ハッピー・デス・デイ 2U

★★★☆

製作:2019年 米国 上映時間:100分 監督:クリストファー・ランドン
 
 前作『ハッピー・デス・デイ』の完全続編である。だが前作の説明は一切ないため、これを初めて見た人はかなり戸惑うはずである。また前作は、タイムループホラーという珍しいジャンルだったのだが、本作はSF色とコメディ色が強くなり、タイムループよりもパラレルワールド風味に染まっている。それにホラー要素はかなり薄められているので、なにか物足りないのだ。

 そしてタイムループの原因は、理工学部で学ぶライアンたちが開発した量子冷却装置(SISSY)だというのだが、なんとなく無理矢理こじつけた感があり余り共感できない。またこの装置を再起動するための方程式を、ヒロインがタイムループを繰り返して解析するくだりもよく理解出来なかった。

 ヒロイン役の必死の演技には脱帽するが、本作が前作より評価が高いのは不思議でならない。やはり今どきの若者たちには、お笑いが必須なのであろうか…。また更なる続編3の製作が噂されているのだが、本作と同じようなパターンなら、もう観たいとは思わない。

 
評:蔵研人

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2020年11月29日 (日)

鬼神の血脈

著者:榊原史保美

 本作は耽美的な雰囲気に彩られた伝奇小説と言って良いだろう。赤江瀑、半村良、高橋克彦などの影響を受けている作品と言えば分かり易いかもしれない。また古くは夢野久作、横溝正史、江戸川乱歩の流れを汲んでいると言っても良いだろう。

 ストーリーは大まかに四人の百目鬼一族によって紡がれているのだが、百目鬼一族を支えているのは九州の山村に住む百目鬼忍という美女だけなのだ。あとの三人は文楽界の超新星・鬼若こと久竹澄生と、刑事の片平壮介及び雑誌編集者の成見有介である。

 話は文楽界の内幕に始まり、名門・松上家の跡取りである九四郎の殺人事件によって幕が切って落とされる。その後片平壮介の捜査によって、事件の成り行きと関係者の洗い出しがはじまり、少しづつ鬼若の素性なども明かされてゆく。また同時進行の形で、成見有介の百目鬼一族取材の旅が始まるのである。

 伝奇あり、闇の世界あり、男色ありのミステリーなのだが、その追求が浅いためか、恐怖感やオドロオドロしさは湧かないしエロさも皆無だ。また犯人もすぐにバレてしまうし、どんでん返しもなくラストもあっけなさ過ぎる。
 どうも起・承・転・結の起と承ばかりにスポットライトを当て過ぎて、転がなくいきなり結となってしまう、というバランスの悪さが目立ってしまったようだ。言葉を変えていえば、女性作家特有の資料調査は十分なのだが、ストーリー展開の面白さが今ひとつということになるのだろうか…。

評:蔵研人

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2020年11月27日 (金)

夕陽のあと

★★★☆

製作:2019年 日本 上映時間:133分 監督:越川道夫

 鹿児島県に所属する長島を舞台にしたヒューマンドラマである。長島町の町おこし映画ということで、地元の人々が大勢参加しているし、映像や会話はなんとなくドキュメンタリー風であった。ことに会話の部分が聞き取りにくかったのがちょっと辛かったね。

 1年前に佐藤茜(貫地谷しほり)という謎めいた女性が、突然都会からやってきて、長島町の港食堂で働いているのだが…。最近になって急に7歳になる豊和に近づきはじめる。
 実は豊和は都会で赤子の時に捨てられて、島でブリの養殖業を営む夫婦の里子に出されていたのである。もちろん豊和はそのことは知らず、島の子供として平和に暮らしていた。
 
 またどんなルートで豊和を探し当てたのかは不明なのだが、茜こそ豊和を探し求めて島に渡った実母なのであった。そして少しずつ豊和と接しているうちに、だんだん豊和を手元に置きたくなってしまうのである。
 それを知った里親の五月は怒り狂って、身勝手な茜に宣戦布告をすることになる。このあたりから本作は、急にドキュメンタリータッチからちょっぴりミステリアスなホームドラマ風味に変身してしまうのである。

 結局テーマは、生みの親か育ての親かということなのだが、法的には生みの親の権利のほうが強いらしい。だが結局のところ、どちらも親たちのエゴであり、子供自身の幸せについては無視されている雰囲気が漂う。…とは言いながらも、ラストは現実的な選択で締めくくられている。まあそれしかないよね。

