感じである。

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2009年5月 5日 (火)

TIME CRIMES

★★★★

 登場人物がたった4人という、超低予算のスペイン映画で、日本の劇場では未公開なのだが、なかなかアイデアが面白く見応えがあった。
 邦画で『サマータイムマシンブルース』という珍品があったが、似たような味わいがある。流石にプロの目は鋭く、すでにD・クローネンバーグ監督によるハリウッド版のリメイクも決定しているという。

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 スト一リーはいたってシンプル…郊外に引っ越してきた小太りオヤジが、二階の窓から向かいの森を双眼鏡で覗くと、裸の美少女が写るのである。気になって仕方がないオヤジは、妻が外出するのを待って森の中に入ってゆく。
 そして森の中でスッポンポンの少女を見つけて近づくと、いきなりピンクの包帯を卷いた怪しい男に襲われるのだ。驚いたオヤジは必死で森の奥にある研究所に逃げ込む。
 そして研究員に言われるまま、白いマシンの中に身を隠すのである。このマシンこそ研究中のタイムマシンで、オヤジは1時間前の過去へ戻されてしまうのだ。
 このあと過去の自分を発見し、何度か同じことを繰り返すうち、今まで謎だった出来事が、序々に解明されてゆくのである。ストーリー自体はシンプルなのだが、自分が何人も登場したり、メビウスの輪のように捻れた構成なので、よく観ていないと意味が判らなくなるので注意しよう。
 それにしても、この精密なパズルのような作品をよく考えたものである。また主人公のオヤジのとぼけた行動が、なかなかいい味を出していたと思う。

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2009年5月 4日 (月)

ホワイトクリスマス 恋しくて、逢いたくて

★★★☆

 原題は『カラー』だが、日本では花の名前を連想しないため、邦題は『ホワイトクリスマス』に変更したのだろう。『カラー』とは「歓喜、熱血、純潔」などの花言葉を持つアフリカ原産の清楚な花の名前だという。本作では主人公のキム・ソヌクのデスクに、謎の女性から毎朝届けられる花の名前でもある。

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 オープニング…、イヴの夜にホテルのラウンジで女性が人質にされ、それをキム・ソヌクが助けようと必死で駈けつけるシーンで始まる。女性はソヌクと待ち合わせをしていた花屋のジヒであった。
 ジヒがどうなったかも明かさないまま、その後すぐに3年後のイヴの前日に話が飛んでしまう。そしてすぐに、3年前にソヌクがバスの中で、涙を流すジヒに一目ぼれしたシーンへと移るのだ。
 その後約30分間位、過去の回想シーンが続き、またオープニングの人質シーンへと戻る。そこで初めてジヒが殺されたことが判り、ソヌクは悲しみにくれる。
 そしてまたまた3年後に戻り、思い出のラウンジからエレべーターに乗るソヌク…。そこで「あの日をやり直し、彼女ともう一度逢いたい」と強く念じる。するとエレべーターが、一瞬6階から7階へ戻り、また6階に戻って静止するのだ。暫くして扉が開くのだが、そこは3年前の世界だった。
 この辺りまでは、過去と現在を頻繁に往復するため、一度観ただけでは何が何だかさっぱり判らない。従って映画館で観るより、DVDで観たほうがよいだろう。

 3年前の世界に戻ったソヌクは、ジヒを救うためにあらゆる手を尽くすのだが、なかなか思うように進展しない…。このあとジヒの同僚スジンの回想により、いままで不明だった物語の全貌が解明される。
 SFとラブストーリーとミステリーをミックスしたような作品で、なかなか凝った筋立てになっている。映像は美しいし、ロマンチックで切ない音楽にも、うっとりさせられてしまう。
 ただタイムトラべルに関しての検証が甘過ぎる。3年前に戻ったのは、ソヌクの意志だけなのか、それとも身体ごと戻ったのかはっきりしない。身体ごと戻ったのなら、3年前の自分と遭遇しないのはおかしいし、意志だけなら香港への出張命令がないのも変である。
 またストーリー展開からも、タイムトラべルものに仕立てる必要もなかったと思う。とにかくあれだけ回想シーンが多いのだから、そもそもタイムトラべルという技法は不要ではないだろうか。
 キム・ソヌク役のソン・スンホンは、本作が映画デビュー作の新人で、その甘いマスクは女性を虜にしそうである。だがさすがに演技のほうにも、あどけなさが漂うのは仕方ないか。

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2009年5月 3日 (日)

ニセ札

★★★☆

 木村祐一は器用な男だ。辺見えみりの元旦那で、アホなお笑いタレントだと思ったら大間違いである。なかなか演技はしぶといし、とうとう監督までやり遂げてしまった。監督としても、たけしや松ちゃんより、ずっと才能があるような気がする。
 戦後まもない時期、京都郊外の静美な風景に、敗戦を受けとめながらも、純なしたたかさを失わない人々の心が良く似合う。
 当時の最高紙幣は千円札で、肖像は聖徳太子だった。1万円札が発行されるのは、昭和33年まで待たなくてはならない。ちなみに干円札の肖像は、日本武尊、聖徳太子、伊藤博文、夏目漱石、野口英世の順で移り変わってゆく。

