2009年11月18日 (水)

ゼロの焦点

★★★☆

 過去に何度もTVドラマや映画化されている作品である。太宰治と同じく松本清張も、生誕100周年を迎えるようだ。松本清張といえば代表的三作として、『砂の器』、『点と線』に並んで本作があげられる。
 松本清張は『或る「小倉日記」伝』で、芥川賞を受賞すると、社会の暗部とドロドロした人間の本質を鋭くえぐる作品を続々と発表し、社会派推理小説という金字塔を築きあげた。本作も単なる謎解きミステリーではなく、敗戦後における女たちの苦渋に満ちた人生を描いている。…はずだった…。

        Zero

 今更の映画化ではあったが、昭和30年代の街並や蒸気機関車など、とてもCGとは思えない大がかりな撮影セットには舌を巻いた。さすが『三丁目のタ日』の東宝である。
 それにしても昔は、事務所や工場の中であろうが、列車の中であろうが、客間であろうが、いたる所でスパスパとタバコを吸っていたんだね。喫煙ル一ムなど隔離された場所でしか吸えなくなってしまった現代と比べると、まるで違う国のように感じてしまうよな。タバコがこれほど追いやられてしまった事は、女性の地位向上の象徴といえよう。そのことがこの作品のテーマとオーバーラップしているのは偶然なのだろうか…。

 さて今回の映画化のもう一つの売りは、主演の三女性に、広末涼子、中谷美紀、木村多江の人気女優を配したことだろう。それぞれの個性を活かした役柄で、女優達の選択に間違いはなかったと思う。ただ木村多江の登場シーンが短かったのが不満であり、この映画のもの足りなさに繋がってくる。
 広末涼子自体は、なかなか演技力もあるし、役柄にハマッていたと思うのだが、余りにも探偵ゴッコにこだわり過ぎた展開がよくなかった。前述した通り松本清張の作品は、単なるミステリーではなく、社会派推理なのだから、犯人探しはほどほどにして、もっと人間ドラマの部分にスポットを当てなくてはならない。
 それだからこそ、社会の底辺で生き抜いてきた木村多江のドラマをもっと掘り下げて描いて欲しかったのだ。誰が犯人かなどということは、賢明なミステリーファンなら、中盤ですぐに判ってしまうはずである。
 松本清張の原作を使うのであれば、砂の器』のように、ここのところをキッチり押さえておかねば意味がないのだ。その小さなほころびが、この作品の持ち味を殺してしまう結果になってしまったことを、犬童一心監督は気付いているだろうか。

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2009年11月13日 (金)

大洗にも星はふるなり

★★★

 登場人物は約10人、観客も同じく約10人。平日とはいえ、お一人様一列独占は、余りにも寂し過ぎる。
 それ程つまらない映画という訳ではないのだが、映画というより舞台劇。回想シーンを除けば、すべてが海の家の中での会話劇なのだ。
 ストーリー設定も大雑把。大洗海岸にある海の家でバイトをしていた男達とマスターの計6人が、同じくバイト仲間のマドンナ江理子に夢中になるというラブコメ。というより、恋愛テーマのお笑いと言ったほうがぴったりかもしれない。

       Ooarai

 まるで吉本の掛けあい漫才とか、お笑い舞台劇を観ているような展開なのだ。まあそれはそれで良いとして、無理矢理笑わそうとしているところが苦しいというか、お寒い限りである。
 またこうした小人数の会話劇をやるなら、もっと演技力のある役者を起用しなくてはならない。まっとうだったのは、山田孝之、安田顕、佐藤二朗の三人だけで、残りの役者たちは、大根というよりド素人という感じが否めない。こうしてみると、普通の役を違和感なく普通にこなしている役者たちの凄さを、改めて思い知らされたわけだ。
 なぜ大洗なのか?下妻物語のようなダサイ風景が登場するわけでもなく、「まずそうなタイトル」をアピールしているだけで得るところがない。また映画館で観る必然性もなく、旧作DVDをレンタルし、乾きものをつまみにビールでも飲みながら、ソファーに横たわって観る程度かな…。
 アイデアとしては面白かったし、7人全てが芸達者で、もうひと捻りあったらかなり素晴しい作品になっていたと思う。そう考えると非常に残念であり、もったいない気がするよね。

