雷の季節の終わりに
これで現在出版されている恒川光太郎の本を全て読んでしまった。『秋の牢獄』、『夜市』、そして本書の順である。著者はデビューして間もないため、まだ三冊しか出版していないのだから仕方がない。
ただ長編は本作のみで、あとは中編集である。どちらかと言えば、著者は中編向けの作家であり、さすがに長編になると終盤に息切れした感があった。
![]() |
雷の季節の終わりに 著者:恒川 光太郎 |
この話は、「穏(おん)」と呼ばれる僻地の集落から始まる。この穏では、冬と春の間の二週間に、神季または雷季と呼ばれる季節が介在し、鬼衆たちが村の鼻つまみ者を処刑する風習が残っているのだ。
この地図にも載っていない穏という村は、「風わいわい」という不死鳥が徘徊する幻の里で、現実世界から隔離された異世界でもあった。こうした魔可不思議な世界観は、『夜市』、『風の古道』、『神家没落』と全く同じであり、これが恒川ワールドたる所以なのである。
ただ同じ世界観でも、ストーリー展開がかなり異なるので、決して飽きがこない。これは著者の美麗な文体と、卓越した構成力の成せる技なのであろう。
本作では穏と現代での二つの話がパラレルに流れてゆく。そして終盤には、その二つの世界が時を超えて融合していくのだ。いつもながら、その構成は見事としか言いようがない。
ただ難を言えば、『夜市』などの中編作品に漂っていたノスタルジーや、幻想的な雰囲気が少し薄れてしまった感がある。それに、ラストの面倒臭くなったような早終いにも、少し抵抗感が残ってしまった。
↓クリックすると僕のランキングも判りますよ。
※スパム対策のため、TBとコメントはすぐに反映されない場合があります。
↓ブログ村とクル天↓もついでにクリックお願いします(^^♪
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- ときのかけら (2008.07.19)
- チルドレン(2008.03.22)
- 15秒 (2008.06.18)
- カレンダーボーイ(2008.06.14)
- 公認会計士vs特捜検察(2008.06.03)
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/21640/20998561
この記事へのトラックバック一覧です: 雷の季節の終わりに:
» 『雷の季節の終わりに』/恒川光太郎 ◎ [蒼のほとりで書に溺れ。]
これはいい作品だ~。なんだろう、こう、ひたひたと忍び寄ってくる、そこはかとない、怖さ。すぐ後ろに、闇がわだかまっている。今にも、「ひと」を呑み込もうと。いや、飲み込まれるのは人なのか。世界はすでに、呑み込まれているのではないか。彼岸と此岸の境は、曖昧だが、明らかにある。恒川光太郎さんは、常人には見えぬその境目が、見えているのではないか。
恒川さんの描く「異界」は、はっきりとした姿を持ち、明らかに私たちの暮らす現実世界とは違うのに、紙一重の場所で存在を密やかに主張する。
いざ、真のホラー...... [続きを読む]
受信: 2008年5月17日 (土) 22時09分
» 「雷の季節の終わりに」恒川光太郎 [たちばな屋・ミステリ分科会]
�異界�を書かせれば恒川光太郎ほど上手い作家はいない、と思う。 デビュー作にして、第12回日本ホラー小説大賞受賞作の「夜市」をはじめとして、「風の古道」「秋の牢獄」などなど、ほとんどの作品が、�異界�における物語。 この「雷の季節の終わりに」も、またしかり..... [続きを読む]
受信: 2008年5月17日 (土) 22時28分
» 恒川光太郎のことども [「本のことども」by聖月]
○ 『夜市』
◎◎ 『雷の季節の終わりに』
◎ 『秋の牢獄』 [続きを読む]
受信: 2008年5月18日 (日) 08時23分
» 本「雷の季節の終わりに 」 [<花>の本と映画の感想]
雷の季節の終わりに
恒川光太郎 角川書店 2006年11月
穏は、海辺の漁村を中心とした一帯の名称で、海と畑からとれるものを基本として生計をたてている。書物にも記載されてないし、地図にも載っていない。穏には、冬と春の間に雷の季節がある。 その穏で暮らす賢... [続きを読む]
受信: 2008年5月18日 (日) 11時37分


コメント
トラバありがとうございました!!
恒川光太郎は、中編集「秋の牢獄」が一番好きです。
ホラーとまでは、いかないまでも、様々な牢獄に捕らえられた人たちの物語。
「雷の季節の終わりに」もまた同じような世界観でありながら、ぐいぐい引き込まれますよね。
これからも、じっくりと、いい作品を書いていって欲しいです。
投稿 たちばな ますみ | 2008年5月17日 (土) 22時36分
たちばなますみさんこんにちは
コメントありがとうございます
恒川光太郎、なかなかやりますよね。
新人で即直木賞候補なんて凄すぎる。
文章と構成が素晴らしいですね。
「秋の牢獄」は僕も一番惹かれました。
投稿 ケント | 2008年5月18日 (日) 18時58分