ラ・ボエーム
★★★
『蝶々夫人』、『トスカ』と並ぶ、プッチーニの誇る三大オペラのひとつである。過去に2回映画化されているが、本格的オペラとして完全映画化されたのは、本作が初めてかもしれない。
オペラファンには待望の映画化であるが、どちらかと言えばオペラ初心者や、オペラを低料金で観たいという人のために作られた映画であろう。また我々日本人には、字幕が出るので判りやすいよね。
主演のミミとロドルフォを演じたのは、現代オペラ界最強のゴールデンコンビである。ミミにはマリアカラスの再来と呼ばれているソプラノ歌手のアンナ・ネトレプコが、ロドルフォにはテノールの第1人者であるローランド・ビリャソンが扮している。
ストーリーは、オペラに忠実で全四幕で構成されている。概略を述べると次の通り。
第1幕 雪の降る寒いクリスマスイヴの夜、火の気もない古いアパートの屋根裏部屋に集まる、貧乏な4人のボへミアン・アーティスト達。溜まっている家貸を集金にきた大家を、寄ってたかって上手に追い出し、外食に行くことになるが、原稿が残っているロドルフォだけが遅れて出ることになった。
そこに下階に住むお針子のミミが、ローソクの火を借りに来るのだが、体調が悪く倒れ込んでしまう。これが初めての出会いであり、たちまち二人は運命の恋に陥ってしまうのだった。
第2幕 知り合ったばかりのミミを連れて、友人達とレストランで食事をとる。そこに友人マルチェッロの元恋人ムゼッタが、スポンサーの老紳士を同伴して登場。浮気者のムゼッタに愛想をつかせて別れていたマルチェッロだが、ムゼッタの魅力に翻弄され再び元の鞘に納まってしまう。
第3幕 それから二ヶ月後、雪の降る寒い日、マルチェッロがムゼッタと共に身を寄せている居酒屋にミミが訪ねてくる。最近ロドルフォと上手くゆかず、ロドルフォは捨てゼリフを吐いて部屋を出てしまったと言う。さんざんグチをこぼしていると、ここに泊っていたロドルフォが目を覚して外に出てくるのだ。
ミミは急いで物陰に隠れて、ロドルフォとマルチェッロとの会話に耳を澄ます。また同じ頃にムゼッタが、酒場で男たちとジャレ合っていた。
いろいろ合って、結局ロドルフォとミミだけではなく、マルチェッロとムゼッタも別れてしまうのだった。愛しているから別れるという屁理屈のようなロドルフォの願望を受け入れ、厳寒の中に放り出されるミミの姿が、やけに悲しく切なく感じるシーンでもある。
第4幕 また数ヶ月後、再び冬の日にロドルフォのアパートに集まるボへミアンたち。だがロドルフォもマルチェッロも、別れたミミとムゼッタのことが忘れられないのだ。風の噂でミミが裕福な子爵の世話になっていることを知り、幸福になって良かったと思う反面、なおさら気になる男の身勝手さ。
そこに突然瀕死のミミを連れたムゼッタが、アパートに駈けつけるのだ。ミミは死ぬ前にロドルフォに一目だけでも逢いたかったと言うではないか…。この愛くるしく悲しいミミと、本当は優しい心を持つムゼッタたちが織り成すラストシーンは、涙なくして観られなかった。
実にシンプルなストーリーだが、オペラなのだからこれでいいのだと思う。と言っても、やはり映画にするにはかなり無理があったかもしれないと思ったり…。なかなかレビューが難しいね。
背景がほとんど変わらない狭い場所ばかりなので、映画ならではのダイナミズムとバリエーションを発揮出来ないこと。また歌声は抜群としても、ロドルフォ役のローランド・ビリャソンが、大スクリーンのアップに耐えられるようなイケメンでないのも減点。
僕自身はオペラを観たことがないので、オペラとしての評価が出来ない。映画としての評価を下すとなると、やはり少し辛口になってしまったかもしれない。だがまあ、オペラをイタリアの歌舞伎だと思えば、たまにはこうした作品を観るのも新鮮でよいだろう。
↓↓↓毎回クリックしてもらえると嬉しいです。
↓ブログ村とクル天↓もついでにクリックお願いします(^^♪
| 固定リンク | 0
コメント
MANAMIさんこんにちは
本来あるオーケストラの演奏がなかったのは、時間の関係でしょうか、それは残念でしたね。もしそれがあれば、もう少しバリエーションが広がったと思いますね。
投稿: ケント | 2009年3月19日 (木) 22時33分
コメント&TBありがとうございます。
原作に忠実ではありますが、ダイジェスト版で、歌と歌との間に本来あるオーケストラだけで演奏される部分がほとんど入っていないため、かなり、凝縮された濃い感じはしました。
でも、さすがに、今、最もチケットが取りにくいといわれている二人の共演だけあって歌は見事だったと思います。
投稿: MANAMI | 2009年3月18日 (水) 22時26分