« 恋空 | トップページ | 青空のルーレット »

2007年12月 1日 (土)

オリヲン座からの招待状

★★★★

 とにかく中盤からは泣きっ放しで、ハンカチが水びたしであった。僕だけではなく、劇場中にすすり泣く声がこだまする。
 TVが普及する前、娯楽の王様は「映画」だった。ニュース専門の映画館もあったし、都内の国電ならほとんどの駅に、私鉄でも急行の止まる駅なら必ず映画館があった。
 ただし僕達貧乏人が観る映画館は、封切り館ではなく、三本立て大人70円・学生50円・子供30円という三流館だけだった。まさにこの映画の『オリヲン座』そのものだったのだ。

           Scan10273

 古いフィルムは傷だらけで、スクリーンに雨が降る。そして時々フィルムが切れて、大騒ぎとなった。よく「10円返せ~!」と叫んだものだ。
 そのうえ椅子は、木製の長イスで、天井からブラ下った大きな扇風機がヤル気なさそうに回転していた。それに比べれば、この映画の『オリヲン座』のほうがまだマシかもしれない。
 映画の中でも観客がだんだん減ってくる。館主の死後に、美人の奥さんと映写技士の恋が噂となり、それが観客減少の原因であるように描かれていたが、真犯人はTVの登場であったことは間違いない。館主の家にさえTVが置いてあったのは皮肉である。
 客がゼロでも映写機は回さなくてはならない。365日休日がなく、夜遅くまで働かねばならない。そして売店で売れ残ったアンパンを夕食にする日もある。
 こんな辛い商売があるだろうか。心底映画に惚れていなければ無理であろう。それでも観客が多ければ我慢も出来るが、閑古鳥が鳴くようでは侘しくて死にたくなるよね。
 実際こうして潰れた映画館は数知れない。残ったところもピンク映画専門館になり下がった。
 そして潰れた映画館の跡地は、ボーリング場となり、やがてボーリングも衰退してスーパーマーケットに変身したものだ。
 どうしてオリヲン座が、最後まで正統派映画館として頑張ることが出来たのであろうか。そこが不自然であるが、この作品では余りドロドロした部分は描きたくないようだ。
 だから宮沢りえと加瀬亮との恋も、淡いほたるの光のようなプラトニックな部分しか見せてくれない。それは劇中のオリヲン座と同じように、子供も大人も楽しめる美しい映画を志したからであろうか。

映画「オリヲン座からの招待状」オリジナル・サウンド・トラック Music 映画「オリヲン座からの招待状」オリジナル・サウンド・トラック

アーティスト:サントラ
販売元:ユニバーサル ミュージック クラシック
発売日:2007/10/31
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 暗く長い映画不況のトンネルを越え、近年再び映画が脚光を浴びている。殊に邦画が活発に製作され始めていることが一番嬉しいね。
 一時はTVとビデオに押されて、邦画といえば「ヤクザ映画」と「ピンク映画」ばかりだった時代もある。最近は余りも多作なため、中には駄作もあるが、相対的に邦画のレべルが高くなったと思う。
 ヨーロッパ映画が振るわず、大作CGばかりのハリウッド映画に飽き飽きしている映画ファンにとって、癒しと感動を与えてくれる邦画は、まさにオアシスである。
 渋谷全線座や飯田橋の佳作座などが、次々と廃館となっていた頃、このまま映画の灯が、完全に消えてしまうのではないかと心配だった。かく言う私自身も情けないが、ビデオ三昧で映画館通いを止めてしまった時期もある。
 しかし映画はやはり映画館で観なくては、本当の醍醐味が味えないことに気付いた。私だけではなく、日本中の映画ファンが目覚めたのであろう。
 そして映画が復活したが、映画館はどんどんシネコン化している。確かにシネコンは綺麗で便利だが、哀愁は湧かない。だからこの映画をどこの映画館で観たまでは記憶に残らないのだ。
 いろいろな制約がある中で、ずっと頑張っている飯田橋ギンレイホールや、最近復活した早稲田松竹のような名画座に、絶大なる拍手を送りたいものである。

↓応援クリックお願いでござるm(__)m

人気blogランキングへ

※スパム対策のため、TBとコメントは承認後公開されます。

↓ブログ村とクル天↓もついでにクリックお願いね(^^♪

にほんブログ村 映画ブログへ

|

« 恋空 | トップページ | 青空のルーレット »

コメント

こんにちは!TBありがとうございます。やっぱりこちらからのTBは反映されていようで・・すいません。

今シネコンじゃない映画館はどんどんなくなってきてますからね~。こういう昔ながらの映画館って懐かしい温かい雰囲気がしていいですね!

