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2008年8月の記事

2008年8月31日 (日)

ポンコツタイムマシン騒動記 

 町の発明家先生が、廃品回収した電機製品を利用してタイムマシンを作りあげ、娘のトキ子とラーメン屋の三郎少年を乗せて過去に旅立つ。コミカルなジュブナイルで、舞台はたったの2ヵ所、登場人物も10人以下という、映画ならばさしづめ「超B級低予算映画」といったところか。

ポンコツタイムマシン騒動記 (講談社 青い鳥文庫fシリーズ) Book ポンコツタイムマシン騒動記 (講談社 青い鳥文庫fシリーズ)

著者:あさり よしとお,石川 英輔
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ストーリーも単純で、同じ場所を行ったり来たりするだけである。これは舞台劇にはおあつらえ向けだね。ところがタイムトラベルファンにとっては、この単調さがなかなか味わい深いのである。
 同じ場所といっても、時間軸と次元が異なるため、正確には違う場所になるのかもしれない。その同じような場所での微妙な変化を楽しむのが、タイムトラベルファンの醍醐味なのだ。

 これはバック・トゥ・ザ・フューチャーの、主人公マーティーを取り巻く人々の変化と、ある意味似ているよね。しかし決定的に違うのは、本作ではタイムマシンで跳ぶ世界は、全てがパラレルワールドだということである。この設定には少しイライラするのだが、現状の理論では一番矛盾の少ない設定なのだろう。
 ちなみに、バック・トゥ・ザ・フューチャーの場合も、ある意味パラレルワールドに近いのだが、両親が結れそうもなくなると、マーティーの写真が消えそうになる発想は、パラレルワールドではない感じでもあり、ちょっとはっきりしないのである。

 この小説は1979年に朝日ソノラマから出版され、その後の2003年に大幅に改訂して講談社から再版されたという。朝日ソノラマ版を読んでいないので、どの部分を手直ししたのかは判らない。
 しかしほのぼのとした時代背景はともかくとして、タイムトラベル理論には余り古さを感じないことからして、そのあたりを直したのかもしれないね。また、あさりよしとお氏が描くイラストの雰囲気も、本書のイメージにピッタリとはまっていると思う。

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2008年8月30日 (土)

崖の上のポニョ

★★★☆

 CGを使わない手描きのアニメが、これほど新鮮に感じたのはどうしてだろうか。まるで画用紙にクレヨンで描いたような背景が目にまぶしい。明るく空に抜けるような色彩が、優しく心に問いかけてくるようだ。
 かといって全編が、この絵本のようなほのぼのタッチで描かれている訳でもない。子供の絵は『アルプスの少女ハイジ』風。大人の絵は、青年マンガで時々見かけるイラストタッチ風。そして同じ風景が、クレヨン画から時々CGのように精細に描かれることもある。

           Ponyo

 観る人によっては、一貫性のない雑なアニメーションに写るかもしれない。しかし僕は、この様々なタッチの中に、現実世界とお伽話の世界の勾いを感じた。ファンタジーなのだから、これでいいのだ。
 一番感動したシーンは、ポニョが人間の女の子に変身して、魚の形をした荒波の上を力一杯走り続ける場面である。力強い躍動感と生命力に満ち溢れ、ポニョのソウスケに対する素直で純真な愛情を感じざるを得なかった。

 この中盤のシーンが事実上のクライマックスであり、後半の母親探しの旅はかなりボルテージが失速し、時間稼ぎの添え物に落ち着いてしまった感がある。後半にはそれほど大きな冒険もないし、ラストの括り方も周知の域を全く出ていないのだ。あれだけの時間を費やした割には、非常に残念なまとめ方に終ってしまった、と感じるのは僕だけであろうか。

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2008年8月29日 (金)

トムは真夜中の庭で 

 ジュニア向けタイムトラベル小説の代表作である。中古書店ではどうしても手に入らなかった幻の名作。ところが図書館では簡単に借りることが出来てしまった。なんだ初めから図書館を探せばよかったんだな・・・。

 弟ピーターがはしかに罹ってしまったため、トムは夏休みに、親戚の家にあずけられてしまう。叔父さんと叔母さんしかいない親戚の家は、子供のトムにとっては退屈で、夜もなかなか寝付けない。すると、玄関の大時計が13時を打ち、家の外の世界は一変する。そこに大きなイチイの木と、広く美しい庭園が出現し、クラシカルな服装をした少女が遊んでいるではないか。

