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2008年4月の記事

2008年4月29日 (火)

パラノイド・パーク

★★★☆

 スケボー公園のことをなぜ『パラノイド・パーク』と呼ぶのだろうか。実は主人公の少年の心象風景こそパラノイドなのだろうな。舞台はオレゴン州ポートランド。アメリカ映画とは思えない寒々しい風景と、繊細な心の陰りが描かれている。
 最近、時間軸をバラバラに繋ぎ合わせたり、ハンディカメラを使って手ブレさせたり、やたらと長回わしを意識する映画が多い。昔なら斬新に感じられたが、もうこんな手法は古くさいしウザッタイだけだ。本作でも多少その傾向がみられたが、それほど気にならない程度で抑えていたのは好感が持てる。

           Scan10343_2

 ストーリーは、ものの弾みで警備員を殺してしまった(というより過失なのだが)少年の葛藤を淡々と描く。両親の離婚にも動じず、同級生とのセックスにも無感動だが、さすがに殺人を犯してしまったことに無頓着でいられるはずがない。少年の不安と恐怖がじりじりと観客の心に沁みこんでくる。
 スケボーと、かったるい調子の音楽とが見事にミキシングされて、独特の世界感が融合されていたね。あの映像とミュージックは、幻想的でやみつきになりそうである。
 ストーリー的には、スケボーに特化する必然性はない。だが、ガス・ヴァン・サント監督の心のどこかに、スケボーに対する深い思いがとぐろを巻いているのだろう。ただこの映画のメッセージが伝わってこないのが残念だね。
 気のせいだろうか、渋谷という場所柄もあるが、観客の中に何となくスケボー狂ではないかと思われる青年たちを数人みかけてしまった。

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2008年4月27日 (日)

クローバーフィールド/HAKAISHA

★★

 自由の女神の頭が大通りにふっ飛んでくる予告編につられて、映画館に足を運んだのが運のつき。確かに公式ページには、「全く新しいアトラクションタイプの映画です。特別な手法による映像は、ご鑑賞時の体調によっては激しい車酔いに似た症状を引き起こす可能性がございます。~。」と警告文が記載してある。

     Scan10327

 しかし普通はこれって、宣伝文句だと思うよな。ホラー映画ではよくこうしたコピーを見かけるものね。それで観た後に気分が悪くなっても、「だから事前に警告したでしょ。それを承知で観た貴方が悪い」となる。
 これって余りフェアじゃないぞ。正しい警告文を書くなら「この映画はリアル感を出すために、あえてハンディカメラで撮影し、全てのシーンを手ブレ映像で製作しました」と一札入れるべきじゃないの。
 アトラクションであろうと現実であろうと、あれほど始めから終わりまで視点がぶれるはずがない。だから逆にちっともリアル感は湧かなかった。それに手ブレなんて特別な手法でもなんでもない。映像を揺らすのは、怪物が暴れた時と、軍隊が砲弾をブッぱなした時だけで十分である。
 この映画に限らず、やたらハンディカメラを振りまわし、わざと手ブレ映像を作って芸術をきどる監督が時々いるよね。またそうした技法を称えて、監督を甘やかす映画ファンがいるのも問題だ。少なくとも僕は嫌だね。商業映画なのだから、観る人に優しい映像を創る義務があるはずじゃないの。
 僕はもともと車酔いし易いタイプだ。最近のリアルなTVゲームでも酔ってしまう。だからハンディカメラを使った手ブレ映像には、とっても耐えられない。全シーン手ブレ映像と正確に警告してくれれば、絶対に観なかったのに・・・。
 延々と車酔いの苦情を並べてしまったが、それを除けば素晴らしい映画だと思う。と言うのは、いつも「怪獣映画」を観ていて不満に感じていたことを、解消してくれたからである。

ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃 DVD ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃

