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2007年4月の記事

2007年4月30日 (月)

君の名残を

 本作はタイムスリップというSFアイテムを使った「歴史小説」であるが、このタイトルからは全くその内容を想像出来ないよね。
 著者は10年間に亘って本作の構想を暖めていたという。そして本作を書きたいがために小説家になったらしい。だからこの作品を読んでいると、その確固たる情熱がヒシヒシと伝わってくる。 

君の名残を Book 君の名残を

著者:浅倉 卓弥
販売元:宝島社
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  著者の『平家物語』 に対する造詣の深さには、ただただ感心するばかりだが、ことに「木曽義仲」に対するラブコールは強烈である。まるで著者こそが「巴御前」の化身であるかの如く義仲にのめり込んでいた。
 この物語の舞台は、平家の衰退と源氏の台頭する時代にある。そしてその時代を確立させるために、なくてはならなかった三人の人物を、未来から呼び寄せるのだ。
 タイムスリップさせるパワーの源は、『神』としか考えようがないが、この小説の中では、それを『時』と呼ぶ。タイムスリップしてくるのは、白石友恵こと「巴御前」のほか、原口武蔵の「武蔵坊弁慶」、北村志郎の「北条義時」である。
 この三人はもとの世界では、仲の良い友人だったりと縁の深い関係なのだが、過去の世界では敵対する関係に転換してしまう皮肉な定めなのだ。そしてそれぞれが、異邦人でなければ成し得ない歴史上の役割を担うのである。
 巴御前は木曽義仲の妻として、彼に剣道の指導をし、命がけで彼を守る。そして義仲ともども、平家を京都から追い払う。武蔵坊弁慶はやはり源義経に剣道の技術を授け、平家を壇の浦にて滅ぼす役割だ。
 つまりこの二人の活躍により平家が滅亡し、源頼朝が天下をとることが可能になるわけである。さらには朝廷に対する恐れを全く持たない北条義時こそが、「鎌倉幕府」という盤石の組織を作り上げてゆく。
 これは定められた歴史の一幕であり、何人もこの事実を揺るがすことは出来ない。だからこそ過去を知る友恵や武蔵ですら、結局はその大きな流れに逆らうことは不可能だったのである。
 それにしても流石に、満を持して書き込んだお話だけに、もの凄い迫力であった。ところどころに脚色が見えるものの、結局は全てが見事に歴史にリンクしてゆく。
 また著者自身が白状している通り、手塚治虫の『火の烏』での死生感も併せて描き切っている。それはこのお話の狂言まわし「覚明法師」の容貌や、その不幸な生い立ちが猿田彦にそっくりなこと。平清盛の狂態や後白河法皇の悪役ぶりが、まさに火の鳥での描き方と同一であることでも判る。
 この長い小説を読み終って、なにかホットするような、心が解き放たれるような、不思議な充足感が得られた。SF好きな人にも、歴史好きな人にも、映画好きの人にも自信を持ってお薦め出来る。会心の一遍であることは間違いないだろう。

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2007年4月28日 (土)

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

★★★★

 予告編で泣いてしまった映画なので、初めから最後まで泣きまくるのは目に見えている。案の定映画が終わったとき、用意していたタオルハンカチは、涙漬けでぐしゃぐしゃだった。
 特に目新しいストーリーではない。ひと昔前なら、どこにでもありそうな「親子の話」である。だからこそ誰もが、そこに自分の幻影を発見して泣けてくるのだろう。