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2009年11月11日 (水)

マイケル・ジャクソン THIS IS IT

★★★★☆

 マイケルが急逝してから約4ヵ月。いまだにはっきりとした死因は不明のようである。だが巷では、過激なリハーサルによる過労とストしス、薬物による副作用が主因との噂も…。
 その過激なリハーサルとは、2009年7月にロンドンで行う予定だった「生涯ラストコンサート」のリハーサルである。ただ歌うだけではなく、過激なダンスやアクションを伴うステージをて10回繰り返すというのは、50才のマイケルには辛いだろうな。薬に頼ったのもなんとなく理解出来るような気がする。
 この過激なリハーサル風景を撮影したものを編集したのが本作品なのだが、どこにも過激さやマイケルの苦悶は見当たらない。むしろリハーサルを楽しむように歌い続け、軽やかなステップで踊っているようだった。ただし一度だけ、余り本気で歌わせないで」と、さらりと言っていたのが気になる。その真意は本人だけが知っているが、今となっては謎の言葉でしかない。

   Thisisit

 このリハーサル風景を観ていて感じたことは、マイケルの優しさと繊細さである。スタッフが失敗しても、決してどなったりせず、優しく諭すだけなのだ。
 一方スタッフ達は、マイケルを心底から尊敬し、彼と一緒に仕事が出来ることを誇りに思い、力の限り一生懸命に練習している。ことにバックダンスの若者たち、ギターの女性、ボーカルの女性などが印象的だったね。正式なロンドン公演も観たかったが、マイケルの真摯で優しい素顔を観ることが出来た、ということで本作の価値は跳ね上がったのだろう。
 事実いつも悪評の絶えないヤフー掲示板での評価が異常に高い。ほとんどの人が満点を付けている。ことにマイケルをよく知らない若い世代が感動しているのだ。
 マスコミの悪意の報道が影響して、マイケルのことを、整形とクスリ漬けの変人としか考えていなかった若者たち。彼等がこぞって、続々と自分の認識が誤っていたことを謝罪し、本作品いやマイケル・ジャクソンに感動しているのである。
 決して今時の若者たちは、偏見と独断でしかものを観ないわけではない。やはり素晴しいものは、誰が観ても素晴しいものなのだ。若者たちの声援の多さに、未来の日本も捨てたものではないと確信し、嬉しさでおもわず感動の涙を落としてしてしまった。

ムーンウォーカー [DVD] DVD ムーンウォーカー [DVD]

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2009/07/08
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 はじめは短期間の特別上映の予定だった本作品だが、大好評につき、さらに二週間以上の上映延長となった。現在興行成績及び評価の双方が断トツという、異常なフィーバー現象を起こしている。さらに1988年に製作された『ムーンウォーカー』まで刈り出される始末。
 これでマイケル・ジャクソンは、エルビス・プレスリーと並ぶ伝説のエンターテイナーへと昇格してしまった。マイケルの死は悲しいし、もう彼の生ライブが観られないのは非常に残念である。
 しかしさすがのマイケルも、寄る年波には抗えず、激しいステージもそろそろ限界に近づいていたことは確かであろう。そのことを考えると、若くして惜しまれながら逝去し、伝説のスーパースターとして歴史に名を残したことは、幸福だったのだと考えることもできる。

 子供たちが大好きで、地球環境の破壊に心を痛めていた優しいマイケルは、今天国で楽しくステップを踏みながら歌っているに違いない。偉大なるマイケル・ジャクソンに、心からご冥福を祈ります。

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2009年11月 7日 (土)

PUSH 光と闇の能力者

★★★

 超能力者同士の戦いがテーマのアクション映画なのだが、Xメンを期待すると裏切られるかもしれない。本作での超能力は、未来予知能力と相手の記憶や意志を制御する超能力が中心となり、Xメンのような派手なスペクタクルシーンは少ないからだ。
 ちなみに登場する超能力の種類を分類整理すると次の通り。
①ムーブ 念力による遠隔操作
②ウォッチ 未来を予知する
③プッシュ 相手の記憶や意志を制御する
④スニフ 臭いで相手の過去と現実を特定する
⑤ブリード 声で人や物を破壊する
⑥シフト 物体を別物に作り変える
⑦スティッチ 触れて傷を治す
⑧シャドウ 超能者から人や物を隠す
⑨ワイプ 相手の記憶を特定期間消去する

