工作 黒金星と呼ばれた男

★★★★

製作:2018年 韓国 上映時間:137分 監督:ユン・ジョンビン

 1992年の実話である。北朝鮮の核開発をめぐり南北の緊張が高まる中、その実態を探る任務を帯びたパク・ソギョンは、コードネーム黒金星という工作員として北朝鮮に潜入する。そしてなんと金正日総書記と対面するのであるが、そこまでの信頼を得るために3年間に亘り事業家に扮して、北朝鮮の窓口であるリ所長と交渉を重ねてゆくのだった。

 いまひとつ難しくて、話の展開や映像がよく理解出来なかったのだが、決してつまらない映画ではない。北朝鮮の風景や建物など、そして金正日のそっくりさんや、怖いほどの厳重警戒などなど、製作費と製作意欲の重さをどっしりと感じた。
 ときどき拳銃が登場するものの、アクションは一切ゼロというスパイ映画である。ただ二重三重に敷きつめられた非常に厳格な北朝鮮のチェック体制に緊張感が漂うばかりだ。私が主人公ならおしっこを漏らし立てしまいそう。また韓国の大統領選挙をめぐる祖国と北朝鮮の裏取引にも驚かされた。

 暗くて重厚で難解な映画であったが、最後に同民族である北と南の友情を垣間見て、ぐっと目頭が熱くなってしまった。もしこれがアメリカ映画だったらアカデミー賞を受賞したに違いない。

評:蔵研人

 

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2021年2月20日 (土)

プリズム

著者:貫井徳郎

 小学校の女性教師殺人事件がテーマになっているミステリーである。殺害されたのは美貌の新人教師山浦美津子で、凶器は彼女の家にあったアンティーク時計。従ってこの時計が落下した不運な事故とも考えられるが、窓がガラス切りで外されたうえ、睡眠薬入りのチョコレートが発見されてしまい、他殺の線が濃くなってきたのである。

 本作は1.虚飾の仮面 2.仮面の裏側 3.裏側の感情 4.感情の虚飾 の4部構成となっており、第一部は被害者の教え子である小宮山真司ほか4名の小学生が探偵役を務め、被害者の同僚で恋敵の桜井先生が犯人だと結論付ける。
 ところが第2部では、その桜井先生が探偵役となり、犯人捜しをするのである。なんだ彼女は犯人ではなかったのか。そして何人かの怪しい人物が浮かび上がるが、結局は元恋人で医師の井筒が犯人と断定する。

 第3部に突入するが、井筒は犯人ではなく、今度は井筒が新犯人捜しの探偵役となる。そしてやっとたどり着いたのが、冒頭で探偵役をこなした小宮山真司の父親で、被害者の不倫相手だった。やっとこれで決着し、第1部に結局ループしてゆくのかな…。
 と思いきや、第4部ではその小宮山が探偵役となって、またまた犯人捜しをはじめるのだ。それでは一体誰が犯人なのだろうか。そして小宮山が行き着いた結論は、余りにも恐ろしい結論であった…。

 だが結局のところ犯人は想像だけの存在であり、含みを残しながらも曖昧なまま終劇となってしまう。どうもこれらのストーリー形式は、英国のミステリー作家アントニイ・バークリーが1929年に著した『毒入りチョコレート事件』を参考にしたようだ。
 結局本作は犯人捜しのミステリーを装いながら、被害者山浦美津子の多面性をじっくりと描くことが主眼だったのだろうか。彼女は生徒たちの視点からは、はつらつとして子供たちの立場で考えてくれる信頼できる存在だが、恋敵の同僚の視点は自由奔放で身勝手な女に映っている。
 また元恋人にとっては、女王様のような我儘な存在なのだが、忘れられない魅力的な存在でもあった。ところが年長の不倫相手には、孤独な女性に映ったようである。

 その不倫相手の小宮山から見た美津子については、次のような記述がある。
 美津子は私が思っているような女性ではなかった。堅すぎず、かといって軽薄にはならず、適度に抑制があり、適度に奔放だった。
 美津子のお喋りは、手綱を解き放たれた駿馬のようにあちこちに飛んだ。音楽や絵画鑑賞など趣味の話かと思えば、若い女性らしくファッションや食事の話になる。そしてそこから派生していきなり哲学を論じたかと思えば、なぜか医学用語にも精通していたりする。私にとってそれは、目まぐるしく姿を変える万華鏡か、あるいは様々な光を乱舞させるプリズムのようだった。話をすればするほど、私の目に彼女は謎めいて映じた。

 これでタイトルの『プリズム』の意味が理解できたはずである。とにかくこうした異色作品も読めるのだから、ミステリーの奥深さをつくづく感じてしまった。

評:蔵研人

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2021年2月17日 (水)

バレンタインデー

★★★☆
製作:2010年 米国 上映時間:117分 監督:ゲイリー・マーシャル

 バレンタインデーと言えば、女の子が好きな男の子にチョコレートを贈る日ということになっているが、それは日本だけの話で神戸のチョコレート屋の戦略が大当たりして、いまだに習慣として残っている嘘の伝統である。
 正式には聖バレンタインデー(セイントバレンタインデー)と言い、毎年2月14日に世界各地で「恋人たちの日」として祝われており、恋人や夫婦がお互いの愛を確かめ合う日なのである。そして男性から女性にバラの花束などをプレゼントする。だから日本を除いた世界中の花屋が、一年中で一番忙しい日と言えるかもしれない。

 本作は数カップルの恋の行方を描いたオムニバス風味の群像劇で、登場人物も多彩であり、かなり豪華なキャスティングで構成されている。なんとなく『ラブアクチュアリー』と似ているよね。また米国のラブコメなので完全ハッピーエンド仕立てだから、安心して最後までゆったりと楽しめる作品である。まさにバレンタインデーに彼女と一緒に観るのは如何かな・・・。ここで細かいあらすじを書いても無意味。とにかく観てのお楽しみである。
 

評:蔵研人

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2021年2月14日 (日)

こどもしょくどう

著者:ひろはたえりこ

 映画『こどもしょくどう』の完全ノベライズである。
 車の中で寝泊まりし、行方不明の親を待ち続ける少女姉妹たち。そんな二人に、おずおずと手を差し伸べる少年。豊かに見える日本社会のひずみを受け、満足に食事をとることのできない子どもたちもいるのである。

