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2006年2月23日 (木)

魂萌え

 どうにも変なタイ卜ルだが、世間知らずの専業主婦敏子が、早過ぎた夫の死を乗り越えて、一人でたくましく生きてゆこうと決意する迄を描いている。と言えば、この妙なタイトルの意味が、なにげに理解出来るだろう。

魂萌え ! Book 魂萌え !

著者:桐野 夏生
販売元:毎日新聞社
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 この小説の登場人物は、主人公の長男夫婦と長女夫婦、高校時代からの3人の友人達、そして亡夫の愛人と蕎麦打ち仲間達と、まるでホームドラマそのものだ。そしてストーリー展開も、日常的でたわいのないお話ばかりに終始するのである。唯一カプセルホテルでの、『風呂婆さん』との出会いシーンだけが、桐野風味を感じさせてくれたぐらいだ。ほんとに桐野夏生さんが書いたのかと、疑りたくなってしまう内容なので、トリッキーな話を期待すると裏切られるだろう。。。
 だからといって断じてつまらない小説ではない。それに専業主婦の中年女性達の中には、自分にも身に覚えがある人が多いはずだから、かなり共感を得られるはずである。
 ただ男の立場から見ると、この主人公の煮えきらないグズグズした対応と、世間知らずでバカのつくお人好し加減には、かなりイライラさせられ腹が立ってくるのだ。実際に中年の専業主婦って、皆こんなにも頼りないものなのだろうか・・・。きっと旦那が元気なときは、とくに困ったこともなく、平々凡々と過ごしているうちに、子育てと家族の食事の支度以外は何も出来ない女になってしまうのかな。だから『オレオレ詐欺』や『蒲団セールス』などの餌食になってしまうのだ。
 今の若い女性には少ないと思うが、いわゆる戦前派でそこそこ裕福な人々は、男も女もこういうつぶしの利かない、お人好しが多いのだろうか・・・と言ってみたものの、自分も傍から見れば五十歩百歩なのかもしれないな・・・。ははは。
 かなり厚い本なので、通勤時には荷物になって肩が痛くなってしまった。この話は、特に大きな盛り上がりもなく、主人公が一人で強く生きてゆくことに目覚めたところで終わってしまうため、読了後の充実感も薄く、何となく中途半端な気分のままである。このあと続編を書いて、連続TVドラマに仕立てれば、かなりヒットするのではないだろうか。
 ただこのような小説は、僕のようなおじさんではなく、同じ悩みを持つ、同年代の専業主婦が読むべき本なのだろうな。

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コメント

私ら夫婦はこの作品と同じ年代の夫婦です。いやぁこれは傑作でしたね。むしろ読むべきは団塊世代の妻でしょうね。

投稿: よっちゃん | 2006年2月24日 (金) 22時41分

こんにちは♪
TBありがとうございました。
私もなんとなくノレないまま終わった本です。
専業主婦という立場は同じなのですが、年代が違うせいか考え方もちょっと違う・・・。
でも、いまからこういう風になっていくのかなというのを見せてもらった部分もありました。

投稿: ミチ | 2006年2月23日 (木) 23時37分

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