Scan10220_4

 『三丁目の夕日』に始まった昭和レトロな映画ブーム。本作でも主人公が少年時代に育った筑豊の小さな炭鉱町を、しみじみタッチで再現しながら、パラレルに現在のオカンとの生活も描いてゆく。
 映画を観た後に、リリー・フランキーの原作を読んでみた。舞台が九州で芸能人の少年時代の自伝ということで、島田洋七の『佐賀のがばいばぁちゃん』を思い出してしまった。
 通常原作ものを映画化すると、かなり評価が落ちるものだが、本作や『佐賀のがばいばぁちゃん』が好評だったのは、小説ではなく自伝だからであろうか。つまり小説ほど思い入れの激しい人が多くないのだ。
 映画ではマーくんのすさんだ生活と、オトンのヤクザまがいの態度がかなり薄められていたと思う。この父子を演じたのが、オダギリ・ジョーと小林薫だったせいもあるが、やはり映画は時間との勝負なのだ。
 ところがことオ力ンに関しては、全く違和感がない。出番は多くないのだが、原作通りのオカンなのである。鼻メガネで踊るオカン、立膝で花札に興ずるオカン、料理の上手なオカン、息子のためにはどんな事でもいとわないオカンがそこにいた。
 まるで樹木希林が、リリー・フランキーのオカンだったかのようである。これが女優樹木希林の凄いところなのだ。
 彼女のことは、悠木千帆と名乗っていた若かりし頃から観ているが、当時から妙なセンスを持った女優だと感じていた。内田裕也との再婚と別居に関しても謎だらけである。
 とにかく怪女優である。その感性と存在感は、女性版ジャック・ニコルソンといっても言い過ぎではないだろう。彼女は言葉だけでなく、自然な仕草や小さな表情ひとつにも、決して演技力を緩めない。
 私は人が死んで悲しむストーリーは嫌いだ。ところがオカンの死については、不思議と納得してしまった。決して無理がなく、それが自然の流れだったからだろう。
 ただひとつだけ納得出来ないことがある。小さい頃、祖母から「生みの親より育ての親」と言われた話が省略されてしまったことだ。本人はその事に傷つき悩んでいたはずである。そのことがあってこそ、置き土産の「へその緒」に価値があるのだから・・。

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2007年4月25日 (水)

通勤地獄 フレックスタイム

   Maruno_1

 フレックスタイムなんて言葉が流行ったのは、もう20年位前だったかな。その頃の勢いからすれば、とうの昔に日本中フレックス制に移行していてもおかしくないのだが、今だに特殊な職種に限定されている。
 通勤電車は空くし、残業も減るし、朝寝坊の人は体調が良くなるし、何と言っても自分の時間を有効に使えるのにね。ところが会社側も従業員側も、余りこの制度に積極的ではないようだ。そしてバブルの崩壊とともに、いつの間にかフレックスに対するボルテージも消失してしまった。
 やはり日本人は、何でもかんでも皆一緒でないと不安なんだね。そして新しい制度が嫌いで、「前と同じ」が大好きな人種なのだろう。この調子では、在宅勤務やワークシェアリングなんていうものも、夢のまた夢ではなかろうか。

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2007年4月22日 (日)

ブラッド・ダイヤモンド

★★★★

 内戦が続くアフリカのシエラレオネ。そこではRUFと呼ばれる反政府軍が、まるで戦国時代の野武士の如く、略奪と殺戮を繰り返していた。彼等の資金源はダイヤであり、これを密売して武器を購入するのである。

          Scan10215_1

 こうしたルートで取引されるダイヤを紛争ダイヤと呼び、表向きは禁止されているが、密売人による闇売買は後をたたない。この密売人アーチャーにレオナルド・デカプリオ。密売シンジゲートを追う女性記者マディにジェニファー・コネリー。そして特大のピンクダイヤモンドを掘り当てた漁師ソロモンをジャイモン・フンスーが演じている。
 この三人にRUFと政府軍が絡み合い、ピンクダイヤモンドを巡って、悪どい駆け引きや戦闘が始まる。そしてアーチャーとマディの、ちょっぴり淡い恋もさりげなく描かれてゆく。
 RUFは残虐なだけでなく、かなり狡猾である。市民を捕らえ大人にはダイヤの不法採掘をさせ、少年達は徹底的に洗脳し、殺人マシーンに育てあげるのだ。映画だけでなく、こんなことが実際に起きていたという。とても残酷で見ていられない。
 ダイヤがあるから、武器を買い戦闘が起こる。しかし欲のために、ダイヤを闇市場に流す死の商人がいるから、RUFに武器が流れる。そして平和で裕福な国の金持ちが、ダイヤをありがたがるからダイヤが高価になる。
 