 大きな文字でかつ138頁の児童向け書籍なので、遅読の私でも1時間足らずで読破してしまった。映画のほうは観ていないが、近いうちに是非レンタルしてみたい。

評:蔵研人

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2021年2月10日 (水)

天気の子

★★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:114分 監督:新海誠

 2016年に大ヒットしたアニメ『君の名は。』に続く新海誠監督による劇場用アニメであり、興行収入も『君の名は。』同様100億円の大台を突破している。映像も前作同様CGを駆使した超精密かつ美麗な背景と「アルプスの少女ハイジ」のような線の細い二次元アニメとの組み合わせだ。

 ストーリーのほうも、やはり前作同様荒唐無稽なマンガチックな展開なのだが、『天気を左右できる少女』という魔女めいたアイデアはなかなか斬新である。ただ少女がその能力を得た原因が「死ぬ間際の母と、もう一度晴天の空の下を歩きたいと願った」ことだというのが、余り説得力がなさ過ぎるよね。また少女たちが「空を飛ぶ」のや、3年間も雨が降り続いているのもやり過ぎのような気がする。さらに警察がだらしなさ過ぎるのもなんだかなぁ・・・。まあマンガだからと言えばそれまでだけどね。

 決してつまらない作品ではないし、それなりに面白く鑑賞したのだが、今ひとつ心に響くものが見つからなかった。また終盤にどんでん返しもなく、あっさり予定調和というのも工夫が無さ過ぎる。やはり前作の『君の名は。』には遠く及ばなかったな・・・。

作:蔵研人

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2021年2月 7日 (日)

飛ぶ夢をしばらく見ない

著者:山田太一

 奇妙なタイトルだが、「空を飛ぶ夢」というのは、青春真っ最中と言うことで、男女二人で飛ぶ場合は恋愛かつセックスの比喩だというらしい。ということで、本書の中身もエロチックで奇妙な展開が続くのだろう。

 田浦が初めて病院で逢ったときの睦子は67歳の老女だったのだが、なんと退院後は逢うたびに若返ってゆく。2度目に逢ったときは40代の女盛り、3度目は20代半ばの美女、4度目は悪戯っぽい18歳位の少女、そして最後は5歳の幼女として田浦の前に現れるのである。
 まさに女性版『ベンジャミンバトン』なのだが、本作の方が先に発表されているのでパクリではない。ただ『ベンジャミンバトン』の下敷きになったのが、1922年に書かれたF・スコット・フィッツジェラルドによる短編小説なので、そちらを参考にしたかどうかは著者に聞かないと分からない。

 36年前の作品なのだが、全く色褪せていない。本作の主人公田浦修司は、建設会社の営業部次長で妻子のある働き盛りの男性である。ただどうした弾みで精神を病んだのかは説明されていないが、寿司屋の二階から飛び降りて骨折して入院する。そしてそこで自殺未遂で骨折した睦子という謎の女と遭遇するのであるが、エロチックでかつ謎めいた序段はなかなか秀逸であった。

 本作は時間を逆行して生きる女性がヒロインなので、ある種のタイムトラベルファンタジーとも考えられるのだが、かなりきわどい性描写が多いのでエロ小説の趣も備えている。またある意味で、異常世界と精神異常と狂気の漂う純文学と言えなくもないし、当時50歳だった著者の「初老人の恋愛願望」かもしれない。
 いずれにせよ、最初から最後まで目の離せない興味深い小説であることは間違いないだろう。ただ拳銃を携えて映画館で強盗事件を起こす下りは、全く必然性もなく馴染めなかった。またラストも予想の範囲内で、特に目を見張る展開がなかったのも味気なかったね。
 さて余談であるが、本作は1990年に細川俊之、石田えり主演で映画化されているようなので、機会があればそちらも鑑賞してみたいものである。

評:蔵研人

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2021年2月 3日 (水)

記憶屋 あなたを忘れない

★★★
製作:2020年 日本 上映時間:105分 監督:平川雄一朗

 原作はロンドン生まれの織守きょうやの小説『記憶屋』で、すでにシリーズで50万部以上を突破しているという。またその『記憶屋』は2015年に第22回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しているので、全然怖くないのだが一応ジャンルとしてはホラーということになるのだろうか。

 主人公の大学生・吉森遼一(山田涼介)は恋人・澤田杏子にプロポーズするのだが、その翌日から急に連絡が取れなくなってしまう。数日後に駅で彼女を見かけて声をかけるのだが、彼女は遼一のことを全く覚えていなかった。その後遼一は、都市伝説になっている記憶を消せる「記憶屋」の存在を知る。そして幼馴染の河合真希(芳根京子)や先輩の高原智秋(佐々木蔵之介)らと一緒に、なぜ杏子が記憶を失ってしまったのかを追跡調査することになる。

 そんなくだりでストーリーがはじまり、過去のフラッシュバックシーンを交えながら、こつこつと地味な調査が始まるのである。原作を読んでいないので小説との比較はできないのだが、映画のほうはいまひとつパッとしなかった。記憶を消すシーンもないし、記憶を消されるのは性被害に遭った女性ばかりで深みがない、また先輩の弁護士が本件にばかり関わっていて暇すぎるのも現実離れしている。結局は記憶屋の正体解明だけに焦点が絞られるのだが、途中でなんとなく分かってしまうし、記憶屋になった理由がかなり陳腐なので共感を得られない。

 とにかくこうしたファンタジック系あるいはSF系の作品は、もともとの設定が荒唐無稽なので、それをいかに現実的に見せるかが勝負なのである。ところが本作にはストーリー展開にも映像的にも、ほとんどその努力が込められていないのだ。そのあたりの配慮がなさ過ぎるので駄作とまでは言わないが、観ても観なくてもどちらでもよい程度の映画で終わっているのが残念である。


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2021年1月31日 (日)

1日10分のしあわせ

 NHK国際放送が選んだ日本の名作シリーズで、いくつかの短編をまとめた文庫本である。いまのところ本作のほかに『1日10分のごほうび』と『1日10分のぜいたく』の三冊が出版されていて、シリーズ累計で25万部を突破しているという。
 本書はわずか167頁の薄い本の中に、10作の短編が詰め込まれているため、1作平均約17頁という超短編集であり、まさに1日1作読めば10分程度で読み切ってしまうだろう。作者は8名で以下のような構成になっている。

 朝井リョウ 『清水課長の二重線』
 石田衣良  『旅する本』
 小川洋子  『愛されすぎた白鳥』
 角田光代  『鍋セット』
 坂木司   『迷子』、『物件案内』
 重松清   『バスに乗って』
 東直子   『マッサージ』、『日記』
 宮下奈都  『アンデスの声』