評:蔵研人

 

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2020年11月25日 (水)

THE WINDS OF GOD -零のかなたへ-

★★★☆
著者:今井雅之

 そもそも本作は1988年に今井雅之が舞台用に書き上げた戯曲なのだが、これが好評につき1995年に小説化されたものである。その後映画化・テレビドラマ化されている。
 その内容は関西の売れない漫才師二人が事故に遭い、その反動で過去にタイムスリップしてしまう。目が覚めるとなんとそこは終戦間近の航空隊基地であり、二人は神風特攻隊の訓練中に墜落事故を引き起こしたことになっているではないか。しかも実在の特攻隊員の魂と入れ替わってしまったようなのだ…。

 ここまで書くと萩原浩の『僕たちの戦争』そっくりではないか。だが決してパクリではない。本作のほうが先に執筆されているからである。
 著者の今井雅之の本業は俳優なので、小説の文体はやや大雑把であるが、気迫だけは十分に感じられるだろう。そして映画『静かな生活』のストーカー役で、1996年日本アカデミー賞優秀助演男優賞受賞。さらには本作をライフワークとして掲げながら、オフ・オフ・ブロードウェイで公演し成功を収めている。ただ残念ながら、大腸がんに侵されて2015年に54歳の若さで他界してしまった。

 さて冒頭で、主人公が事故に遭遇し過去にタイムスリップしたと記述したのだが、タイムスリップというよりは、魂が過去の人物と入れ替わったのだから、SFしか物理学的な発想ではなく、輪廻転生など宗教観の漂う世界なのかもしれない。

評:蔵研人

 

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2020年11月21日 (土)

わたしは光をにぎっている

★★★★

製作:2019年 日本 上映時間:96分 監督:中川龍太郎

 両親を亡くし、野尻湖の畔にある民宿を祖母と切り盛りしていた宮川澪(松本穂香)は、祖母が入院し民宿を閉めることを余儀なくされる。そしてやむなく亡父の親友・三沢京介(光石研)を頼って上京する。

 京介は下町で古びた銭湯を営んでおり、澪は就職先が見つかるまで、その銭湯の二階に居候することになる。だが超・無口のためか、なかなか就職先が見つからず、バイトのスーパーにも馴染めずすぐに辞めてしまう。やむなく京介の銭湯を手伝うのだが、なんとこれが彼女の感性にピッタリの職場であった。

 ところがこの銭湯だけではなく、馴染みのラーメン屋、映画館、飲み屋などを含めた地域全体が再開発のため立ち退きを余儀なくされ、閉店することになっていることを酔った京介から知らされる。
 さらに追い打ちをかけるように、祖母の訃報を告げる電話が鳴り響く。どうも澪の周りには、不幸の連鎖がとぐろを巻いているようである。だが決して彼女は挫けない。銭湯についても、「ちゃんとした終い方」をしようと京介に提案する。

 古く薄汚れた銭湯や街並みと、超美麗な自然の風景が交互に差し替えられ、古いものと美しいもののコントラストが激しい映像である。古い町や銭湯、民宿、そして祖母などの古いもの消えてゆき、新しい町や文化を若い人々が運営してゆくということを示唆しているのであろうか。
 淡々としたストーリー展開と、普通の人々が織りな変化のない日常。そして会話が少なく説明も省略しているのだが、なんとなくじわじわと心に沁みてくる。こんな映画こそ、貧困な現代の邦画に求められている映画なのかもしれない。

 タイトルの意味は、明治大正期に活躍した詩人・山村暮鳥の『自分は光をにぎつてゐる』をもとに付けられおり、澪が祖母に貰った詩集でもある。そして劇中では、澪がはじめて生きがいを感じた銭湯の仕事を光に例えているような気がするのであるが、考え過ぎであろうか…。


評:蔵研人

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2020年11月19日 (木)

リライト

★★★☆
著者:法条遥 
 
 リライト(Rewrite )とは、基本的には「書き直す」または「書き換える」といった意味の英語である。IT用語としては、既存システムの枠組みは維持しつつ使用言語(プログラミング言語)を改めることを指す。
 また編集用語では、著者以外の人が文章に手を入れて書き直すことを言う。もちろん高名な小説家に対しては、失礼になるため手直しはできない。どちらかと言えば、文筆家以外の人が書いた実用書などの文章を読み易くするために、無名のライターがおおもとを変えずに文章を手直しする作業を言う。