        Nisesatsu

 主演は久々の賠償美津子。小学校の教頭で、村人の誰からも尊敬される人柄を持ちながらも、ニセ札創りの資金集めに奔走するのだ。そして逮捕されるときの潔さ、裁判での凛とした態度。まさにこの人にしか出来ない役である。
 もう一人、村の名士で主犯格の元軍人を演じた段田安則も、なかなか説得力のある渋い演技力を発揮していた。また監督の木村祐一は、共犯の印刷屋を演じているが、いつも通りのワキ役に徹し、たけしのようにしゃしゃり出ないところに好感を持てた。
 それにしても、ある意味これは村ぐるみの犯罪なのだが、ニセ札犯人グループにしろ、村人たちにしろ、まるで悪びていない。ニセ札を創っても、誰にも迷惑はかからないし、戦争中は日本軍が中国のニセ札を創っていたのだと開き直る。
 また彼等は、私利私欲だけではなく、敗戦のウサばらし、不要となった技術力の復活、貧困と疲弊にあえぐ村の活性化、子供たちへの愛など、様々な思いを胸に抱きながら、自己実現をめざして、この犯罪に参加しているのだ。
 この作品は、山梨県で実際に起きたニセ札偽造事件が、モチーフになっているという。かつては日本にも、こんな大胆で粋な人々が存在したのだと、妙に感心してしまった。
 最高傑作とまではいかないものの、まさに当時の拝金主義とエセ民主主義を痛烈に笑い飛ばす悲喜劇に仕上がっている。ところが新宿テアトルの観客数は、僕を含めてたったの4人なのだ!。一体どうしちゃったの。やはり創り方が地味だったからであろうか…。

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2009年5月 2日 (土)

時空を超えて

 イラストを多用した講談社X文庫。当然ながら、ティーンズ向けの「学園SFラブストーリー」といったところである。読み始めたときは、多少バカにしていたのだが、これが結構面白いのだ。読み易いので、通勤の行き帰りで、あっという間に読破してしまった。

  Photo

 彩木学園高校に入学した主人公の千尋は、部長の河世先輩に憧れて、全く興味のない「オカルト研」に入部してしまう。そして自分から河世に告ってつき合い始めるのだが、ひょんなことから未来にタイムスリップし、河世が事故で死んでしまう事を知る。これを阻止するため、千尋は今度は過去へ跳ぶ。
 タイムパラドックスが生じるため、過去は絶対変えられないとする理論が主流であるが、パラレルワールドの存在を認めることにより、過去は変えられるとする理論もある。
 では本作はどちらに属するのか。だがそれを明かしてしまうとネタバレになるので、そこは読んでのお楽しみということにしたい。楽しくちょぴり切ないお話が好きな女性に、是非お勧めしたい作品である。

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2009年5月 1日 (金)

グラン・トリノ 

★★★★☆

 『グラン・トリノ』が、フォードの最高ブランド車の名前だとは知らなかった。確かに角々してバカデカイアメ車とは違って、流れるような美しいボディーラインに魅せられる。出来れば、もう少しスクリーン上を走り回って欲しかったね。
 さて映画のほうは、前評判通りの素晴しい出来栄えだった。それにしても、80才近いクリント・イーストウッドは、どうやって次から次へと名作を創るのだろうか。不思議というか、もはや神技に近いよね。

        Grantorino

 ストーリーは至ってシンプル。戦争体験を持ち、妻に先立たれた気難しい老人と、隣人のアジア系移民一家との、心暖まる触れ合いを描く。
 自分の息子や孫とは打ち解け合えないウォルトだが、愛車グラン・トリノの盗難未遂をきっかけに、隣人の少年タオと知り合い、次第に友情のような感情が芽生え始める。

 だがタオの従兄弟の悪ガキ連中が、しつこくタオにつきまとう。そして彼等の悪事は、エスカレートしてゆき、とうとうその魔の手はタオの家族にまで及んでしまうのだ。
 復讐を決意するウォルトとタオ。ラストはまさに、マカロニウエスタンを髣髴させられ、思わずニヤリ…。だが実は、ウォルトの狙いは別にあったのだ。
 人生の生き方をウォルトから教わるタオ、そして人生の締めくくり方をタオから教わったウォルト。エンディングは実に見事だ。そして感動に場内は沈黙とすすり泣きが交錯する。
 イーストウッド以外は、ほとんど無名の俳優ばかり、製作費もそれほどかけていない。しかし完成度の高さでは、他の追随を許さない。そして、観ていて飽きないストーリーと感動の贈り物。これぞ映画の中の映画である。

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