販売元:東宝
発売日:2008/06/27
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 日本の怪獣映画は、いつも視点が怪獣側にあり、怪獣同士のプロレスごっこに終始している。もし本当にゴジラのような巨大な怪獣が出現したら、大地震やテロどころの騒ぎではない。戦争以上なのだから。
 人間側の視点で怪獣の映像を創り、その痛々しい被害状況を映像化出来ないものかと常々考えていた。それをこの映画であっさり実現され、「やられた!」と快哉してしまったね。
 そうした意味で、従来創られなかったこの新しい映像に大拍手を送りたい。またゴジラではなくエヴァンゲリオンの使途」のような怪物の姿もグッドだ。もし手ブレがなく、もう少しドラマ性を練り込んでくれたら満点をつけてもよいだろう。それとアトラクションをきどるなら、3Dの大画面に7ch位の立体大音響も必要じゃないの。
 せっかく僕の長年の願望が叶った映画だったのだが、「手ブレ」が全てをぶち壊してくれた。非常に残念で堪らないね。是非この辺りを改善して続編にチャレンジしてくれることを願ってやまない。

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2008年4月23日 (水)

ホステル2

★★★☆

 ホステルでただ一人助かった男が、いきなり殺されてしまう。続編にありがちな展開である。ホステルは男性の三人組が主役だったが、今度は女性の三人組がターゲットとなる。このあたりの展開は、続編の定石といったところか。
 だがこの続編では、かなり残虐性が薄められている。映像もB級スプラッターホラーとは思えないほど美しい。そしてエログロナンセンスで方向性のなかった前作とはうって変って、論理的なストーリー展開に仕上げているのだ。

ホステル2 [無修正版] DVD ホステル2 [無修正版]

販売元:アミューズソフトエンタテインメント
発売日:2008/02/22
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 さらに今回は被害者側の描写に留まらず、加害者側の心理状態とか、人さらい組織のシステムについても描かれている。ネットではかなり評価の低い続編であるが、マニアックなスプラッターファンではない限り、映画の出来は決して悪くないと感じるはずである。
 いくら映画といえども、意味もなく「人が人を切り刻むような行為」が許されるはずがない。またこうした変態映画を観てマネをするバカ者も現れるはずだ。この続編にはそうした反省の色が多少みられる。
 それにしても、ペニスをペンチでちょん切って、犬に食べさせるシーンには笑っちゃったよね。まだ組織は壊滅していないし、ラストの締め方を観ていても、さらにもう一回続編がありそうだな…。
 

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2008年4月20日 (日)

死神の精度

★★★★

 原作は今どき最も旬な作家、伊坂幸太郎」である。先日も『ゴールデンスランバー』という小説で、2008年本屋大賞」に選ばれたばかりだ。
 小説のほうは『死神の精度』、『死神と藤田』、『吹雪に死神』、『恋愛で死神』、『旅路を死神』、『死神対老女』の六篇の短編で綴られている。またこの六篇は、死神・千葉シリーズに違いないが、ラストの『死神対老女』の中で、『死神の精度』と『恋愛で死神』とが微妙にリンクしてくる。

死神の精度 Book 死神の精度

著者:伊坂 幸太郎
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ところが映画のほうは、この六篇のうち『死神の精度』、『死神と藤田』、『死神対老女』の3作を選んで、やはり『死神対老女』の中でリンクしていた。またそれぞれに年代を設け、『死神の精度』が過去、『死神と藤田』が現在、そして『死神対老女』が未来という設定になっている。さらにはこれらの話は、ラストで時を超えて見事に収束されているではないか。
 実によく練り込まれた素晴らしい脚本である。また小説で多用していた説明文をどうやって映像化するのか楽しみにしていたが、それも見事にクリアしてしまった。