 ただ本作のタイトルである『リライト』の意味は、なかなか一筋縄では説明できない。まず目次を見れば分かるのだが、2002年と1992年を何度も繰り返している。そしてその都度「私」の視点が異なっているのだ。
 つまり同じ出来事なのに、それぞれ別人が主人公として描かれているということなのである。最初はそれに気付かないため奇妙に感じるのだが、その種明かしは終盤の同窓会二次会の中で明かされることになる。この繰り返しパターンを『リライト』と考えることも出来るのだが、単純に作家の高峰文子が書いた私小説『時を翔ける少女』の改竄のことを指しているのかもしれない。

 過去は絶対変わらない・・・はずだったのだが。西暦1992年夏。中学二年生の桜井美雪は、旧校舎に突然現れた転校生の園田保彦と出会う。ラベンダーの香りとともに現れた彼は、西暦2311年からやってきた未来人だった。
 なんとなく筒井康隆の『時をかける少女』に似ている。いや似ているというより、『時をかける少女』をより難解にアップデートしたオマージュ作品なのだろうか。いやいやもしかすると『時をかける少女』のリライトかも(笑)。

 いずれにせよ一度読んだだけでは、その意図がよく理解出来ない作品であろう。事実私自身も完全に読み解けないまま、本書の評を記しているという情けなさ・・・。だがよく理解できないながらも、本書がそこそこ味わい深く、楽しめる作品であることは否定できないのだ。

評:蔵研人

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2020年11月16日 (月)

エンド・オブ・ステイツ

★★★☆

製作:2019年 米国 上映時間:121分 監督:リック・ローマン・ウォー

 米国大統領シークレットサービスのマイク・バニングは、長年の激務がたたって偏頭痛や不眠症に苦しんでいたのだが、なかなか現場の仕事から離れることが出来ずに悩んでいた。そんなある日、大統領の釣りに同行することになったのだが、いきなりドローン軍団の攻撃をうけてしまう。そして警護の者は全員死亡してしまうのだが、奇跡的に大統領とマイクだけが生き残る。と言っても、大統領は意識不明のままである。

 一方マイクのほうは、やっと意識が回復したものの、ベッドの中で手錠に繋がれている状態なのだ。なんと犯行に使われた車から、マイクのDNAが検出されたため、FBIはマイクを大統領暗殺未遂の容疑で逮捕したのである。
 マイクは懸命に無実を主張するのだが、反証出来ぬまま拘束が続く…。誰かにハメられたのだが、なかなか真犯人が思い浮かばない。

 この辺りまではミステリアスで、ハラハラドキドキの連続が続いて行く。ただそのあとすぐに真犯人と黒幕が判明してしまったところがあっけない。そしてミステリーは終了してド派手なアクション映画にチェンジしてしまうのである。
 それはそれで面白くない訳ではないのだが、手垢のついたストーリーとアクションシーンに頼り過ぎた感があった。やはりどちらかと言えば、もう少しミステリアスな展開を続けて、ラストにはどんでん返しも織り込んで欲しかったね。

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2020年11月14日 (土)

廃墟の残響:戦後漫画の原像

★★★☆
著者:桜井哲夫

 戦争と廃墟をテーマとしながら、その中で生き延びてきたマンガ家たちを描き、戦後の漫画文化について語っている。その中で語られているマンガ家は、水木しげる、手塚治虫、白土三平などの大御所をはじめとして、トキワ荘グループ、劇画工房グループ、そしてガロやCOMで発掘されたマンガ家たちであり、なぜか横山光輝や桑田次郎は登場しない。

 また紙芝居・赤本・貸本からメジャー出版社による月刊誌そして週刊誌への推移を語りながら、廃墟をバックボーンにした『AKIRA』や『新世紀エヴァンゲリオン』に至るまでを精力的に解説している。
 戦争と廃墟をテーマとした漫画史として読めば、ある意味ためになるかもしれないが、一般的な漫画論としては中途半端で物足りない。また文章が硬くて読み辛いのも減点対象になるだろう。

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2020年11月12日 (木)