 全て駄作はなく、皆しっかりと読書を楽しむことはできたが、その中でも特に味わい深かった作品は以下の通りである。もちろん私自身の独断であり趣味の問題なので、決して他の作品がつまらないというわけではないので念のため。

 『鍋セット』、『迷子』、『バスに乗って』、『マッサージ』、『アンデスの声』で、いずれも家族愛がいろいろな角度から描かれており、読了後には、じんわりとしたような感動に包まれてしまった。

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2021年1月28日 (木)

ラストレター

★★★★

製作:2019年 日本 上映時間:120分 監督:岩井俊二

 岩井俊二のまさに岩井俊二たる所以とも言えるピュアな作品である。きっと誰でも青春時代を思い出し熱い涙を流してしまうことだろう。
 結婚して子供が二人いる裕里(松たか子)は、姉の未咲の葬儀のあと、姉に代わって高校の同窓会に参加する。そこで姉の死を伝えようとしたのだが、同級生たちに未咲本人と勘違いされ、言い訳するタイミングを失ったまま退席してしまう。
 そのあとを追ってきたのが、初恋の相手であり姉にラブレターを書き続けていた小説家の乙坂鏡史郎(福山雅治)だった。二人はバス停で連絡先を交換するのだが、裕里のほうから住所を記載しない一方的な文通が始まるのであった。

 前半は裕里を演じる松たか子中心のちょっとユーモラスな展開が続き、文通の中で高校時代の思い出がフラッシュバックされてゆく。そして後半は福山雅治扮する乙坂鏡史郎が中心となって、未咲への強烈な思いが描かれてゆく。未咲の若いころと彼女の娘を演じるのはともに広瀬すずで、裕里の若いころとその娘を演じるのが、やはりともに森七菜という二重構造の面白い配役となっていて、初めは戸惑ってしまうかもしれない。

 またいつもかっこいい役回りが多い福山雅治が、眼鏡をかけた売れない小説家を見事に演じ切っていたのが印象深かった。ただ豊川悦司と中山美穂のコンビを登場させたのは、あまり意味がないというか、ストーリー構成に無理が生じてしまったようである。そのために単なる病死で良かったはずの未咲の死因が、うつ病による自殺という歪んだこじつけに頼らざるを得なかったような気がする。

 あまり意味のないこの二人をちょい役で登場させたのは、もしかすると監督の処女作『Love Letter』で主演をはった二人に対するオマージュなのか、あるいはちょっとした遊び心なのかは監督に聞いてみなければ分からない。だが私にはどうしてもここの部分だけが納得できなかったのである。それよりもなぜ鏡史郎と未咲が結ばれなかったかの説明シーンのほうがどれだけ良かったことか。そのために残念ながら満点評価を逃してしまった、という非常にもったいない作品である。

作:蔵研人

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2021年1月24日 (日)

AX アックス

著者:伊坂幸太郎

 
 本作は『グラスホッパー』『マリアビートル』に続く『殺し屋』シリーズの最新作。本作では妻と息子の三人暮らしをしている殺し屋「兜」が主人公である。彼は超一流の殺し屋なのだが、表向きは文房具メーカーのベテラン営業マンだ。また家では極端な恐妻家で妻には頭が上がらず、息子には優しく物分かりのよい父親を演じている。そして息子の克巳が生まれた頃から、殺し屋から足を洗いたいと考え続けていた。だが殺人仲介役の医師が、なかなかそれを許してくれないのである。

 タイトルの『AX』とは、その名の通り『斧』を意味し、兜と克巳の会話の中で登場する「蟷螂の斧」という慣用句を援用している。つまり力のないものが、自分の実力を超えた強い者に立ち向かうことを例えているのだ。またその具体的な意味は、最終章で明らかにされるだろう。
 本書は殺し屋が主人公なのだが、殺しのシーンというような非日常ではなく、日常生活をメインに描いているところが面白いのだ。ことに自分が殺し屋だとは知らない家族に対する気の配りようが、涙ぐましいほど細部にわたり描かれているところが実に魅力的なのである。

 本書の構成は『AX』『BEE』『Crayon』『EXIT』という独立した短編と、10年後の克巳視点で全てを総括した『FINE』でまとめられている。もちろん独立した4作の短編も面白いのだが、やはり一番長い最終章の『FINE』が謎の解明とともに、実に感動的な展開で読者の心を掴んで離さないだろう。

 また本作は本屋大賞にノミネートされたり、静岡書店大賞を受賞し、2020年上半期のベストセラーを達成、さらに冒頭で述べた『殺し屋』シリーズでは、累計265万部を突破しているという。とにかく思わず「面白く読ませてもらってありがとう」という気分になってしまう一冊であることは間違いないだろう。できれば未読の『殺し屋』シリーズも読んでみたいものである。

評:蔵研人

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2021年1月22日 (金)

ベン・イズ・バック

★★★☆

製作:2018年 米国 上映時間:103分 監督:ピーター・ヘッジズ

 クリスマスイブの朝である。薬物依存症の治療施設に入所しているはずの息子・ベンが実家の前に立っていた。たぶん勝手に施設を抜け出して戻ってきたのだろう。そんなベンを見て家族は驚愕するのだが、それでも母親のホリー(ジュリア・ロバーツ)と小さい兄弟たちは大喜びする。だが継父のニールと、兄を案じながらも戸惑う妹のアイヴィーは、彼がトラブルを起こすのではないかと警戒し、ホリーが監視することを条件に1日だけの滞在を認めるのだが・・・。
 
 クリスマスプレゼント購入のためだと、無理矢理外出を希望するベンの頼みを断れず、ホリーがベンと一緒にショッピングセンターに行ってしまったことが問題の始まりであった。そこでベンはかつての悪友に遭遇してしまうのだ。
 夜の教会から家に戻ると、何者かが侵入した痕跡があり、愛犬の姿が見当たらない。それを義父に咎められて家を出るベン。それを追うホリー。そして二人で愛犬を探すことになるのだが、ここから息子を守りたい母親と、母親を巻き込みたくない息子の葛藤が始まるのである。