 とにかく変わった能力が多く、超能力者も多数登場する。

        Push

 ただ舞台が香港であり、高層ビル群の隙間からドロ臭さが鼻をつく。なんだかハリウッド資本の入った香港映画のような感があってかなり違和感を覚えた。また秘密組織ディビジョンと超能力者たちのバックボーンが説明不足で、SFの中にミステリー風味が漂ってくる。
 始めのうちはこの風変わりな展開に、アメコミものにはない重厚さと奥深さを感じたのだが、登場人物が超能力者ばかりであることと、後半になって物語が単調になってしまったのが残念だった。視点はなかなか鋭いのだが、なにか中途半端で食い足りない。
 ただ本作もダコタ・ファニング嬢の存在感によって、かなり救われた。子役のときから注目していたが、とにかくこの天才少女は一体どこまで快進撃を続けるのだろうか。子役で成功した子は、大人なってさほど伸びない例が多いのが一抹の不安ではある。それにしても彼女、どことなく雰囲気が安達祐実に似ていると思わない?

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2009年11月 4日 (水)

ファイナル・デッドサーキット3D

★★★☆

 死の未来を予知し、迫りくる死の運命から逃がれようと、必死にもがき苦しむ男女の恐怖と、多彩な死のトラップを描くパニックホラーシリーズの4作目。本シリーズは予知夢がポイントだが、第一作が飛行機事故、第二作が高速道路での大惨事、第三作がジェットコースター、今回はサーキット場での大事故である。

   Fd3d

 シリーズを重ねるたびに、演出の妙味がだんだん低下しているが、今回は3Dなので恐怖の臨場感がたっぷりと味わえる。刃物やドリルや血しぶきが、観客の目先に飛び込んでくるから堪らない。もうそろそろかなと、心の準備をしておかないと大変なことになる。ことに心臓の弱い人は要注意!
 映画というより、まさに恐怖のアトラクションと言い切るほうが良いだろう。そのためR15指定で、料金も2000円とやや高めの設定となっている。

 ストーリーは実にシンプルなのだ。主人公の予知夢のお陰で、奇跡的に助かった9人の男女。だが、死の運命はそれを許さず、次々と残酷で恐ろしい死が襲いかかってくる~というもの。
 見所は、誰がいつどのような死に方をするのか、といったことだけなのだが、予測がつかないのでドキドキハラハラの連続である。ことに日常で起こり得る事故については恐怖感が増幅する。この映画を観たら、当分は美容院、自動洗車、プール、エスカレーターなどの利用は控えたくなるよね。
 日本語吹替版の評判が悪いが、前述したように、これは映画ではなくアトラクションなのだから、そんなことに目クジラを立てても意味がない。それに重い3Dメガネ着用で視野が狭くなっているし、テンポが早いので字幕を読むには辛いものがある。

 料金が高いし、極端に好き嫌いが分かれる作品なので、事前に次のことをチェックしてから映画館に行こうな。

1.映画ではなくアトラクションだと思って観ること

2.人肉ミンチのような超グロい映像が待ち受けていることを覚悟すること

3.暗示にかかり易い人は、映画を観終わっても恐怖に取付かれるので要注意

4.眼精疲労や心臓病のある人はパスしたほうがよい

 映画が終わってから、「ラストの締めかた意味わかんない~」と彼氏にボヤいている女がいた。またその彼氏もゴチャゴチャと訳の判らん理屈をこねている。おいおい、これってホラー映画の定石なんだけどなあ・・・

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2009年10月25日 (日)

沈まぬ太陽 

★★★★☆

 山崎豊子の社会派小説を、壮大なスケールで描いた会心の大作である。また映画の背景が、1985年に実際に起きた「日本航空123便墜落事故」を題材にしたものなので、説得力もあるし迫力も満点であった。久々に凄い映画に触れることが出来て、今感動に打ち震えている。