蜜蜂と遠雷

★★★★
製作:2019年 日本 上映時間:118分 監督:石川慶

 直木賞と本屋大賞をダブル受賞した恩田陸の音楽小説を実写映画化した作品である。時間的には若手ピアニストの登竜門である国際ピアノコンクールの予選と本選だけに特化して描かれている。ただ主な登場人物の過去を振り返る形で、彼等の葛藤や意気込みなどを鏤めながら進行してゆく。

 その主な登場人物とは、母親の死から立ち直れず、長年ピアノから遠さがっていた栄伝亜夜(松岡茉優)、子持ちで年齢制限ギリギリの高島明石(松坂桃李)、優勝候補のマサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)、謎の天才少年風間塵(鈴鹿央士)の4人である。それぞれの思いを秘めてステージにあがるのだが、果たして優勝の栄冠を勝ち取るのは誰なのだろうか。

 もちろん優勝の行方も気になるのだが、本当の見どころは彼ら4人の迫力に満ちた演奏シーンにある。裏側では世界的なピアニストたちが、思い切り迫力満点の音を鳴らしているのだが、俳優たちのピアノ演技もなかなか侮れないのだ。
 ドビッシーの「月の光」、ベートーヴェンの「月光」、バルトークの「ピアノ協奏曲第3番」、そしてこの映画のために書き下ろされたという藤倉大の「春と修羅」など。まさに観終わった後々まで心に鳴り響くような名演奏だった。そしてうっとりする様な美しい映像がそこに花を添えていたことも忘れない。

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2020年11月10日 (火)

真実

★★★

製作:2019年 日・仏合作 上映時間:108分 監督:是枝裕和

 是枝裕和監督がフランスで創った映画であり、フランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュの共演で描かれた家族ドラマである。
 大女優の自叙伝出版を祝うために娘の家族がアメリカからやってくる。そして今まで隠されていた母と娘の間の、愛憎渦巻く真実が明らかになるまでの時間を描いているのだが、おじさんたちにはやや分かり難いかもしれない。

 まさに大女優カトリーヌ・ドヌーブ本人を描いたような作品なのだが、残念ながら『昼顔』とか『シェルブールの雨傘』のイメージが総崩れになってしまった。彼女も76歳になってしまったので、その美貌の衰えは仕方ないのだが、だいぶ太り過ぎたのと手足のシミが激しかったのには失望した。
 一つ違いの吉永小百合と比べれば、その劣化度合の酷さが一目瞭然である。やはり大女優を名乗るのなら、もう少し美肌と美型を維持する努力をして欲しかったな。

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2020年11月 8日 (日)

フラッシュバック

著者:テリー・ヘリントン  訳者:進藤あつ子

 現代女性が過去にタイムトラベルをして、そこで逢った男性と恋に落ちるというお話である。ストーリー構成としてはよくある展開でハーレクイン・ライブラリーなどには似たような小説が目白押しだ。
 私が読んだものでは『時の扉とシンデレラ』、『恋はタイムマシンに乗って』、『時のかなたの恋人』、『ハイランドの霧に抱かれて』、『時の旅人クレア』などなど書き出したらきりがない。また逆バージョンで、現代男性のほうがタイムトラベルして過去の女性と恋に落ちる話としても『ある日どこかで』、『ふりだしに戻る』、『七年後の恋人』などがある。

 と言うことでストーリー構成には、目新しさが認められない。ただ本作が他の作品と異なるのは、ヒロインがタイムトラベルするたびに体力を消耗し、もしかすると命を落としてしまうことになるかもしれない、ということなのである。この設定によって、読めば読むほどドキドキ・イライラが募り、早く先を読みたいという欲望に駆られて、あっという間に読破してしまうのだ。

 ヒロインのセアラは、目の前で事故死した老人マーカスの遺品を調べるうちに、セピア色に染まった過去の写真の中に、若き日のマーカスと自分自身を見つけるのである。もしかすると、セアラとマーカスは過去の世界で恋人同士だったのかもしれない・・・。
 そしてセアラは、屋根裏部屋で古い写真機を見つけ、そのシャッターを押すたびに過去にタイムトラベルをするのだが、双子の妹カレンに呼ばれると、また現代に戻ってしまうのである。だがまたマーカスに逢いたくなり、古い写真機のシャッターを押すのだった。
 その都度セアラはかなり体力を消耗し、昏睡と入院を繰り返すのである。つまりセアラが命を懸けなければ、マーカスに逢うことが出来ないのだ。果たして時空を超えて出逢った二人の、切ない恋は成就するのだろうか・・・。