 それにしても異常とも思える母親の息子に対する愛情を、渾身の演技力で表現した「ジュリア・ロバーツの一人舞台」という感があった。前半はホームドラマ、中盤は依存症を批判したヒューマンドラマ、そして後半はサスペンスドラマという珍しい展開。それはそれで面白かったのだが、余りにも唐突で投げやり気味のエンディングはいかがなものであろうか。もう少し感動や余韻を楽しめるような終わり方でまとめて欲しかったのだが・・・。

評:蔵研人

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2021年1月20日 (水)

スキャンダル

★★★☆
製作:2019年 米国 上映時間:109分 監督:ジェイ・ローチ

 2016年に米国で起こった女性キャスターへのセクハラ騒動を描いたヒューマンドラマである。主演はシャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーの三女優で、それぞれがFOXニュースのトップキャスター、ベテランキャスター、新人キャスターに扮している。そしてその三人ともが、CEOのロジャー・エイルズからセクハラを受けているという設定である。
 またシャーリーズ・セロンが演じるメインキャスター・メーガン・ケリーは、共和党の大統領候補討議会の進行役を務めていたが、アメリカ全土は候補のドナルド・トランプに振り回されている状況だった。メーガンはトランプの女性蔑視発言を激しく追及したが、激怒したトランプがその日から執拗にメーガンへの罵倒をツイートする。さらに世間ではトランプ支持が拡大し、メーガンのもとに膨大な数の抗議メールが届くようになる。といったくだりも併せて描かれているのである。

 それにしてもどこの国でも同じようなセクハラが行われているのだが、米国ではいまだにこんな古い性差別がまかり通っているのかと驚いてしまった。ただスカートをたくし上げてパンティーをちらつかせる程度で、セックスシーンなどは全く皆無なのでそのあたりを期待しないように。(笑)
 またシャーリーズ・セロンのそっくりメイクは、第92回アカデミー賞で「メイクアップ&ヘアスタイリング賞」を受賞している。この特殊メイクを担当したのがカズ・ヒロという日本人ということで話題になったようだ。驚くほど面白いわけではないが、いずれにせよ女性向けの映画であることだけは間違いないだろう。

評:蔵研人

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2021年1月18日 (月)

グランド・ジャーニー

★★★★☆
製作:2019年 フランス・ノルウェー 上映時間:113分 監督:ニコラ・ヴァニエ

 「バードマン」の異名を持つ気象学者で、『WATARIDORI』の制作にも携ったクリスチャン・ムレク氏の実話を基に描くドラマである。絶滅危惧種の渡り鳥たちを従えて、手動飛行機でノルウェーからフランスへ向かう少年の無謀な旅を描いている。

 反抗期でゲームにしか興味のない少年トマは、ある日母親と離婚した実父のクリスチャンの元に預けられる。自然の中で鳥の研究ばかりに夢中になっている父親の家に来ても、ゲームも出来ずに、はじめは退屈でしょうがないトマだった。ところが父親が飼育していたガンの出生に立ち会ってからは、自分がガンたちの親になった気分になってガンたちと過ごすことが楽しくなってくる。

 このあたりの展開まではよくある話なのだが、ふとした弾みからノルウェーから鳥たちを伴って手動飛行機でフランス目指して飛んで行く、という荒唐無稽な展開にすり替わって行くのだ。そしてあっという間に少年の冒険がネットに流され、彼は超有名人になってしまうのである。さあ果たして彼は無事フランスへ辿り着けるのだろうか。

 鳥類の保護、家族愛、自然描写、そして大冒険と、様々な切り口で鑑賞できる優れものの作品である。是非家族と或いは恋人と感動を味わって欲しい一本といえるだろう。

評:蔵研人

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2021年1月16日 (土)

風の電話

★★★☆

製作:2020年 日本 上映時間:139分 監督:諏訪敦彦

 『風の電話』とは、岩手県上閉伊郡大槌町の海(三陸海岸)を見下ろす丘にある「ベルガーディア鯨山」内に置かれた私設電話ボックスである。この電話は電話線には繋がっておらず心で話すことになっている。だから来訪者は、電話で亡き人に思いを伝えたり、ノートに気持ちを記載したりするようである。
 そもそもは、庭師の佐々木格氏が、2010年に死去した従兄ともう一度話をしたいとの思いから、海辺の高台にある自宅の庭の隅に白色の電話ボックスを設置したことに始まる。その後2011年3月11日の東日本大震災で、佐々木氏は自宅から浪板海岸を襲った津波を目にした。そして生存した被災者が震災で死別した家族への想いを風に乗せて伝えられるようにと敷地を整備し、祈りの像や海岸に向かうベンチを置き「メモリアルガーデン」を併設した上でこの施設電話ボックスを開放したという。

 本作は東日本大震災で家族を亡くした女子高校生のハルが、広島にある叔母の家から高校へ通うところから始まる。ところが帰宅すると叔母が倒れていて、緊急入院することになってしまう。眠っている叔母を残して病院を出たハルは、これまで蓄積していた家族への思いを込めて泣き叫ぶ。そしてここから心が切れたようになり、当てのない旅に出ることになるのだった。
 旅先で知り合うのは良い人ばかり、だと思ったら三人組の不良たちに囲まれて困ってしまうのだが、そこに通りかかった謎めいた森尾という中年男性に助けられる。ここから本格的なロードムービーが展開されるのだが、森尾の故郷福島を経由して岩手の実家跡へ、そして大槌町にある風の電話へと引き込まれて行くのである。

 良い映画だと思うのだが、序盤が説明不足であり、少女の暗さばかりを強調し過ぎているところが分かり難いし、音声の収録が今ひとつで何を喋っているのかよく聞こえないのだ。またストーリー展開が強引だったり、端折られ過ぎていたりと、何となくご当地映画または素人映画という雰囲気がプンプンと漂っていたのはいただけない。ただ主人公のハルを演じたモトーラ世理奈の、死人のような生めいた仕草は演技力なのか素なのかよく分からなかった。

評:蔵研人

 

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2021年1月13日 (水)

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

★★★☆

製作:2019年 米国 上映時間:135分 監督:グレタ・ガーウィグ

 原作は誰でも知っているあの『若草物語』で、1860年代のマサチューセッツ州に暮らすマーチ家四姉妹の暮らしぶりを描いている。ただ本作は姉妹が実家を離れた後に焦点を当てており、次女のジョーが過去を振り返る形で進むんでゆき、かなり時系列が入り乱れる構成となっているため、うっかりしているとよく分からなくなってしまうのでご注意!

