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2008年2月 2日 (土)

母べえ

★★★

 平日の昼間だというのに、館内はほぼ満員状態。一体どうなっているのだ。よく見ると、年配のカップルばかりである。
 そりゃあそうだよな、若い人は働いている時間帯だものね。それにこの古いテーマの映画を若い人が観るはずもない。

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 太平洋戦争の直前、日中戦争真っ只中の頃か…。夜明け前に突然特高が土足で侵入。子供たちの目前で、父は治安維持法違反で逮捕され、長期間の獄中生活を余儀なくされる。
 暗く悲しいお話のはずなのだが、なぜか余り重苦しい気分にはならない。父べえの逮捕に至るまでの経緯が描かれていないこと、全般的な流れがホームドラマチックであることなどが、その原因と考えられる。
 また山田監督は、戦争反対の雄たけびをあげたかったのか、それとも母性愛の深さに酔いしれたかったのだろうか。その辺りの焦点がボケてしまい、中途半端なメッセージしか残せなかった。
 また細かいことを言えば、戦後の激動の中、女手一つでどうやって娘二人を大学まで進学させられたのか疑問である。だったら中学もロクに出ていない人だっていたのだから、余り同情出来ないな。綺麗ごとだけでは、絶対不可能なはずだ。
 そんなところにも、ストーリーの一貫性のなさを吐露してしまっている。どうしても、臨終の「あの言葉」を伝えたかったのかもしれないが、それほどの感動はなかった。いずれにしても、現代のシーンについては蛇足としか言いようがない。
 だがもう一つの重大要因は、母べえを演じる「吉永小百合」が発するオーラにある。『北の零年』のときも感じたのだが、どんなに貧しくてとも、死ぬほど苦しくとも、いつも彼女は上品で正しく、美しい顔を崩さない。
 これは彼女の演技力の限界なのか、或いは周囲の者が気を使い過ぎているのだろうか…。
 巷では、60を超えた彼女が30代の女性を演じることに、違和感があるという批判が多い。だが年令うんぬんよりも、彼女に「永遠の吉永小百合」を求めるファンに責任はないのだろうか。
 またそのファン心理を理解したのかしないのか、彼女にイメージ通りの役を与えない製作者側にも問題がある。と言っても、彼女を主役として使わないことには、高齢者たちを動員することが出来ない。
 だがそこに彼女の苦悩が生まれ、彼女も観客も真のカタルシスを得られないことになる。そして全員が矛盾の連鎖に巻き込まれてしまうのだ。もういい加減、彼女を「吉永小百合」から開放してやったらどうだろうか。

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コメント

こんにちは♪
私も現代のシーンは蛇足に思えて仕方なかったです。
もっと余韻を残す終わり方のほうが良かったと思うんですけどね~。
山田作品には倍賞さんを必ず出演させる決まりでもあるのかしら?

投稿: ミチ | 2008年2月 3日 (日) 11時33分

ミチさんコメントありがとう
今日は大雪でびっくりしました。明日はどうなるのか心配です。
やはりミチさんも、現代のシーンは不要だと思いましたか。たそがれ清兵衛のときも、ラストの回想シーンが不要との声が多かったと思います。
倍賞さんの登場も、場違いな感じでした。

投稿: ケント | 2008年2月 3日 (日) 12時18分

こんにちは~

本当に、あのラストは余計でした~
締めがあんなに雰囲気を変わらなくても良かったのに。

反戦というテーマを無理やりいれなくても、母べえの生き方と野上一家を見てしみじみそれが伝わってくるという方が良かったかもしれないですね。

吉永小百合さんは確かにいつでも綺麗すぎましたね。

投稿: hito | 2008年2月 4日 (月) 14時15分

hitoさんいつもありがとう
どうも山田監督は、過去を回想する現在を最後に入れたがりますね。
また仰るとおり、反戦テーマは不要でした。貧しくとも、元気で頑張る女性達の家庭ドラマで良かったと思いました。

投稿: ケント | 2008年2月 4日 (月) 17時38分

こんばんわ!ごめんね、コメなしで。
かなりのブログ読みましたが、あたしとケントさま、一番意見が近いですよね。でも、絶賛の嵐とまでは行かないようです。
>戦争反対の雄たけびをあげたかったのか、それとも母性愛の深さに酔いしれたかったのだろうか
ここここ、焦点、ぼけてますよね。
臨終のあの言葉も、あたしはすっごく違和感ありました。
自分の母親には、あんな事言って欲しくないな。

投稿: 猫姫少佐現品限り | 2008年2月 4日 (月) 19時18分

猫姫さん、コメントありがとう
確かに絶賛の嵐ではなかったけれど(笑)
少なくとも、悪く言う人は少ないですよね。
僕は山田監督は大好きだし、小百合さんも嫌いじゃないけれど、先日TVでやっていた「寅さん」のほうがずっと良かったです。

投稿: ケント | 2008年2月 4日 (月) 20時21分

ケントさん、こんにちは。
う~ん、本当にそうですね。
実は ケントさんと同じことを感じたのですが (吉永小百合さんの演技力の限界か…のところ) 正直に書けませんでした…
ほんと、「苦労している母親」にどうしても見えないのですよね。。 浅野忠信に 恋される設定には 無理があるし… なかなかお気の毒ですねぇ。
ポチ☆していきます~

投稿: スノーパンダ | 2008年3月 6日 (木) 02時59分

スノーパンダさんコメントありがとう
なかなか皆さん本音を書けないようですね。ただ彼女の人柄は悪くないのですが、国民的大根であることは確かでしょうね。

投稿: ケント | 2008年3月 6日 (木) 21時26分

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