いつか眠りにつく前に
★★★☆
脚本を手がけたのは『めぐりあう時間たち』のマイケル・カニンガムであり、どちらも女性による女性のための映画のような気がする。そのためか、アメリカではこの映画に対する批評が、男女真二つに分かれて大論争を呼び起こしたと言う。
もちろん指示派は女性で、否定派は男性だという。僕自身は否定派ではないが、★3つ半という、そこそこの評価を超えるものでもない。しかし一緒にこの映画を観た妻の評価は、間違いなく完璧に★5である。
なぜ男と女の評価にこれほどの差が出るのだろうか。この映画のテーマは、生涯一番気になること、女同士の友情、そして母と娘の愛情の三つだろう。
テーマとしては申し分ない。またキャストにおいても、ヴァネッサ・レッドグレイヴの実娘ナターシャ・リチャ一ドソンが、「アンの長女役」を演じたり、メリル・ストリーブの実娘メイミー・ガマーが、「若き日のライラ」を演じたりと、映像と現実をオーバーラップさせる工夫が凝らされている。
さらに、タ日に染まる黄昏どきの海辺など、美しい映像美にも思わず心を奪われてしまうだろう。だがアンとライラとの友情の絆については全く描かれていないし、アンと娘達との過去にも深入りしていない。だから男性たちには感情移入がし辛いのだ。
ところが女性たちには、例えば母と娘が登場するだけで、本能的にそれまでの状況が、まるで走馬灯のように心の中を駆け巡るのだろう。そして男性には理解出来ない何かが、女性たちの心の琴線に触れてしまうのかもしれない。
ひとは小説や映画の出来事を、自分の過去に置き換えて感動し涙を流す。だから人生経験の豊富な人ほど涙もろくなるものだ。しかし男女それぞれにしか分からない心理や生理もある。そのあたりに、この映画が男と女の論争を生んだ原因があるのかもしれない…。
因みにいつも泣き上戸の僕が、唯一ホロリとしたのは、アンの次女が恋人に妊娠を告げるシーンだけであった。これは男女共通した分かり易い感性だからであろう。
また映画を観るまでは、メリル・ストリーブがもっと頻繁に登場すると思っていたのだが、以外にも終盤の数分間だけの友情出演なのだ。彼女が登場したときは、「よっ!、待ってました大統領!」と大向こうに叫びたくなった。
さすがに大女優の貫禄というか、もの凄いオーラを感じた。そしてこの数分間の出番だけで見事に全てを締めくくってしまったのである。顔はそっくりだが、実娘メイミー・ガマが扮したライラとは、全く別人のライラがそこにいた。
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» いつか眠りにつく前に [to Heart]
あなたが最後に呼ぶのは、誰の名前ですか―
原作 スーザン・マイノット
監督 ラホス・コルタイ
音楽 ヤン・A・P・カチュマレク
出演 クレア・デインズ/トニ・コレット/ヴァネッサ・レッドグレーヴ/パトリック・ウィルソン/ヒュー・ダンシー/ナターシャ・リチャードソン/メリル・ストリープ
{/book_mov/}死の床にある老婦人アン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を2人の娘たちが見守る中、熱にうなされたアンは娘たちの知らない男性の名前を何度も口にする。そんな中、アンの記憶は1950年代のある出来事... [続きを読む]
受信: 2008年3月15日 (土) 23時25分
» 『いつか眠りにつく前に』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「いつか眠りにつく前に」□監督 ラホス・コルタイ □原作・脚本 スーザン・マイノット □脚本 マイケル・カニンガム □キャスト クレア・デインズ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、メリル・ストリープ、トニ・コレット、パトリック・ウィルソン、ヒュー・ダンシー、ナターシャ・リチャードソン、メイミー・ガマー、アイリーン・アトキンス、グレン・クローズ■鑑賞日 3月2日(日)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆(5★満点、☆は0.5)<感想> なんだろう、この豪華な女優陣の競演は... [続きを読む]
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受信: 2008年3月16日 (日) 04時03分
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死... [続きを読む]
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アン役ヴァネッサ・レッドグレーヴの娘役を実の娘ナターシャ・リチャードソンが、ライラ役メリル・ストリープの40年前を実の娘のメイミー・ガマーが演じ、二組の母娘共演を果たした本作。感動作だということだが・・・【story】死の床にある老婦人アン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を、2人の娘コンスタンス(ナターシャ・リチャードソン)と二ナ(トニ・コレット)が見守る中、アンは、娘たちの知らないハリス(パトリック・ウィルソン)という名前を何度も口にする。そんな中、アンの記憶は1950年代のある出来事へとさかのぼっ... [続きを読む]
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「いつか眠りにつく前に」 2008年 米
