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2008年10月25日 (土)

アキレスと亀

★★☆

 前作の『監督ばんざい』を観て、もう2度と北野武の映画は観ないと決意したのに、タイトルと共演の樋口可南子に惹かれて、またまた劇場に足を運んでしまった。どうして僕は、こうも意志薄弱なのだろうか。自己嫌悪、自己嫌悪…。
 『アキレスと亀』とは、古代ギリシャの哲学者ゼノンの考えたパラドックスで、いくら足の速いアキレスでも、先に出発した亀を追い越せないことを、屁理屈を用いて論証している。まさに北野がいくらもがいても、いつも同じ発想から、全く脱却出来ないことを論証しているようなものだ。

      Akiresu

 この作品は、主人公の画家の少年時代、青年時代、中年時代の三部構成になっている。少年時代編と青年時代編を観た限りでは、タケシもやっと人並みの映画を創れるようになったな、と少し嬉しくなりながら鑑賞していたのだが…。
 それなのに、タケシ自身が主人公になった中年編に突入した途端に、全てがぶち壊されてしまった。どうしてこの男は何十年も同じシナリオと演技しか出来ないのか。そして『残虐』という、かびの生えたシチュエーションしか頭にないのだろうか。

 この男の頭の中をかち割ってみれば、きっと暴力と自已愛と残虐非道さだけが渦巻いているに違いない。妻に寝ることも許さず労働を強いたり、絵を描くためにプロボクサーにボコボコに殴らせたり、挙句の果ては、娘に売春させた金で絵の具を買う。
 こんなのは、芸術家でも何でもない。ただ女を利用するだけのチンピラ暴力団員そのものではないか。また本人はギャグのつもりで挿入している小話シーンも、いつも同じパターンで退屈の極みだ。無理に笑いをねだっている落ちぶれ芸人のようで、ただただ苦笑するしかない。

 いずれにせよ、この男の作品は処女作『その男、凶暴につき』の一作で終っている。あとは全てが、その亜流に過ぎず、その主張するところもその演技ぶりも、単に自分自身を地のまま描いているだけじゃないの…。

 百歩譲って、監督としては優れた資質を持っていると譲歩したとしても、役者としては超三流以下である。頼むから、今後は監督だけに専念し、決して主役としてシャシャリ出ないで欲しい。出演したとしても、ヒチコックのように、チョイ役でちらりと顔を出す程度にして欲しいものである。
 せっかく頑張っていた子役や、麻生久美子、樋口可南子、それに中尾彬、大杉漣などの脇役陣に申し訳けないと思わないのだろうか。いつもながらのことだが、この男には愛というものが全く感じられない。まさに身勝手、自己中の権化のような男だね。ただそのことを一番良く判っているのは北野武本人かもしれない。だからこそこの映画を、苦悩する自分自身の鏡として創り上げたと考えられないだろうか。

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□作品オフィシャルサイト 「アキレスと亀」 □監督・脚本・編集 北野武 □キャスト ビートたけし、樋口可南子、柳憂怜、麻生久美子、中尾彬、伊武雅刀、大杉漣、円城寺あや、吉岡澪皇、徳永えり、大森南朋■鑑賞日 9月20日(土)■劇場 TOHOシネマズ川崎■cyazの満足度 ★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>  絵を描くのが大好きだった真知寿という人間の人生を、少年時代、青年時代、中年時代の三代にわたり描いた作品。 倉持真知寿 中年時代(ビートたけし)、青年時代(柳憂怜)、少年時代(吉岡澪皇) 倉持... [続きを読む]

受信: 2008年10月26日 (日) 11時04分

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