 若草物語を読んだことのある人にとっては、原作をやや捻って時系列を複雑に入れ替えた本作に拍手を送るかもしれない。ただそうでない観客にとっては分かりにくい構成だっただろう。
 だが本作は批評家から絶賛されており、批評家支持率は95%、平均点は10点満点で8.62点となっているようである。これは米国の歴史や風俗をなぞりながら、当時の女性たちの自立や価値観を克明に描いているからであろうか。
 さらに付け加えると、第92回アカデミー賞では作品賞、主演女優賞(シアーシャ・ローナン)、助演女優賞(フローレンス・ピュー)、脚色賞、作曲賞、衣装デザイン賞の6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞している。

評:蔵研人

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2021年1月10日 (日)

一度死んでみた

★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:93分 監督:浜崎慎治

 一度死んで2日後に生き返る薬を飲んだ製薬会社の社長・野畑計と、そんな父親が大嫌いな娘・野畑七瀬の荒唐無稽なお話である。計は一度死ぬことによって会社内のスパイを暴こうとするのだが、そのスパイとライバル会社の社長に先手を打たれて、生き返らないうちに火葬されてしまう。それを秘書の松岡と七瀬が必死に食い止めようとする超・ドタバタ喜劇なのだ。

 そもそもドタバタ喜劇は好きじゃないのだが、主演の野畑父娘を演じた堤真一と広瀬すずのほか、リリー・フランキー、木村多江、松田翔太、佐藤健、竹中直人、妻夫木聡と、かなり贅沢な役者を揃えてこんなおバカ映画を創る意味があるのだろうか。それに広瀬すずの率いるロックバンドの曲がやたら騒々しくて、耳を塞いでしまったくらいだ。アイデア自体は悪くないのだが、とにかくうるさくて内容のない、バカバカしい作品と言うよりないだろう。

評:蔵研人

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2021年1月 8日 (金)

敵の名は、宮本武蔵

著者:木下昌輝

 武蔵と戦い敗れ去った剣豪たちは数多い。本書は彼等の視点から見て、宮本武蔵の実像を語っているところがユニークである。345頁の長編であるが、読み易く天下無双の面白さのためか、あっという間に読破してしまった。

 著者の木下昌輝氏は、ハウスメーカーから脱サラしてフリーライターとなり、2012年に『宇喜多の捨て嫁』でオール読物新人賞を受賞している。また同作は直木賞候補になり、その他数々の文学賞も受賞している。
 さらに本書『敵の名は、宮本武蔵』でも、直木賞・山本周五郎賞・山田風太郎賞の候補作になっているという。

 本書は7つの話に分割されているのだが、決して時系列順ではないところが、本書のミソとなっている。まず鹿島新当流免許皆伝の有馬喜兵衛が、13歳の少年武蔵と戦うことになった経緯に始まる。
 そして第2章は、牛馬同然に売買され蔑まれていたシシド(吉川英治の小説では宍戸梅軒)が、鎖鎌の達人として山賊の頭領になり、武蔵により成敗されるまでの儚く悲しい物語となる。

 さらに第3章では4代目吉岡憲法こと吉岡源左衛門が、武蔵との試合を通して「憲法染」と呼ばれる黒褐色の染物を発明し、家伝の一つである染物業に専念するまでを描いている。このあたりは吉川文学には登場しないが、こちらの成り行きのほうが史実らしい。そして武蔵も憲法との戦いを経て、剛力だけだった剣に優しさを匂わせるようになるのである。

 その後武蔵は神道夢想流杖術の流祖である夢想権之助や、自身の弟子である幸坂甚太郎との戦いを経て、巌流津田小次郎との試合へと導かれてゆく。なお吉川文学の佐々木小次郎は架空の人物であり、古文書によると巌流島での決闘相手は、津田小次郎という年老いた剣士のようだ。本書は史実に沿って巌流津田小次郎として、架空の物語を創りあげているところが面白いのである。

 さて本書がさらに俄然面白くなるのはこの辺りからである。まず巌流津田小次郎の出自というか、その悲運に満ちた生涯に心が痛む。そして武蔵の父・無二のさらに悲しき生き方に遭遇し、ここではじめて本当は彼が裏の主人公であることを確信する。
 これだけでも、嫌というほど面白いのだが、このあたりで今まで少しずつ疑問に感じていた部分が、時間を遡って順次完全解明されてゆくのだ。まさにこれはミステリー小説の収束技法だと言っても良いだろう。それにしても、緻密に調査した事実をベースにしながら、これだけの嘘(創作)を捻り出した著者の力量は計り知れない。

評:蔵研人

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2021年1月 6日 (水)

Fukushima 50

★★★★
製作:2019年 日本 上映時間:122分 監督:若松節朗

 2011年3月11日に世界を震撼させた東日本大震災。それに伴う巨大津波に襲われた福島第一原発は、全ての電源を喪失し原子炉の冷却ができなくなってしまう。そしてメルトダウンの危機が迫る中、現場の指揮を執る吉田所長をはじめとする約50名の作業員たちの命懸けの戦いがはじまるのである。
 主なキャストは渡辺謙、佐藤浩市、吉岡秀隆、緒方直人、日野正平、萩原聖人、佐野史郎と主役級の男優が顔を揃えている。もちろん女優も安田成美、富田靖子などが参加しているが、本作は何と言っても男たちの物語だ。

 ストーリーは東日本大震災の大津波にあっという間に福島第一原発が飲み込まれてしまうところから始まる。そして全ての電源を喪失した原子炉は、炉心冷却機能を失い炉内の温度が急上昇してしまう。さらに核燃料が自らの熱で溶けだしてメルトダウンを起こし始めるのだった。
 もしこのままメルトダウンを引き起こせば、日本列島の半分が被害を被ってしまう。それを防ぐにはベント=排気操作を決行しなければならない。しかし電源を全て喪失したため、高い濃度の放射能が充満する建屋に人間が入って、人力で作業しなければならないのである。

 そしてストーリーは、決死の覚悟で作業する現場の50人と、無策無能の政府や東電本社の幹部たちを対比しながら、緊張感を漂わせながら事実通り克明に描かれてゆく。ここまではなかなか感動的で素晴らしい展開であった。
 ところが終盤になると、製作時間の制約のためか、あっという間に収束してしまい、収束原因がよく分からないままエンディングを迎えてしまったのが非常に残念であった。あくまでもパニック映画と言うより、50人の原発現場作業員たちを称えるドキュメンタリータッチの映画と認識したほうが良いのかもしれない。
 ところでなぜタイトルが『Fukushima 50 』とローマ字になっているのだろうか。もしかすると、米軍にゴマを擦った「ともだち作戦」を挿入したことから推測して、米国での配給を意識しているのであろうか。

