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2006年6月17日 (土)

ブルータワー

 直木賞作家である著者が、満を持してSFに初挑戦した大作である。本作を書くにあたって、著者は「現在日本の出版界は社会的リアリズム全盛で、SFやファンタジーなど想像力に傾斜した小説は商売にならないといわれている。天邪鬼なぼくは、今こそファンタジーを始める時期だと思う」と語ったそうだ。
 SFファンにとっては非常に嬉しく、心強い言葉である。そしてかつてのようにSFブームを巻き起こしてもらいたいと願う。

ブルータワー Book ブルータワー

著者:石田 衣良
販売元:徳間書店
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 さてこのように期待は大きく膨らんだのだが、残念ながら従来のSFの殻を打ち破るほどの大殊勲はあげられなかった。
 ストーリーは、脳腫瘍を病む主人公瀬野周司が、その激しい痛みとともに200年後の世界へ「精神だけ」タイムスリップする。その未来は暗く、黄魔と呼ばれる生物兵器に汚染されていた。人々はその黄魔から身を守るため、2Kmの巨大なタワーを作り、その中でヒエラルキー社会を構築しているのだった。そうしたタワーのひとつで旧新宿にそびえるのが、『ブルータワー』(青の塔)なのである。
 瀬野周司の精神が移転する体は、そのタワーの最上階近くに住み、ブルータワーの特権階級での一人セノ・シューであった。彼は正義感に燃え、黄魔から世界を救おうと、未来と現代を何度も往復するのである。
 ここまで話せば、映画ファンならなんとなく『マトリックス』や『バイオハザード』等を組み合わせたような臭いを感じるであろう。もう少しオリジナリティーが欲しかったね。
 またハッピーな結末は良いのだが、あの親切過ぎるエピローグは、不要だったのではないだろうか
 だからと言って決して駄作ではないし、つまらない作品ではない。余りにも期待を膨らませ過ぎた裏返しなのだろう。著者の次回SF作品に期待したいところだ。
 ところで映画化すればヒットしそうだが、大人の視覚に耐えられる作品に仕上げるには、莫大な製作費が必要となるので、日本だけの配給では難しいだろうね。 

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コメント

こんにちは、みかんさん。コメントありがとう。
石田衣良の作品はよく読まれるのでしょぅか?
僕は時間テーマSFということで、本作を読んだのですが、ほかにお薦めはありますか?

投稿: ケント | 2006年6月18日 (日) 10時14分

はじめまして。
トラバありがとうございます。
最近は、石田さんの本を結構読んでおりますねぇ~。
最近は結構TV出演されてる感が・・・ありますね♪

投稿: みかん | 2006年6月17日 (土) 21時54分

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