 ところが朝になって外に出ると、そこにはあの庭園は存在せず、そこにはごみ捨て場と駐車場しかなかった。もちろんあの少女も住んでいるはずがない。あとで判ることだが、あの美しい不思議な庭園は、ヴィクトリア時代の庭園であり、真夜中の暗闇にしか存在しない世界だったのだ。

トムは真夜中の庭で Book トムは真夜中の庭で

著者:フィリパ・ピアス,高杉 一郎,Philippa Pearce
販売元:岩波書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 少女の名前はハティといい、小さい頃に両親を亡くし、親戚の叔母さんのお屋敷に引取られた。彼女は三人の従兄弟たちと一緒に住んでいたが、年が離れていることもあり、いつも独りぼっちで遊んでいたのである。そしてなぜか彼女だけが、トムの姿を見たり、トムと話をする事が出来るのだった。
 トムはこの美しく広大な庭園が大好きになり、ハティと二人でいろいろな遊びを興じてゆく。こうしてトムは、毎晩皆が寝静まった頃、家のドアを開けて、この別世界でハティと一緒に遊ぶことになる。

 何度もこの世界を訪れているうち、トムはこの世界では時間が乖離していることに気付く。あるときはもっと小さい頃のハティ、そしてあるときは大人になったハティ。そしてどんな時でも、ハティはトムを待ってくれていた。
 なんだか、ジュニア版『牡丹灯篭』のような世界だが、決してハティは幽霊ではない。過去にハティが残したスケート靴が、トムの部屋の床下で発見されたのである。そのスケート靴を持って、トムは過去の世界で、ハティとアイススケートを楽しむことになる。

 それにしても、この小説は緻密に構成されているし、庭園やキャム川、イーリーの大聖堂などの描写も正確である。あとで判ったことだが、作者のフィリパ・ピアスは、この地方で、やはり大きく古いイチイの木が生えている家で育ったという。それでこの小説の舞台について、これだけ精密描写が出来たのだろう。
 ラストになって、トムがなぜこの不思議な世界へ進入することが出来たのかが解明されるが、ネタバレになるので、ここでは詳しく述べないことにしよう。ただトムが時を超えた世界を体験できたのは、子供の持つ純真な思いと無垢な愛情と想像力のお陰であるとだけ言っておこう。そして人は年をとるに従って、だんだんとまた子供の頃の心に戻ってゆくのである。

 いずれにせよその結末は実に感動的であり、いくつもの螺旋階段が見事一つに収束するかのような緻密な構造に誰もが驚くことだろう。最後にこの完成度の高い作品が、1958年のカーネギー賞に輝いていることを報告して筆を置く事にする。

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2008年8月27日 (水)

大日本人

★★☆

 怪獣が登場するまでの序盤数十分間は退屈で、何度DVDを切ってしまおうと思ったことか。ドキュメンタリーのようなタッチは良いとしても、この時点では意味不明のインタビューが長過ぎるのだ。

大日本人 初回限定盤 DVD 大日本人 初回限定盤

販売元:アール・アンド・シー
発売日:2007/11/28
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この映画は松本人志の初監督・主演作品であり、いきなりカンヌ国際映画祭で、監督週間部門に正式招待作品として選出された話題の作品である。だが正直言って、何を表現したいのか、理解に苦しむ映画ではないだろうか。
 確かに怪獣シーンの質の高いCG技術と、お笑いネタとしてのウルトラマンパロディーは評価しても良いだろう。だがそれ以上にドラマ性もなければ、心を打つ何かも全く存在しない。

 まあ同時期に上映された北野武の『監督ばんざい』よりはましだが、なぜこうもお笑いタレントばかりが映画監督をめざすのだろうか。映画界も舐められたものである。
 どうもナンセンスな作品を、勝手に過大評価してしまうトンパチなヨーロッパ系の映画賞関係者と、お笑いファンの甘やかしがいけない。きっと、黒澤明、溝口健二、木下恵介などの名監督達が、草葉の陰で怒り心頭の思いで、この状況を嘆いていることだろう。

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2008年8月24日 (日)