じんわりといい映画でした~

投稿: hito | 2007年12月 1日 (土) 15時36分

ケントさん、こんにちは。
映画は映画館で観るのが一番ですよね(本当は)
なかはDVDでイイヤなんてのもありますけど、”映画館という風景”が作品とともにあって映画と言う気がします。

シネコンばかりという寂しい時代になりましたね。それでも映画が復活しているのは嬉しい事ですがw

投稿: たいむ | 2007年12月 1日 (土) 15時55分

ケントさま、こんにちは。コメント&TBをありがとうございました。
りえちゃんと加瀬くんの、静かな佇まいが印象的な映画でした。
映画好きとしては、映画を守るためになるべく劇場で観たいと思いますね。
映画あってこそのDVDですものね・・。
ではでは、失礼します。

投稿: 真紅 | 2007年12月 1日 (土) 17時23分

こんばんは☆
普段邦画はあーんまり見ないのだけど、
たまたま見た邦画がこの作品でよかったです☆
こういう名画座というところにはまったく思い出がないのですが、昔の映画館の様子が見れてよかったです。
キャストも絶妙!よかったですね。

投稿: きらら | 2007年12月 1日 (土) 21時58分

今晩は!、TB・コメント有難うございました。
まだ、東京では昔ながらの映画館が残っているようですね。
最近はまた大型のシネコンが、あちらこちらに出て、映画を観る人も増えたようです。
洋画もいいけれど、邦画もたまには観る私(笑)
癒しと感動を与えてくれる邦画は、まさにオアシスである>本当にケントさんのおっしゃるとおり、邦画のもつ感動は、涙腺を刺激してハンカチがいりますね。

投稿: パピのママ | 2007年12月 1日 (土) 22時29分

ケントさん
TB・コメントありがとうございました!
泣けちゃいましたか。私はノスタルジック
な気分でした。地元京都が舞台ということで
何か親しみが湧きましたね。西陣京極から
近い場所にいますが、あまり行く事はないですね。
オリヲン座の舞台になった映画館は多分千本座
で、今は無印のお店になっています。
一時期はこの界隈に多くの映画館があったそうです。
今は街の中心部に集まってしまいましたが。
りえちゃんに会えて良かったです。
こちらでは舞台挨拶というものがあまりないので。
新鮮ですね(*^_^*)

投稿: mezzotint | 2007年12月 1日 (土) 22時54分

ケントさん、こんばんは。
TB&コメントありがとうございました。

小さな劇場をしっかりと守っていく姿に感動しました。
しかしこんな素敵な街の映画館の物語をシネコンで見るなんてと思いつつもシネコンで見ました。

投稿: Hitomi | 2007年12月 2日 (日) 19時41分

Hitomiさんコメントありがとう
今はほとんどシネコンしかないですから仕方ないですよね。

投稿: ケント | 2007年12月 3日 (月) 08時48分

hitoさんコメントありがとう
シネコンばやりですから。仕方ないですよね。
僕は渋谷東映で見ましたが・・

投稿: ケント | 2007年12月 3日 (月) 08時50分

たいむ さんいつもお世話になります
やはり映画は映画館で観ないと落ち着きませんよね。家でDVDを観ていると、宅急便が着たり、トイレに行ったり2~3度席を立ってしまうしね・・・

真紅さんコメントありがとう
りえちゃんと加瀬くんのコンビ、なかなか新鮮で良かったですよね。りえちゃん若いよね。

投稿: ケント | 2007年12月 3日 (月) 09時03分

きららさんおはようございます
きららさんは若いから、名画座とか知らないでしょうね。20年前にはいろいろな場所にありましたよ。

パピのママさんいつもコメントありがとう
大型のシネコンばやりで、新宿松竹もシネコン工事をしていますね。歌舞伎町もいずれシネコンになるかも知れませんね。
ハンカチ二枚必要でしたよ。(笑)

投稿: ケント | 2007年12月 3日 (月) 09時07分

mezzotint さんコメントありがとう
オリヲン座の舞台になった映画館ももうないのですか。寂しいですね。
りえちゃんに会えて良かったですね(^^♪

投稿: ケント | 2007年12月 3日 (月) 09時08分

こんにちは♪
ご訪問が遅れてスミマセン。
シネコンもキレイで快適でいいですけれど、昔を知るものとしてはあのちょっと湿っぽい映画館が懐かしいです。
あのころは入れ替え制じゃなかったから何回でも繰り返し見たこともあります(笑)
大人になってからの役者さん交代というのはかなりリスクがあるなと感じました。

