へび女房
著者は男のような名前であるが、れっきとした女性である。最近40代の女性作家が一番脂が乗りきっているよね。
彼女もその一人であり、過去に直木賞の推薦候補者に選ばれたこともある。これは最近の女流作家に共通していることだが、文章が緻密で小説のバックボーンを丁寧に調べあげる。
へび女房 著者:蜂谷 涼 |
本書には、タイトルの『へび女房』のほか、『きしりかなしき』、『雷獣』、『うらみ葛の葉』の4編が収められている。
どの作品も明治維新という激動の時代に、たくましく、したたかに、それでいて真摯さを失わなかった女性達の生き様を描く。そして幕末から維新にかけて活躍した実在の人物が頻繁に登場し、ヒロインたちと微妙に関わりを持つのだ。
歴史上の人物については、歴史に残る事実に添いながらも、別のファインダーで覗いてゆく。このあたりの匙加減は、とにかく唸るほど見事なものである。
また全編に芸者という職業が絡みついているのは、当時の女性達が身を売るよりほかに生きる術がなかったことを主張したかったのだろうか。
『へび女房』は、女房がへびの化身だったというお伽話ではない。世の中が変わっても、武士の面目を捨て切れない夫に頼らず、自らマムシを仕入れて「へび屋」を開業した女房の苦労話なのである。
『きしりかなしき』は、大名の姫君から芸者に身を落とし、外国人の妻となった女性の葛藤を描いた傑作。また『雷獣』と『うらみ葛の葉』でも芸者と外国人妻を中心的に描いている。
そしてこの4編は、そのほかの登場人物でも、微妙にリンクしているのだ。なんだかオムニバス映画を観ているような気分になってしまった。
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