ダークナイト 

★★★★

 前作バットマンビギンズの続編であるが、タイトルに『バットマン』という文字が出てこない。確かに主役は、バットマンというより、凄いオーラを放っていたジョーカーと言ってもよいくらいだ。
 そのジョーカー役は、今年1月に急死したヒース・レジャーなのだが、その強烈な演技には誰もが驚愕したはずである。かつてジャック・ニコルソンが演じたジョーカーもユニークな存在だったが、どちらかといえば「狂ったピエロ」というイメージで愛嬌があった。これに対してヒース・レジャーのジョーカーは、全く妥協心を持たない超狂人であり、まるでサイコホラーの怪物という印象であった。

     Dar2

 どちらが凄いのかは、意見の分かれるところだが、僕はこの恐怖に満ち溢れたヒースジョーカーに軍配をあげたい。映画を観ているほうまでが、サイコパスにとりつかれて気分が悪くなってしまったくらいだからね。ジョーカーの風貌に恐怖感を抱く人も多いが、それよりも彼の歯止めのかからない狂った心が恐ろしかったな。

     Dark1_3 

 以前のバットマンは、コミックから飛び出したヒーローという感があったが、前作『バットマンビギンズ』からは、異様といってもよいほどシリアスな演出に徹している。またもともと夜の英雄なので、よりダークでヘヴィーな雰囲気に仕上がってしまうのだろう。

 ただあのジョーカーの強さは度を超えていないだろうか。莫大な資金や組織も持たず、マフィア達を次々に葬ったり、あれだけ多くの警官を買収したり、大規模な爆破装置をいとも簡単に仕掛けたりと、まるでスーパーマンのレックス・ルーサーだ。このあたりの展開は、全般的にシリアスなムードに水を差した感があり、僕的には気に入らないシナリオである。
 アメリカでは大ヒットを記録したため、今後もこのムードが保たれると思うが、この中途半端なシリアスさを改善しない限り、理屈ぽい日本で大ヒットすることは難しいかもしれない。それにもうヒース・レジャーは使えない訳だし、次回作の展開は一体どのように構築するのだろうか。そうした意味でも今後のバットマンの行方を、興味深く見守ってゆきたいと思っている。

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2008年8月23日 (土)

日本の女子は凄いね

 北京オリンピックのソフトボールには感動したね!!
 ことに二日間三連投の上野由岐子選手を観ていて、「神様・仏様・稲尾様」と呼ばれた往年の鉄腕稲尾投手を思い出してしまった。稲尾は1961年にシーズン日本記録の42勝をマークし、読売ジャイアンツと対戦した1958年の日本シリーズでは、なんと7試合中6試合に登板という快挙を成し遂げている。

    Base_2

 そして今回のソフトボール金メダル記事の中で、この伝説の超人のあだ名である「鉄腕」が、上野投手にも冠せられていた。きっと皆私と同じ気持ちなのだろう。よくやった「鉄腕上野投手」と褒め称えたい。

 ソフトボールだけではなく、全般的に女子の活躍が目立つ。またたとえメダルに届かなくても、彼女達は、持てる力を全て発揮している。それに引き換え男子達の情けないこと。北島だけは別格として、揃いも揃っていつもの力を十分に発揮できない男性選手が多く、毎晩失望の連続であった。

 オリンピックに限らず、最近はゴルフにしても文学賞にしても、体育会系・文科系を問わず総じて女子の台頭が目立つ。また自殺者の70%以上が男性であるという。どうも近年は、女性が強くなり、男性が軟弱になっている傾向にある。
 この原因は様々であり素人の私に解明出来るはずもないが、女王蜂やカマキリなどの生態を見ても、本来生物学的にメスのほうが強い個体なのではないかとさえ思ってしまう。また日本においては、戦後男性優位の制度や法律が改正され、社会的にも男性の権威はかなり失墜してしまった。また表面的には男女平等を謳いながらも、実質は美味しい部分だけを平等化され、まずい部分は相変わらず男性の義務として慣習化されているという矛盾した社会構造が残っている。

 その一番の問題点が職場のシステムとサラリーマン意識である。一般のサラリーマンなら、若いうちは男女同等の賃金でも、30を過ぎた辺りから男女の差が開き始め、役職につくのも男性のほうが圧倒的に多い。そしてほとんどの男性が何度も転勤を経験させられる。この日本的システムが、日本の男性を弱くして女性を逞しくさせているのではないだろうか。