「Sweet Rain 死神の精度」オリジナル・サウンドトラック Music 「Sweet Rain 死神の精度」オリジナル・サウンドトラック

アーティスト:サントラ
販売元:バップ
発売日:2008/03/19
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 まずオープニングで死んだ少女の霊に、「死神」だと見破られることによって、金城武が「死神」であることをさりげなく紹介する。そして黒犬との会話にコンピュター文字を使用することで、独り言を上手に処理している。
 これらは原作にはないパーツである。またおもちゃの車を見て、過去の事故を回想するシーンも含め、実に巧みに文章を映像にチェンジしているではないか。
 それとヤクザの藤田だが、原作では義理と任侠に生きる強い男として描かれていた。だから藤田役は、高倉健や菅原文太のような男気漂う俳優でなくてはならないはずだった。
 ところがその藤田役に『めがね』で、たそがれていた「光石研」を使ったのは何故なのだろうか。その疑問は、終盤になって解けるのだが、この映画の中では藤田に余りスポットライトを当てたくなかったのだ。
 このあたリの事情を詳しく話すとネタバレになるが、藤田の手下である「阿久津」の存在がぼやけないための配慮なのだろう。それにしても用意周到である。常に全体の流を読み取った演出だといえよう。

           Scan10326

 原作ものの映画を観ると、ほとんど圧倒的に原作が勝ち、映画のほうは期待外れとなる例が多いものだ。ところがこの映画は決して原作に負けていない。原作ファンには申し訳ないが、もしかすると原作を凌いだ映画に仕上がってしまったのではないだろうか。

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2008年4月19日 (土)

ふしぎの国の安兵衛

 江戸時代の武士が、現代にタイムスリップしてきて、現代女性と知り合い、そしてマスコミの兆児となる。このパターンは原田泰子の『満月』と全く同じではないか。
 ただ『満月』が甘く切ない純粋なラブストーリー仕立てなのに対して、本作はユーモア溢れるホームドラマという趣向である。基本的な構成は『満月』のパクリに近いが、本作は『満月』以上に面白い。だから二時間程度であっという間に読破してしまった。

 ストーリーは、キャリアウーマンのひろ子と息子の友也が、江戸時代からタイムスリップして、途方に暮れていた安兵衛を助けるところから始まる。その後安兵衛は恩返しのため、友也の世話と家事一切を引き受け、ひろ子にとって彼は必要不可欠な存在となるのだった。
 とにかく楽しく読ませながらも、一方では軟弱になった現代家庭をピリリと皮肉っているところに味がある。そしてさりげないラストの括り方もなかなか見事だったね。

ふしぎの国の安兵衛 Book ふしぎの国の安兵衛

著者:荒木 源
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ところでこの本のセンスのないカバーデザインにだけは参ったね。ちょんまげ姿のじゃがいも小僧が、寝ころんでいるイラストに、水色と黄色の背景というダサイセンス。最初このカバーをみて、思わず読むのをやめようかと思ったくらいだもの…。
 本書の著者である荒木源氏は、ほとんど無名の作家であるが、朝日新聞社を退社し、2003年に『骨ん中』という社会派ミステリーでデビューしている脱サラ作家である。今後の活躍を祈りたい。

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2008年4月16日 (水)

パンズ・ラビリンス

★★★★☆

 少女が主役で、妖精やモンスターが登場するファンタジー映画なのだが、『ナルニア物語』とか『ライラの冒険』などの娯楽フアンタジーとは全く異なる作品である。
 というのも、この映画のファンタジー部分は、主人公の少女オフェリアが、現実逃避するために創り出した架空世界だから…。

パンズ・ラビリンス オリジナル・サウンドトラック Music パンズ・ラビリンス オリジナル・サウンドトラック

アーティスト:サントラ
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2007/09/27
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 その現実とは、1944年のスペイン内戦で父を亡くし、恐ろしい独裁者の軍人と再婚してしまった母親と、嫌いな義父との共同生活。そしてフランス軍とゲリラたちとの度重なる不毛な戦い。残虐な拷問と悲惨な殺戮。
 架空世界とは、地下深くに存在する幻想的な世界で、昔そこでオフェリアは王女だったという。しかしそこに戻るためには、三つの試練をクリアしなくとはならない。
 はじめのころ、オフェリアの心は幻想と現実の狭間を交錯する。だが母の死とともに現実の全てを拒否し、幻想世界だけを求め始めるのだ。

