鉄人28号
★★★
この映画は、昭和30年代に横山光輝が、雑誌『少年』に連載したマンガを原作としている。この『少年』には、手塚治虫の『鉄腕アトム』や関谷ひさしの『ストップにいちゃん』そして白土三平の『サスケ』などの人気マンガが、ズラ~と同時期に連載されていた。
当時マンガ雑誌は、現在のような週刊形式ではなく、付録つきの月刊誌だった。小学校でマンガ好きの男の子が集まると、『今日は何の日?』『少年の発売日!』と、まるで合い言葉のように囁き合い、月1回の発売日を心持ちにしていたものだ。
その中でも鉄人28号は、どちらかと言えば、実現しそうなロボットマンガとして、当時子供達のロマンと冒険心を刺激して、断トツの人気を誇っていたと記憶している。さらに当時連続TVドラマとして、実写版の鉄人28号も放送され、子供心に湧々しながらTVにかじりついたものだ。
ところがこれがわずか13回放映されただけで、あっという間に終了してしまった。実写版の鉄人は、ドラム缶を継ぎ足したような、子供の目にも耐えられない程のひどい形で、大きさも2m程度だったと思う。余りにもちゃちいので、両親にバカにされながら観るのも辛かった覚えがある。
その後TVアニメとして復活し、こちらは大反響を呼び、100話近く続いた。グリコの提供で、あの主題歌「ビルの街にガオーッ」の歌詞の最後に、「ビュ~ンと飛んでく鉄人!28号!」とあるが、そのあとに「グリコ・グリコ・グーリーコ!」とオマケのようにちゃっかり商品名が挿入されていたのが思い出される。
さて昔話に夢中になり過ぎてしまったが、そういった少年時代の思い入れが目覚めたのか、今回の実写映画は製作途中から、ず~と期待し続けていたのである。だから映画館で必ず観ようと心に決めていたのだが、余程人気がなかったのか、あっという間に上映終了となってしまった。ネットの評価も最悪だったし、興行成績も散々で、その後DVDの発売もなかなかされない・・・というイライラの続く中で、やっとレンタル屋にDVDが並んだ。ところが今度はいつまで経っても、レンタル中が続き、更にイライラが納まらない。映画館には誰も行かなかったのに、何故もこうレンタルでは人気沸騰なのだ!・・・そして今日やっと旧作扱いになった本作をレンタルすることが出来たのである。
ネットでは、あの『デビルマン』以下とも酷評されていたので、かなり腹をくくって鑑賞したわけだが、それほど酷いものでもなかった。少くとも、ブラックオックスが大暴れしているシーンなどは、なかなか迫力があったと思う。
多分この映画が酷評された原因は、観客の年代を絞り切れなかったことにある。もしお子様ランチなら、半世紀前の鉄人を使うことはなかっただろう。いくらでももっとカッコ良く、子供の知っているロボットキャラがあるからだ。鉄人をひっぱり出したということは、少くとも50代のおじさん達を、ターゲットにしなくてはならないだろう。ところがこの世代のおじさん達は、一番映画に縁のない世代なのである。従って鉄人を選択したこと自体が、初めから興行的には失敗だったことになる。
また大人をターゲットにした場合は、特撮はさておいても、ストーリー展開にもう少し常識的な流れが必要であろう。まずあれだけの騒ぎに、自衛隊が出動しないのはなぜか?ブラックオックスを操縦する犯人のへリが、どうしてすぐ見つからないのか?正太郎をせめて高校生程度にできないのか?などなど数え上げたらきりがない。またたとえ子供向けの作品でも、ハリウッドでは、いやと言うほど大金をかけて、少しでも真実味を出そうとしているではないか。とにかく観客を舐めてはいけない。今の観客は、皆目が肥えているのである。従って、そのことを理解しない人には、映画を作る資格がないことになる。
それでも僕のようなおじさんにとっては、出来・不出来は別として『貴重な映画』だった。そしてエンディング・クレジットで、TVアニメの鉄人の雄姿と、例の「ビュ~ンと飛んでく鉄人!28号!」の懐かしい主題歌に、少年時代の自分が重なり、思わず涙涙涙涙である。従って評点も多少甘くなってしまったかもしれない。あと3~4年先には、団塊の世代が定年となり、映画を観るおじさんが増えるだろう。そこで提案!その頃を見計らって、もっと大人の鑑賞に耐え得る『鉄人28号』をもう一度製作して欲しい。
| 固定リンク | 0
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 鉄人28号:
» 鉄人28号 [実写版] 池松壮亮、蒼井優、香川照之、川原亜矢子 [CUITE ブログ]
鉄人28号 [実写版]
小学6年生の金田正太郎が住む大都市・東京に突如、巨大ロボット、ブラックオックスが現われた。その直後、綾部と名乗る老人が正太郎の前に現われ、正太郎の祖父と父が研究していたロボット、鉄人28号の存在を告げる。鉄人を操縦してブラックオックスを倒せるのは直感像素質を持った正太郎以外にいないのだ。「行くぞ鉄人!!」正太郎は、勇気を振り絞って鉄人を操縦し、ブラックオックスとの戦いに臨む!... [続きを読む]
受信: 2006年2月 5日 (日) 20時36分
» 「鉄人28号」のDVD作成 [アニメ・特撮 映像コレクターへの道]
旧作の鉄人28号をDVDに... [続きを読む]
受信: 2006年2月 5日 (日) 21時27分
» 『 鉄人28号 』 [やっぱり邦画好き…ANEX]
映画 『 鉄人28号
』 [ DVD鑑賞 ]
2004年:日本
監 督:冨樫森
脚 本:斎藤ひろし 山田耕大
原 作:横山光輝