      Shizumanu

 この歴史的な事故の主原因は、ボーイング社へ依頼した修理が不適切だったことによる金属疲労だと結論付けられた。だがその他にも、様々な仮説や推測が飛びかっているが、適切な証明が出来ないまま現在に至っているのである。
 事故が起きたのは夏休み中ということもあり、帰省客や甲子園に出場する高校の関係者、東京ディズニーランドからの帰宅客など多くの乗客で満席状態だったという。また有名人では、歌手の坂本九、女優の北原謡子、阪神タイガース球団社長の中埜肇、ハウス食品社長の浦上郁夫などが搭乗していた。
 もちろんドキュメンタリーではないので、映画でそれらの有名人の名前は一切出てこない。また事故の原因についても余り詳しく触れていない。ストーリーの主眼は、労働組合委員長恩地元の苦難の人生と、悪徳経営者たちと政治家たちの暗躍などを並べて描いてゆくのだ。
 キャストは、主演・渡辺謙のほか、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二、大杉漣、香川照之、小林稔侍、加藤剛、宇津井健など、かなり贅沢な配役がズラリと並ぶ。そして舞台も日本、イラン、パキスタン、アフリカ、米国と果てしなく続く。
 また旅客機はCGだが本物そっくり、空港や御巣鷹山での墜落現場、数百の棺桶が並ぶ体育館などの空前のセットなど、邦画とは思えないスケールの大きさに度肝を抜かれることだろう。日本航空の協力もなく、よくこんな壮大な映画を創れたものである。きっと今年の日本アカデミー賞N01候補になるに違いない。途中休憩が入るほどの大長編だが、常識的な大人なら、是非必見の映画といえよう。

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2009年10月24日 (土)

ラスト・ブラッド

★★★☆

 ネットでの評価が余り良くないので、ある程度覚悟をしていたが、そこそこ楽しめる作品に仕上がっていたと思う。主役のサヤを演じたチョン・ジヒョンのセーラー服アクションもほぼ期待通りだし、セピア系に染めた映像も押井守エッセンスが十分に漂ってくる。

ラスト・ブラッド スペシャル・エディション [DVD] DVD ラスト・ブラッド スペシャル・エディション [DVD]

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発売日:2009/10/09
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 押井守の熱狂的ファンには申し訳ないが、アニメと実写とが異なる展開であったとしても、原作の雰囲気と実写の持ち味を生かせれば良しとしたい。ただオニのキャラが余り面白くないのと、CGの出来にも不満が残る。それから、オニと忍者がゴチャ混ぜの、相変わらずの米国流日本誤解システムにも呆れてしまったな。
 アクションシーンでは、サヤの育ての親であるカトウの殺陣が光っていた。一体誰なのかと思って、エンディングクレジットを注視していたら、なんと倉田保昭ではないか。老いても、いまだ健在な見事な職人アクション。さすが世界の倉田さんである。

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2009年10月23日 (金)

通勤地獄 優先席の定義

 この席が始めて登場したときは、シルバーシート』と呼んでいた。多分お年寄りの白髪をイメージして名付けたのだろう。だからお年寄りに席を譲るということが、一番の目的だったのだろう。
 ところがいつの間にか、優先席』とか、おもいやりシート』という呼称に変わってしまったよね。もはやこのシートの存在意義は、お年寄りというよりも、体の不自由な方や、妊婦さんへの配慮に変りつつあるのだ。

  To_2

 言ってみれば誰だって年をとるのだし、昨今は若者よりもお年寄りのほうが元気がありそうだ。また誰もが了解するお年寄りって、一体何歳位からなのだろうか。
 昔は60歳を過ぎればお年寄りに間違いなかったが、今は皆若造りなので、60歳位では年寄りに見えない。90歳以上になって腰が曲がり、杖でもつかなくては、誰もお年寄りとは認めないだろう。だがそうなれば、もうめったに電車になんか乗っていられないよね。
 だからここは『優先席』なんだぞと威張っても、誰も「中途半端な年寄り」には席を譲らないのだ。ましてやすでに、団塊の世代が大量にお年寄りの仲間入りをしているのである。
 そして、少子化で若者の数が減り、年金生活を送る年寄りが激増してゆく。だから逆に、若くてよく働く者をいたわらねばならぬのだ。きっと我々年寄りは鼻つまみ者になる。そしてやがては、優先席』からお年寄りの名が削られる日がやってくるのだろう。