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2020年12月31日 (木)

時間エージェント

著者:小松左京

 私が読んだのはポプラ文庫の『小松左京セレクション2』に収録されたもので、タイトルの作品以外に四次元トイレ、辺境の寝床、米金闘争、なまぬるい国へやって来たスパイ、売主婦禁止法、愛の空間の6作も併録されていた。
 『時間エージェント』は時間管理局の取締り話を面白おかしく描いた連作で、全8話構成で約220頁を占めている。また本収録7作品の中では、唯一のタイムトラベル小説だった。

 本作が書かれたのは1965年だし、発表誌が平凡パンチということを考えると仕方がないのだが、読みやすいのは良いのだが、バカバカしくて単調で底が浅い小説だったのは期待外れであった。小説より漫画のような作品なのだが、なんと1979年にあのルパン三世のモンキー・パンチによって漫画化されているではないか。この漫画は未読だが、表紙を見る限りエロっぽさも含めてピッタシカンカンかもしれないね。

 さて本書に収録されている『時間エージェント』以外の6作の短編についても、すべてが軽くてエロっぽいドタバタ作品で占められており、アイデアとしては面白いのだが、私が期待しているものではなかったのが残念であった。

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2020年12月29日 (火)

ドラゴン・ハート 明日への希望

★★★
製作:2020年 米国 上映時間:97分 監督:イヴァン・シルヴェストリニ

 本作は、ショーン・コネリーがドラゴンの声を引き受けたことで大ヒットした第1作から数えて、シリーズ5作目にあたる。私自身は第1作は観たものの、2作~4作までは未だ鑑賞していない。最初本作も余り興味が湧かなかったのだが、ほかに観たい作品が見当たらなかったため、なんとなくレンタルしてしまった。

 ストーリーはRPG仕立てで、両親を惨殺されて家を焼かれた少年が復讐の旅に出て、ドラゴンの助けを借りて悪人たちを次々に退治してゆくというお話である。このスローガンに惹かれてしまったのだが、少年が少しずつ成長するわけでもなく、いつもドラゴンに助けてもらうばかり。ストーリー自体も単純な勧善懲悪仕様で、まさに小学生向けのファンタジーなのだ。

 少なくともドラゴンのCGだけは立派なのだが、それ以外の何物でもない。また次回作が製作されたとしても、もうお腹一杯で遠慮したくなるね。

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2020年12月27日 (日)

時間は存在しない

著者:カルロ・ロヴェッリ 翻訳:冨永星

 下記のような丁寧な構成になっていて、読み易いのだが、読めば読むほど難解になってきて、ほぼギブアップ状況のまま無理矢理完読してしまったかもしれない。

もっとも大きな謎、それはおそらく時間
第一部 時間の崩壊
 第1章 所変われば時間も変わる
 第2章 時間には方向がない
 第3章 「現在」の終わり
 第4章 時間と事物は切り離せない
 第5章 時間の最小単位
第二部 時間のない世界
 第6章 この世界は、物ではなく出来事でできている
 第7章 語法がうまく合っていない
 第8章 関係としての力学
第三部 時間の源へ
 第9章 時とは無知なり
 第10章 視点
 第11章 特殊性から生じるもの
 第12章 マドレーヌの香り
 第13章 時の起源
眠りの姉
日本語版解説
訳者あとがき
原注

 著者はイタリア生まれの理論物理学者で、現在はフランスのエクス=マルセイユ大学の理論物理学研究室で量子重力理論の研究チームを率いている。
 本書では、「時間はいつでもどこでも同じように経過するわけではなく、過去から未来へと流れるわけでもない」という驚くべき考察を展開している。だがそれにもかかわらず、私たちが時間が存在するように感じるのはなぜなのか。
 その答えを物理学ではなく、哲学や脳科学などの知見を援用しながら論じているところがユニークである。だがその辺りが本書を難解にしている源なのかもしれない。

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2020年12月23日 (水)

スーパーティーチャー 熱血格闘

★★★☆

製作:2018年 香港 上映時間:101分 監督:カム・カーワイ

 あの「イップ・マン」を演じたドニー・イェンが製作と主演を務めたアクションコメディー。ある日風来坊の熱血教師が、問題児の多い学校に赴任して、問題児たちを更生させるという、使い古されたパターンの学園ドラマである。
 この教師チャン・ハップこそ、かつて問題児でこの学校を退学し、米国に渡り海兵隊になった過去を背負っていたのだ。そしてプロの格闘チャンピオンと互角に渡り合うのである。

 それにしても、60歳近くなったというのに、ドニー・イェンのアクションが素晴らしい。「イップ・マン」のときはカンフーだけだったが、今回は総合格闘技も含めたまさに喧嘩アクションで大暴れなのだからびっくりしてしまった。それに加えて生徒愛に満ちた教育方法も見事だ。まさにスーパーティーチャーそのものである。いずれにせよドニー・イェンあってこその映画と言えるだろう。


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2020年12月21日 (月)

トキオカシ

著者:萩原麻里

 富士見ミステリーのライトノベルである。タイムトラベルものということで購入したのだが、どうも著者の作風と波長が合わないようだ。駄作とまでは言わないが、こんな軽い小説をなかなか消化できず、かなりまごまごしてしまった。そして昨日やっと読み終わったのだが、特に感動もなければ充実感も湧いてこない。

 序盤は学園ラブストーリー風の展開だったのだが、中盤に明治時代にタイムスリップしたあたりから、急におどろおどろしい雰囲気に包まれて萬葉集まで飛び出してくる。さて「時置師」と書いてトキオカシと読むそうだが、彼等一族は永遠に若返りが止まらないため、他人の記憶を食らうことによって、一時的に若返りを阻止して現状を保持しているという。

 トキオカシたちの目的は何なのか、そしてどんな活躍をするのだろうか。と目を皿のように読み進めたのだが、トキオカシの超人的能力は何も発動されないし、主人公は相変わらず弱々しくて、誰の力にもなれないのだ。
 また登場人物や舞台などもかなり限定的で、スケール感も乏しくストーリーも単調である。そして退屈感ばかりが充満してのめり込めないまま、いつのまにか終劇となってしまったのである。なんだこりゃあ!。


