『本と映画のランデヴー第七弾』
だいぶ古い本で絶版になっているようです。まず原作からご紹介しましょう。
約600ページのクソ分厚い本を何日持ち歩いただろうか。決して難しい小説ではないのだが、それにしてもこの本と同じく、とても重い読了感が残った。
満月の夜に、300年前から杉坂小弥太という侍がタイムスリップしてくる、というSF仕立てのお話である。だがその設定さえ除けば、小弥太と野平まりとの、甘く切ないラブストーリー以外の何物でもないのだ。
呪術によって300年の時を超えるという理屈や、マリとの初遭遇シーンについては、かなりいい加減な感じがするが、『ラブストーリー』なのだと思えば、いたしかたなかろう。
話の展開は、まりの視点で進んでゆくが、山の天気のようにコロコロ変わる女性の心理描写を、実に見事に描いている。さすがに女性作家であり、一見正反対に見える「まりと祖母の両者ともが」著者の分身なのかもしれない。
恋人に300年前の待を用いたのも、著者の理想の男性像を満たすためであろう・・・。りりしく、たくましく、強く、辛抱強く、それでいて優しく、その上誠実で、純情な男性など、すでに現代には存在しないからだ。そのうえ美男とくれば、世界中の女性が放っておかないだろうね。
変に誤解されても困るが、小弥太は男性の私にとっても、素敵な男なのだから・・・
結局二人は、最後まで本格的なエッチをしないのだが、まりの過激な心情と、小弥太の純真でひたむきな愛情が、実に見事に絡み合い、年甲斐もなくドキドキしてしまった。
繰り返すようだが、SFとしてはほとんど評価出来ないので、ラブストーリーとして読むこと。
ただ菩提寺の過去帳と、水戸藩の快風丸、コタンのトーテンポール、易者の予言の全てが繋がるところが、著者の面目躍如といったところであろう。
次は映画のほうですが、こちらもDVDはない。古い古い古いね!
主演が原田知世と時任三郎と言えば、もう相当昔の映画であることが判るだろう。細かい設定では、だいぶ原作と違いがあったし、ストーリーの流れもハデなドタバタシーンが多過ぎたと思う。
またそもそも原作にない、余計なストーリーを追加したため、忍者よろしく弘前城に忍び込むという、無意味なシーンを追加するハメになってしまったのだ。
映画だから派手に加工したい気持ちは判るが、原作はアクションではなく、あくまでも「ラブストーリー」なのだぞ。
原田知世はとても可愛いし、まさに和製メグ・ライアンである。ただ初めは嫌いだった小弥太を、好きになってしまう心の変化が、今ひとつ描き切れていなかった。
いっぽう時任三郎は背が高過ぎて、昔の武士役には不向きだし、これは私の思い込みだが、原作のイメージともだいぶ異なっていたような気がする。
前半は原作に忠実で楽しい映画だったが、知世の兄貴が出現してから、ドタバタアクション映画になり下ってしまったようだ。実に残念である。原作の良さを本当に理解していない人が映画を作ると、こんな映画になるという悪い見本のような映画だった。
ただ『ねぷた祭』を観ながら、弘前城主のことを回想するシーンには、思わず涙ぐんでしまったね。それとスッキリとしたラストシーンも、やや捻りを入れた原作よりも好きかもしれない。さしあたり日本版『ニューヨークの恋人』かな。
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