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2009年10月21日 (水)

パンドラの匣

★★★★

 太宰治の作品は、高校時代に貪るようにして読み漁ったのだが、この作品のタイトルは記憶に残っていなかった。サナトリウムの患者と看護婦の恋物語で、太宰の作品の中ではポジティブな作品かもしれない。
 とにかくオープニングの昭和天皇敗戦宣言のあと、最初から最後まで山奥のサナトリウムだけの狭い舞台が続く。前半はやや退屈なのだが、少しずつ少しずつ太宰の感性が僕の心に染み込んで来るのだ。

          Pandora

 後半になるに従って、もしかすると、大昔にこの作品を読んだような気がしてきたが、確信するには至っていない。サナトリウムという舞台背景、時々一人淋しく死んでゆく患者たち…。
 本来暗く重い気分になるはずなのだが、どこかお茶目でポップな香りがする。そこが太宰の魅力であり、本作もなかなか味わい深かい映画に仕上がっていた。
 まず患者と看護婦のあだ名が楽しい。患者側は、つくし・ひばり・越後獅子・かっぽれ・固パン、看護婦側は竹さん、マア坊、孔雀など。また彼らの挨拶も面白い「やっとるか」、やっとるぞ」、がんばれよ、「ようしきた」というパターンなのだ。
 また登場人物も個性的で、「一目惚れ」、「憧れ」、「ひいき」、「可愛い」、「好感」、「尊敬」などなど微妙な心の綾や、人物間の相関関係も楽しめる。また『乳と卵』で芥川賞を受賞した川上未映子の演技もみものだったが、無難にヒロイン「竹さん」を演じていたのは立派だったね。
 太宰治生誕100年ということで、とにかくここのところ太宰作品の映画化ラッシュが続いている。本作のほかには『斜陽』、『ヴィヨンの妻』、『人間失格』と続くからね。 
 余り期待していなかったのだが、そこはかとなく太宰の世界を再現した演出は見事だし、音楽の使い方もなかなか絶妙であった。太宰ファンなら、観て損のない一本といえよう。

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2009年10月20日 (火)

悪夢のエレベーター

★★★★

 見知らぬ男女四人が、突然深夜のマンションのエレベーターに閉じ込められてしまう。悔しいことに、非常ボタンは故障し、唯一の携帯は電池切れで、外部との連絡が全くとれない。さらに不運なことに、エレべーターが2台あり、住民たちは他の1台に乗るため故障に気が付かないのだ。
 またこの四人は、それぞれワケありな人物ばかり。極限状態の中で、だんだん神経が異常になり、お互いに不信感を募られてゆく。そしてある出来事がきっかけとなり、全員が隠し事を暴露し始めるのだった。

     Akumu_2

 まっとうな出演者はたったの7人。そのうちほとんどがエレべーターの中での密室シーンなのである。従って会話劇が中心であり、普通なら退屈してしまうのだが、本作は退屈する暇がない。それほど超面白いのである。
 ジャンルとしては、ブラックユーモアというか、コミカルミステリーといったところで、コメディとシリアスな展開が微妙にブレンドされている。そしてとにかく脅威的なドンデン返しの連発が見事なのだ。少なくとも6回はドンデン返しが続くのである。
 こんなの生まれて初めて観たよ!製作費をかけなくとも、これほど楽しませてくれたのだから、脚本と演出の大勝利といってよいだろう。
 また俳優陣も、チンピラヤクザの内野聖陽、超能力おじさんのモト冬樹、ゴスロリ少女の佐津川愛美、不気味な管理人の大堀こういちなど、演技派や個性派たちが並ぶ。ことに佐津川愛美と大堀こういちの狂気にはまいってしまった。
 アイデアとネタが勝負の作品なので、木下半太の原作は先に読まないほうがよいし、余りレビューを書き過ぎてネタバレになるのもまずい。アクの強さが臭うものの、とにかく今年観た中では、一番面白い映画だったかもしれない。