 つまり男性には、一生働き続けて家族の家計を支えるために出世しなくてはならないという命題が、相変わらず与えられているということだ。女性には出産という一大事業が控えているので、それはそれで仕方がないのだが、日本の企業と日本人のムラ意識がこれに大きく立ちはだかってくるから辛いのである。
 日本の公務員や欧米企業なら、当初から出世するキャリア組のものは遅くまで釈迦力に残業して頑張っているが、それ以外の人たちは自分に与えられた職務以外には無関心で、周りがどんなに忙しくとも、知らん振りをしてさっさと定時に帰宅してしまう。そして自分の趣味や家族との団欒に時間をとる。
 ところが日本の一般企業のサラリーマンたちは、出世するかしないか不明な人も含んで、皆遅くまで企業戦士に徹している。というよりそのように仕向けられているのだ。だから話題も社内の仕事や仲間の噂話に終始する。これについていけないと村八分的な存在になってしまうので、仕方なくいつも社内の同じメンバーとだけ、まずい酒を飲み交わしている。ある意味これが日本経済の源だから仕方がないとも言えるのだが・・・。

 だから酒場に飲みに行っても、自分の趣味の話など、受け入れてもらえるはずがないどころか、変人扱いされるのが関の山であり、沈黙しているより方法がないのだ。悲しい現実だが、彼らが公然と認可している趣味?といえば、遅くまで酒を飲むことと、ゴルフと女の話くらいのものである。

 それに引き換え、出世や会社に縛られない女性たちは、自由に自分の時間を選択できるのだ。・・・といってのんべんだらりと、ショッピングや恋愛ゴッコだけに血道をあげているのでは男性と五十歩百歩の域をでない。この自由時間を有効に使って、自分自身の可能性に猛烈にチャレンジした女性達こそがいま大活躍しているのであろう。結局ある意味、現在の日本女性達の飛躍は、女性にとって非常に恵まれた環境にあるという事実の裏返しなのではないだろうか。

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2008年8月20日 (水)

ひゃくはち

★★★★

 人間の煩悩は108個あるという。それで除夜の鐘を108回打って煩悩を断ち切るのだ。また何故か野球ボールも、縫い目が108個ある。こちらは煩悩とは関係なく、合理的な縫い目が108個だという偶然に過ぎない。

           108

 この映画は、甲子園目指してエネルギーを燃焼させる高校野球児たちの青春ドラマである。だが従来の野球ドラマとは、視点が大きく異なっている。
 主人公の二人は共に補欠であり、三年間一度も試合に出たことがないのだ。それに彼等は、ベンチ入り出来る20人に選ばれる可能性も薄いのである。ましてや甲子園では、18名までしかベンチ入りできないのだ。

 そして甲子園を目指す熱血青年たちは、純粋無垢で真面目な高校生とは限らない。酒もタバコもやるし、女性をナンパすることもある。また監督や記者たちの慣れ合いや、えげつない姿態も淡々と描く。
 もし実際にこの様なことがマスコミで報道されたら、それこそ甲子園行きも取り消しになりかねない。そこは記者たちもある程度了解していて、暴力やレイプなどの刑事事件を起こさない限り、見て見ぬ振りをしているのだろう。
 まさに甲子園裏物語といった趣だが、これが全く嫌味がなく自然に受け入れるところにこの映画の凄さを感じた。むしろ見ていて清々しいくらいなのが不思議である。まさにこれこそ、森義隆監督の演出マジックなのであろうか。

 野球の練習風景が、まるで本物の選手のようで、なかなか見応えがある。CGなしでよくあれだけ頑張ったね。また愛情溢れる父親に光石研、恐怖の監督に竹内力、そして芸歴では補欠級だが、主役の斎藤嘉樹と中村蒼の熱演に拍手を送りたい。そう思っていたら、エンディングで誰かが拍手をしていたので驚いてしまった。

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2008年8月17日 (日)

