死神の精度
★★★★
原作は今どき最も旬な作家、「伊坂幸太郎」である。先日も『ゴールデンスランバー』という小説で、『2008年本屋大賞」に選ばれたばかりだ。
小説のほうは『死神の精度』、『死神と藤田』、『吹雪に死神』、『恋愛で死神』、『旅路を死神』、『死神対老女』の六篇の短編で綴られている。またこの六篇は、死神・千葉シリーズに違いないが、ラストの『死神対老女』の中で、『死神の精度』と『恋愛で死神』とが微妙にリンクしてくる。
ところが映画のほうは、この六篇のうち『死神の精度』、『死神と藤田』、『死神対老女』の3作を選んで、やはり『死神対老女』の中でリンクしていた。またそれぞれに年代を設け、『死神の精度』が過去、『死神と藤田』が現在、そして『死神対老女』が未来という設定になっている。さらにはこれらの話は、ラストで時を超えて見事に収束されているではないか。
実によく練り込まれた素晴らしい脚本である。また小説で多用していた説明文をどうやって映像化するのか楽しみにしていたが、それも見事にクリアしてしまった。
まずオープニングで死んだ少女の霊に、「死神」だと見破られることによって、金城武が「死神」であることをさりげなく紹介する。そして黒犬との会話にコンピュター文字を使用することで、独り言を上手に処理している。
これらは原作にはないパーツである。またおもちゃの車を見て、過去の事故を回想するシーンも含め、実に巧みに文章を映像にチェンジしているではないか。
それとヤクザの藤田だが、原作では義理と任侠に生きる強い男として描かれていた。だから藤田役は、高倉健や菅原文太のような男気漂う俳優でなくてはならないはずだった。
ところがその藤田役に『めがね』で、たそがれていた「光石研」を使ったのは何故なのだろうか。その疑問は、終盤になって解けるのだが、この映画の中では藤田に余りスポットライトを当てたくなかったのだ。
このあたリの事情を詳しく話すとネタバレになるが、藤田の手下である「阿久津」の存在がぼやけないための配慮なのだろう。それにしても用意周到である。常に全体の流を読み取った演出だといえよう。
原作ものの映画を観ると、ほとんど圧倒的に原作が勝ち、映画のほうは期待外れとなる例が多いものだ。ところがこの映画は決して原作に負けていない。原作ファンには申し訳ないが、もしかすると原作を凌いだ映画に仕上がってしまったのではないだろうか。
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» Sweet Rain 死神の精度 [花ごよみ]
伊坂幸太郎の連作短編集の映画化。
主役の死神は金城武 。
小西真奈美 、富司純子 、
光石研 、石田卓也等が出演。
本は読んでいます。
でも、読んでからかなり経っているので
おおまかな内容しか憶えていません。
映画を見て徐々に
記憶が甦ってきました。
死神が、自分の担当する
人間を観察して死の判定する。
死神の名は千葉。
ミュージックが大好き。
本人は真面目に仕事をしていても
他の人から見るとちょっぴり不思議男。
原作を実写化、そして主人公が金城武。
そのことを知った時は... [続きを読む]
受信: 2008年4月20日 (日) 11時10分
» 「SweetRain死神の精度」 [かいコ。の気ままに生活]
試写会で 観てきました。「SweetRain死神の精度」公式サイト金城=死神(千葉)です。どくろでカマもった死神のイメージと 全く違う死神。この話の 死神とは・・仕事:亡くなる予定のヒトを7日間観察し、 実行=死か、見送り=生かすかを判定する。 病死...... [続きを読む]
受信: 2008年4月20日 (日) 20時53分
» 『Sweet Rain 死神の精度』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「Sweet Rain 死神の精度」□監督 筧 昌也□脚本 小林弘利 □原作 伊坂幸太郎(「死神の精度」文藝春秋社刊)□キャスト 金城 武、小西真奈美、富司純子、光石 研、石田卓也、村上 淳、奥田恵梨華、吹越 満
■鑑賞日 3月23日(日)■劇場 109CINEMAS川崎■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想> 人が不慮の死を迎える7日前。 千葉(金城 武)と名乗る死神は、観察期間の後、その対象者を「実行」するか、「見送り」にするかを判断するのが仕事だ... [続きを読む]
受信: 2008年4月20日 (日) 21時10分
» 劇場鑑賞「SweetRain死神の精度」 [日々“是”精進!]
