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2008年11月 1日 (土)

私の男

 絶句!…第138回直木賞を受賞したこの小説を、どう評したらいいのだろうか。テーマが近親相関というタブーであるだけではなく、その愛情描写が異常なほど熱いエネルギーを放射しているのだ。まさに一歩間違えれば狂気の奈落の底である。ギリギリの瀬戸際で綱渡りをしているかのようだ。再度、絶句!

私の男 Book 私の男

著者:桜庭 一樹
販売元:文藝春秋
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 もし、著者が男だったら、ロリコンでマザコンの変態と罵られよう。もし、時間軸を逆転させなかったら、単なるエロ小説に成り下がっていたかもしれない。もし、二つの殺人事件が挿入されていなければ、初めから結論を書いてしまったことがアダになり、ストーリー展開に対する興味が薄まってしまっただろう。 

 これら全てを見事にクリアしてしまう緻密な構成力と、唸るほど巧妙で流れるような美しい文体に、呆れてしまうほど感心し、嫉妬してしまった。これなら直木賞は当たり前、逆立ちしてもこんな作品は書けないな。
 さらに全6章の語り部が、主人公の「腐野花」、「花」の婚約者である「尾崎美郎」、私の男である「腐野淳悟」、そして再び高校生の「腐野花」、次に淳悟の恋人だった「大塩小町」、そして終章では小学生の「腐野花」と、次々と変遷してゆくので飽きることがない。

 それでもテーマがテーマだけに、そのドロドロとした禁断の男女関係に耐えられない読者もいるだろう。だから、かなり好き嫌いの評価がはっきりする作品であることは否めない。それにしてもだ、これほど巧妙に計算され尽くされた作品に巡り逢ったこともない。何度も繰り返すようだが、感動とか面白いというレべルではなく、ただただ絶句するほど凄い小説なのだ。
 桐野夏生にしても、宮部みゆきにしても、最近の女性作家たちの宇宙人的な力量は計り知れないものがあるよね。

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コメント

masakoさんも絶句ですか。
ほんとに・・・桜庭さん可愛い顔してよく書けますよね。顔で書くわけではないけれどね(笑)
「荒野」是非読んでみて比較したいですね。

投稿: ケント | 2008年11月 5日 (水) 15時13分

花さん
こんにちは
とにかく凄いの一言でした。桜庭さんの筆力は相当なものですよね。
ストーリーの時間軸を逆にしたことが、嫌味を抜くテクニックなのでしょうね

投稿: ケント | 2008年11月 5日 (水) 15時11分

月夜さんこんにちは
コメントありがとう
かなり嫌悪感を持ってしまった読者も多いですね。
それも判らないことはありませんが、淳悟も花も普通のひとではないので、逆にああなるのが自然の成り行きだったような気もします。
それにしてもなかなか感想を書き難い小説ではありますね。

投稿: ケント | 2008年11月 5日 (水) 15時01分

青子さんコメントありがとう
ドロドロのエロエロですか、確かに戸惑いますよね。でもそれでも嫌味が残らないところが「直木賞」なんでしょうね。大したモノですね。
 淳悟にしても花にしても家庭というものを知らなかったので、ああいう表現方法しか出来なかったのでしょうね。ある意味動物のようでもありました。

投稿: ケント | 2008年11月 5日 (水) 14時51分

ケントさん、こんばんは。
TBありがとうございました。
すごいの一言ですよね。
本当に絶句するほどすごい本でした。

先日「荒野」も読んだのですが、こちらはかわいらしい感じで、私の男とは違った面白さがありました。

投稿: masako | 2008年11月 3日 (月) 23時37分

TBありがとうございました。
どろどろした関係にショックは受けましたが、嫌悪感は感じませんでした。
作者の筆力を感じた小説です。

投稿: | 2008年11月 3日 (月) 21時04分

TBありがとうございました♪

本当にギリギリのラインだったと思います。
私は嫌悪感なく、読後もどんよりとした気持にはなりませんでしたが、
人によっては無理でした…という感想も拝見するので、
大きく分かれそうですね^^;

投稿: 月夜 | 2008年11月 2日 (日) 23時33分

TBありがとうございました。

私も最初はドロドロのエロエロで、びっくりしました。
でも、読み進むほどに、ギリシア悲劇のような人間を感じさせてくれました。
ラストの淳悟のガンバリが、小気味よい読後感に変えてくれたような気がします。

投稿: 青子 | 2008年11月 2日 (日) 22時31分

ななさんコメントありがとう
そうですね。「絶句」ですよね。
出だしの雨のシーンは、お洒落でもあり、かつ二人の心の中を映し出したようでもあり、なかなか巧みですよね。流氷のシーンは凄い迫力で胸に圧迫感を感じましたよ。
この作品では、時間軸を逆にしないとドロドロだけが残ってしまいます。よくも考えたりですよね。

投稿: ケント | 2008年11月 1日 (土) 22時08分

hitoさんコメントありがとう
直木賞ということで何の気なしに読んだのですが、非常に驚きショックを受けています。
桜庭さんて可愛い顔して、何でこんな凄いお話を書けるのでしょうかね。信じられませんね。
花は幸せになったと考えたいですね。尾崎美郎くんも良い男です。

投稿: ケント | 2008年11月 1日 (土) 21時56分

こんばんは。
TBありがとうございました。
本当に読み終わって「絶句」ですよね。
過去に遡っていく構成がうまいなって思いました。

投稿: なな | 2008年11月 1日 (土) 21時44分

TBありがとうございます。

ドロドロとした濃厚なストーリーでしたね。
こういう設定自体は好まないのですが、桜庭さんの筆力なのか不思議と嫌悪感抱くことなく読めました。

花はこれから幸せになれるのでしょうか?二人の結婚の行方がとても知りたかったです。

投稿: hito | 2008年11月 1日 (土) 18時49分

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