★★★☆
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監督:ラホス・コルタイ
出演:クレア・デインズ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、メリル・ストリープ、トニ・コレット、グレン・クローズ、ナターシャ・リチャードソン、メイミー・ガマー
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受信: 2008年3月17日 (月) 09時54分
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スーザン・マイノットのベストセラー小説を映画化。
おはなし: 死の床にある老婦人アン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)は二人の娘たちが見守る中、熱にうなされてある男性の名前を何度も口にする。そんな中、アンの記憶は1950年代のある出来事へとさかのぼっていく。親友ライラの結婚式のため、海辺の町を訪れたアン(クレア・デインズ)は運命の恋に落ちるが、その恋は取り返しのつかない悲劇を引き起こす。
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コメント
ミチさんコメントありがとう
そうですね。僕もクレア・デインズとパトリック・ウィルソンには、魅力を感じませんでした。
やはり主役が魅力的でないと、なかなかスクリーンの中に入っていけないものですね。
パピのママさんも同様のようですね。
可もなし不可もなし、毒にも薬にもならないって感じでしょうか。メリルは特出していましたが、出番が少な過ぎた気がしますね。
投稿: ケント | 2008年3月18日 (火) 13時08分
こんばんは!、コメント頂いたのに返事が遅くなりました。
私も評価は3つです、と言うのは、アンが死に際に思い出す若き頃の思い出。
ハリスとバディの男性に愛され、ハリスの方を選んでしまった。
バディは失恋したけれど、あの事故は突発的な出来事。
ライラ役のメリルが見舞いに来て、今までバディのことを悔やんでいたことが、すっきり解消したようで、静かに息を引き取る、なんて素敵な友情なんでしょう。
ヴァネッサとメリルの親子共演、美しく輝いて見えました。
投稿: パピのママ | 2008年3月17日 (月) 21時37分
こんにちは♪
アメリカで男女真っ二つに分かれて論争が起きたなんて信じられない気がします。
第一クレア・デインズとパトリック・ウィルソンにあまり魅力を感じなかったんですよね。
アメリカでは人気があるのかなぁ?
ケントさんの奥様はとても堪能されたようですね~。
投稿: ミチ | 2008年3月17日 (月) 21時28分
オリーブリーさんこんにちは、コメントありがとう
またまた共感出来ない女性の追加です(笑)
同じような母親や娘がいる女性でないとダメなのでしょうかね。皆さんメリルだけは、褒めていますよね。なんだか僕の感想と似た人が多いので驚きです。
hitoさんこんにちは
やっと共感出来た女性が登場しました(笑)
ただハリスに好感は持てないようですね。
いずれにしても、脚本とキャストに問題がありそうな気がします。
投稿: ケント | 2008年3月17日 (月) 12時51分
由香さんこんにちは
結構、入り込めなかった女性が多いのには驚いています。やはりブログを書いている人は、若いからかなぁ。バディのことは僕も気になりました。あれでは踏んだり蹴ったりですからね。
真紅 さんもいまいちのようですね。
どうもアメリカでの男女紛争が嘘のように感じます。それほど日本女性の心は揺さぶられなかったようですね。
投稿: ケント | 2008年3月17日 (月) 12時46分
こんにちは~
女性が共感しやすい女性向の映画ですよね。
母と娘の関係の部分にはとても感動したしいい映画だったのですが、私は最期の時にハリスの名前を呼び彼を思い出すというのがどうも納得できずで・・
叶わなかった恋が美化され心に残るというのはとてもよく解りますが・・たった二日間のあの恋が・・
そこだけが何となくスッキリせずでした。
投稿: hito | 2008年3月17日 (月) 09時58分
ケントさん、こんばんは!
今ココログさんへトラバが入らないので、
コメントだけで失礼します。
私も女ですが(笑)この映画は共感できませんでした。
皆さんが言われてる事と同じなのですが、
若きアンに全く魅力を感じなかったのが一番の理由かな~クレアもあまり上手とはいえなかったし…
ただ老いてからは、アンも波乱万丈な人生だったろうし、母親としても頑張ってきたのではないかと娘達の様子から感じれました。
メリルの登場も良かった♪
私も自分が男っぽい女だと思います(笑)
投稿: オリーブリー | 2008年3月17日 (月) 01時09分
ケントさま、こんにちは。拙記事にコメントとTBをありがとうございます。
今回、TBが成功したようでよかったです♪
私はマイケル・カニンガムをほとんど崇拝しているくらい好きなのですが、この映画には不思議なくらい感銘を受けませんでした。
何故だろう? すっごく女っぽい性格なのに(自分が思っているだけ?)。
テーマやセリフには共感できたし、言わんとしていることもわかるのですが・・・。
実はパトリック・ウィルソンがあまり好きじゃないからだったりして(笑)。
ではでは、また来ますね。
投稿: 真紅 | 2008年3月16日 (日) 22時46分
こんばんは!