「SweetRain死神の精度」を鑑賞してきました売れっ子人気作家、伊坂幸太郎の同名ベストセラー小説を映画化した、死神を主人公にしたファンタジーであり、基本的には死神目線の人生スケッチ連作ドラマ。7日後に不慮の死を迎える予定の者を観察し生死を決める死神の目を通...... [続きを読む]
受信: 2008年4月20日 (日) 21時26分
» 『Sweet Rain/死神の精度』 [ラムの大通り]
----金城武って、もしかして久しぶりじゃニャい?
「うん。日本映画への出演はね。彼によれば
『原作が素晴らしく、死神という役も特別だと感じたので、
この企画に興味を持ちました』ということらしい。
でも、こういうお話は韓国映画の方に多そう」
----どんなお話ニャの?
「いわゆるファンタジー。
7日後に不慮の死が予定されている
(“不慮”の死で“予定”というのも、よく分からないけど…)
人間を観察し、“実行=死”か“見送り=生かす”かを判定するのが
彼ら、死神の役目」
----“彼ら”ということは、... [続きを読む]
受信: 2008年4月20日 (日) 21時59分
» キレイにまとめて終わってしまった。『Sweet Rain 死神の精度』 [水曜日のシネマ日記]
7日間で人間の生死を見極める死神と、その対象者たちの物語です。 [続きを読む]
受信: 2008年4月20日 (日) 22時14分
» Sweet Rain 死神の精度 [そーれりぽーと]
久々の金城武主演作は、なぜかこちらも久々なウォン・カーウァイ監督作と同日公開。
多分偶然かなw
『Sweet Rain 死神の精度』を観てきました。
★★★
あと5年早ければ、金城武のプロモーション映画かと思ってた。
誕生日が近い俺は、この歳でそんな可愛いぶった演技をするのも大変だねぇと思いながら観てました。
前以上に日本語での演技が下手糞になってどうしたんだろう、と勘違いしたまま相当時間が経って、不器用な死神を表現する演出なんだと気づいた。
それまでは寒くて寒くて仕方がなかったんですがw
小... [続きを読む]
受信: 2008年4月20日 (日) 22時44分
» 【本】死神の精度 [★YUKAの気ままな有閑日記★]
『死神の精度』 伊坂幸太郎 文芸春秋【comment】千葉は死神だ―気が遠くなる程長い間存在している千葉は、時々人間界を訪れては仕事をこなす。勿論仕事とは人の死に関わっている。だが、千葉が独断で人の死を決定したり操作しているわけではない。情報部からの命令を受け、死ぬ予定の人物に近づき、7日間でその人物を調査し、死んでもいいと判断すれば『可』、まだ死ななくていいと思えば『見送り』の報告をするのが千葉の役割りだ。そして死に方も千葉が決めているわけではない。情報部が決... [続きを読む]
受信: 2008年4月20日 (日) 23時01分
» Sweet Rain 死神の精度 [★YUKAの気ままな有閑日記★]
原作の伊坂幸太郎の小説『死神の精度』はまずまず面白かった。映画はどうかなぁ〜 コチラが本の感想です【story】死神の千葉(金城武)の仕事は、不慮の事故で亡くなる予定の人物のところに現れ、その人を7日間観察し、その生死を判断することだ。雨男の彼は、7日後に死を迎えるはずの27歳の会社員一恵(小西真奈美)が現れるのを待っていた。やがてメーカーの苦情係として働き、疲れ果てて仕事を終えた彼女が姿を見せ― 監督 : 筧昌也【comment】今年に入って邦画の劇場鑑賞は3本目で〜す♪私... [続きを読む]
受信: 2008年4月20日 (日) 23時03分
» 死神の精度、伊坂幸太郎 [粋な提案]
