堂ヶ島紀行
西伊豆に行ったのは、おそらく20年振り位かもしれない。以前は道路事情が悪く、殊に西海岸沿いの細くて、くねくねと曲った崖っぷちの道には、辟易したものだった。
どうもその頃のイメージが強烈に残っていたせいで、その後足が遠のいてしまったのだろう。ところがいつの間にか、道路が整備され、広くなっているのには驚いてしまった。その代わり、かなりトンネルの数が増えたのは仕方ないか・・・
また途中の山合いにも、『修善寺道路』などの有料道路が完成したおかげで、沼津インターからあっという間に堂ヶ島へ到着してしまったのはありがたかった。
途中土肥港近くの金山跡にある食堂で食べた『金目鯛の煮付定食』がとても美味で、これがなんと1000円という信じられないお値段なのであった!
金目の煮付の香ばしさを口中に残しながら、宿に向かう道すがら、かの有名な『恋人岬』で、愛の鐘を鳴らすために車を降りた。
駐車場から岬まではちょこっと行けばよいのだと思い込んでいたが、ゆっくり下って約15~20分位かゝってしまった。それでも潮風の薫る林の木道を鼻歌混じりで下って行くのは、気分が良かったし、岬からの絶景も目に嬉しかった。
ところが、ところがである・・・やはりもう年なのか、帰りの上り路はかなりきつくて、息切れ状況・・・「恋を成就する?」のは、それなりの苦労が必要なのね。
さて宿のお目当ては、『タ焼けを眺めながらの露天風呂』である。タ日の沈まぬうちにと、宿泊先の旅館へ急いだ。 この宿は静かで小じんまりした、全室オーシャンビューの純和風旅館である。
部屋の正面には、有名な三四郎岩が三つ、見事に海の中にそびえている。まさにこれは絶景!金では買えない素晴らしい景色に、うっとり見とれてしまう。
午後4時を少し回わり、タ日が西の空に沈みかけてきたので、急いでユカタに着替えて、大望の露天風呂へと向かった。 露天風呂は内湯の正面扉から出て、5~6段の階段を降りたところに、べランダのようにひっそりと佇んでいた。5~6人入れば満員になる小さい湯舟なのに、タ日が見える場所が一番奥のほうだけなので、3~4人の人が同じ場所にひしめいて、しきりと沈みゆくタ日に見入っていた。
ただタ日の沈む場所が、海ではなく陸なので、今一つ趣がなく、あっという間に地平線に呑み込まれてしまったが、それでも遠くの空に薄っすらと残ったオレンヂ色を、ボンヤリと見つめていた。
数年前に新潟の『瀬波温泉』でみたタ日を思い出したが、そのときはタ日が日本海に沈んで、海も空もまるで朱色の絵の具を塗りたくったように鮮やかに輝いていたものだが、ここと日本海と比較しては酷というものだろうか。
風呂を出ると、次なるお目当ての海の幸づくしのタ食のお時間である。「部屋食」というと、一見豪華のようだが、部屋に臭いが残ることと、料理が冷めるので、いつも食事処での食事を希望している。
しかしこの宿には食事処がなく、朝食さえも部屋食だという。。。運ばれてきた料理を見て、不安が的中した思いだった。懐石料理だというのに、全ての品が一度に並べられ、楽しみにしていた刺身は、どこかで集中配膳したのか、セロファンラップがかかっているではないか!
味のほうは食ベなくとも見当がついてしまったが、全く食欲の湧かない食事にがっかりした。情けないことに、途中の食堂で食した1000円の『金目鯛の煮付定食』のほうが遥かに美味しかったのだ。
さて翌日は、漁船のような小さな遊覧船に乗って堂ヶ島めぐりをしたが、この船は5分おきに出ているという。
もっと大きな船にしたほうが効率が良いのに思っていたが、狭い洞屈の中を進んでゆくので、大きい船では無理なのだということが判った。
ここには特に堂ヶ島という島があるわけではなく、このあたり一帯を堂ヶ島というらしい。洞屈の中心部は、空が見えると同時に、数人の顔が船を覗いていたので驚いた。そこは天然記念物に指定されている『天窓洞』と呼ばれる洞窟である。
あとでその洞窟の上が小さな公園になっていて、その中心が吹き抜けになっているという種証しを確認して、なるほどと妙に納得してしまった。
遊覧船での『洞屈めぐり』は、約20分程度で、あっという間だが、下船後に洞窟外の遊歩道を、ゆっくりと散策すれば、合わせて約1時間は必要だろう。
また遊覧船のりばの周辺が堂ヶ島の中心地で、大駐車場はもちろん、おみやげセンターやレストランのほか、『加山雄三ミュージアム』と『らんの里堂ヶ島』などの観光施設が集中して造られている。
『加山雄三ミュージアム』は素通りして、『らんの里』に入ってみた。ここの入場料は、遊覧船より高いので驚くが、さすがに高い入場料を払うだけの価値は十分にあるので心配無用だ。
ここは山の斜面と、その起伏と眺望を利用した広大な施設で、世界中の珍しいランの花が咲いているだけではなく、堂ヶ島全体を見渡せる展望台や、ダイナミックな吊橋などもあるので十分見応えのある施設になっているのである。
そのあと『アクーユ三四郎』で立寄り湯を楽しんだが、ここの露天風呂はゆったりとしていて落ちつけるのだが、湯舟を立ち上がらないと景色が十分に見えないのがやや難点かもしれない。ただ、周辺から風呂場が見えない配慮にもなっているので仕方ないだろう。
まあ絶景ポイント周辺に数件のホテルがひしめいているため、それぞれの露天風呂に、長所と短所があるのは致し方ないかもしれない。
これで堂ヶ島観光は終いなのだが、どうしても昨日の『金目の煮付』が忘れられず、ランチとしては少し遅くなったが、帰途に例の土肥の食堂で『金目鯛の煮付定食』を再び食べることになってしまった。
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コメント
ケントさん TBありがとうございます。
「堂ヶ島紀行」、詳細に書かれており、興味深く拝見しました。
懐かしく思ったり、思わずうなずいたりと。
旅はいいですね。
これからもよろしくお願いします。
投稿: KUBO | 2006年1月21日 (土) 20時43分