 せめてタイムスリップしてきた意味くらいは解明されてもよいのだが、思わせぶりな説明はあるのだが、なにかスッキリとしない。かなり中途半端な気分のまま、本書を閉じることになってしまったのである。
 さてよくよく調べてみると、本作にはまだ続編があるようなのだ。その続編は「カタリ・カタリ トキオカシ(2)」なのだが、もう読む気はしないな…。

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2020年12月19日 (土)

ハスラーズ

★★★

製作:2019年 米国 上映時間:110分 監督:ローリーン・スカファリア

 本作は実話をもとにしたクライム映画で、アカデミー賞にはノミネートされなかったものの、サテライト賞映画部門助演女優賞を受賞し、ゴールデングローブ賞助演女優賞にもノミネートされている。またストリッパーたちの集団詐欺を描いた作品ということもあり、美女たちのヌードにも期待して本作を観た人たちも多いかもしれない。

 だが結論からぶちまけると、主要キャストのヌード場面は皆無だし、ドキュメンタリー風の展開が退屈でたまらなかった。それで途中から早送りして観たのだが、いつまで経っても終わらない。こんな映画なら90分以内で十分だった。だからアカデミー賞にノミネートされなかった理由がなんとなく分かったような気がした。

 もしかすると、実話に拘り過ぎたためにストーリーを犠牲にしてしまったのかもしれない。少なくとも女同士の友情や男性たちとの関係に、もっと心理描写を取り入れても良かったよね。ただ淡々と犯罪の成り行きを繰り返すだけでは、ドラマとしては失格である。

 そんな中で数少ない見所は、50歳を超えたジェニファー・ロペスの見事な肢体と演技力ぐらいかな。それにしても犯罪・暴力・銃社会・貧富の格差・そして戦争へと連なって行く米国病は果てしなく続くのだろうか。


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2020年12月17日 (木)

ブルースカイ

著者:桜庭一樹

 本作は第1部から第3部までの3つの時代の話に分割されている。第1部の舞台が1627年のドイツ・ケルン、第2部が2022年のシンガポール・セントーサ島そして第3部が2007年の日本・鹿児島市である。
 またタイトルの意味するところは何だろうと考えていたのだが、実はこの場所も時代も異なる3つのストーリー全てに登場する少女の名前だった。彼女の名前は「青井ソラ」まるで駄洒落のようなタイトルだったのである。

 魔女狩りを扱った第1部はそれなりに面白かった。だが第2部と3部は全く面白くないし、何のためにリンクさせたのだろうか。確かにある少女のタイムトラベルを繋げるためには必要だったのかもしれないが、それぞれの話には全く関連性がないし必然性もない。ただ一番退屈だったのだが、著者の主眼としては、現代を描いた第3部にあるような気がしてならない。

 アイデア的には決して悪くはないのだが、その世界観はほとんど理解不能だ。正直こんなものを読まされて、不愉快だけが残ってしまった。それにしても一部のネットでは、かなり好意的な評価が目白押しだったのには驚いたのだが、ついてゆけない自分が情けないのだろうか…。

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2020年12月14日 (月)

アルティメット・ソルジャー

★★☆

製作:2020年 米国 上映時間:92分 監督:ダニエル・ジリーリ
 
 戦死寸前の兵士が、極秘プロジェクトのナノテクよって不死の戦士として蘇るのだが、なぜか目覚めると急に暴走し始めるのだった。この兵士と戦ってあえなく瀕死の重傷を負った凄腕ボディガードも、ナノテクによって不死のボディガードとして変身する。そして誰も手を付けられない不死の二人によるバトルゲームが始まるのである。

 こう記すと、なかなか見応えのあるバトルアクションムービーを期待してしまうのだが、ワクワクするのはこのあたりまでだった。戦士のほうはタイの町中で他人の食べ物を取り上げ、警官の拳銃を奪うだけ。そしてもう一方のボディガードは、離婚を迫るタイの美人妻とヨリを戻そうとシャカリキになるだけ状態なのだ。

 結局見所は、終盤にやっと対決する二人のプロレスまがいの格闘だけなのだが、それもなんとなく色褪せた感がある。米国映画でなぜ舞台がタイなのかは不明なのだが、いずれにせよかなりの低予算映画であることは間違いない。まあ100円レンタルで、退屈凌ぎに寝転んで観る程度の作品と言っては失礼なのだろうか…。


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2020年12月12日 (土)

時をめぐる少女

著者:天沢夏月

 本作は筒井康隆の『時をかける少女』とは、全く異なる話であり、そのオマージュでもない。ただあるとき時間の流れの中をさ迷ったことのある女性の日記帳のようなものである。

 本作は次の4つの章で構成されている。
1. 9歳(小学生)の私
2.13歳(中学生)の私
3.21歳(大学生)の私
4.28歳(社会人)の私

 9歳の時、近所の公園で、銀杏並木の奥にある「とけいじかけのプロムナード」という広場を見つける。そこで時計回りに歩くと未来に行き、逆に回ると過去に行くという。でもそれはいつでも誰でも経験できることではなく、私も通算4回しか経験がない。

 小学生の時は父と離婚して、転勤による引っ越しを繰り返す母との確執に悩む。また中学生の時は、転校生同士の葛藤により生涯の親友となった新田杏奈との交友を描く。
 大学生になると、上手くゆかない就職活動に悩み、恋人となる月島洸との出会いと戸惑いが描かれる。そして社会人となって、やっと落ち着いたかと思ったら、月島洸からの結婚申し込みによって、再び少女時代のような憂鬱が襲いかかって来るのだった。

 本作は一見タイムループ的な作品であるが、9歳と28歳の時に2度ずつ少しだけ時間の流れの中をさ迷っただけであり、本質は主人公の悩みと成長に主眼が置かれているのだ。従ってSFでもファンタジー作品でもなく、若い女性の手記を脚色するための道具立てとして、時をめぐるというメルヘン的なシーンを盛り込んだに過ぎない。

 まあ同年代の女性たちにはそこそこ受けるかもしれないが、少なくとも我々おじさんたちは、全く共感が湧かないであろう。ただ読み易かったので、それほど苦痛ではなかったのが救いであった。

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2020年12月10日 (木)