投稿: ミチ | 2007年12月 6日 (木) 20時16分

ミチさんコメントありがとう
確かに何回も観ましたよね。
原田さん良かったけれど、加瀬くんとは全くイメージが違いましたよね。

投稿: ケント | 2007年12月 6日 (木) 20時48分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/21640/9199070

この記事へのトラックバック一覧です: オリヲン座からの招待状:

» 『オリヲン座からの招待状』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「オリヲン座からの招待状」□監督 三枝健起 □脚本 いながききよたか□原作 浅田次郎( 「鉄道員」集英社刊)□キャスト 宮沢りえ、加瀬亮、宇崎竜童、田口トモロヲ、樋口可南子、原田芳雄、中原ひとみ ■鑑賞日 11月3日(土)■劇場 109CINEMAS川崎■cyazの満足度 ★★★☆ (5★満点、☆は0.5)<感想> この映画を観ながら『カーテンコール』や『ニュー・シネマ・パラダイス』を思い出していた。 そしてこの映画には関係ないけど、どこかでりえちゃんと芳雄ちゃんが... [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 15時08分

» 映画「オリヲン座からの招待状」 [日々のつぶやき]
監督:三枝健起 出演:宮沢りえ、加瀬亮、宇崎竜童、田口トモロヲ、樋口可南子、原田芳雄、中原ひとみ 浅田次郎さんの原作は、かなり前に読んだため、ほとんど覚えていないのです。短編でしたし~ 「オリヲン座が閉館するので最後の上映会にお越しくださいという招... [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 15時23分

» 「オリヲン座からの招待状」みた。 [たいむのひとりごと]
純粋に映画を愛する気持ち。純粋に映画小屋を守りたいという気持ち。純粋に共に生きる者を愛する気持ちがひしひしと伝わってくる物語。懸命に愛を貫き通す姿に胸が締め付けられる作品だった。以下、若干ネタに触れて... [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 15時53分

» オリヲン座からの招待状(映画館) [ひるめし。]
ありがとう あなたかいてくれたこと [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 16時33分

» 『オリヲン座からの招待状』 [Sweet*Days**]
原作:浅田次郎 監督:三枝健起  CAST:宮沢りえ、加瀬亮、宇崎竜童、原田芳雄 他 昭和32年、京都。松蔵(宇崎竜童)が妻のトヨ(宮沢りえ)と共に営む映画館オリヲン座... [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 16時58分

» ★ 『オリヲン座からの招待状』 [映画の感想文日記]
2007年。「オリヲン座からの招待状」製作委員会。   三枝健起監督。浅田次郎原作。  閉館をすることになった京都市の小さな映画館を舞台にしたノスタルジー調の人情劇。出演者の名前... [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 17時00分

» オリヲン座からの招待状 [ぁの、アレ!床屋のぐるぐる回ってるヤツ!]
☆ 留吉 = 松五郎 「無法松の一生」を見てないとわからないだろうね(ニヤリ) [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 17時30分

» 「オリヲン座からの招待状」試写会招待券 [雲九の物品購入覚書]
昨日の3丁目に引き続き再び昭和30年代にトリップ。 今度の舞台は京都の西陣にあるオリヲン座。 鈴木オートの一平くんがこちらまで出張? 浅田次郎には全くなじみがないけれど ポスターを一目見て「見たい」と思った作品。 顔ぶれを見てミーハー的な気持ちもありましたが 題名が映画がらみっぽいのも惹かれた一つです。 オリヲン座でかかる日本映画の数々は 「二十四の瞳」くらいしか見たことないけど 題名は聞いたことのある名作ばかり。 「無法松の一生」とか「幕末太陽伝」とか。 昨日の映画で「東宝シネスコープ」という... [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 17時33分

» 『オリヲン座からの招待状』 宮沢りえさんの舞台挨拶♪ [銅版画制作の日々]
  宮沢りえちゃんと三枝監督の舞台挨拶 本当は、まだ記事に出来ていない作品がたくさんあるのですが・・・・・。まずは昨晩、鑑賞した「オリヲン座からの招待状」について記事を書く事にしました。何てたって、生宮沢りえちゃんの舞台挨拶があったので、記憶が薄れないうちに書き留めておかないと忘れてしまうので 実は加瀬亮君も、舞台挨拶の予定でしたが・・・・。仕事のため、来られませんでした。ちょっと残念 舞台挨拶前にで劇場内をぱちり舞台挨拶の様子は残念ながら... [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 18時35分