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2009年10月18日 (日)

ミスト

★★★☆

 映画化しても、はずれのないスティーブン・キング原作のパニックミステリー。なんとなく『クローバーフィールド』のような設定だが、心理的な深みやドンデン返しで、圧倒的にこちらの作品に軍配があがるはず。

ミスト [DVD] DVD ミスト [DVD]

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 前夜の嵐のあと、突然濃霧が村中を包み込む。そして数十人の買い物客がスーパーマーケットから出られなくなってしまうのだ。無理に出てゆくと、霧の中に潜む恐ろしい生物に食い殺されてしまうからである。
 とにかくストーリー展開といい、出現するクリチャーのグロさといい、まるで『遊星からの物体X』のようであったが、映画の中でもそのセリフが飛び出していたね。ただしこの作品は単なるパニック映画ではなく、極限状態にまで追い詰められた人間たちの群像劇とも言えるだろう。果たして極限状態の人間は、助け合うのか、他人を見捨てて自分だけ助かろうとするのか、それとも人間以外の何者かにすがるものなのか。
 少年の「僕を怪物に食べさせないでね」という最後の願いが、結局ラストの悲劇に繋がるのだが、そのあとに待っていた皮肉なエンディングは、実に後味が悪いのである。この後味の悪さと後半のテンポの悪さに、思わずワンランク減点してしまった。
 

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2009年10月17日 (土)

さまよう刃

★★★

 東野圭吾の原作なら外れはないだろう、ということでほとんど予備知識なしに劇場に足を運んだ。事前に判っていたのは、40過ぎて生まれた一人娘を殺害された父親(寺尾聰)が、犯人の少年達に復讐するというストーリーだけであった。

       Yaiba

 ところがこの映画テーマは、復讐劇や謎解きではなかった。結局は正義を守ることの意味と、繰り返される悪と少年法における矛盾と限界を訴えたかったのだろう。
 重くのしかかるテーマと、寺尾聰の持ち味がぴたりと重なって、なかなか歯ごたえのある作品に仕上がるはずだった…。ところが脚本と演出のまずさが、全てをぶち壊してしまったのである。
 エンターティンメントではなく、このような剛球一直線の社会派作品には、辻褄合わせは必須なはず。それにしては余りにも突っ込み処が多過ぎるのだ。なんといっても、警察の捜査方法が単純過ぎるし、主人公の動きにも無駄が多いのが気になってスクリーンに没頭出来ないのである。
 テーマと俳優が良かっただけに、実に残念であった。だが余り神経質にストーリーを追わない人ならば、そこそこに満足出来るかもしれない。

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2009年10月15日 (木)

ラン・ローラ・ラン

★★★★

 ドイツで大ヒットになったゲーム感覚のハイテンションなアクション・ラブ・ストーリーといったところか。いずれにせよ、従来観たこともない風変わりな映画である。
 またア二メを多用した荒唐無稽なオープニング映像は、なんとなくタランティーノ風味。思わず『キル・ビル』を想像してしまったが、内味は全く異なるアイデアがびっしり。

ラン・ローラ・ラン シナリオ&インタビュー・ブック  /トム・ティクヴァ/脚本 美野秀/訳 [本] ラン・ローラ・ラン シナリオ&インタビュー・ブック /トム・ティクヴァ/脚本 美野秀/訳 [本]
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 午前11時40分。ローラの家の電話が鳴る。相手は裏資金の運び屋をしている恋人のマ二からである。
 ローラのバイクが盗まれて、彼を迎えに行けなかったため、彼は10万マルクを地下鉄に置き忘れたという。そしてその金はホームレスに盗まれてしまった。12時までに金を用意しないとボスに殺されるというのだ。
 12時といっても、あと20分しかない!ローラは、恋人を助けるためにべルリンの街を走る走る走る、まずは父親の勤務する銀行に向かって走りまくる。
 ところがローラの行動は全て裏目に出て、最後は警官に撃ち殺されてしまうのだ。これでジ・エンドかと思ったら、すぐにリセットされて第2ラウンドが開始され、途中までは前回と同じ行動が続く。
 なぜリセットされるのかは分からない、もしかしてこれはゲームの世界のお話なのかもしれない。だから上手く行くまで何度でもリセットボタンを押すことが出来るのだろう。
 そういえば、ローラの紅い髪にしても軽快な服装にしても、ゲームのキャラそのものじゃないか。やっとこれが擬人化されたゲーム映画なのだと気がついた。
 なかなか面白い発想と視点である。ただ主人公ローラのオバさん顔が余り好みではない。もう少し可愛い女の子を使えなかったのだろうか。それだけが心残りである。