このようなただれた相関関係によって、紛争は果てしなく繰り返されるのだ。一体誰が悪いのかを解明しても虚しいだけである。これが人間の性であり、宿命であるのかもしれない。

 シエラレオネでの内戦は、2001年まで実に約10年間も続いたという。その後紛争ダイヤの不正取引を阻止するため、キンバリー・プロセスという国際認証制度が確立した。しかしながら、この制度に加入しない国もあり、今だに紛争ダイヤを根絶することが出来ないという。
 この映画の内容は濃く、俳優達の熱演も素晴らしいのだが、三人の主役にスポットを当てすぎて、内戦で死傷した者や難民となった人々の心情が描き切れていないところに不満を感じた。それはソロモンが息子にばかり強烈に心をくだき、難民となった妻や娘たちに対しては、やゝ思い入れが弱いところと通じるところがある。
 まあその辺りの問題点はあるものの、全搬的には社会派ドラマとエンターティメントを巧みに融合させ、見応えのある作品に仕上げたところは評価出来るだろう。 

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2007年4月21日 (土)

ブラックブック

★★★★

 第二次大戦終結間近のオランダ。ナチの陰謀によって、目前で家族全員を虐殺されるユダヤ人の美女エリス。彼女はナチに抵抗するレジスタンスに助けられてその一員となり、仇敵のナチ将校と寝ることを決意するのだった。

     Scan10207

 このエリスを演じるのは、オランダの名花カリス・ファン・ハウテン。その信じられないような体当たり演技には、全観客が魅了されたはずである。形の良い乳房を何度も晒し、陰毛を金髪に染めるシーンさえも厭わない。
 そのうえ汚物を全身に被ったり、二階から飛び降りたりと、散々なシーンも嫌な顔ひとつせず見事にこなしていたという。またナチとのセックスシーンで見せる透けるような純白の肌には、男なら誰でもそそられるだろう。それに自転車の荷台でスカートをたくしあげるサービスも実に色っぽい。

    Scan10208_2 

     「ケントの絵手紙小屋より抜粋」

 まさに男達にとっては女神であり女優の鏡とも言える。とにかくこの映画は、彼女なしには語れないのだ。 
 監督のポール・ヴァーホヴェンは、ハリウッドで『トータルリコール』、『ロボコップ』、『インビジブル』などのSFものや、『氷の微笑』『ショーガール』などのエロティックもので有名である。
 今回は母国オランダに帰って、戦時下のオランダというシリアスな社会派テーマに取り組んだ。ところがと言うか、流石と言うべきなのか、ヴァーホヴェンの持ち味であるエンターテイメント精神は、決して失われてはいなかった。
 結局出来あがったものは、『戦場のピアニスト』や『シンドラーのリスト』とは全く異質の味がする作品となった。テーマもユダヤ人迫害ではなく、戦争が生み落す「裏切り」なのではなかろうか。そして恋愛・エロ・グロ・暴力をふんだんに取り込んだ、エンターテイメント風味のヒューマンドラマに仕上がっている。
 またエリスの生死がネタバレになることを恐れずに、回想方式を選択したのは潔いと思った。そのおかげで、あの幸福と不幸を重ね合わせたような、見事なラストシーンを用意出来たのであろう。 

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2007年4月15日 (日)

アルゼンチンババア

★★★

 魔可不思議なストーリーである。大人のメルへンとでも言うのだろうか。そしてエンディングクレジットで流れる音楽に、なぜか心が和んでしまう。
 鈴木京香はどんな役でも、さらりとこなしてしまう器用な女優である。不潔で不気味なアルゼンチンババアでも、京香が演ずると心優しい謎の美女になってしまう。でもそれで良いのだ。本当の醜いババアでは映画にならないからね。