TB&コメントありがとうございました♪
ケントさんは奥さまと鑑賞されたんですね。
そして奥さまの評価は満点だったのですか・・・
私は一応女性ですが(笑)、この映画にはイマイチ入り込めませんでした。
アンが死の間際で、自分の親や兄弟、子どもなどの名前ではなくハリスの名前を何度も呼んだ、というのがピンときませんでしたし、ハリスとの恋もそれに相応しいものには思えなかったからです。
バディの最後も可哀想だったので、彼のことが引っ掛かりましたし・・・
でも、とても雰囲気は素敵でした。
ボートに横たわるアンの姿は目に焼き付いています。
投稿: 由香 | 2008年3月16日 (日) 21時56分
テクテクさんこんばんは
やはり女性目線から出るビーム光線だと、解析出来てしまうのですね(笑)
しかし、皆さんハリスには疑問符付ですよね。
ミスキャストなのですかね。
投稿: ケント | 2008年3月16日 (日) 20時45分
こんにちは
TB&コメント、ありがとうございました
やはり、この映画を女性目線で観ると、
心の奥底に秘めた過去の不完全燃焼の恋愛を
最後に思い出してしまうアンの気持ちは
分かる気がします
例えば、アンが幸せな結婚生活を送っていたなら、
そんな事もないと思うのですが、
映画を観た限りでは、決してそうではなかったので、
やはり、失敗した結婚生活の前にあった、
結末のない美しい恋愛が心に残り続けたのでしょうね
ただ、私にはハリスの言動や彼の本意が、
全く理解出来なかったので、
「あんな軽率男のどこがイイの」
と思って、ハリスの事をボコボコに書いてしまいました
でも、恋愛って、その人のどこに心を奪われたのかは、
恋に落ちた本人にしか分からないモノなんですよね…
投稿: テクテク | 2008年3月16日 (日) 17時18分
ぷくちゃんこんにちは
いまひとつだったようですね。
僕もハリスがなぜ女性にもてたのかが、よく納得出来ていません。確かに死んだ弟のほうが人の心に残る気がするのですが・・・好き嫌いの問題でしょうかね。
あるいはハリスの能面のような表情に、愛着を感じないのでしょうかね。
投稿: ケント | 2008年3月16日 (日) 13時24分
kiraさんコメントありがとう。
だいぶ評価が厳しいようですね。
僕は★3.5ですが、感情移入度では★1.5位かもしれません。物語とテーマと俳優達に★2を加算したのです。ところでkiraさんって、男ぽい性格でしたか?
non さんこんにちは
そうですね。期待度からすると、男女通して余り高得点ではないですよね。
年老いた母とか娘がいる女性は、感動するでしょうね。
投稿: ケント | 2008年3月16日 (日) 13時21分
こんにちは。トラックバックありがとうございました。
美しい映像・・静かな時間が流れていくのは感動的でしたが、今一つ消化不良でした。
死んでしまった弟、彼の心の中を描いた方が良かったのでは?彼はアンだけでなく男性の方にも心ひかれていたと思います・・・
投稿: ぷくちゃん | 2008年3月16日 (日) 09時47分
こんにちは♪ TB、コメントありがとうございました。
そうですね。
この作品はほんとに女性なら共感できるかな・・・という内容でしたね。
死に間際に色々思う事、きっと男性なら違った感じになるんでしょうねぇ。
ただ、この作品皆さん評価が余り良く無いようで・・(汗)
私は今子育て真っ最中で、後悔したり落ち込んだりの日々で、
この作品の死にゆく母親の思いに共感できてしまったんですよね・・・
あんな恋愛はしたこと無いけど(^-^;)
投稿: non | 2008年3月16日 (日) 06時47分
ケントさん、こんばんは!
TB,有難うございました~☆
今年の作品は、ホントいうと、☆3つというのはあまり無くて
4つ以上か、3以下かという感じなんですね~。
この作品も満足度からすると2・5という感じです(^^;
やはりこれって、どちらかというと男っぽい自分の性格もあるのでしょうか(笑)
投稿: kira | 2008年3月16日 (日) 00時42分
香ん乃さんコメントありがとう
女性でも、今ひとつの人が少なからずいるので驚いています。やはり内容より映画の創り方に問題があるのかもしれませんね。
投稿: ケント | 2008年3月15日 (土) 22時51分
ケントさん、こんばんは。トラバありがとうございました。
私は女性ですが、それでも、この作品がぴんとこないひとりでした。
メリル・ストリープの演技をもっと見たかったなぁ、とも思いました。少ない登場シーンでも、充分な存在感ではありましたが。
投稿: 香ん乃 | 2008年3月15日 (土) 22時25分