 それにしても命をかけたセアラの激しい恋心は、一体どこから湧き出てくるのだろうか。何となく幽霊に魅入られた『怪談・牡丹燈篭』の世界を想像してしまった。この辺りの女心は「恋を忘れたおじさん」にはちょっと理解できない。だがきっと恋する若者たちの気持ちは、小説に近いのかもしれない。まあそれはそれとして、切ない中にも心温まるラストシーンは実に見事であった。

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2020年11月 6日 (金)

ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋

★★★☆
製作:2019年 米国 上映時間:125分 監督:ジョナサン・レヴィン

 タイトルのロングショット(LONG SHOT)を直訳すると、 写真・映画などの遠写し、ゴルフの遠距離打、または大胆な企てや、勝ち目のない大穴ということになる。つまり本作では、サブタイトルの『僕と彼女のありえない恋』が、それを言い当てている。

 米国国務長官で次期大統領候補の美女シャーロット(シャーリーズ・セロン)が選んだ恋人は、なんと失業中でむさ苦しい風貌のジャーナリストであるフレッド(セス・ローゲン)だった。それは誰が見ても不釣り合いな美女と野獣と言えよう。とにかくシャーリーズ・セロンの美しさと演技力の光る作品と言えるだろう。

 本作はラブコメ仕立てなのだが、へなちょこ大統領やいやらしい資本家に牛耳られる米国の政治に対する皮肉をたっぷり練り込んである。そしてラストはアメリカ風のハッピーエンドでスッキリするのだが、なにせ下ネタが多過ぎるのだ。下ネタはこの監督の好みなのだろうか、ただそのために作品自体の底が浅く感じてられてしまうところが無念である。


評:蔵研人

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2020年11月 4日 (水)

1950年のバックトス

★★★☆
著者:北村薫

 時と人のシリーズ『スキップ』、『ターン』、『リセット』で有名な北村薫の短編集ということで、タイムトラベル系の話を期待して購入してしまった。ところが残念ながら、23篇ある短編の中身はホラー、ファンタジー、ミステリ、恋愛小説から純文学まで多彩な作品で埋められているもののSFとか時間テーマものは一つもなかったのである。

 また表題の『1950年のバックトス』に付されているキャッチコピーに「大切に抱えていた想いが、時空を超えて解き放たれるとき…」と記されていたのだが、単に過去の思い出を現況に重ね合わせた話であった。それでも23篇の中では、タイトルになっただけあって本作が一番面白かった。

 なお収録作品を参考までに記すと次のようになる。
 百物語/万華鏡/雁の便り/包丁/真夜中のダッフルコート/昔町/恐怖映画/洒落小町/凱旋/眼/秋/手を冷やす/かるかや/雪が降って来ました/百合子姫・怪奇毒吐き女/ふっくらと/大きなチョコレート/石段・大きな木の下で/アモンチラードの指輪/小正月/1950年のバックトス/林檎の香/ほたてステーキと鰻

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2020年11月 2日 (月)

自転車泥棒

★★★★

製作:1948年 イタリア 上映時間:88分 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ

 第2次大戦の敗戦国イタリアが、どれほど貧しかったかを簡潔に描いた名作である。職安前はもの凄い人だかりだ。とにかく職がないのである。そんな中で運よく役所の仕事にありつけたアントニオ。

 ところがその仕事は自転車に乗って、壁に映画のポスターを張り付けて回る作業で、自転車がないと職に就けない。少し前に自転車を質草に出してしまったアントニオは、妻と一緒に家中のシーツを剥がして質屋に向かう。その質屋にも大勢の人が集まって大行列だ。やっと新しい質草を提出して、なんとか自転車を請け出すアントニオと妻の顔には久々に笑顔が戻る。

 これでやっと人並みの生活が送れる。…とほくそ笑んだのも、ほんの束の間であった。アントニオが夢中でポスターを張っていると、ふとした隙にあっという間に自転車が盗まれてしまうのだ。すぐに気が付き追いかけるのだが、自転車のスピードには追い付かず、見失ってしまうのだった。
 すぐ警察に届けるのだが、本気で相手にしてもらえず、挙句の果ては「警察は忙しいので自分で探せ」と言われる始末。そしてアントニオと息子ブルーノによる自転車泥棒探しが始まるのである。

