« グエムル 漢江の怪物 | トップページ | リプレイJ »

2006年9月 5日 (火)

天然理科少年

 表紙の写頁は、吉田美和子さん製作の「美少年人形」である。とても清楚で幻想的で、この小説のイメージにピッタリだと思う。なお各章の扉には、ノスタルジックな詩と、コメント付きの美しい写真も飾られている。

天然理科少年 Book 天然理科少年

著者:長野 まゆみ
販売元:文藝春秋
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 わずか147頁の薄っぺらな文庫本だが、なかなか丁寧に創ってあり、とても気分が良いのだ。
 放浪癖のある父親と二人で生活し、短期間に転校を重ねる少年が、ある田舎町で遭遇した不思議なお話を描いた、ファンタジー小説である。その淡々として瑞々しい人物描写と、センチメンタルな郷愁に、なんとなく昔読んだ、『つげ義春』のマンガを思い出してしまった。
 小柄な賢彦少年との巡りあいが、「バナナ檸檬水」というのも、古めかしさの中にお洒落な香りが漂っている。
 また父の名が「梓」で、少年の名が「岬」とは、二人ともなんと優しくロマンチックな名前なのだろうか。
 そしてこの名前の由来と父の心が、時空を越えて見事に繋がり、そっと宝石箱を開くように、煌びやかに過去が解き明かされてゆく。それはなんとも、心地良い締め括りであろうか・・。

↓を応援クリックしてくれると、もの凄く嬉しいです  

人気blogランキングへ

| |

« グエムル 漢江の怪物 | トップページ | リプレイJ »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

弥勒さんTB&コメントありがとう。
またブログの文中で、僕のブログの紹介までしていただき、感謝感謝で一杯であります。
それにしても、この小説を気に入って貰えてよかったです。

投稿: ケント | 2006年9月24日 (日) 21時36分

ケントさん、こんばんは!!
天然理科少年読みましたよ☆
切なくなりながらも、終始柔らかい膜に包まれていて心地よかったです。
何回も読み返したいかも。
特に中盤からラストにかけてを。
雪の中でのシーンが非常に好きです。
オススメ頂いて有難う御座いましたm(_ _)m

投稿: 弥勒 | 2006年9月24日 (日) 00時15分

リサさんコメントありがとう。
再読されるのですか?
よほどこの作品が気に入っているのですね。是非レビューをお聞かせください。
これからもよろしくね。

投稿: ケント | 2006年9月11日 (月) 21時58分

ケントさん、はじめまして。
TBありがとうございました。
『天然理科少年』大好きです。
文庫化されていたのは知りませんでした…。
なんとも美しく紡がれた長野さんの世界。
また再読してきちんと感想書きましたら
改めてTBさせていただきますね。
また伺います(*^-^*)

投稿: リサ | 2006年9月11日 (月) 20時19分

弥勒さん遊びに来て頂きありがとう。
読んだら、感想を教えてくださいね。

投稿: ケント | 2006年9月 8日 (金) 11時06分

長野さんの不思議な世界、かなり好きです(*´Д`)
このお話も面白そうですね!!
薄い本との事なので、すぐ読めるのもいいなぁと思います!!
今度読んでみますね☆

投稿: 弥勒 | 2006年9月 7日 (木) 21時46分

ディックさんコメントありがとう。
『鉱石倶楽部』って短編集ですよね。
とても響きの美しいタイトルですね。
是非探して読んでみますね。

投稿: ケント | 2006年9月 6日 (水) 19時49分

TBに応じてやってきました。
同じ文庫、美しいカバーとカラーページで『鉱石倶楽部』というのがあります。『少年アリス』の別バージョンといった感じ。すばらしい本ですよ。
どちらもぼくのブログに感想があります。

長野まゆみ さんのファンタジーは雰囲気が好きです。

投稿: ディック | 2006年9月 5日 (火) 22時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 天然理科少年:

» 天然理科少年 [時間旅行〜タイムトラベル]
天然理科少年 長野まゆみ 放浪癖のある父に連れられて転校を繰り返す岬は、 中学二年の秋にたどりついた山間の町で、小柄な少年・賢彦に出逢う。 学級のリーダー・北浦と、賢彦との微妙な関係。 賢彦は二年前、忽然と現れる幻の湖で 神隠しに遭い、ふらりと戻ったというのだが…。 「少年アリス」で文芸賞受賞した長野さんの不思議な物語。 ... [続きを読む]

受信: 2006年9月 5日 (火) 21時03分

» 天然理科少年/長野まゆみ [徒然書店]
本日はこちら〜 「天然理科少年」/長野まゆみ 放浪癖の父親と一緒に各地を転々とする岬。 居を構える場所は、父親の食い気で決る。 ふらっと舞い降りた駅で小柄の少年と出会う。 山間の役場、木造の学校、そこに通う自分と同い年の学友。 その中にあの小柄な少年も...... [続きを読む]

受信: 2006年9月24日 (日) 07時24分

« グエムル 漢江の怪物 | トップページ | リプレイJ »