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2006年2月 7日 (火)

海猫

『映画と本のランデヴー』第二弾は『海猫』です。先に観たのが映画だったので、映画のほうからレビューを書きました。

 原作は読んでいませんが、広告のコピーが『あの衝撃作失楽園から7年、気鋭・森田芳光監督が挑む新しい<禁断の愛>を描いたラブストーリー』とあり、その下に主演の伊東美咲が、雪の中を子供の手を引いて、もの悲しい顔つきで佇んでいる写真に魅せられてこの映画を観る羽目になりました。

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 伊東美咲の演技についての酷評が多いので驚きましたが、寡黙ではっきりしない性格の役柄なのかと考えていましたので、僕は余り気になりませんでした。
 それよりも失楽園につられたせいか、もっと大胆な性描写を期待していたのですが、ヌードも全くなしでちょっと消化不良でした。
 それでも、もう少し心理描写を上手く描ければ納得したのですが、それもなく、またいろんなシーンでの必然性のなさにも、ちょっと失望しました。それで『海猫』というタイトルの意とするものが、見えてきませんでした。
 原作を読んでいないので、余り分析できませんが、それ以前に、この映画は完全に脚本作りの失敗でしょうね。
 ただラストシーンだけは、『あと味の良い涙』が自然に流れてくる展開で、とても感動的でした。まるでこのラストシーンのために作られたような映画のような気がしました。

『海猫』 谷村志穗

 上下2巻の大作でしたが、あっという間に読破してしまいました。去年上映された映画では、薫という1人の女性と、夫とその弟との三角関係だけを描いていましたが、原作では薫を巡る7人の女性達の生きざまを、それぞれの視点で見事に描いていました。

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著者:谷村 志穂
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 弱い女は強くなれるが、強い女はなかなか本当に強くなれない。むしろ強くみえる女こそ、常に淋しさと悲しさに迫われ、必死になって防戦している孤独な兵士のような気がしました。
 結局、人は皆自分の生きている証が欲しいのです。それはきっと、たった1人でもいいから、自分を必要としている人を見つけることから始まるのでしょう。
 小説を読んで、映画が不評だった原因が判りました。映画は不倫部分だけにテーマを絞ってしまい、小説の根源的な視点と異なってしまったからだと思います。
 薫を核として、その娘の美輝と美哉、実母のタミ、弟の妻幸子、夫の不倫相手の啓子、義母のみさ子の7人の女性達、そして彼女達をとりまく男性全員も、『生きる証』を探していたと思います。
 登場人物が豊富なうえ、心理描写も巧みで、時代考証や地域の研究なども丁寧に行っているので、読了後には非常に爽やかな感動が残りました。とても良い小説だと思います。

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 コンブ漁は夫婦でするものだ!と、また一つ勉強になった。  何だか、全ての展開が読めてしまうので、演技力がないと弱いなぁ・・・と、かなり冷めた目で観てしまいました。閉塞感漂う小さな港町において、海猫に比喩した逃げ出したい心を映像的には見事に表現できていたと思うのですが、それぞれの登場人物の心情変化が弱い。その中でも一番良かったのが、孝志役の深水元基でしょうか。伊東美咲も�... [続きを読む]

受信: 2006年2月 7日 (火) 21時40分

» 海猫 今年の140本目 [猫姫じゃ]
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受信: 2006年2月 7日 (火) 22時08分

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海猫 Amazon.co.jp 1980年代の半ばの北海道、函館。ロシア人の血を受け継ぐ薫(伊東美咲)は、南茅部の漁師・邦一(佐藤浩市)に嫁いでいった。しかし、なかなか漁師の生活になじめず苦労する薫は、いつしか邦一の弟で自分を恋い慕う広次(仲村トオル)と結ばれてしまう…。 谷村志穂の同名小説を原作に、『失楽園』『阿修羅のごとく』などの森田芳光監督が描いたラブストーリー。ヒロインがそのはかなさゆえに男たちを魅了させ、やがては狂わせていく過程がリアルに描かれており、昨今の純愛映... [続きを読む]

受信: 2006年2月 7日 (火) 22時35分

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時々、吸い込まれそうな瞳の人を見かけることがあります。その瞳は、意思を放ち、何 [続きを読む]

受信: 2006年2月 8日 (水) 06時20分

» 海猫 [BlueBloomBlog]
伊東美咲主演の『海猫』みてきました 話はいい話ですが、伊東美咲の人気に頼った映画のところがちょっと気に入らない でも話はいいですよ 北海道の風景と禁断の愛なんだけど、禁断ゆえに純愛のイメージがいいです やっぱり 禁断の愛は北海道とか山陰とかですね 寒い地域の鬱屈した暗い地域のほうが禁断の愛にあってますね 都会での禁断の愛はちょっと 嫌な感じですけど 東北や山陰や北陸といった田舎の冬は寒くて夏は暑い地域のほうが やっぱ禁断の愛でしょ... [続きを読む]

受信: 2006年2月 8日 (水) 12時27分

» 海猫 谷村志穂 ● [IN MY BOOK by ゆうき]
海猫谷村 志穂新潮社 2002-09by G-Tools 再読。出てすぐに読んで、谷村さん、気合入ってるなあ〜、と、思った。内容を忘れた頃に映画化されて、その映画を見たとき、物足りないなあ、って思った。原作の中の何かとても重要なものが、映画では描かれていないなあって思った。でも、その「何か」を忘れちゃってたので(笑)、もう一度読もうとずっと思っていた。 前半は、北海道で昆布漁をする家に嫁いだ、ロシア人と日本人のハーフの女性の物語です。映画化するより、昼の帯ドラマにしたほうがよかったんじゃな... [続きを読む]

受信: 2006年2月 8日 (水) 14時22分

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二人の男を愛してしまう宿命―。伊東美咲映画初主演作『海猫』。 現場密着ショット、函館で撮り下ろした写真、スペシャルインタビュー、森田監督との対談、スタッフ証言集などで、伊東美咲の魅力をこの1冊に。 伊東美咲in映画『海猫』 ... [続きを読む]

受信: 2006年2月 8日 (水) 22時09分

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「海猫」 「不幸になる」愛し方ってあるんと思うんです。どうしようもなく好きなのに、それをうまく表現できない、自信が持てない、そして知らず知らずの内に相手を傷つけ [続きを読む]

受信: 2006年2月 9日 (木) 09時22分

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受信: 2006年2月11日 (土) 16時41分

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