関越自動車道は何度も走っているのだが、藤岡JCから左に分岐する上信越自動車へ入ったのは、生まれて初めてである。
上田菅平インターを下りると、すぐに上田市内である。とりあえず真田幸村で有名な、上田城に向かった。ここは桜の名所で、市民のいこいの公園となっているという。
縁色に輝く本丸堀を渡ると、城への通路である『東虎口櫓門』が、ど~んと構えていて、櫓(やぐら)には鉄砲や弓矢を射る窓が見える。また城門右脇の石垣には、『真田石』と呼ばれる長径3mの大石が組み込まれていた。
櫓の上階に登ってみたが、四方八方に見張り窓があり、敵の侵略がすぐに発見出来る仕組みがよく解かった。
現在本丸は残っていないが、この櫓は平成6年2月に復元されたという。城内は、堀を取り囲むように桜並木になっており、散策するには絶好のロケーションである。
さて上田城を出て、車で数分走ると『池波正太郎真田太平記館』があった。入場料は300円であるが、池波正太郎の原稿や書籍だけではなく、切り絵で再現した「上田攻め」などを上映する、シアタールームもあって、なかなか楽しかった。
その後に、近くにある「旧北国街道柳町」を歩いた。ここは江戸時代に、善光寺参拝をする人々で、賑わったという。今でも、数軒の旧家が建ち並んでいるが、なかなか趣のある風景であった。
上田から山の方に向かって、別所線というローカル線が走っていて、その終点が別所温泉となっている。
この温泉郷は、19件の旅館と3つの外湯があるが、静かでひなびた温泉街だ。また別所温泉の周辺には、いくつもの立派なお寺が点在しているので、この辺りは「信州の鎌倉」と言われている。
さて今夜の宿は、創業百余年を迎え、別所温泉で一番歴史のある『かしわや本店』である。近くに『柏屋別荘』という、やはり由緒のある旅館があるが、昔は親戚同士だったらしいが、今は全く別の経営だという。
チェックインを終わって、浴衣に着替え、ゲタをカランコロンと響かせたがら、小さな温泉街を歩き、『石湯』と呼ばれる外湯に入ってみた。入湯料は150円だったと思う。番台の左右が男と女に分かれている。岩風呂ふうの湯舟と小さな洗い場があり、7~8人も入れば満員になりそうだ。小さな銭湯といった趣きであった。
さて、かしわや本店に戻ろう。ここは客室数が15室という割には、本館と離館(四季亭)があり、客1人当たりの平均面積が広く、贅沢な旅館なのだ。従って従業員のマナーも良く、料理も美味しいし、風呂もゆったりとしていて、かなり癒されることだろう。
また旅館の裏側には『北向観音』があり、緑の中に本堂の屋根がそびえ、まるで絵画を観ているような瑞々しさを感じてしまった。
文句があるとすれば、古くさい貸切風呂くらいだが、無料なのだし、風呂は他にも4つあるので、ご愛嬌と考えるしかあるまい。
とかく到着時は愛想が良くても、チェックアウト後は知らんぷりの旅館が多い中、ここは帰りにも、大おかみ、おかみ、若おかみ、番当さんなどオールスタッフで見送ってくれた。とても気分が良く、また来ようという気になってしまう。これぞ、サービス業の真髄である。
旅館を後にして、次はお寺めぐりの巡礼である。
愛染かつらという桂の巨木で有名な『北向観音』、国宝・八角三重塔の『安楽寺』、美しい萱葺屋根の『常楽寺』、重要文化財の『前山寺』と、立派な寺院を次々と散策し、心が洗れる思いだった。
最後に『無言館』と呼ばれる絵画館に立ち寄ってみた。十字型をしているこの館には、大平洋戦争で戦死した若き画家達の絵と手紙などが、展示されていた。自画像、風景画、裸婦像などと、父母や恋人宛の手紙などである。
戦死したのは、20代前半が多く、もっと絵を描きたかっただろう、恋もしたかっただろうな・・・。生きていれば、ちょうど私の亡父と同い年位だ。
あの忌まわしい戦争の犠牲者の多くは、終戦間際に亡くなったのだ。なんと無謀で意味のない戦争だったのだろうか。
そして彼らに比べれば、私達はなんと幸せなことか、この平和で幸福な日本は、彼等の尊い犠牲の上に築かれた楼閣なのだ。そんな熱い思いが胸に溢れて、私も他の見学者も涙を流しながら彼らの作品を観て歩いた。
決してこの気持ちを忘れずに、これからも生きてゆこう。そう思って駐車場へ戻ったら、「哀しいお知らせ」という立て札が目についた。そしてそこには、「最近車上荒しが多いので、車中に貴重品を置かないこと」と記されているではないか!
本当に哀しいことである。何故こんな場所で、悪事を働くのだろうか。お国のためにと、若くして戦死していった人々に対して恥ずかしいと思わないのか!。ガックリと肩の力が抜ける感じがしてしまった。
最後の最後になって、残念な思いをしたが、総じて今回の旅は楽しく、有意義で、とても心癒された素晴らしい旅だったと思う。
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