鬼婆

★★★☆

 安達ケ原の鬼婆をイメージしていたのだが、そんな生易しい代物ではなく、妖怪以上にドロドロした人間の欲望を塗りたくったような生臭い作品であった。
 時は南北朝時代。戦に狩り出された息子の帰宅を待つ姑と嫁の二人は、殺した落武者達の鎧や刃を売りつなぎ、辛うじて生活の糧を得ていた。
 そこへ同じ村の若者が、命からがら戦場から逃げ帰ってくる。男の話で、息子が既に生きてはいない事を知った姑は、一人逃げ帰った男を罵倒し、嫁は失望し嘆き悲しむ。
 しばらくして、男は女が欲しくて堪らなくなり、しきりに嫁を挑発するのだが、嫁を奪われることを恐れる姑に邪魔をされる。だがとうとう男の誘いに堪えられなくなった嫁は、姑が寝込んだことを確認すると、疾風の如く男の家へと走り続けるのだった。

鬼婆 DVD 鬼婆

販売元:パイオニアLDC
発売日:2001/08/10
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この映画には、黒澤作品のようなエンターティンメント風味もなければ、心にジ~ンと染みこんでくるものもない。そこにあるのは、ただただ醜い人間の欲望だけなのである。
 吉村実子が、豊満な乳房やアンダーへアーを晒しても、興奮するどころかドキッともしなかった。ましてや老いた乙羽信子のヌードなど、観ていて辛くなるほどである。この暗さと苦渋に満ちた呪いのような映像こそが、新藤兼人監督の持ち味なのだろう。

 広大なすすきが原に小さなアバラ屋がある以外は何もない。全ての登場人物がわずか14人という超低予算映画。だが妙にそのモノクロ画面に心が惹かれる。その魔化不思議な高揚感こそが、この作品が邦画史に残る名作と言われる所以なのかもしれない。
 また少ない演技陣の中でも、「帰ってきた男」を演じた佐藤慶の自由闊達な悪役ぶりが光っていた。誘いはかけるものの、絶対に彼のほうから、嫁に手を出さない。またうるさい姑にも暴力を振わない。
 村の掟というか最低限の仁義は守って、最後の一線は超えないのだ。そんな彼が悪役に見えるのは、あくまでも姑視点でこの映画が創られているからなのだろう。
 そのあたりの微妙な雰囲気は、新藤監督の演出と佐藤慶の演技力が、巧みに絡みあって創り出した技に違いない。いずれにせよ、この映画が名作たり得たのは、彼の存在が大きく影響していることは否めない。

 さてこの映画が先なのか、後なのかは知らないが、「面が外れなくなる」という話は、その昔に映画かマンガで何度か見たことがある。鬼のような心を持つ老婆が、しまいには肉体までもが鬼になる…とは、今昔物語あたりにもありそうな話だ。
 またこのようなテーマの絞られた低予算映画で100分も費やす心要があったのか。そのくせ、結末が中途半端であっけなかったのは、矛盾しているし消化不良とも言えるだろう。今後はこうした風味の邦画は絶対に生まれないだろう、と感じさせるほど癖のある個性的な作品であることは間違いない。

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2008年8月16日 (土)

百万円と苦虫女

★★★☆

 刑務所帰りの佐藤鈴子。誰も迎えに来ないので、てっきり一人住まいかと思えば、両親も弟もいるのだ。一応家族揃って出所祝をしてくれるのだが、何か全員がちぐはぐとしている。
 両親が登場するのはこのときだけで、それ以降はまるで弟と二人きりの家族のようだ。やがて鈴子は一人旅に出る。そして百万円貯ったら、また旅に出る。始めは海の家、次は山の桃農家、そして地方都市のホームセンターで働くのだった。

          Nigamushi

 なんだかトラさんみたいじゃないの。百万円には、たいした拘りはない。時給800円として半年間働けば、大体百万円位になる。もちろん生活費もあるから、百万円貯めるには、半年働いただけでは無理。
 だがもともともっているお金が百万円で、交通費やアパートの敷金などに40万円使って、残金60万円から始めれば、あと40万円貯めれば百万円になるという計算だ。つまり常時百万円をストックしておくという考え方のようである。
 だから住み込みの桃農家では、生活費がかからないから、余り滞在していなかったよね。いずれにしても、人との関わりが苦手な鈴子は、同じ場所に長期間留まっていたくないのだろう。それが百万円貯めたら旅に出るという理屈を創りあげたのだ。

