『本と映画のランデヴー第八弾』
久し振りのランデヴーであります。小説は11年前で映画も9年前と、ともに古臭くなってしまいましたが、タイムトラベルファンは必見の名作といえるでしょう。先に小説を読んだので、その順番通りにレビューしましょう。
学園もののタイムトラベル小説といえば『時をかける少女』とか『サマー/タイム/トラべラー』を思い出すが、ことタイムトラベル理論のわかり易さでは、本作が抜群に秀逸である。
著者の高畑京ー郎がこの作品を発表したのが、1995年で彼が28才の年である。してみると、かなり天才的な青年だったと言えるよね。
文章は平易で分かり易いが、とくに文学的に優れた表現をするでなし、コツコツと調査した背景描写があるわけでもない。またまっとうに会話のある登場人物は、上巻ではほば2人きり。そしてストーリー展開は、ラストの事件を除けば、主人公翔香の一週間の平凡な日常描写だけでなのである。
たったそれだけで上下2冊の本に分けているのだから、ある意味少し図々しいかもしれないね。しかし読んでいて全く退屈しないし、逆にぐいぐいと心が引張られてゆくのだから不思議だ。
ここでのタイムトラベルには、ある一定の法則が存在するようだ。それを簡単にまとめると次の通りである。
●意識だけが時間移動する
●同じ時刻へは一度しか跳べない
●何か怖いことに会うと時間移動する
●眠ると明日ではない日に時間移動する
つまり一週間をランダムに切リ刻んで、意識だけが小間切れにされた時間の中を、行ったり来たりしているのだ。
またタイムパラドックスやパラレルワールドの存在は認めているものの、そこに行きつかないことを配慮した展開であった。
前半はタイムトラべルに理論に終始しながらも、後半ではミステリーへと移行し、オープニングとラストが見事に繋がってゆくのだ。
ライトノべルとはいえ、流石に時間テーママニア達が『隠れた名作』と評価するに十分な作品であった。
この小説はその後、1997年に映画化されているようである。早速ビデオ屋へ行き、古い棚からこの作品を探し出した。
細かな設定の違いは少しあったが、大筋は小説とほぼ同じだったので、何だか2度小説を読んだような気分であった。
主演の二人は、小説のさし絵同様、美男美女には変わりないのだが、ちょっと老けた感じで若干清々さに欠けていたようだ。あとで俳優の実年令を調べたら、やはり20才であった。
あと小説での関君の役割は重要で、準主役級だったのだが、何故か映画ではチョイ役であった。また小説ではかなり重要だった、「翔香が、護身術を教わるシーン」が映画ではカットされていたのがちょっと解せない。
その関係もあり、八幡神社でのクライマックスにも迫力が不足していたし、なにか盛り上がるものも感じられなかったのが残念である。たぶん犯人の描き方を、中途半端にアレンジしたことに問題があったのかもしれない。
まあ、悪い映画ではないが、わざわざ劇場まで足を運ぶほどの代物ではないと思った。
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