パンズ ラビリンス/Pan’s Labyrinth パンズ ラビリンス/Pan’s Labyrinth
販売元:HMVジャパン
HMVジャパンで詳細を確認する

 幻想世界の入口で、門番をしている牧神パンからもらった白紙だけの本。しかし1人になって、思いを込めてこの本を見つめると、絵と文字が自然に浮かび出てくる。そしてそこには、三つの試練が記されているのだった。
 その三つの試練とは、不潔で気味が悪いもの。一歩間違えれば、怪物に捕まって食べられてしまう恐ろしいもの。そして欲望や誘惑を絶ち切り、正しい心を示さなくてはならないもの。
 この童話的な世界観は、オフェリアが現実世界でいつも読んでいたお伽話からの発想だろう。また彼女が自分自身に三つの試練を課したのは、嫌な男との結婚を引換えにした母の安易な逃避を許せなかったからに違いない。
 身重の母を心配しながらも、もう一方の心では母を怨んでいたのかもしれない。それがあの大出血シーンに繋がったともいえる。だから心は母よりも、同じように悩みを持つ使用人メルセデスのほうに傾きつつあった。
 偶然の一致だと思うが、オープニングとエンディングが、メビウスの輪のように捻れて繋がってゆくさまは、まるでマーク・フォースター監督の『ステイ』そのままである。
 重くて暗いテーマだったが、そこにオフェリアの描く幻想世界を見事合体させ、斬新なストーリーに仕上げている。映像も美しい、まさに映画の持ち味を生かし切ったという意味では、稀にみる秀逸な作品といえるだろう。

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2008年4月15日 (火)

エディット・ピアフ~愛の讃歌~

★★★★

 日本では馴染みが薄いが、フランスでは国民的なシャンソン歌手である。彼女は身長が142cmしかなく、「ラ・モーム・ピアフ(小雀)という芸名でブレイクしたという。
 究極の貧困生活を経験し、路上で歌を歌い大歌手に昇り詰めた経緯は、日本人なら『美空ひばり』を髣髴させられるよね。

エディット・ピアフ~愛の讃歌~ (2枚組) DVD エディット・ピアフ~愛の讃歌~ (2枚組)

販売元:東宝
発売日:2008/02/22
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この作品は、そんな彼女の伝記映画なのだが、晩年で彼女が途切れ途切れに思い出すシーンを、時間軸をランダムに並ベているため少し分り難くなっている。だがそのお陰で、単純な伝記映画に納まらず、芸術的な匂いが残る名作に仕上がったのであろう。

エディット・ピアフ Music エディット・ピアフ

アーティスト:エディット・ピアフ
販売元:EMIミュージック・ジャパン
発売日:1997/12/10
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 なんと言っても、歌そのものが一番感動的であったのは、ピアフ本人の歌を合成して吹き替えたからである。なにせあのしわがれた声がイイね。『愛の賛歌』、『パダンパダン』、『ばら色の人生』、『フルフル』、『ミロール』のオンパレードには酔いしれてしまったな。
 最後にもうひとつ、ピアフを演じたマリオン・コティヤールの迫真の演技にも絶大なる拍手を贈りたい。

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2008年4月13日 (日)

デス・プルーフ

★★★☆

 デス・プルーフとは、「耐死亡性」を備えていること。映画のスタントマンが乗る車は、当然この仕様になっている。
 この作品ではカート・ラッセル演じるところの殺人鬼マイクもスタントマンで、この仕様の車を暴走させる。そして事故を装った殺人を実行するのだ。

デス・プルーフ プレミアム・エディション DVD デス・プルーフ プレミアム・エディション

販売元:ジェネオン エンタテインメント
発売日:2008/02/22
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 さてスタントマンといえば本物のスタントマン、いやスタントウーマンのゾーイ・べルが本名で出演している。しかも彼女は『キル・ビル』で、ユマ・サーマンのスタントで大怪我をしたにも拘わらず、最後まで撮影を続けたタフネスウーマンだという。スタントだけではなく、ラストのど迫力アクションにも度肝を抜かれてしまった。
 さすがにプロのスタント演技はもの凄いね。高速で突走る車のボンネットの上に乗ったまま、殺人鬼マイクの車に後方と側面からガンガン車をぶつけられる。それでも必死でしがみついて落ちない。あれは本物のスタントなのか、合成なのか、だぶん両方なのだろう…。

