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2008年5月17日 (土)

雷の季節の終わりに

 これで現在出版されている恒川光太郎の本を全て読んでしまった。『秋の牢獄』『夜市』そして本書の順である。著者はデビューして間もないため、まだ三冊しか出版していないのだから仕方がない。
 ただ長編は本作のみで、あとは中編集である。どちらかと言えば、著者は中編向けの作家であり、さすがに長編になると終盤に息切れした感があった。

雷の季節の終わりに Book 雷の季節の終わりに

著者:恒川 光太郎
販売元:角川書店
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 この話は、「穏(おん)」と呼ばれる僻地の集落から始まる。この穏では、冬と春の間の二週間に、神季または雷季と呼ばれる季節が介在し、鬼衆たちが村の鼻つまみ者を処刑する風習が残っているのだ。

 この地図にも載っていない穏という村は、「風わいわい」という不死鳥が徘徊する幻の里で、現実世界から隔離された異世界でもあった。こうした魔可不思議な世界観は、『夜市』、『風の古道』、『神家没落』と全く同じであり、これが恒川ワールドたる所以なのである。
 ただ同じ世界観でも、ストーリー展開がかなり異なるので、決して飽きがこない。これは著者の美麗な文体と、卓越した構成力の成せる技なのであろう。

 本作では穏と現代での二つの話がパラレルに流れてゆく。そして終盤には、その二つの世界が時を超えて融合していくのだ。いつもながら、その構成は見事としか言いようがない。
 ただ難を言えば、『夜市』などの中編作品に漂っていたノスタルジーや、幻想的な雰囲気が少し薄れてしまった感がある。それに、ラストの面倒臭くなったような早終いにも、少し抵抗感が残ってしまった。

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コメント

トラバありがとうございました!!
恒川光太郎は、中編集「秋の牢獄」が一番好きです。
ホラーとまでは、いかないまでも、様々な牢獄に捕らえられた人たちの物語。
「雷の季節の終わりに」もまた同じような世界観でありながら、ぐいぐい引き込まれますよね。

これからも、じっくりと、いい作品を書いていって欲しいです。

投稿: たちばな ますみ | 2008年5月17日 (土) 22時36分

たちばなますみさんこんにちは
コメントありがとうございます
恒川光太郎、なかなかやりますよね。
新人で即直木賞候補なんて凄すぎる。
文章と構成が素晴らしいですね。
「秋の牢獄」は僕も一番惹かれました。

投稿: ケント | 2008年5月18日 (日) 18時58分

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これはいい作品だ~。なんだろう、こう、ひたひたと忍び寄ってくる、そこはかとない、怖さ。すぐ後ろに、闇がわだかまっている。今にも、「ひと」を呑み込もうと。いや、飲み込まれるのは人なのか。世界はすでに、呑み込まれているのではないか。彼岸と此岸の境は、曖昧だが、明らかにある。恒川光太郎さんは、常人には見えぬその境目が、見えているのではないか。 恒川さんの描く「異界」は、はっきりとした姿を持ち、明らかに私たちの暮らす現実世界とは違うのに、紙一重の場所で存在を密やかに主張する。 いざ、真のホラー...... [続きを読む]

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�異界�を書かせれば恒川光太郎ほど上手い作家はいない、と思う。 デビュー作にして、第12回日本ホラー小説大賞受賞作の「夜市」をはじめとして、「風の古道」「秋の牢獄」などなど、ほとんどの作品が、�異界�における物語。 この「雷の季節の終わりに」も、またしかり..... [続きを読む]

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  ○ 『夜市』 ◎◎ 『雷の季節の終わりに』   ◎ 『秋の牢獄』 [続きを読む]

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