写真は藤里一郎。表題作で、第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞。「2006年度版このミステリーがすごい!」の国内編第12位を獲得... [続きを読む]
受信: 2008年4月21日 (月) 03時09分
» 本「死神の精度」伊坂幸太郎著 [日々のつぶやき]
これも映画化されるようです。
主演は金城武さんだとか・・う~~~ん・・イメージではない
「音楽を愛し、常にクールでちょっとズレている死神、人間になった時の名は千葉。彼が仕事をすると必ず雨が降る。晴れた空を見たことがないと言うと同僚に驚かれる。そんな死... [続きを読む]
受信: 2008年4月21日 (月) 10時20分
» Sweet Rain 死神の精度(映画館) [ひるめし。]
雨男、しかも死神。 [続きを読む]
受信: 2008年4月21日 (月) 10時52分
» 【Sweet Rain 死神の精度】 [日々のつぶやき]
監督:筧昌也
出演:金城武、小西真奈美、石田卓也、光石研、富司純子、吹越満
「死神の千葉は、担当する人間の不慮の死を『実行』か『見送り』かを判定する。彼は青空を見たことがない、彼が現われる時はいつも雨。
ある日の担当は、電器メーカーの苦情処理係の藤... [続きを読む]
受信: 2008年4月21日 (月) 11時02分
» Sweet Rain 死神の精度 [sailor's tale]
特別ではないけれど、大切なもの [続きを読む]
受信: 2008年4月21日 (月) 20時42分
» Sweet Rain 死神の精度 [虎猫の気まぐれシネマ日記]
人気作家・伊坂幸太郎の同名小説 の映画化作品。原作もとても面白く,よくできた連作短編集で6話からなるが,映画ではその中の「死神の精度」・「死神と藤田」・「死神対老女」の3話が描かれていた。 原作でも,映画でも,何より魅力的だったのは,設定された「死神」たちのキャラクターだ。彼らの仕... [続きを読む]
受信: 2008年4月21日 (月) 23時05分
» 「Sweet Rain 死神の精度」 [お楽しみはココからだ~ 映画をもっと楽しむ方法]
(2007年・ワーナー/監督:筧 昌也) 一風変わった味わいのミステリー(とも言えないが)で評判の、伊坂幸太郎の同名ベストセラーの映画化。 原作は6編からなる連作短編で、死神が人間... [続きを読む]
受信: 2008年4月22日 (火) 11時48分
» Sweet Rain 死神の精度 [to Heart]
生き方はお任せします。
最期はお任せください。
製作年度 2007年
製作国・地域 日本
上映時間 113分
原作 伊坂幸太郎 『死神の精度』
脚本 筧昌也/小林弘利
監督 筧昌也
音楽 ゲイリー芦屋
出演 金城武/小西真奈美/光石研/石田卓也/村上淳/奥田恵梨華/吹越満/富司純子
{/book_mov/}死神の千葉(金城武)の仕事は、不慮の事故で亡くなる予定の人物のところに7日前に現れ、その人を1週間観察し、その生死を判断すること。雨男の彼はその日も雨の中、7日後に死を迎える... [続きを読む]
受信: 2008年4月22日 (火) 15時02分
» 「Sweet Rain 死神の精度」 演出の意図が見えすぎてもの足りない [はらやんの映画徒然草]
僕は雨男です。 仕事柄、年に何度か広告や商品の撮影があったりするのですが、必ずと [続きを読む]
受信: 2008年4月26日 (土) 07時35分
» Sweet Rain 死神の精度 [よしなしごと]
今までの記録に挑戦!1日4本観るぞ~!と決心した、その2本目は、Sweet Rain 死神の精度を観ることにしました。 [続きを読む]
受信: 2008年4月26日 (土) 22時59分