 妻と6歳の息子と乳飲み子を抱えるアントニオ。しかし家族を支えたくとも職がない。やっと職を見つけた思ったら、今度は自転車を盗まれてしまう。自転車自体の価値というより、自転車がないことで「また失職してしまう恐怖」に怯えるアントニオと家族たち。果たして自転車を取り返せるのだろうか…。

 ネタバレになるのでこれ以上語れないのだが、悪いことに不運は連鎖してしまい、どうにもならない悲惨な結末が待っていた。だがなんと息子のお陰で、最悪の状況だけは避けることが出来たアントニオ。
 絶望の中でやっと一筋の灯りを見た気もしたのだが、アントニオとブルーノの涙にむせびながらの悲しいエンディングを迎えるのだ。
 それにしても頼りないアントニオだが、妻も息子もしっかり者なので、なんとか立ち直れるかもしれない…。そう言い聞かせながら、この悲しい結末に耐えるしかなかった。

 モノクロで低予算であるが、現代の映画にも決して引けを取らない。こんな名作が戦後まもなく創られたのだから、さすが嘗ての映画王国イタリアである。


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2020年10月31日 (土)

血槍富士

★★★☆

製作:1955年 日本 上映時間:94分 監督:内田吐夢

 1954年に中国から復員した内田吐夢監督の戦後第一作であり、名作時代劇のひとつに数えられている。主演は槍持ち権八を演じた片岡千恵蔵で、若殿・酒匂小十郎とお供の源太の三人で、のんびりと江戸に向かってゆくというロードムービーである。
 道中、小間物商人、身売りに行く田舎娘と父親、あんま、巡礼、旅芸人母子、挙動不審の男、浮浪児などと一緒に旅することなる。そうこうしているうちに、若くて世間知らずの小十郎は、市井の人々の悲喜交々の人生と人情に触れて感動し、虚栄ばかりの武士の世界に嫌気がさしていくのだった。
 
 さてその小十郎は、普段は聡明で部下想いの優しい男なのだが、ひとたび酒が入ると酒乱の気がある。それで本人も付き人達も注意し、せめて旅の間は禁酒を通そうと決意していたのだが、あることがきっかけでとうとう禁を破ってしまうのである。それでも一回目は権八が駆けつけて、なんとか事無きを得たのだが、二回目は大変な事件へと発展してしまうのだった。

 中盤までは東海道の景色を眺めながらの、のんびりとした旅が続き、後半は大泥棒逮捕劇と人情噺に花が咲く。この映画には殺陣シーンはないのだろうか、と思っていると終盤になって突如惨劇が起こって、権八の大立ち回りが始まるのである。
 ただその殺陣シーンも、擬音が出るではなく、血が流れるわけでもなく、まるで歌舞伎を観ている感があった。まだこの時代の殺陣はそんなものなのだが、黒澤明以降の時代劇を知っている者には物足りない。そこだけが減点要素だが、製作当時に本作を観ればがもう一つ増えただろう。

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2020年10月29日 (木)

光秀の定理

★★★★
著者:垣根涼介

 明智光秀が主人公の歴史小説なのだが、どちらかというと架空の人物である愚息と新九郎の視点で語られるところが多い。愚息とは世の中のしきたりに迎合せず、辻博打で生計を立てている破戒僧の名である。そして彼が信じるのは手垢のついた仏教ではなく、釈迦の直接説法だけだというのだ。

 また若き兵法者である新九郎は、剣の道を志すも金に困り辻斬りに身を落としていた。そんなある日、辻博打をしている愚息と運命的な出会いを果たす。さらに若き日の光秀を辻斬りしようとしたが、新九郎との実力差を認めた光秀が刀を差し出すのを見ていた愚息に光秀の勝ちだと言われてしまう。こんなことが縁となり三人の奇妙な付き合いが始まるのであった。

 このほかにも光秀の妻煕子の聡明さや、光秀が世話になっている細川藤孝のしたたかさ、そして織田信長の残虐さの中に同居する器の大きさなどを分かり易く描いている。それだけならよくある歴史小説との差別化は果たせないのだが、本作では愚息の辻博打で使われている「3つの定理と確率論」が大きく関わってくる。そこが実に興味深いというか、他の歴史小説にはあり得ない構成となっているのだ。

