家の鍵
06/04/21★★★
もちろん岩波ホールという名前は知っていたが、中に入るのは初めてだった。ここは神保町交差点にあるビルの10階にあり、地下鉄と繋がっているため、雨に濡れずに済むというアクセスの良さがある。 また出版街の中心にあり、しかも岩波の名を冠していること、そしていつもマイナーな名作を単館上映するということで、インテリや映画通の自尊心をくすぐる存在のようだ。
館内は古くて暗くて、スクリーンも小さいのだが、どことなく清潔でシンプルで、インテリの匂いがするようだった。 さて本日鑑賞した作品は、若い頃に過ちで捨てた障害者の少年を、介護し一緒に暮らそうと決心する父親の、苦悩と愛情を描いたイタリア映画である。 まっとうに会話をする登場人物はほぼ3名 であり、前半の舞台はほとんどが病院周辺なので、変化がなくかなり退屈であった。そして、ちょっとでも会話を聞き漏らしてしまうと、何が何だかよく判らなくなってしまう会話劇 のようだっだ。 それにしても主人公の少年の演技は、神がかり的であった。 いまだに本物の障害者なのかもしれないと思い込んでいる。そのしぐさや動作はもちろんのこと、さっき言ったことをすぐに覆す態度には、僕までがイライラしてしまったくらいだ。まさに天才少年である。
それに引き換え、父親役の男優は余りにもハンサム過ぎて 、まるで兄貴のようだし、彼の苦悩や愛情がヒシヒシと心に伝わってこなかった。それがこの会話劇を退屈にしてしまった最大要因かもしれないな・・・。それから、シャーロット・ランプリングのわが子に対する『疲れ切ったあの言葉』 は、かなりショッキングなセリフだった。しかしあれが人間の本音なのだろうか・・・レビュー者泣かせの難しいテーマである。 テーマと構成は決して悪くないのだが、天才少年の抜群の演技力に頼りすぎてしまったような気がする作品だった。
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不在の母、突然出現した父、そして重度の障害を持つ15歳の息子の「人生の重みを問う」物語。力作である。
家の鍵
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一方、父親のジャンニは、パオロを見捨てた罪の意識に囚われながらも、別の女性と結婚し、8カ月になる息子がいる。
父と子は、15年ぶりに顔を合わせ、交流を深めていく。
脳性... [続きを読む]
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会話上手は聞き上手とよく言われますが、もうひとつ踏み込んでみました。あなたのブログに訪れる読者さまのお役に立てれば嬉しいです。 [続きを読む]
受信: 2006年5月 9日 (火) 00時02分
» 「家の鍵」 [ヨーロッパ映画を観よう!]
「Le Chiavi di Casa」...aka「The Keys to the House」2004 イタリア/フランス/ドイツ
ヴェネチア映画祭(2004)パジネッティ賞主演男優賞/キム・ロッシ・スチュアート
イタリア映画祭(2005)オープニング作品
監督、脚本はジャンニ・アメリオ。主演の父親ジャンニにキム・ロッシ・スチュアート、息子パオロにアンドレア・ロッシ。ニコルにシャーロット・ランヴリング(スイミング・プール/2003)。
15年前ジャンニ(スチュアート)の恋人ジュリアは... [続きを読む]
受信: 2006年5月21日 (日) 22時48分
» 家の鍵 [映画評論家人生]
OS名画座 私ごとだが、高校生から大学生までの何年間か、障害児のボランティアをしていたことがある。対象は小学生から中学生。自閉症、盲目、脳障害と様々だった。遠足、運動会、クリスマス会、キャンプと、何... [続きを読む]
受信: 2006年5月25日 (木) 23時49分
» 映画『家の鍵』 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
原題:Le Chiavi Di Casa
例えば昔付き合っていた人が、別れた後に妊娠していたことが分かり知らせることもないまま1人で出産していたとしたら・・ある日突然有り得る親子の対面・・
成長した15歳の自分の子供、見ず知らずで、どんなだろう・・ジャンニ(キム・ロッシ・ス... [続きを読む]
受信: 2007年9月29日 (土) 18時10分
コメント
コメントを有難うございます。
原作はあるようですが、ヒントを得ただけで、ほとんど障害者の主人公のアドリブに任せた、と聞いています。
投稿: マダムクニコ | 2006年5月 7日 (日) 15時12分
ありがとうございます!!
また、お邪魔させていただきます。
投稿: MANAMI | 2006年5月 3日 (水) 21時47分
MANAMIさん、決してしつこくないですよ。いろいろ参考になっています。時々ご連絡下さいね(^^♪
投稿: ケント | 2006年5月 3日 (水) 09時52分
こちらこそ、しつこく、失礼しました。
これからも、よろしくお願いいたします。
投稿: MANAMI | 2006年5月 3日 (水) 08時34分
MANAMIさん、何度も丁寧なコメントをありがとう。本当の障害者が演じていたとなると、この映画の評価もかなり変わってしまいますね。製作者がこの映画にかなり心血を注いでいることは、なんとなく解かりました。そしてもしかすると、自分も障害者の子供を持っているのかもしれませんね。
ただ映画として、素晴らしいか否かは判断の難しいところかもしれません。
これからも、宜しくお願いします。
投稿: ケント | 2006年5月 2日 (火) 21時56分
アンドレア・ロッシと彼を起用した製作者側の関係がどのようなものであったのか、詳しいことまでは知りません。
けれど、この作品を観ていると、当初の目論見はどうであれ、アンドレアが周囲をリードし、表現者として成長させた部分も少なからずあったようにも見えます。
ジャンニとパオロの出会いの背景には、製作者側とアンドレアの出会いがあり、そのことが本作に深みを出しているように思えます。
アンドレア自身が、どの程度、「演じる」ということを意識し、理解していたかについては、疑問も残りますが...。
投稿: MANAMI | 2006年5月 2日 (火) 20時56分
MANAMIさんコメントありがとう
それにしても、やはり本物の障害者だったとは・・・・ちょっと考えてしまいます。
投稿: ケント | 2006年5月 2日 (火) 19時14分
パオロを演じたアンドレア・ロッシは「本物の障害者」だと聞きましたが...。アンドレアの「演技」に合わせて、脚本が書き換えられた部分も随分あったのだそうです。
この作品は、ジャンニがアンドレアに出会い受け入れる過程を描いているわけですが、監督がアンドレアを理解し、アンドレアを表現する方法を獲得する過程をも内包しているのだと思います。
投稿: MANAMI | 2006年5月 2日 (火) 01時16分
マヤさん>コメントありがとうございます。父親がハンサムだと自由を束縛されることがよりしんどいということと、子供との落差が激しく映るということはありますね。しかしそれでも演技力が感じられませんでした。
投稿: ケント | 2006年5月 1日 (月) 21時21分
TBありがとうございます。
父親がハンサムなのは、わざとそうしたのだと思います。残酷な映画ですよね。
投稿: マヤ | 2006年5月 1日 (月) 17時27分