家族を想うとき

★★★☆

製作:2019年 英・仏・ベルギー 上映時間:100分 監督:ケン・ローチ
 
 出演者のほとんどが素人だというのだが、それにしてはなかなかの芸達者揃いだ。ことに嫌われ上司役は警察官だというのだが、本当かな…。
 さて本作は短気で失業中だった父親リッキーが、フランチャイズの宅配ドライバーとしての面接を受けるところから始まるのだが…。実は母親のアビーがパートタイムの介護福祉士として、患者の家々を飛び回っているため、小学生の娘は淋しい想いを募らせてゆき、高校生の息子は反抗的な態度が続いているのだ。
 
 やっと働き始めて、家を建てることに猪突猛進しているリッキーだが、週6日で14時間勤務。それもトイレにいく間もないほどの激務に追いまくられている。また妻も何軒も掛け持ちの介護士で二人とも帰宅が遅く、クタクタに疲れ切っている。だが多額の借金も残っており、必死で共働きしても生活は良くならず、家族はバラバラらなるばかりなのだ。
 
 娘は素直で可愛いのだが、息子のほうは休学になったり万引きで逮捕されたり、家出したりとなかなか手に負えない。そして宅配の仕事も、なかなかままならない。…と最初から最後まで辛い状況が続くのだが、自家用バンで家族全員で患者の家に行くシーンだけは、一筋の光が刺したように感じた。

 本作では、母親と娘には好感が持てるのだが、父親と息子に多くの問題があるようだ。なにせ彼等は他人のことを考えず、自己主張ばかりが強過ぎる。そもそも初めてチャレンジする宅配事業のため、金もないのに新車のバンを無理矢理購入したときから、この家族の不幸は始まったのではないだろうか。娘がバンのキーを隠した気持ちが痛いほど分かった。
 そして尻切れトンボのような形で締めくくったラストシーンについては、仕事に出かけるのか、生命保険をあてにして事故死に向かったのか、観る人々にその解釈を委ねたのだろうか。


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2020年12月 8日 (火)

僕たちの戦争

著者:萩原浩

 現代に生きる根拠なしでポジティブなフリーター尾島健太と、昭和19年に「海の若鷲」に憧れる軍国青年の石庭吾一が、時空を超えて入れ替わってしまうという話である。そしてなんと彼ら二人は、顔や体格だけではなく、基本的な性格や趣向もそっくりなのだ。だからそれぞれの世界では、誰も彼等をその時代の彼等としてしか認めない。ただ時代背景が異なるため、心情は全く正反対だったのだが、なんとかそれぞれの境遇に順応しつつ、元の世界に戻る方法を模索するのだった。

 単なるタイムスリップものではなく、瓜二つの人物がそれぞれ別の時代に跳んで入れ替わってしまう、というアイデアが素晴らしい。そして彼等がそれぞれの時代を受け入れるまでの心理状況と行動の描写が実に面白いのだ。
 ことに過去から現代に来た吾一が見た「現代人や現代社会の異様さ」には、かなり共感してしまう自分も、年寄になったものだと実感してしまった。また吾一が少しずつ現代社会に慣れたのと同様、自分も知らぬ間に慣らされてしまったのだろう。

 さて本作は、現代と戦時中を交互に描いたタイムトラベルものなのだが、SFという臭いは全くしないのだ。どちらかと言えば戦争と現代社会に批判と警鐘を鳴らしながら、二人の青年の成長と恋を描いた青春小説なのだと考えたい。
 またぼやかしたようなラストは、読者の想像に委ねるという方法で収めているのだが、これには賛否両論があるかもしれない。もしタイムトラベル小説なら、それぞれが元の時代に戻ったあと、現代で過去の人たちとのめぐり逢いなどを絡めて締めくくるのが定番であろう。だが本作ではより文学的な締めくくりを選んでいるところが、青春小説たる所以なのかもしれないね…。
 
 さらによく調べてみたら、2006年9月にTBS系のテレビドラマとして放映されているようである。主なキャストは、森山未來、上野樹里、玉山鉄二、内山理名、樹木希林などだと言う。是非DVDなどを探し出して観てみたいものである。

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2020年12月 6日 (日)

存在のない子供たち

★★★★☆

製作:2018年 仏・レバノン 上映時間:125分 監督:ナディーン・ラバキー

 貧困のレバノンにて、子供が両親を告訴するという、中東の社会問題に真っ向から斬り込んだもの凄い映画である。そして当然の如く、第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされている。

 12歳の長男ゼインは、レバノンの貧民窟で大勢の家族たちと同居しており、一家の貴重な労働力でもあった。ところが一つ下の妹が初潮を迎えたため、無理矢理人身売買のような形で結婚させられてしまう。それに怒り狂ったゼインは、家出して職を探そうとするのだが、身分証明書がないため仕事にありつけない。
 
 そんな折りに、たまたま遊園地で清掃員をしていた黒人女性のラヒルと知り合う。彼女はエチオピアからの密航難民で、偽名で不法就労しながら、生後間もない男子ヨハスを一人で育てていた。彼女は生活費と、エチオピアの親への送金、さらには新たな滞在証明書を偽造する費用を稼ぐために必死に働く必要があった。

 行き処のないゼインは、そんな貧しいラヒルが住むバラック小屋に同居し、幼いヨナスの世話をすることになる。そして暫くは今まで味わったことのなかった平穏な日々を送り続けるのだが、ある日出かけたラヒルがいつまで経っても帰宅しないのだ。翌日もまたその翌日も彼女は帰ってこない。ヨチヨチ歩きのヨナスを抱えて困惑するゼインは、一体どうすればよいのだろうか…。

 本作は実話を再構成した作品なのだという。しかも出演者の大半は、演技経験もなく、なおかつ演じる役柄も自分自身と似た境遇を持った、いわゆるストリートキャスティングで選ばれた人物ばかりだというのだ。
 それにしても子供たちの演技力が真に迫っていると感じたのだが、ゼインを演じた少年と妹役の少女は、実際にシリアからレバノンに大量に流れ込んできた難民であり、2人とも役柄同様に日銭を稼ぐ仕事をしていたという。さらにヨナス役の幼児に至っては、本作撮影中に実の両親が不法入国の疑いで逮捕されたというから、子供たちは日常をそのまま演じていたのだろう。

 多分レバノンだけではなく、他の中東諸国やアフリカ、東南アジアや南米などにも、本作同様の恵まれない子供たちが大勢存在している可能性がある。こうした作品を観る都度、いかに我々が平和で幸福であるのかを認識せざるを得ない。…だがどうしてそんなに貧しい中で、バスの中や病院など四六時中煙草を燻らせているのか、それだけは不思議でたまらないのだ。
 

評:蔵研人

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