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  この映画には悪い人が登場しないし、修羅場もない。また盛り上がるシーンもなく、なんとなくはぐらかされた気分が拭えない。ところが知らぬ間に癒されてしまうのだから、なんとも不思議な作品である。
 ただ役所広司が妻の死を受け入れられずに、逃げ出してしまったのを、彼の弱さと優しさの様に描いているのが気に入らない。甘やかし過ぎである。結局ただ無責任なだけのオヤジじゃないか。
 この映画で一番光っていたのは、堀北真希ちゃんだろう。彼女は『三丁目のタ日』でも六ちゃん役を愛らしく演じていたが、この作品で、もうひと皮むけたようだ。今回の真希ちゃんは、強くたくましく、それでいて清楚な高校生を自然に演じていた。
 とにかく彼女なしにはこの映画は評価出来ない。そしてその輝く瞳の中に、将来の大女優のオーラを見たのは、決して僕だけではないだろう。

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2007年4月 8日 (日)

ホリデイ

★★★★

 ロスの豪邸に住む、映画予告編製作者のキャメロン・ディアス。イギリスの田舎町に住む、編集者のケイト・ウィンスレット。ともに失恋した傷心を癒すために、14日間だけハウス・スワップをする。
 彼女たちはお互い全く見知らぬ間柄。ネットで知り合った瞬間に、短期間とはいえ、何と家を交換するのだから英米人は太っ腹だ。

 ラブコメ女王のキャメロン・ディアスは、相変わらず派手で美しい。だが最近のケイト・ウィンスレットが放つオーラには及ばない。ケイトはどんな役柄も見事にこなすが、今回は実に愛らしく、抱きしめたいほど可愛いい女を演じていた。

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 恋は盲目、痘痕もえくぼとは良く言ったものだ。相手の悪いところが見えなくなる、というより見ようとしないのであろう。
 本当は感性の合うパートナーこそ必要なのに、恋するという夢が先に立ち、恋に恋してしまうのである。そして夢は自分の都合の良いことだけを繋ぎ合わせてしまう。だから相手の悪い部分には、目を背けてしまうのだ。

 そのことをケイトに気付かせてくれるのが、元脚本家の老人であり、彼の存在はこの映画をピリリと引き締める香辛料となっている。この老人といい、キャメロンやジャックの職業といい、映画を愛している監督の心情がひしひしと感じられ、胸が熱くなってしまった。
 ストーリーはテンポ良く、キャメロンとケイトをパラレルに描き分けてゆく。そしてキャメロンにはジュード・ロウを、ケイトにはジャック・ブラックと、まさに抜群の組合せではないか。

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 ラストでやっとこの4人が顔を合わせるのだが、この二組のカップルの将来は不明のまま終わってしまう。これからそれぞれが遠距離恋愛を続けるのか、それともいずれ破局してしまうのかは、観客の想像力に委ねられてしまうのである。
 アジアでは悲恋ブームが続く。だがやはりラブストーリーは、明かるく楽しくしめて貰いたい。だからこそハリウッドのラブコメには、まだまだ価値があるのであろう。

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2007年4月 6日 (金)

フラガール

★★★★☆

 常磐ハワイアンセンターが出来た当時のことを覚えている。なぜ福島で常磐ハワイなのか、なぜ日本人がフラダンスを踊るのか。ダサイとしか考えられない年頃であった。
 この映画の予告編を観たときも、やはりダサイ映画という印象が先行してしまった。ところが上映されてみると、かなり評価が高いので不思議でしょうがない。

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 そこで早速映画館に足を運んだのだが、超満員で立見だという。それでその日は別の映画を観て、後日出直すことにした。しかし次に観に行った時、今度は電車が遅れて上映開始時間に間に合わなかった。