鉄人28号 DVD-BOX 1
[ キャスト ]
池松壮亮
蒼井優
香川照之
川原亜矢子
薬師丸ひろ子
中澤裕子
高岡蒼佑
伊武雅刀
阿部寛
柄本明
中村嘉葎雄
ある日、大都市・東京で突如サイバーテロが発生。さらに破壊ロボット
“ブラックオックス”が飛来し、東京の... [続きを読む]
受信: 2006年2月 5日 (日) 23時04分
» 鉄人28号 [うっかりはんぞう]
『鉄人28号』観てきました。(もちろん実写映画ですぞ)・誰だろう、この女刑事は? [続きを読む]
受信: 2006年2月 6日 (月) 09時04分
» 実は「鉄人28号」と2本立てでした [BIGLOBE平社員ブログ]
実写版ドラゴンボールはどんな映画になるんだろう。
石塚です。 [続きを読む]
受信: 2006年2月 7日 (火) 01時14分
» 「鉄人28号」見てきました [エモーショナル★ライフ]
去年は日本のアニメの実写映画化ブームでしたね。 「キャシャーン」「キューティーハニー」「忍者ハットリ君」「デビルマン」 といった映画が昨年のうちに公開されました。 そしてそのブームの最後?の映画「鉄人28号」が3月にいよいよ公開されます。 レーシングストライプ..... [続きを読む]
受信: 2006年2月 7日 (火) 01時41分
» HY 歌詞 画像 サスケ [人気Blogランキング[今週24位]]
この『少年』には、手塚治虫の『鉄腕アトム』や関谷ひさしの『ストップにいちゃん』そして白土三平の『サスケ』などの人気マンガが、ズラ~と同時期に連載されていた... [続きを読む]
受信: 2006年4月15日 (土) 00時44分
» 鉄人28号 [いつか深夜特急に乗って]
「鉄人28号」★★★ (DVD)2004年日本 監督:冨樫森 [続きを読む]
受信: 2006年6月20日 (火) 06時06分
» <鉄人28号> [楽蜻庵別館]
2005年 日本 114分
監督 冨樫森
脚本 斉藤ひろし 山田耕大
撮影 山本英夫
音楽 千住明
出演 金田正太郎:池松壮亮
立花真美:蒼井優
綾部達蔵:中村嘉葎雄
金田陽子:薬師丸ひろ子
宅見零児:香川照之
貴島レイラ・ニールソン:川原亜矢子
江島香奈:中澤裕子
金田正一郎:阿部寛... [続きを読む]
受信: 2006年10月10日 (火) 09時42分
» 鉄人28号 [シネマ通知表]
2004年製作の日本映画。
横山光輝原作によるロボット漫画の金字塔を、『星に願いを』の冨樫森監督が最新技術で実写化。東京でサイバーテロが発生。正太郎は亡き父が残したリモコンで操作する巨大ロボット・鉄人28号を駆使し、破壊ロボット“ブラックオックス”に立ち向かう。
CGはデジタルスクールの卒業課題制作で提出されそうなレベルのもの。戦闘シーンは殴り合いとたまに体当たりがあるだけ。これを劇場の大スクリーンで公開した松竹という企業の意図が読めません。
そもそも鉄人28号という題材を、この”..... [続きを読む]
受信: 2006年11月 8日 (水) 09時08分
» 弱視、弱視の予防と治療 [子供の視力@子供の視力を守ろう]
子供の弱視、弱視の予防と治療早期発見視力は10歳前後まで伸びる可能性がありますが、1~3歳以前の伸びに比べると、それ以降の伸びはごくわずかです。弱視を防ぐためになによりも大切なことは、弱視につながる原因をできる限り早く見つけ、取り除くことです。斜視であれば手術治療、屈折異常や不同視なら屈折矯正、形態覚遮断ならその原因の除去・治療を早めに行い、弱視になるのを防ぎます。 アイパッチによる弱視の治療 見にくくても弱視眼を無理して使う弱視の眼や弱視になりそうな眼は、そのままでは抑制が...... [続きを読む]
受信: 2006年11月10日 (金) 14時12分
» レーシック口コミ [レーシック口コミ]
レーシックの口コミ評判を集めました。レーシック手術で失敗しない為に注意することとは [続きを読む]
受信: 2013年1月 6日 (日) 20時02分
コメント
ふにゃんこさんコメントの返事を忘れていました。ごめんなさい。
評判は最悪ですが、僕の印象はそれほど悪くありません。ブラックオックスは格好良かったですね。
投稿: ケント | 2006年10月11日 (水) 22時45分
みのりさんこんばんは。
みのりさんも懐かしかったのですか?
年がばれますよ(笑)
実写版のTVドラマも観ていましたが、恥ずかしくなるほどダサい作品でしたよ。
投稿: ケント | 2006年10月11日 (水) 22時41分
実写版のTVドラマなんてあったのですか。
アニメの鉄人28号は、弟につられて見ていましたが、なかなか面白かったです。
最後の主題歌は、懐かしくってケントさんではないけど、ウルウル?でした。
投稿: みのり | 2006年10月10日 (火) 09時55分
さっき見終わりました。それで他の人はどう思っているのかと思いさがしたら、どのコメントを見ても評判の悪い映画なんですね。私は設定の細かい部分(時代がごちゃまぜとか、自衛隊がなぜ出動しないのかとか)を抜いて、少年時代を純粋に体感出来ましたよ。その原因は鉄人28号をリアルタイムでみてないけれど、時代の雰囲気だけはわかる世代と言う中途半端な所に位置してるからでしょうか、アニメの新しいのや原作を読んだ事がない、みてないので良かったのか悪かったのか。マニアじゃないけれど割ときちんと作られていると思います。
投稿: ふにゃんこ | 2006年7月10日 (月) 22時56分