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2009年10月12日 (月)

引出しの中のラブレター

★★★☆

 常盤貴子演ずるラジオパーソナリティーは、絶縁状態の父と死別し、最近は恋人とも余り進展がない。そのうえ命ぜられるまま無難にこなしている仕事も、いまひとつ乗りが悪いのだ。
 それは過去をいつまでも引きずって生き、自分の思いを他人にしっかりと伝えようとしない彼女の性格が災いしているのだが、本人はそのことに気付かない。

     Hikidashi

 ある日実家から荷物が届き、その中から、父親が生前彼女宛てに書いて、投函しなかった手紙が見つかる。その手紙を読んだ彼女は号泣し、今までの自分の生き方を反省するのだ。
 そして誰もが心の奥に隠し持っている「大切な人に対する思いを」をラジオで届けようという企画を考えることになる。
 この作品が面白くなるのはここからの後半であり、前半は少し分かり難く、退屈なシーンが続くのが残念であった。もし前半をもっと上手にまとめていたら、評価のほうもワンランク上がっていただろう。
 主演は常盤貴子であるが、主役は頑固な老漁師を演じた仲代達也だと思った。常盤貴子は、あくまでもパーソナリティーの粋を出ていない。
 それでこの映画が、上映初日だというのに観客15人で、そのほとんどが年配の夫婦であった理由が分かる気がした。つまり若者たちには、仲代達也演ずるところの頑固な老人の真意が理解出来ないのだろう。
 また悪人が一人も登場せず、余りにも教料書的な展開に反発してしまうのかもしれない。だがそれを責める気はない。自分の若かりし日を思い返しても同様だったからである。
 少なくとも若いときは、言いたいことを言えるのだが、いろいろな経験を重ねるうちに、だんだん言いたいことが言えなくなるものだ。真面目で堅実でプライドが高い人ほどその傾向が強いものである。
 だが必ずしもそれが良い生き方という訳ではない。人間は、何年生きても未熟で弱い生きものである。だから少なくとも、本当に大切な人には、自分の心をきちっと伝えておかなくてはならないのだ。
 恥ずかしさやプライドを打ち捨てて、大切だと思う人に自分の本心を伝えるとき、そこに大きなパワーと感動が生まれるものである。まさにこの映画での仲代達也の決意こそが、大切な人々に与えた光のエネルギーだったのであろうか。

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2009年10月11日 (日)

ドラゴンボール EVOLUTION

★★

 ネットでの悪評は承知のうえでDVDをレンタルしたのだが、やはり評判通りのつまらない映画であった。ハリウッド映画ということで、少なくともSFXの完成度だけでも、と期待したのだが、これも絶望的な出来で、全搬的に迫力が感じられないのが悲しい。

 ドラゴンボール EVOLUTION 特別編 ドラゴンボール EVOLUTION 特別編
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 またスケールも小さく、登場する敵もたった二人という寂しさ、これでは、お子様向けのTVヒーロードラマより酷いじゃないの。またストーリーのほうも詰め込み過ぎで、後半は断片化しただけのシーンを、単にダイジェスト版にしただけという趣きであった。
 少なくともパーティー会場の前で、悟空が怒り心頭、防御だけで不良達をKOしてしまうところまでは、まずまずなのだが、そのあとは全くストーリーになっていない。
 エンディングクレジットの途中で、続編を示唆したシーンが写されたが、とてもじゃないが続編を観る気になる人は、ほとんどいないだろうね。

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