 それで縁のない映画と諦めて、DVD化されるのを待つことにした。その間にこの作品の評価がどんどん上昇し、とうとう「キネマ旬報べスト作品賞」「日本アカデミー賞」を受賞してしまった。
 本日待望のレンタルが実現し、やっとDVDでこの作品を鑑賞することが叶ったのである。結論から述べると、評判通り期待を裏切らない、実に素晴らしい映画であった。

 日本の炭鉱は、最盛期には800以上開かれたという。ところが石炭から石油へと燃料がシフトし、昭和30年代半ば頃から日本の炭鉱は、徐々に衰退してゆくのだ。
 この作品の舞台となった常磐炭田も、昭和40年頃に大規模なリストラに追いこまれるのである。そしてハワイアンセンターへと移行してゆく。その様子を描いたのが本作であるが、そこに日本経済や政治構造の大きなうねりを感じずにはいられなかった。
 また炭鉱で働く人々は、炭鉱労働に誇りを持ち、それ以外に働く術を知らない。ましてや命をかけた男の職場と対極をなす「フラダンス」などが、彼等に受け入れられるはずはないのだった。
 しかし人が生き残るためには、いつまでも古いものにしがみついてばかりはいられない。だから周囲の反対を押しのけても、新しい世界へチャレンジする必要があるのだ。
 そのことを認識したとき、なぜ日本人がフラダンスを踊るのかという疑問や、ダサイという感情は一気に吹き飛んでしまった。それよりも何よりも、盆踊りしか知らない少女達が、わずかな期間で立派なフラダンサーに育ってゆく姿に、誰もが心を打たれてしまうだろう。それを象徴するのが、縁を切ったはずの娘が必死に踊る姿を、目の当りにして絶句する母親の心情である。

 ある意味スポコンものなのだが、昭和40年代の時代背景、友情、師弟愛、家族愛などがびっしりと詰め込まれており、なかなか観応えのある構成であった。唯一不足していたのは恋愛ぐらいか。
 主役は今も健在なカレイナニ早川師に敬意を表して、一応松雪泰子ということになっているが、蒼井優が主役と言っても全くおかしくない。また富司純子演ずる母の存在は、とてつもなく強烈である。彼女はまさに炭鉱の女であり、女手ひとつで家族を養ってきたたくましさと、潔さを合わせ持つ女っぷりが実に印象的であった。
 この際たかがフラダンスという偏見は、投げ捨てることにした。いずれにしても窮地を抜け出すために、信念を貫き必死に努力する情熱こそ、いまの日本人に一番必要なのかもしれない。

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2007年4月 2日 (月)

記憶の棘

★★★

 原題は『Birth』で、「生まれ変わり」をテーマにしているようだ。しかし邦題のほうもなかなか味わい深い。、ニコール・キッドマン扮する主人公アナは、10年前に亡くなった夫をいつまでも忘れられない。それがのように、心の奥に突き刺さったまま離れないからだ。

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 アナの心がやっと開放され、新しいパートナーを受け入れる決心をする。しかしそこに突然、夫の生れ変わりであると主張する、10才の少年が現われ、彼女の心をかき乱すのだった。
 夫と同名の「ショーン」少年が、本当に夫の生れ変わりなのか、それともイタズラなのか、劇中の人物も観客も必死にその真偽を追求する。終盤に驚くベき事実が解明するのだが、結局真実は藪の中に埋もれてしまう。
 コンサート会場で、ニコール・キッドマンの表情を、数分間もアップしたまゝのシーンがある。それが背景の音楽と絡み合い、彼女の揺れる心情が手にとるようだった。この心理描写は怖いほど巧い。
 ただ終盤における彼女の一連の行動には、ちょっと納得出来かねる。結局何が言いたいのか、結論はどうなるのか、などの論点がズレて、はぐらかされてしまった。
 とどのつまり、ニコールの主演映画は、いつも「ニコールのニコールによるニコールのための映画」になってしまうようだ。

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