 さらに面白いのが、光秀を描いておきながら、あの『本能寺の変』の描写が一切省略されているのである。ただなぜ光秀が、その暴挙に走ったのかという謎解きだけは、光秀が没した15年後に、愚息と新九郎の酒の肴として語られる。まさにそれが『光秀の定理』であり、まるでミステリー小説の結末を探り当てるように一気にむさぼり読んでしまうだろう。


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2020年10月25日 (日)

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

★★★

製作:2017年 日本 上映時間:90分 監督:新房昭之  武内宣之

 いやに長ったらしいタイトルなのだが、岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』を基にしたアニメ映画である。そして中学生たちの、「花火を横から見ると丸いのか?平べったいのか?」という疑問が狂言回しの役割を担っているようだ。

 最近のアニメの特徴なのだが、背景は写実的に描いて、人物はマンガチックに描かれている。ただ私的には、本作の瞳の大きい少女漫画風の人物は苦手であり、それだけですでにストーリーの中に惹き込まれなくなってしまった。

 またタイムループものとしても全くありきたりで、あっさりし過ぎているし、ドキドキ感も湧かず、どんでん返しも見当たらない。さらに主人公が余りにも子供じみている割に、ヒロインのほうは大人びていて、ちぐはぐ感を拭いきれなかった。そのうえ心理描写が希薄だったのも致命的だったかもしれないね…。

評:蔵研人

 

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2020年10月23日 (金)

P.S.アイラブユー

★★★
製作:2007年 米国 上映時間:126分 監督:リチャード・ラグラヴェネーズ

 アイルランド元首相の娘セシリア・アハーンによる同名ベストセラー小説が原作の恋愛映画だ。また主演のホリーを個性派女優のヒラリー・スワンク、その夫ジェリーをスコットランド生まれのジェラルド・バトラーが演じている。

 若くして脳腫瘍で突然亡くなってしまったジェリー。だが最愛の夫の死が受け入れらず、絶望感に染まり続けるホリー。そんなある日、ホリーのもとに亡き夫から1通の手紙が届く。そして毎月1日になると、夫から消印のない手紙が届くのだった。ただしこの仕掛けは、幽霊でもファンタジーでもない。ただその正体は、映画を観たものの特権だ。

 監督のリチャード・ラグラベネーズは「マディソン郡の橋」の脚本家だし、美しい映像と爽快感漂うゴキゲンな音楽に彩られている。そして俳優陣もほぼ文句なし。
 ただ何か物足りないのだ。たぶん余りにもベタな恋愛映画であるのに、個性派のヒラリー・スワンクを起用したのが裏目に出たのと、ダラダラとしてメリハリのない単調なストーリーに退屈感を抱いてしまったからだろう。ある意味、毒にも薬にもならない映画なのかもしれない。

評:蔵研人

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2020年10月21日 (水)

グッドライアー 偽りのゲーム

★★★☆

製作:2019年 米国 上映時間:109分 監督:ビル・コンドン

 詐欺師のロイは、出会い系サイトで夫が他界して間もない資産家のベティをターゲットにし、全財産を騙し取ろうと画策する。しかしベティの孫であるスティーヴンは、ロイを快く思っていない。そしてベティにいろいろ忠告するのだが、ロイに心を奪われたベティは、いつもスティーヴンの忠告を突っぱねてしまうのであった。

 このままベティはロイに騙されて、全財産を奪われてしまうのだろうか…。と思わせる展開なのだが、「偽りのゲーム」という副題から類推すると、騙されている振りをして実は逆に騙しているのではないだろうか、と考えてしまうのだ。またベティを演じているヘレン・ミレンの表情を見ていても、本気でロイに夢中になっているとは思えない。

 もしかするとベティのほうも詐欺師なのかもしれないと感じ始めるのだが、彼女が資産家で金には不自由していないことは嘘ではなかった。ではなぜロイを騙すのだろうか…。すでに興味はそちらの方向へと向かってゆくのである。
 なかなかスタイリシュで面白いサスペンス作品である。ただ主役のヘレン・ミレンとイアン・マッケランの、成熟した味のある老獪な演技に支えられていたことも間違いないであろう。


