ぐるりのこと
★★★★
初めのうちは、どことなく頼りなく、はっきりせず、女の尻ばかり追っている夫役のリリー・フランキーにイライラしていた。だがストーリーが進むうちに、だんだんこの男の好感度がアップしてゆくのが不思議だった。
このあたりは、リリー・フランキーの演技のない演技力なのか、脚本の妙なのかは判明出来ないが、なかなか味わい深い映画だなという印象が残った。さらに妻役木村多江の迫真の演技力にも驚かされた。
鼻水をたらしながら泣きじゃくったり、常軌を逸したうつ症状など、まさに何かに憑依されたような凄まじい演技だった。あれでもし風呂場で全裸を晒していたら、文句のつけようのないパーフェクト女優に昇格していただろう。
それにしても、日本美人でこんな凄い演技力を持っていた女優がいたことに、今まで気付かなかった自分の浅学さを恥じるばかりだ。今後、彼女の活躍を見守ってゆきたいね。
ストーリーのほうは、精神面でのスレ違い夫婦の日常と、胎児を死亡させてしまった妻の苦悩を、長回わし技法とユ―モア混えながらを描いてゆく。そして、唯一お互いに理解し合える「絵画の世界」を通して、社会風刺と癒しの世界を平行して織り込んでゆく。なかなか、お洒落で緻密な構成であり、『ゆれる』や『かもめ食堂』などと同様、邦画の新しい風を感じた。
夫婦というものは、性格は正反対でも良い。いやむしろ正反対のほうが長続きするかもしれない。だが、やはり価値観や趣向に共通点がなければ、難しいだろう。どちらかが我慢するしかない一方通行の付き合いでは、やがて破綻してしまうのは火を見るより明らかだ。
どちらも少しずつ譲歩しながら、それぞれの持つ価値観や趣向を共有してゆく努力ことが、夫婦円満の秘訣なのである。この映画を観ながら、ふとそんな常識論を一つ一つ噛みしめながら再確認しようじゃないか。
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パンフレットの表紙は、『東京タワー』の書籍を思わせるシンプルな装丁。
タイトルは、もちろんリリー・フランキーの題字である。
... [続きを読む]
受信: 2008年11月 2日 (日) 23時38分
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自堕落で飄々としていて言葉数が少ない夫・カナオ。
傍から見ていると全然合わないタイプに見えました。
... [続きを読む]
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「ぐるりのこと。」 (2008年・日本)
秋葉原で起きた無差別殺傷事件の衝撃が冷めやらぬなか、繁華街へ出かけるのは少し気が重かった。都心ならどこにでもある街の風景、どこにでもある雑踏。もし人の心が透けて見えたら、きっと眩暈が止まらないだろう。見えないからこそ平気な顔で歩いていける。けれども、人の心が見えないゆえに疑い、ねじれ、恨み、高ぶり、孤独に沈む心もある。ぐるりのこと――だれの身の回りでも起きるささやかなあれこれ。それが心地よくうまく運べば、きっとだれもが軽やかに清々しく生き抜くこ... [続きを読む]
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前作『ハッシュ!』が国内外で絶賛された橋口亮輔監督が、6年ぶりにオリジナル脚本に挑んだ人間ドラマ。1990年代から今世紀初頭に起きたさまざまな社会的事件を背景に、困難に直面しながらも一緒に乗り越えてゆく夫婦の10年に渡る軌跡を描く。主演は『怪談』の木村多江と、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』の原作者リリー・フランキー。決して離れることのない彼らのきずなを通して紡がれる希望と再生の物語が、温かな感動を誘う。[もっと詳しく]
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リリー・... [続きを読む]
受信: 2008年11月 3日 (月) 20時20分
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受信: 2008年11月 4日 (火) 14時56分
コメント
kimionさんコメントありがとう
木村多江は地味な感じの日本美人ですね。でも僕のようなおじさんには、派手な女優よりずっと好感が持てますね。とにかく演技力が素晴らしかったですね。
龍女さんこんにちは
今年のNo.1映画ですか。僕は「おくりびと」とか「容疑者X」とかと良い勝負なので迷っています。ただし木村多江さんの主演女優賞は当確でしょうね。
投稿: ケント | 2008年11月 5日 (水) 14時36分
ミチさんコメントありがとう
そういえば「東京タワー」に繋がるものがありましたよね。ひとの心の温かさを感じました。
そうだんだん良い夫になって行きましたよね。あれは演出の妙なのでしょうかね。
投稿: ケント | 2008年11月 5日 (水) 14時29分
観られたんですね。
私は今年のNo.1映画です。
是非、木村多江さんには主演女優賞をとって欲しいです。
投稿: 龍女 | 2008年11月 5日 (水) 01時59分
TBありがとう。
木村多江は、ちょっと古典的な日本美女の系譜ですね。華はないけど、オカルト映画においておくのはもったいない素材かもしれません。
投稿: kimion20002000 | 2008年11月 3日 (月) 20時23分
こんにちは♪
「東京タワー」に繋がるものを感じました。
「東京タワー」はオダジョーが主演ではありましたが、その後ろにつねにリリーさんの姿が見え隠れしていたので。
この作品でも絵を書く人ということでリリーさんにピッタリの役でしたよね。
家庭を持つのに不適格な人間かと心配しましたが、だんだんいい夫になっていくのには驚きました。
朴訥とした喋り方も温かさを感じさせました。
投稿: ミチ | 2008年11月 3日 (月) 11時59分