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2008年5月11日 (日)

夜市

  どんなものでも売っているという、夜市と呼ばれる異世界の不思議な夜店。幼い頃、ここで「野球の能力」と「幼い弟」を引き換えにした祐司は、なにも知らない同級生のいずみを伴い、弟を買い戻すために夜市を再度訪れるのだった。
 第12回日本ホラー小説大賞受賞作で、著者の出世作でもある。審査員の荒俣宏、高橋克彦、林真理子の三人がこぞって大絶賛している稀にみる大秀作なのだ。

夜市 Book 夜市

著者:恒川 光太郎
販売元:角川書店
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 まず文章が巧い。無駄がなく読み易く、しかも抒情的で知的なのである。しかも話全体の構成力が抜群であり、ジャンルを超えた面白味を持つ。
 そして高橋克彦氏が言うように、なによりも比類ない「発想の転換の才能」の持ち主なのである。いきなり直木賞候補に推されたのも納得出来るというものだ。
 

   本書以外の著作では、『秋の牢獄』しか読んでいないが、まだ新人で余り作品が出版されていないので仕方がない。次は『雷の季節の終わりに』を読む予定でいる。
 本書では『夜市』と『風の古道』の二作の中編が掲載されているが、 どちらも妖怪が闊歩する世界を描いた、似たような雰囲気のお話なのだ。ただ『夜市』のほうは、市で何かを買わない限り元の世界に戻れないが、一方『風の古道』は、ところどころに抜け道が存在するという違いがある。 

   『夜市』は、おどろおどろしい中にノスタルジックな雰囲気が漂う。その世界感は『干と千尋の神隠し』や、宮沢賢治の『注文の多い料理店』などと同じような香りがする。
 そして緻密に計算され尽したラストの締め方も実に見事である。だからハッピーエンドで終結しなくとも、カタルシスが得られるのだ。

 一方の『風の古道』も、おどろおどろしさとノスタルジーにおいては、決して『夜市』に負けてはいない。ミステリアスで面白い話なのだが、『夜市』のような深みは感じられなかった。『夜市』の出版に際して、急遽書き下ろしたらしいが、『夜市』のサイドストーリー的な勾いがするのは否めないだろう。

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コメント

TBありがとうございました。
この作者の作品は、「夜市」しか読んでないのですが、こわさの中にも、切なさがあり、独特の世界に引き込まれました。
他の作品も読んでみるつもりです。

投稿: | 2008年5月12日 (月) 19時22分

花さんこんばんは、コメントありがとう
「夜市」はノスタルジーの中に幻想的な雰囲気が漂う不思議な世界でしたね。この感覚こそが恒川光太郎氏の世界なのでしようね。
次の著作の出版が待ちどおしいです。

投稿: ケント | 2008年5月12日 (月) 20時49分

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» 「夜市」他最近読んだ小説 [ぷち てんてん]
ほんと、なかなか小説読むのも進まない私ですが(どうも集中力がなくなっているのか(笑)それでも、だいぶ読んだものがたまってきたので一気に書いてしまいましょう。☆「夜市」恒川光太郎夜市2005年第12回日本ホラー小説大賞受賞作。話題になっていたんですが、すっかり...... [続きを読む]

受信: 2008年5月11日 (日) 19時22分

» 本「夜市」 [<花>の本と映画の感想]
夜市 恒川光太郎 角川書店 2005年10月 大学生のいずみは高校生時代の同級生裕二から誘いを受け、岬の公園の奥の森で行われる、なんでも売っているという夜市へ行く。裕二は、昔、野球がうまくなりたいと、弟と引き換えに、野球ができる能力を得たことがある... [続きを読む]

受信: 2008年5月12日 (月) 19時15分

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