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2009年2月25日 (水)

虹の天象儀

 古いプラネタリウムを使って、過去にタイムトラべルするお話。確かにプラネタリウムは、その神秘的でメカニカルな形状が、まるでタイムマシンのようだし、天空を写し出すのだから、時空も操作出来るような気分になってしまいそうだ。
 世界初の光学的プラネタリウムの開発を行ったのが、ドイツのカール・ツァイス社であることや、その性能とマニュアルの素晴しさと、整備・調節の判り易さを述べている。また日本におけるプラネタリウムの歴史についてもかなり詳細な記述がある。

虹の天象儀  /瀬名秀明/著 [本] 虹の天象儀 /瀬名秀明/著 [本]
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 我国の第1号機は、昭和12年に大阪市立電気科学館(大阪市立科学館)に設置されたカール・ツァイス社製の23号機であり、当時はアジアで唯一のプラネタリウムとして、大阪の象徴的存在でもあった。
 東京での最初のプラネタリウムは、翌昭和13年に、有楽町の東日天文館(毎日新聞社)に設置されたカール・ツァイス26号機だという。だがこの26号機は、昭和20年に米軍の空襲により焼失し、東京でプラネタリウムを楽しむには、戦後の昭和32年に渋谷に五島プラネタリウムがオープンするのを待たねばならなかったのだ。
 当時この五島プラネタリウムは大人気で、小学生の校外授業などにも使用されていた。だが残念なことに、東急文化会館取り壊しとともに、平成13年にその姿を消してしまったのである。

 そのほかにも、プラネタリウムに関するメカニカルな記述が詳細に述ベられている。薬学博士号を持つ著者ではあるが、それにしても、プラネタリウムに対する熱烈な愛情がなければ、これほどの知識は得られないだろう。
 物語のほうは、渋谷のプラネタリウム閉館式の後に不思議な少年が現われ、主人公のプラネタリウム技師を、過去の世界へ誘うというメルヘンチックな中編小説である。
 織田作之助をはじめ、懐かしい著名人の実名がバンバン登場する。これはもう、SFとかタイム卜ラベルと言うより、五島プラネタリウムへのオマージュであり、昭和ノスタルジーへの回想録と言ってもいい作品である。ある意味で「ムード小説」とでも呼ぼうか。なんとなくこれが、長野まゆみの『天然理科少年』とか、マンガ家・谷口ジローの『遥かな町へ』などと雰囲気が繋がるんだな…。

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★『虹の天象儀』(※タイムスリップ、五島プラネタリウム、戦争、想い)著者名:瀬名秀明 出版社:祥伝社 祥伝社400円文庫 ★★★ 出版年:2001.10 ISBN :4396328842 “時を越える方法を知らなかっただけだとしたら?  気が付かなかっただけだとしたら?”  44年の使命..... [続きを読む]

受信: 2009年2月26日 (木) 00時04分

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「瀬名秀明(せなひであき)」著作品についての感想文をトラックバックで募集しています。 *主な作品:パラサイト・イヴ、BRAIN VALLEY、おとぎの国の科学、八月の博物館、デカルトの密室、第九の日 The Tragedy of Joy、虹の天象儀、他 書評・評価・批評・レビュー等、感想..... [続きを読む]

受信: 2009年2月26日 (木) 07時19分

» 虹の天象儀 瀬名秀明 (本) [ストック切れ間近。 映画と本とその他こもごも(仮]
3点虹の天象儀 まるで宇宙船のようにも見える、不思議な形をした星の投影機。44年間の使命を終え閉館した東京・渋谷の五島プラネタリウムに、... [続きを読む]

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