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2008年8月 3日 (日)

ボトルネック

 2年前に事故で東尋坊から墜落死した恋人を弔うために、同じ場所に立った嵯峨野リョウ。だが彼もバランスを崩して崖から落ちてしまうのだ。そして気がつくと、そこは彼女と初めて言葉を交わした金沢の公園であった。

 ところがそこは、彼が存在しない世界で、彼の世界では水子だった彼の姉が生きている世界だったのだ。姉のサキは想像力と行動力に優れ、全てにおいてリョウを凌いでいる。そして死んだ彼女も生きているし、最悪だった家庭も平和な状況だったのである。

 ここまでは、パラレルワールドの世界そのものだ。そしてリョウが存在する世界とサキが存在する世界を一つ一つ比較してゆく。

 なかなか面白い視点の小説だと思った。それでぐいぐいと引き込まれて、あっという間に読破してしまったのだが、終盤に再び東尋坊から帰ってきてからというものの、急に重苦しい展開となる。そしてタイトルのボトルネックの意味が解明されてゆくのだ。

 結局、作者は何を言いたかったのか。このタイトル通りに解釈するには、余りにもリョウが救われないではないか。単なるパラレルワールド小説に落ち着かなかったことは評価に値するかもしれないが、なんとも後味の良くない複雑な気分でもある。

 

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コメント

たちばなさんコメントありがとう
毎日ブログを覗いていただき感謝しています。
確かに、表紙絵と、タイトルのフォントはダサイというか感覚が古いですよね。僕も全く同感であります。

投稿: ケント | 2008年8月 4日 (月) 11時30分

ケントさん、ご無沙汰しております。
(毎日、のぞいてはおりますが)
確かに、「ボトルネック」は後味が宜しくないですよね・・・
でも、心に残る小説で、私は好きです。

それよりも、表紙絵と、タイトルのフォント、もう少し何とかして欲しかったです。
文庫化の際には是非、再考を。

投稿: たちばな ますみ | 2008年8月 3日 (日) 23時12分

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» 「ボトルネック」米澤穂信 [たちばな屋・ミステリ分科会]
やっぱりすごい、米澤穂信。 「ボトルネック」は、同じ日、同じ時間を�繰り返さない�リプレイ、もしくはリピートとでも言うべき物語。 作者曰く、 「この小説は、自分の20代の『葬送』のつもりで書きました」 アイデンティティの崩壊。 とどめの一行。(あくまで�とどめ..... [続きを読む]

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