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2007年12月16日 (日)

20世紀少年

 それにしても浦沢直樹氏は、一体ポケットをいくつ持っているのだろうか。YAWARA!』、『MASTERキートン』、『MONSTER』、『PULUTO』、そして本作『20世紀少年』と、全く毛色の違ったヒット作を、次々と書き続けている。天才というのか、感性豊富というベきか、あるいは努力家なのだろうか。

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著者:浦沢 直樹
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 ほぼ共通しているのは、登場人物が多く、謎を小出しにし、しつこくそれを追いかける、というパターンであろう。あとローマ字のタイトルが好きだということかな・・。それから長編物に限れば、話をどんどん広げてしまい、最終回になって急にボルテージが下ってしまう悪いクセもある。
 本作にもその傾向が現れていて、主人公と思れる人物が何人も登場する。最初はケンヂ、次がオッチョで、カンナへと繋いでゆく。そして時々「ともだち」が顔を出す。そんな具合で、最後は誰が主人公なのか判らなくなってしまうのだ。
 そしてストーリーは、少年時代と現在をいったり来たり・・。このような手法は、白土三平の『カムイ伝』そのものであり、浦沢氏も多分その影響を受けているのだろう。
 『鉄人28号』もどきのロボットが登場するところから、ここで描かれている少年時代は、昭和30年頃と推測される。浦沢直樹氏の生年からすると、まだ彼が生まれて間もない頃である。後に描かれる『PLUTO』も、『鉄腕アトム』のオマージュだから、同じく昭和30年頃のマンガの影響を受けているのだ。
 団塊の世代であれば分かるのだが、なぜもっと若い彼が、この時代に興味を持つのか聞いてみたいものだ。
 この時代の東京は、車も少なかったし、土地も安かった。それであちこちに空地が沢山あり、三角べースの野球をしたり、キャッチボール等をしたものである。
 このマンガの主人公達も、そんな原っぱの空地で、隠れ家ゴッコをしていた。そしてそこで生まれた荒唐無稽な空想が、大人になって次々と実現されてゆくという展開なのである。
 まず先に述べた『鉄人28号』もどきのロボット、細菌による世界壊滅、東京での万博開催などなどが、次々と現実のものとなるのだ。
 これらの事件の主犯と思われるのは、「ともだち」と呼ばれる新興宗教の教祖で、ケンジたちの少年時代の友人なのである。
 だから少年時代に謎を解く鍵があり、それを現在起こっている事件と結びつけてゆく。

20世紀少年―本格科学冒険漫画 (20) (ビッグコミックス) Book 20世紀少年―本格科学冒険漫画 (20) (ビッグコミックス)

著者:浦沢 直樹
販売元:小学館
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 少年時代の描写は、まるで『スタンド・バイ・ミー』の世界であり、自分の少年時代とも重なって、懐かしさが竜巻のように蘇ってくる。ちょうどいま『三丁目のタ日』などのレトロブームであり、団塊の世代たちには嬉しいマンガであろう。
 このマンガは、全22巻で終了したばかりある。ところがその終わり方が、夜逃げをしたようで、すこぶる評判が悪いのだ。
 どうみても、無理やり店じまいをしたとしか思えない。新作『PLUTO』に早く乗り換えたくなったとも噂されている。これだけ引っ張ったのだから、ラストにはもっと感動的な「再会シーン」を用意して欲しかったね。
 殊にこのマンガの大きな謎である「ともだち」の正体が、不明のまゝ終了した事には、強い疑念と不快感を表明したい。売れっ子マンガ家の悲哀というのか、宿命というのか、浦沢氏に限らず、強引に引き伸ばしたと思ったら、急に打ち止めという長編マンガが多いよね。
 せっかく楽しく読ませてもらっても、これでは水の泡である。大体10巻位で終了するような構成が一番艮い。そういう意味では、岩明均の『寄生獣』を見習って欲しい。このマンガは引き延ばそうとすれば出来たものを、きちっと無理なく10巻で完結させている。
 出版社も営業第一だけではなく、もう少し読者と作品を大切にしてもらいたいものである。
  そういった不満が多かったせいか、最近別巻として上巻が発行された。これを読む限り、なるべく読者の不満を解消しようとする気配を感じる。
 ああ良かったと思ったが、その後発行された下巻を読んだところ、まだ奥歯にものの挟まった状態に逆戻り・・。どうして浦沢直樹という人は、もったいぶるのが好きなのだろうか。彼は何のための上下巻追加発行だったのかを、全く理解していないようだね。それともこれが彼の限界なのか。