 嫌なものを嫌と言えないため、結局さらに嫌になるという悪循環。現代日本人に共通する心情かもしれない。彼らは優しいというか、醒めているというのか、それとも仲間外れを恐れてつるんでいるのだろうか。
 知らない人の中での孤独は淋しくないが、少し知っている人達の中での孤独は耐えられない。映画の中の飲み会でも、結局楽しそうに話しているのは、2~3人で、あとはほぼ相槌を打っているだけの世界。
 それなら、話からあぶれている奴を無理に誘わず、初めからその2~3人だけで飲めばいいじゃないの。だが日本人の慣習としては、皆んな一緒という建前論が首をもたげる。でもそれなら全員に話を振れば良いのに、大声出して先に話した方が勝ちという本音には敵わない。
 だから関わりたくなかったのに、と後悔しても後の祭り。あとは無駄に時間を潰しながら、じっと一次会が終わるのを我慢の子。だが耐え切れなくなると、突然切れて何をするか判らない、あるいは自分自身の心がボロボロになってしまう。
 そんな自分が怖いので、切れる前に逃げるのだ。それが鈴子の百万円の旅なのだろうか。

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2008年8月15日 (金)

タイムマシン論

 相対性理論を非常に判り易く解説してくれているのだが、物理オンチの私には今一つ理解出来ない。だが読み易い本なので、2日間で一気に読み終ってしまった。
 さて現在の理論では、光より早く進む物体はあり得ないと考えられている。光速に近づくと質量が膨張してしまうからであり、質量の増加に伴って、速度が落ちるからだという。

タイムマシン論―最先端物理学によるタイムトラベル入門 Book タイムマシン論―最先端物理学によるタイムトラベル入門

著者:二間瀬 敏史
販売元:秀和システム
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 また双子のパラドックスやウラシマ効果という言葉を知っているだろうか。つまり、静止しているものよりも、動いているものの時間のほうがゆったりと進むのである。
 結局、相対性理論では未来には行けても、過去に戻ることは出来ない。過去に戻るためには、光速を超えるか次元を曲げるしかないという。机上の理論では、ワームホールとか、タキオンを利用することによって可能だという。だが現在の科学では、これらを利用するための空間やエネルギーが得られず、当面の間は、とうてい実現不可能であろう。

 また、そもそも未来に行けるといっても、テープの早送りと同じで、過去をスキップしているに過ぎないのだ。バック・トゥ・ザー・フューチャーのように未来の自分に逢ったり、現在に戻って来たり出来ない限り、タイムトラベルしたとは言い難いだろう。
 最近出版された本なので、もう少し新しい理論の発見などを期待したのだが、結局判り易く書き直しただけで、数10年前の理論から一歩も出るものではなかったのが残念である。

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2008年8月14日 (木)

インディ・ジョーンズ4 

★★★☆

 ハリソン・フォードは今年66才になったという。この映画では、かなりスタントマンを使ったと思われるが、それにしても日頃の鍛錬がなければ大怪我間違いなしである。
 シルベスター・スタローンにしろ、ハリソン・フォードにしても、何故もまあお年寄りがこれだけ頑張れるのだろうか。別の見方をすれば、お年寄りに大アクションを演じさせている若者達の情けないこと。そんな仕事は俺に任せろ!とストップ・ザ・お年寄りを果たせる若者はいないのか…。

     Indii

 回を重ねるごとにパワーアップしている本作品、お約束のジェットコースターアクションも健在だ。しかし結婚して後継ぎも出来たことだし、ハリソン・フォードが主演を張るのも、多分本作が最後であろう。

 CGなのか、セットなのかロケなのかよく観ないと見分けがつかない壮大で見事なSFXには、ただただ脱帽するよりない。ただ宇宙人まで登場してしまったことだし、ここまでくると次回作を作るのは、あと10年以上あとになるかもしれないね。
 「チャ・チャチャチャ~ン」という懐かしいテーマ曲に惹かれて、ついついまた観てしまったが、このシリーズはここらでもう打止めにしたいな。★★★☆は、ちょっと甘いかな、ええいもってけ爺さん!