 タランティーノのもうひとつのこだわりは、1971年に公開された幻の名画『バニシング・ポイント』である。ストーリー中にも、何度かこの映画の話が出るが、とうとうラストには『バニシング・ポイント』で使用された70年型の白いダッジ・チャレンジャーでのカーチエイスとなるのだ。

20世紀フォックスホームエンターテイメン バニシング・ポイント 20世紀フォックスホームエンターテイメン バニシング・ポイント
販売元:murauchi.DVD
murauchi.DVDで詳細を確認する

 『バニシング・ポイント』については、僕も大昔に下北沢の『オデヲン座』という映画館で観たことがある。当時二番館では三本立てが主流であったが、映画ウィークの特別企画として、なんと五本立てを上映していたのだ。
 その五本立てに惹かれて、特にお目当ての作品もないまま映画館に足を運んだ。その五本の中でも未だに記憶に残っているのは、『バニシング・ポイント』だけである。
 『バニシング・ポイント』は、平均時速200Kmで田舎道をバンバン飛ばす白塗りのダッジ・チャレンジャーを、パトカーが追いかけてゆくだけのシンプルな映画だったと思う。それでもいつまでも僕の脳裏にこびりついているのだから、それだけ面白い映画だったのだろう。タランティーノだけではなく、映画ファンなら誰でもが忘れ得ぬ作品なのである。
 この映画は『バニシング・ポイント』のオマージュとして作りあげたのだろう。しかしさすがのタランティーノにしてみても、カーチェイスだけの映画創りは難しかったのかもしれない。それで女たちの長話を挿入し過ぎてしまったのだろうか。
 あの無駄話にはとことん辟易し、僕は途中でDVDを早送りしてしまったほどだ。女たちのおしゃべりにムカついた男性は多いだろうな。考え過ぎかもしれないが、それがタランティーノの作戦だったのかもしれない。
 あえて観客にストレスを惹き起こさせ、観客たちのイライラ心と殺人鬼が暴走する心理との一体感を合成したかったのか。いずれにせよこの映画は、終盤のカーチェイスにタランティーノの全エネルギーが注入されているといってもよいだろう。

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秋の牢獄 

 この本には三つのお話が詰め込まれている。タイトルの『秋の牢獄』のほか、神家没落』、『幻は夜に成長する』の三篇である。
 著者の恒川光太郎は2005年に『夜市』で第12回日本ホラー小説大賞を受賞し、いきなり直木賞候補となった脅威の新人である。そのじっとりした美しい文体から繰り出す、ノスタルジックな世界観はやみつきになりそうだ。

 秋の牢獄 秋の牢獄
販売元:セブンアンドワイ
セブンアンドワイで詳細を確認する

 さて三つの話は、全く関連性のない別の話である。しかし全ての作品には、「監禁される」というテーマが根底に流れている。
 『秋の牢獄』は、映画の『恋はデジャ・ブ』北村薫の『ターン』と同様に、同じ毎日が繰り返されてしまう話である。ただこの奇妙な世界に迷い込んだのは、主人公1人だけではなかった。
 そこには同じ状態の漂流者が何人も存在し、彼等はグループを形成していた、という設定が前述の映画や小説と異なる展開である。11月7日から翌日に行けないということから、ある意味11月7日の中に監禁されていると考えることができるだろう。
 『神家没落』に登場する古い家は、誰かが残らない限り、一度入ると絶体に外に出られない。そして代々誰かが犠牲になって、この家を守ってきた。外の人々は、その住人を神と呼ぶ。もちろん、これこそ監禁以外の何物でもないよね。
 『幻は夜に成長する』は、三作の中では一番もの悲しい作品だ。祖母から超能力を与えられた少女が、ある宗教団体の生き神様として、監禁されて生きるようになった過程を描く。きっと読者たちには、少女の不安と孤独と絶望感がひしひしと伝わってくるはずである。
 それにしても、本書の著者である恒川光太郎の力量は計り知れない。既存の作家にはない独特の感性とパワーバランスに酔いしれてしまった。1973年生まれと、まだ若いのでこれからが楽しみな作家である。

