海猫
『映画と本のランデヴー』第二弾は『海猫』です。先に観たのが映画だったので、映画のほうからレビューを書きました。
原作は読んでいませんが、広告のコピーが『あの衝撃作失楽園から7年、気鋭・森田芳光監督が挑む新しい<禁断の愛>を描いたラブストーリー』とあり、その下に主演の伊東美咲が、雪の中を子供の手を引いて、もの悲しい顔つきで佇んでいる写真に魅せられてこの映画を観る羽目になりました。
海猫 販売元:東映 |
それよりも失楽園につられたせいか、もっと大胆な性描写を期待していたのですが、ヌードも全くなしでちょっと消化不良でした。
それでも、もう少し心理描写を上手く描ければ納得したのですが、それもなく、またいろんなシーンでの必然性のなさにも、ちょっと失望しました。それで『海猫』というタイトルの意とするものが、見えてきませんでした。
原作を読んでいないので、余り分析できませんが、それ以前に、この映画は完全に脚本作りの失敗でしょうね。
ただラストシーンだけは、『あと味の良い涙』が自然に流れてくる展開で、とても感動的でした。まるでこのラストシーンのために作られたような映画のような気がしました。
『海猫』 谷村志穗
上下2巻の大作でしたが、あっという間に読破してしまいました。去年上映された映画では、薫という1人の女性と、夫とその弟との三角関係だけを描いていましたが、原作では薫を巡る7人の女性達の生きざまを、それぞれの視点で見事に描いていました。
海猫〈上〉 著者:谷村 志穂 |
結局、人は皆自分の生きている証が欲しいのです。それはきっと、たった1人でもいいから、自分を必要としている人を見つけることから始まるのでしょう。
小説を読んで、映画が不評だった原因が判りました。映画は不倫部分だけにテーマを絞ってしまい、小説の根源的な視点と異なってしまったからだと思います。
薫を核として、その娘の美輝と美哉、実母のタミ、弟の妻幸子、夫の不倫相手の啓子、義母のみさ子の7人の女性達、そして彼女達をとりまく男性全員も、『生きる証』を探していたと思います。
登場人物が豊富なうえ、心理描写も巧みで、時代考証や地域の研究なども丁寧に行っているので、読了後には非常に爽やかな感動が残りました。とても良い小説だと思います。
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