» 『 Sweet Rain 死神の精度 』 / 2008年 日本 映画 邦画 [やっぱり邦画好き…[日本映画ブログ]]
「生」か「死」か・・・。死神が下したいつもとちがう判定によって、いま時を越えて運命のリンクが動き出したことを、死神自身も知らなかった・・・・! 注目度No.1のベストセラー作家伊坂幸太郎の同名小説を原作に、金城武が初の死神役に挑んだファンタジーとユーモアにあふれる感動のエンターテイメント。運命のインク先に待ち受けるのは、死神さえも知らなかった<判定>の結末。止まない雨はないというけれど??ラストシーン、あなたが見上げる空からは、きっとやさしい雨が降り注ぐ。 日本映画人気ブログランキング... [続きを読む]
受信: 2008年4月27日 (日) 17時22分
» Sweet Rain 死神の精度 <ネタバレあり> [HAPPYMANIA]
3回目の鑑賞です...正確に言うと2.5回目の鑑賞な感じ(笑)詳しくは 初日舞台挨拶の日記へ 1回目 2回目伊坂幸太郎さんの原作が60万部突破の売上 内、一冊にワタクシも貢献武ちゃん らぶぅなワタクシですが、そんなワタクシでも 過去、リターナーを...... [続きを読む]
受信: 2008年5月 1日 (木) 07時45分
» 『SweetRain 死神の精度』 (2008) / 日本 [NiceOne!!]
監督:筧昌也原作:伊坂幸太郎出演:金城武、小西真奈美、富司純子、光石研、石田卓也、村上淳、奥田恵梨華、吹越満公式サイトはこちら。<Story>死神(金城武)が現れるのは、人が不慮の死を迎える7日前。観察期間の後、「実行」か「見送り」かを判断するのが仕事...... [続きを読む]
受信: 2008年5月 5日 (月) 15時16分
» 死神の精度<伊坂幸太郎>−本:2010-31− [デコ親父はいつも減量中]
死神の精度クチコミを見る
# 出版社: 文藝春秋 (2005/6/28)
# ISBN-10: 4163239804
評価:80点
5年も前の小説とは知らなかった。
しかもラジオドラマ化、映画化(金城武主演)、舞台化までされているなんて。
確かに完ぺきに出来上がった、洗練された構成。
死神と人間....... [続きを読む]
受信: 2010年8月29日 (日) 18時15分
コメント
由香さんこんにちは
やはり由香さんも感じましたか。
あの映画にし難い原作を上手にまとめていますよね。
『ゴールデンスランバー』は僕も未読です。近いうちに読むつもりですが・・・
hitoさんこんにちは
かなり伊坂ファンですよね。
この原作も、hitoさんのブログに触発されて読んだのですから・・・
「ゴールデンスランバー」は気になりますね。
投稿: ケント | 2008年4月22日 (火) 12時52分
TBありがとうございます。
伊坂さんは大好きな作家さんです!
さりげないリンクがいいですよね。前述の言葉が後になってちゃんと意味を持っていて、本当に複線の張り方がいつも見事です♪
「ゴールデンスランバー」も好きです!!これも映画化されるだろうな~絶対に。
最初千葉のイメージは金城さんとは違う・・と思っていましたが、映画を見るととても馴染んでいました。
投稿: hito | 2008年4月21日 (月) 10時23分
こんばんは!
私も映画を観ましたので、そちらもTBさせて頂きました♪
映画は、元々淡々とした原作を上手く纏めていましたね~私も原作よりも雰囲気がいいなぁ~と思いました。
金城さんの死神はハマリ役でしたね~
ちょっとズレてる千葉を上手く演じていたと思いました~
伊坂さんの『ゴールデンスランバー』は未読ですが、本屋大賞を受賞したので気になっています。
近いうちに読みたいです♪
投稿: 由香 | 2008年4月20日 (日) 23時09分