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2008年4月12日 (土)

ホステル

★★★

 タランティーノが総指揮をとったスプラッターホラーで、人間を家畜のように切り刻む。手足の指を切り落とし、眼球を繰り抜き、メスやドリルやチェーンソーが体に食いこんでゆく。
 これでもかとばかりに、目を覆いたくなるシーンが続出するのだが、それほど恐怖感が湧かず、気分も悪くならなかったから不思議だ。むしろ『スウィニー・トッド』や『人肉饅頭』のほうが、はるかに気味が悪かったね。

ホステル 無修正版 コレクターズ・エディション DVD ホステル 無修正版 コレクターズ・エディション

販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
発売日:2008/02/22
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 たぶん前半の金髪美女とのエロシーンに気をとられ過ぎて、ホラー映画であることを忘れてしまったからなのだろうか。
 日本びいきのタランティーノが総指揮をとったせいか、2人連れの日本人女性旅行者が登場していたのが気にかかった。確かに役柄は日本人であったが、かたことの日本語を聞いていると、演じているの中国人ではないかと疑ってしまう。
 タランティーノ得意の、バリバリB級映画であるが、いまひとつのめり込めなかった。エロシーンに執着し過ぎたことと、映画の世界観がいまひとつはっきり定まっていないのが原因かもしれない。
 すでに続編の『ホステル2』もDVD化されているが、本作よりもかなり評判が悪いようだ。それでもやはり続きを観たいという心理には勝てないのが人情である。

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2008年4月11日 (金)

悲しき人形つかい

 タイムトラベルとは全く関係のない梶尾作品を初めて読んだ。タイトルは口バート・A・ハインライン『人形つかい』のオマージュであろう。

悲しき人形つかい Book 悲しき人形つかい

著者:梶尾 真治
販売元:光文社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 エイリアンが人体に侵入して人間を操るという『人形つかい』に対して、本作では介護用のボディフレームを、死人に装着するという荒唐無稽な発想だ。そして終盤では、このボディフレームを使ってやくざと戦闘するというお笑いドタバタ風味の作品なのである。
 まるで『ロボコップ』、『エイリアン2』、『鉄人28号』、はたまた落語の『らくだの馬さん』をごちゃまぜにしたような展開には笑ってしまうだろう。しかしまあよくもこんなバカバカしいネタだけで長編小説を作ったものである。
 小説というより、これはもうマンガの世界に近いしろものなのだ。あのロマンチストの 梶尾真治が描く世界感とは思えない。
 と言いながらも、面白い作品であることは否めず、数時間であっという間に読破してしまった。

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2008年4月 9日 (水)

プラネット・テラー

★★★☆

 タランティーノの兄弟分、ロバート・ロドリゲス監督の本領発揮。ザラザラでわざと雨あとをつけたドギツイ映像は、同監督の『シン・シティー』を思わせる超B級映画である。

プラネット・テラー プレミアム・エディション DVD プラネット・テラー プレミアム・エディション

販売元:ジェネオン エンタテインメント
発売日:2008/03/21
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ことに失った片脚にマシンガンを装着して、ダンスステップで敵を打ちまくる元ダンサー(ローズ・マッゴーワン)は絵になったな。あの片脚はCGなのだろうか、B級にしては結構製作費がかかっていそうだ。
 また彼女と恋に落ちる、さすらいのガンマン(フレディ・ロドリゲス)もなかなか面白いキャラだった。彼はナイフさばきも見事で、拳銃は百発百中なのだ。そしてちょい役ではあるが、ブルース・ウィリスが、なかなか渋い悪役を演じている。
 ゾンビたちのドロドロべトべトの血と膿が、これでもかとばかりに、スクリーン一杯にまき散らされるのだ。気分が悪いのなんの、人によってはそても耐えられないだろう。
 DVDで観たせいか、僕は不思議と平気だった。まあどうでもいいような映画だが、つべこベ言わずにプロレスだと思って、イケイケどんどんと楽しむしかないよね。