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コメント

つい、こっちにも書き込みを。
おっしゃる通り。無駄に長くなってしまったことにより、焦点がぼやけてしまいましたね。
だいぶ記憶力に自信がなくなってきたおばさんには、次の巻が出る頃になると、前の話をすっかり忘れていて、結びつけるのに精一杯。結局、結論は?でしたわ。
もっと、ストレートに書いてもらいたいです。
子供らは、何度も読めるので、把握しているみたいでしたが、そんな暇ないし。子供にレクチャーしてもらってました。
この漫画が始まったころは昭和ブームなんてのも全然なくて、あたし的にはもろに自分の年代だったので、カンドウしながら読んでたんですがねえ。
ということで、20世紀少年の題名に惹かれて、つい寄り道してしまいました。

投稿: sakurai | 2007年12月18日 (火) 22時46分

sakuraiさんありがとう
映画以外の記事にコメントが入ると、とても嬉しいです。
女性でもこのマンガ読んでいるのですね。
お子さんの意見はどうでしたか?

投稿: ケント | 2007年12月19日 (水) 23時40分

私も映画以外のにコメントいただけると、同感です。
えーと、あたしは子供の頃からのコアな手塚ファンなので、手塚が死んだ時は、生涯で一番ショックな出来事でしたわ。その2週間ほど前に最初の子を産んで、一応幸せかなあ、などと思っていた時で、かなり落ち込みました。
で、一応その弟子とまではいきませんが、彼の思想を受け継いでいってるのは浦沢かなと。
ストーリー・テラーとしては、手塚の域までには達してはいませんが、展開のうまさはなかなか。
あとは、絵が成長しましたね。「踊る警官」(だったかああ・・?)の頃に比べると、うまくなったわぁ。特に表情が。
あたし的には「パイナップルARMY」が一番好きです。
浦沢は女性も結構読んでるんじゃないですかね。末っ子の担任のおばちゃん先生とも「マスターキートン」で盛り上がってしまいましたから。
さて、子供らはものすごく把握していて、何度も何度も読んで、あたしより語ってます。
小4の末っ子でもかなりはまって読んで、「今、何世紀?」なんてぼけた質問をしてました。
「PLUTO」も大のお気に入りで、アトムと比較しながら読んでいるようです。
次はどんな漫画になるのか楽しみですが、NHKの「プロフェッショナル」に出ていた時、かなりぼろぼろで、本当につらそうで、漫画家というのは、これほど苛酷なのかと見てました。
読む方は気楽ですけどね。

投稿: sakurai | 2007年12月20日 (木) 14時11分

sakurai さん丁寧なコメントありがとう。
もの凄く嬉しいです。これからもよろしくね(^^♪
僕も手塚は好きですが、一番は白土三平ですね。これは男と女の違いかも・・・
白土の『カムイ外伝』が松山ケンイチ主演で2009年に映画化されると聞いて、いまから心待ちにしています。
浦沢の作品は本作以外には『YAWARA!』、『MONSTER』、『PULUTO』しか読んでいませんが、僕には『PULUTO』が一番面白く感じられますね。
やはり鉄腕アトムのせいでしょうか。おかげで鉄腕アトム『史上最大のロボットの巻』のDVDとマンガを買う羽目になりましたよ。
「パイナップルARMY」も読んでみますね。
小学生のお子さんがいると楽しいですね。大きくなるとシラケますが、まだ一緒に楽しめますものね。
出来たら相互リンクお願い出来ますか?

投稿: ケント | 2007年12月20日 (木) 18時41分

相互リンク、どうぞどうぞ。
よろしくです。
実は私、大学で歴史学専攻立ったのですが、なぜにそっちに行ってしまったのかというと、『カムイ伝』がその原因の一つだったんですよ。
あの唯物史観にはまってしまって、研究しようと思ったのですが、担当教官が非人の第一人者で、「僕を超えたまえ!」といわれて、あえなく断念。
一応、百姓一揆の研究で落ち着いてしまいました。それも今は昔の話ですわ。
まつケンのカムイですか!!うーーー、ある意味怖いわ。あのアニメのおどろおどろしさが結構すきだったんだけどなあ。
今日は中学生の通信簿もらいで、行ってきましたよ。帰ってきたら、部屋に「20世紀少年」と「鋼の錬金術師」が散乱してましたです。読んでもいいから、片付けろ!です。

投稿: sakurai | 2007年12月20日 (木) 22時30分

sakuraiさんありがとう
早速リンクを張りますね。
やはりカムイ伝も読んでいましたか。「ぬぬおぬし出来るな!」
大学での歴史研究の資料ですか・・・さすが白土先生は凄い。そういう意味では四方田犬彦の『白土三平論』や中尾 健次の『カムイ伝のすゝめ―部落史の視点から』などという書籍もお薦めです。
話は変わりますが、いまは中学生の通信簿は、親御さんが受取る仕組なのですか?

投稿: ケント | 2007年12月21日 (金) 10時18分

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