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2006年1月11日 (水)

秘密

 映画が先か、原作が先かと意見の分れるところですが、この作品は映画が先でした。というより、東野圭吾の小説であることさえ知らずに、友人に薦められるままに映画を観たのがきっかけなのです。

まずは映画のレビュー ★★★★

秘密 秘密

販売元:東宝
発売日:2000/09/21
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 スキーバスの転落事故で生死をさまよう妻と娘。そして妻の魂が、意識不明の娘の体に入り込む。その後妻の葬儀が終わると、娘の体に乗り移った妻がめざめる。そしてそのことは夫婦だけの『秘密』として、二人は日常生活に戻ることになるのだが・・・
 原作はミステリー作家である東野圭吾で、映画を観る限り「ミステリアス・ファンタジック・ラブストーリー」という欲張りな設定で、こちらが先だが、韓国映画の『純愛中毒』と酷似している。
 配役は、妻(母)役に岸本加世子、娘役に広末涼子、夫(父)役に小林薫と、実にうまい組合せではないか。 なぜなら主演の小林薫は、こうした魔可不思議な世界の中で、違和感もなく淡々とした存在感を表現出来る数少ない男優だからだ。
 そしておちゃめで可愛い妻役の岸本加世子のイメージも、若い広末涼子が演じるのに、さほど違和感を抱かせない効果があったと思う。
 アイドル系の広末涼子にはさほど興味はなかったのだが、娘と妻の双方の役を巧くこなしていたし、スレンダーな体でありながら、意外と色っぽい肢体にはドキドキしてしまった。
 「心が妻で、体が娘」と聞けば、誰もが関心を持つことは、では「夫婦のSEX」はどうするのか・・・ということである。内面は妻でも、外見は娘そのものなのであるから、他人が覗いたら『近親相姦』にしか写らないだろう。
 また外出先でも、余り仲の良い素振りをすると、他人にはちょっと異常な父娘と勘ぐられるかもしれない。
 だからといって、娘の体に妻の魂が乗り移ったと説明しても、誰もが狂ったとしか思わないだろう。
 この物話の中核は、この辺りの葛藤を夫の側から描いている。もちろん妻は妻で若返った体を持て余したり、夫との関係を悩んだりしているのだが、その辺りが曖昧に描かれているのが気になった。
 ラストのドンデン返しは、流石ミステリー作家たる東野圭吾の面目躍如といったところで、「してやられた」という気分であった。ただ僕が男性のせいか、個人的には切なすぎて気に入らない終わり方だ。
 いずれにしても原作を読んで、作者の意図を確認しなくては気が済まなくなってしまった。

で、東野圭吾さんの原作のレビューです

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著者:東野 圭吾
販売元:文藝春秋
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 骨格的なストーリーは、映画も原作も全く変わらないのだが、原作では事故に遭った娘が小学生なのに、映画では広末涼子扮する高校生であった。この違いは大きい。何故ならば、この作品の要めとなる『娘の姿をした妻とのSEX』不能問題で、その描き方が大きく異ってくるからだ。これは小説のほうが自然な流れとなっている。
 あと当然のことだが、映画ではいくら広末が上手に演技しても、若い女性にしか観えないが、映像のない小説では娘と入れ替っても、描き方が妻であれば妻として受入れることが出来た。それだけにより一層切なくやりきれなくなるのだが・・・
 もうひとつの大きな違いは、原作では事故を起こしたバスの運転手と、その複雑な家族関係を丁寧に描いているが、映画ではここをかなり省略していた。上映時間の構成上はしょったのかもしれないが、このストーリーの『転・結』に繋がる重要なバックボーンを省略したことこそ、映画の致命的なミスだったのだ。
 この小説の主人公である杉田平介は、製造技術系の真面目なサラリーマンであり、中年になっても青年のような純真なこころを持ち、完全に大人になり切れない。このことは彼が係長に昇進したときの、同僚の言葉でも判る。
 「会社ってのは人生ゲームだよな。会社にいて出世するってのは、人間が歳をとるってのと同じことだと思うよ。出世したくないってのは、歳をとりたくないっていうことなんだ」
 青年のこころと中年の体を持つ夫と、中年のこころと少女の体を持つ妻が、やがてそれそれが肉体に応じた精神を持とうと決心する。
 映画先行であらすじが判っていながらも、ぐいぐいと小説の世界に惹き込まれ、あっという間に読破してしまったが、やはり映画同様にラストのドンデン返しは切なくてやりきれなかった。

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コメント

はじめまして。トラックバックありがとうございます。
「秘密」はだいぶ前に読んだ本なので記憶が薄れていますが、読者によって全く感想が違ってくるように思いました。登場人物の誰に(主に夫もしくは妻に)感情移入できるかによって小説の印象はだいぶ変わると思います。僕はいまいち感情移入できなかったため、どこか宙ぶらりんのまま読み終わり、読後なにか物足りなさを味わったことを記憶しています。

投稿: Dときどき吉田 | 2006年1月14日 (土) 09時03分

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