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2008年4月 6日 (日)

ルノワール+ルノワール展

 渋谷文化村のザ・ミュージアムで開催されているこの妙なタイトルの展覧会、実は画家の父と映画監督の息子の合同展覧会だったのだ。ご存知の通り、父の名はピエール=オーギュスト・ルノワールであり、息子はジャン・ルノワールである。

     Scan10342

 父の絵では、やはり人物画が一番好きだ。それもポッチャリした女性の絵が良い。当時の女性は皆んな太めだったのか、それとも父の好みだったのか。だから父の絵は、温かく柔らかく明るい輝きを放つのであろうか。
 一方息子の映画には、父の絵画をオマージュにした映像が多いという。この映像と絵画を並べて、改めて二つの作品を見比べてみよう~という試みがこの展覧会の目的である。
 「ブランコ」と『ピク二ック』、「陽光のなかの裸婦」と『草の上の昼食』など数点の作品をみて驚かされた。確かに息子の映像の中には、父の絵を思わせるシーンが数多く登場するのである。
 絵画と映画を並ベて展示・投影した展覧会、しかもそれが父と息子の仕事なのだ。果たしてこんな偉大なる偶然があってよいものだろうか。
 

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6時間後に君は死ぬ

 オムニバスの中編集で、タイトル作品のほか『時の魔法使い』、『恋をしてはいけない日』、『ドールハウスのダンサー』、『3時間後に君は死ぬ』の5作を収録している。

6時間後に君は死ぬ  /高野和明/著 [本] 6時間後に君は死ぬ /高野和明/著 [本]
販売元:セブンアンドワイ ヤフー店
セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する

 『3時間に君は死ぬ』は、タイトルの『6時間後に君は死ぬ』の続編で、5年前に出逢った山葉圭史と原田美緒が再会を果たす。そして3時間後に起こる大惨事を食い止めようと、ハラハラドキドキの探索を行うのだ。続編でありながらも、『6時間後に君は死ぬ』よりずっと面白い。

 『時の魔法使い』と『恋をしてはいけない日』は、まるで梶尾真治の描く時間テーマラブファンタジーを髣髴させられる。きっと著者も梶尾真治のファンなのだろう。
 一番良かったのが、『ドールハウスのダンサー』で、現実を人形に置き換えたかのような魔可不思議な世界に惹き込まれてしまった。
 主役というわけではないが、全編を通じて登場するのが、ビジョンという予知能力を持つ山葉圭史であり、この中編小説のアテンダーでもある。『13階段』を書いた高野和明とは全く別人のような話の展開に、著者の貪欲さと懐の広さを感じてしまった。

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2008年4月 1日 (火)

ジャンパー

★★★

 テレポーテーション、つまり瞬間移動出来る超能力を持った青年のお話なのだが、ある意味タイムトラべルものと言えないこともない。つまり時間をかけずに遠距離を移動するわけであるから、時間を短縮する能力なのだと考えることも出来るよね。

           Scan10309

 瞬間移動するときの映像は素晴らしいし、跳ぶ瞬間の効果音と映像は気分爽快だ。ただストーリーが単純過ぎるのが気になった。また車ごとジャンプするというのも、なにか腑に落ちないなあ…。
 異常能力者狩りをするサミュエル・L・ジャクソン達の行動も不可解で、ちょっとしつこい感じがする。それにただ全世界を跳びまくるだけではなく、もう少し時間を伸ばしても、味のあるストーリーを構築して欲しかったね。前半は結構面白かっただけに、ちょっと残念な気分である。
 やはり何にも制約されずに簡単にジャンプ出来る、というのも単調かもしれない。ジャンプするための条件とか、弱点とかを設定するくらいのヒネリが欲しかったね。
 さて貴方がジャンパーになったら、どこへジャンプしたいのかな。やはり世界観光旅行かしらん。僕だったら、毎日ギリギリまで朝寝坊して、会社までジャンプするけどね。

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