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2008年8月10日 (日)

小説 西の魔女が死んだ

 先日映画を観たばかりであるが、この原作を読んで、映画がいかに原作に忠実だったかがよく判った。逆に言えば、まるで脚本のような原作なのだ。

西の魔女が死んだ (新潮文庫) Book 西の魔女が死んだ (新潮文庫)

著者:梨木 香歩
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 といっても、やはり小説では「まい」の心情が手に取るようにわかる。心の動きを映像で表現するのは難しいが、自然や風景は小説より映画のほうが判り易いし、美しく表現することも出来る。つまりどちらもその持ち味を十分に発揮し合って五分と五分であった。
 それにしてもこのお話は、上手に出来上がっている。映画を観たとき以上に、その構成力の素晴らしさに舌を巻いてしまった。ことにラストが良い、というかラストに繋がってくる前半・中盤の下ごしらえの丁寧さに感心してしまうのだ。

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この人を見よ

 神経質でユングに傾倒する神秘主義者のカール・グロガウアーは、イエス・キリストの生涯に異常な執着心を持っていた。ある日偶然にタイムマシン製作者と知り合い、人体実験でタイムマシンに搭乗することになる。

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 彼はキリストの処刑を見届けようと、西暦29年のエルサレムに跳んだ。だがそこで出会ったイエスは、およそ救世主とは見えないとんでもない人間であった。
 そして知らぬ間に、大きな時のうねりと歴史とが、彼を不思議な運命へと導き始める。やがて彼自身がイエス・キリストを演じることになってしまい、ゴルゴダの丘へと向かうのだった。
 大変なストーリーであり、キリスト教徒たちが読んだら「神への冒涜だ」と、この小説を罵倒するに違いない。しかし、イエス・キリストの正確な生涯など、誰も知り得ないのだ。もしかして、信じられない驚くべき真実が隠されているのかもしれない。

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2008年8月 9日 (土)

カンフーパンダ

★★★☆

 大改築オープンしたばかりの『新宿ピカデリー。真っ白い11階建のビルに、10スクリーンを用意したゴージャスなシネコンに生まれ変わっていた。
 今日は平日だというのに、係負が10人いるチケットカウンターは大行列。オープン以来連日盛況で、3万円もするプラチナルームで鑑賞する人もいるという。

           Panda

 さて本日観る『カンフーパンダ』は、7Fにある第2スクリーンなのだが、とにかくエスカレーターが長い!しかし11Fにある第7~10スクリーンだったら、さらにあと4Fもエスカレーターを乗り継ぐのである。考えただけでもぞっとしてしまうよね。
 第2スクリーンに入室すると、300席ある館内はガラガラで、チケットカウンターでの大行列が嘘のようであった。これだけ空いているのに、なぜか太っちょのおじさんが、最前列にドカ~ンと陣取っているのが気になる。このおじさん、本当に映画を観に来ているのだろうか…。

 映画館の話ばかりに夢中になってしまったが、そろそろ映画の話をしようかね。ハリウッドが創ったカンフーアニメ、完成度の高い美しい映像とスピーディーで迫力満点のアクションの数々。それに中国の壮大で幽玄な雰囲気もきっちり表現しているし、音楽もなかなか良かったぜ。
 また字幕版の声優がもの凄い。主役のおとぼけパンダには、これ以上のハマリ役はあり得ない「ジャック・ブラック」を筆頭に、ダスティン・ホフマン、アンジェリーナ・ジョリー、ジャッキー・チェン、ルーシー・リューと続く。普通の映画でこれだけの俳優がそろったら、そりゃあもう超大作だよな。
 桃源郷「平和の谷」でのカンフー大会。ひょんなことからカメの老師に、伝説の『龍の戦士』に指名されてしまったカンフーど素人のパンダ君。不運にも彼は、刑務所から脱獄した極悪カンフー・マスターのタイ・ランと戦う羽目になってしまう。
 至極単純明快なアニメだが、なかなか良く出来ていて、大人が観ても全く退屈しない。パンダ君のしぐさは、ナチョ・リブレ 覆面の神様』のジャック・ブラックを思い出してしまった。しいて言えば、ストーリーが短か過ぎること、もう少し涙と感動を与えて欲しかったね。

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2008年8月 7日 (木)

新・家族狩り

 前から気になっていた天童荒太の作品を、やっと読むことが出来た。序盤はやや荒っぽい展開かなと感じたが、中盤から物語の中にグイグイと引き込まれてしまう。それで全5巻の大長編を僅か一週間で、一気に読み抜いてしまったのである。

