★★★☆
昭和30年代に、フランキー堺主演で放送された伝説的な名作TVドラマの、リメイク映画である。僕は小さい頃に、このドラマを祖母の家のTVでみた記憶がある。当時子供だった僕には当然全く興味がなく、ただ祖母が真剣に観ていたので、仕方なく横で寝転がって嫌々観ていた。
始めはウトウトと観ていたのだが、いつの間ドラマの中に引き込まれて、終盤には子供ながらも、涙で顔がグシャグシャになってしまった記憶が残っている。戦争の意味も、夫婦の愛も知らぬ子供でも大泣きしたのだから、とにかく素晴らしい作品だったのであろう。
今回約半世紀振りに、中居正広主演でこのリメイク版が映画として創られたわけだが、なぜいま製作されたのだろうか。混沌とし始めた世界状況に不安を感じ、二度と戦争の苦しみを味わないための警鐘なのか。
主演の中居正広はよく頑張ってこの大役に挑んでいたと思う。だがあの名優フランキー堺の代表作である。残念だが彼には少々荷が重過ぎたようである。一方、チョイ役で出演した草なぎ剛のほうが、俳優としては熟成された感があった。
先に述べたように、リメイク版であり結果を承知していたのだが、やはりまたまた泣かされてしまった。前作ではラストシーンに涙したのではないかと思うが、今回は仲間由紀恵扮する妻の房江が、二人の子供を引き連れて、はるばる四国から東京の刑務所に訪れるシーンに号泣してしまった。思わず亡くなった自分の父母のこと、そして若き日の妻が、幼子だった娘二人を引き連れて病院通いをしていた頃の姿が重なってくるのだ。
それにしても、昔は大変だったな。今なら四国から東京まで飛行機で約1時間だが、船やら夜汽車を乗り継いで三日もかかったんだ。そして敗戦の傷跡が残る焼け野原の東京。むせ返るような渋谷の闇市。忘れ去っていた過去の風景とともに、懐かしさと悲しさが怒涛の如く押し寄せてくる。
また、夫の釈放を信じて、来る日も来る日も大雪の中を娘を背負い、200名の嘆願署名を集める房江のけなげさにも涙があふれ落ちてきた。そして美しく広大な大自然の風景が、人間のちっぽけな心を、すっぽりと包み込んでくれる。まさに映画ならではの迫力と感動を十分堪能出来たと思う。
しかしそれでも何かが足りないのだ。たぶんこの作品の本来の主眼は、敗戦国での裁判の不合理さと、戦争に対する糾弾であるのに、そのあたりの描き方が不十分だったからではないだろうか。
死ぬ思いで房江が集めた200名の署名や、先に死刑の執行を受けた矢野中将の再審嘆願書の行方について、全く言及されていないのは、余りにも悲し過ぎるじゃないか・・・。
↓クリックすると僕のランキングも判りますよ。
人気blogランキングへ
※スパム対策のため、TBとコメントはすぐに反映されない場合があります。
↓ブログ村とクル天↓もついでにクリックお願いします(^^♪
最近のコメント