» 映画〜オリヲン座からの招待状 [きららのきらきら生活]
  ☆公式サイト☆京都を舞台に激動の時代に翻弄(ほんろう)されながらも、老舗の映画館を守り続けた男女の純愛と奇跡を描く感動ドラマ。浅田次郎の「鉄道員(ぽっぽや)」最終編に所収されている同名小説を、『ジェニファ 涙石の恋』の三枝健起監督が映像化。昭和25年の開館以来、オリヲン座の館主を務めてきた豊田松蔵(宇崎竜童)が病に倒れ、その弟子だった留吉(加瀬亮)が志を引き継ぎ、先代の妻トヨ(宮沢りえ)と映画館を守ることになった。映画産業が斜陽になり、周囲の人間に陰口をたたかれながらも、2人は映画を愛し、互いを... [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 21時56分

» オリヲン座からの招待状 [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
僕ずっとオリヲン座を守るさかい__ここでいつまでも、一緒に映画かけてもらえますか。時代に翻弄されながらも、映画館をまもり続けたふたりの愛と、優しい奇蹟の物語。 「さて突然ではございますが、昭和25年の開館以来半世紀以上にわたって、地元の皆様に愛され親し...... [続きを読む]

受信: 2007年12月 1日 (土) 22時30分

» 『オリヲン座からの招待状』鑑賞 [★☆★風景写真blog★☆★healing Photo!]
『オリヲン座からの招待状』鑑賞レビュー! 僕ずっとオリヲン座を守るさかい── ここでいつまでも、一緒に映画(シャシン)かけてもらえますか。 人気作家・浅田次郎の同名短編を基に 閉館を迎えた小さな映画館を取り巻く 人々の人生模様をノスタルジックに綴る ハートフル・ドラマ 主演は「たそがれ清兵衛」「父と暮せば」の 宮沢りえ、共演に 「それでもボクはやってない」の加瀬亮 監督は「MISTY」の三枝健起 2007年/日本 公開日::::2007年1... [続きを読む]

受信: 2007年12月 2日 (日) 00時04分

» 『オリヲン座からの招待状』 [アンディの日記 シネマ版]
感動度[:ハート:][:ハート:]              2007/11/03公開  (公式サイト) 泣き度[:悲しい:] 満足度[:星:][:星:][:星:]   【監督】三枝健起 【脚本】いながききよたか 【原作】浅田次郎 『オリヲン座からの招待状』(集英社刊『鉄道員』所収) 【時間】116分 【出演】 宮沢りえ/加瀬亮/宇崎竜童/田口トモロヲ/中原ひとみ/樋口可南子/原田芳雄 <ストーリー> 町の映画館・オリヲン座は、毎日、たくさんの人で賑... [続きを読む]

受信: 2007年12月 2日 (日) 01時58分

» オリヲン座からの招待状 [ネタバレ映画館]
せめてホクロを・・・ [続きを読む]

受信: 2007年12月 2日 (日) 03時01分

» オリヲン座からの招待状 [Diarydiary! ]
《オリヲン座からの招待状》 2007年 日本映画 浅田 次郎さん原作本の映画化 [続きを読む]

受信: 2007年12月 2日 (日) 19時11分

» 映画 【オリヲン座からの招待状】 [ミチの雑記帳]
映画館にて「オリヲン座からの招待状」 浅田次郎の同名短編小説の映画化。 おはなし:昭和25年の開館以来オリヲン座の館主を務めてきた松蔵(宇崎竜童)が病に倒れ、その弟子だった留吉(加瀬亮)が志を継ぎ、先代の妻トヨ(宮沢りえ)と映画館を守ることになった。 先週末公開の新作映画は東宝と東映の昭和ノスタルジー対決と相成りました。 『ALWAYS 続・三丁目の夕日』に真っ向勝負しないほうがよかったのにな〜と思いました。こちらは大作というよりも小品の味わいで、私は最近の浅田次郎作品の映画化の中ではかなり... [続きを読む]

受信: 2007年12月 6日 (木) 20時13分

» 映画『オリヲン座からの招待状』 [いんどあかめさん日記]
これ、今月はじめ公開ということで、気になっていた作品。映画館が舞台の作品です。 [続きを読む]

受信: 2007年12月 9日 (日) 01時18分

« 恋空 | トップページ | 青空のルーレット »