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 やはり登場人物が豊富なことと、それぞれの家族環境が誰にでも起こり得る事情なので、感情移入し易いためだろう。主人公と思われる人物が続々登場し、時間と場面も次々に切り替わってゆく。
 あえて主役と思われる登場人物をあげると、頑固一徹・暴虐無人で自分の勘だけを信ずる初老の馬見原刑事。虐待される少女・駒田玲子の家庭環境に深くこだわり過ぎて、自分をコントロール出来なくなる足の悪いケースワーカー氷崎游子。人間不振でやる気のない美術教師だったが、ある事件を境に人間性を取り戻す巣藤浚介の三人だと思われる。またこのほかにも準主役級の人物が、数多く登場するので誰がとうなるのか予測が出来ない。

 そして物語は、この三人の主役を軸にして、彼等を取り巻く家庭環境や人間関係、社会や事件などを掘り下げてゆく。そして同時期に起こる二つの「少年による父母殺害事件」の犯行理由を追求してゆくことになる。
 文章が巧いわけでもない、テーマが斬新だというわけでもない。だがこの小説には、熱くほとばしる情熱が溢れている。そして「現代家族」という病巣の中で、もがき続ける人々の苦しみを、改めて感じざるを得ないだろう。

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2008年8月 5日 (火)

カルメン故郷に帰る

★★★☆

 邦画史上初めての天然映画であり、木下恵介監督の代表作の一つでもある。
 家出して東京でストリッパーになったおきん(リリィ・カルメン)が、仲間のストリッパーを連れて故郷の浅間村に帰ってくる。そこで彼女達が起こす非常識な行動に、素朴で静かな村は大騒ぎになってしまうのだ。

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 彼女は芸術家きどりで、故郷に錦を飾るつもりで凱旋帰国したのだが、田舎の人々にはなんとも奇妙な異物にしか写らない。だがそのギャップが埋まらないまま、ストーリーはどんどん進展してゆくのである。
 なんといっても、浅間山の風景が美しく、山麓にひっそりと佇む小学校の校庭でのフォークダンスが、実に懐かしくのどかであった。そしてあたり前のことだが、主演の高峰秀子や佐野周二の若々しいこと。
 また校長役の笠智衆さん、相変わらずのひょうひょう振りだね。それに父親役の坂本武の実直な演技も微笑ましい。丸十の旦那も最後には改心するし、皆んな良い人ばかりで悪人が一人もいない。

 戦後の自由で軽薄な風潮を風刺した、当時としては新しく意欲的な喜劇ということだが、今観てみるとそれでも昔の映画は判り易いねという感じがある。
  映画は勧善懲悪で、ハッピーエンドに限る。世の中はそんなに甘くはないが、せめて映画を観たあとくらい癒されてもいいだろう。やれ芸術だ鬼才だとちやほやされて、小難しく暗い映画を作ってみても観客は救われないのだ。
 そういう意味でも、こうした清々しい昔の名作を観て、たまには心の洗濯をするのもよいだろう。

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2008年8月 3日 (日)

ボトルネック

 2年前に事故で東尋坊から墜落死した恋人を弔うために、同じ場所に立った嵯峨野リョウ。だが彼もバランスを崩して崖から落ちてしまうのだ。そして気がつくと、そこは彼女と初めて言葉を交わした金沢の公園であった。

 ところがそこは、彼が存在しない世界で、彼の世界では水子だった彼の姉が生きている世界だったのだ。姉のサキは想像力と行動力に優れ、全てにおいてリョウを凌いでいる。そして死んだ彼女も生きているし、最悪だった家庭も平和な状況だったのである。

 ここまでは、パラレルワールドの世界そのものだ。そしてリョウが存在する世界とサキが存在する世界を一つ一つ比較してゆく。

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 なかなか面白い視点の小説だと思った。それでぐいぐいと引き込まれて、あっという間に読破してしまったのだが、終盤に再び東尋坊から帰ってきてからというものの、急に重苦しい展開となる。そしてタイトルのボトルネックの意味が解明されてゆくのだ。

 結局、作者は何を言いたかったのか。このタイトル通りに解釈するには、余りにもリョウが救われないではないか。単なるパラレルワールド小説に落ち着かなかったことは評価に値するかもしれないが、なんとも後味の良くない複雑な気分でもある。

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