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2020年10月19日 (月)

新聞記者

★★★☆

製作:2019年 日本 上映時間:113分 監督:藤井道人

 本作は日本アカデミー賞・最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞の主要3部門を受賞した。また最近の邦画にはなかった「現実の政治に鋭く切り込んだ」問題作でもある。

 そしてラストは、なんと松坂桃李の苦悶の表情と口パクセリフでエンドロールが流れるといったまるで洋画のような終わりかた。彼のあの表情を観れば、誰にでも結論は分かるし、それが現実かもしれない。もちろんあえて語らなかったことが、本作の価値を高めたはずである。

 新聞記者を演じたヒロインは、韓国人のシム・ウンギョンで、日本アカデミー賞の歴史において、最優秀主演女優賞を受賞し、史上初の快挙を成し遂げているのだ。さてどこかで見たことのある女優だなと思っていたら、なんとあの韓国の大ヒット映画『怪しい彼女』の主演女優だった。決して美人ではないのだが、なんとなくその個性と愛嬌には惹かれるものがあるよね。


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2020年10月17日 (土)

ゴジラ キング・オブ・モンスターズ

★★★☆

製作:2019年 米国 上映時間:132分 監督:マイケル・ドハティ
 
 2014年に製作されたハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の続編になる。何と今回はキングギドラ、モスラ、ラドンまで登場するのだ。
 相変わらずゴジラの造形は顔が小さく迫力に欠けるのだが、ラドンとキングギドラにはハリウッドの巨額マネーの成果を感じた。ことにラドンのスピード感とド迫力には脱帽するしかないだろう。

 少なくともハリウッドが威信をかけた凄まじくクオリティーの高い映像は文句の付けようがないのだが、ストーリー的には殆ど観るところがなかったのが残念である。ただ怪獣の造形と戦闘だけ興味のある人にとっては見逃せない作品かもしれない。


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2020年10月15日 (木)

ひとよ

★★★

製作:2019年 日本 上映時間:122分 監督:白石和彌

 劇作家・桑原裕子主宰の劇団KAKUTAによる同名舞台を映画化した作品。DVの夫を殺害した妻(田中裕子)と、それが原因で運命を狂わされ苦労した三兄妹(鈴木亮平、佐藤健、松岡茉優)が、15年後に再会して絆を取り戻そうとする姿を描いたヒューマンドラマである。
 
 タイトルの「ひとよ」とは、ある人には「なんでもない一夜」かもしれないが、ある人には「特別な一夜」にもなる、という意味らしい。つまり人間は千差万別であり、意味のつけ方はその人次第だということになる。
 したがって本作では、中心人物である母親と、三兄妹のほかにも、訳アリのタクシー運転手堂下(佐々木蔵之介)とその息子との関係や、認知症の母親に翻弄され続けているタクシー会社の社員の辛い親子関係などが練り込まれている。

 ただ佐々木蔵之介の話に関しては、今ひとつ中途半端で消化しきれていないところが残念であった。また役者たちはそれぞれ個性を発揮して熱演していたものの、脚本の掘り下げ方が甘く省略し過ぎたのか、リアリティを感が薄く不自然な展開が多過ぎた感があった。


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2020年10月12日 (月)

リチャード・ジュエル

★★★★

製作:2019年 米国 上映時間:131分 監督:クリント・イーストウッド

 1996年アトランタ五輪開催時に起きた「爆破テロ事件」を題材にしたサスペンス映画である。当時警備員をしていたリチャード・ジュエルが、公園で不審なバッグを発見する。そのお陰で多くの人の命が救われ、彼は英雄視されるのだが、その裏でFBIは第一発見者であるジュエルを容疑者として捜査を開始するのだった。

 それを現地の新聞社とテレビ局が、先走って実名報道してしまったため、一夜にしてジュエルは英雄から犯人に仕立てられてしまうのである。そして自宅は報道関係者数十名に取り囲まれて、全く身動きもできない状況へと陥ってしまう。そんな最悪の状況の中で、ジュエルと旧知の弁護士ブライアントが立ち上がるのであった。

 さすがクリント・イーストウッド監督作品に外れはなく、とても感動的で良い映画に仕上がっている。ただジュエルの風貌や歪んだ正義感、変人的な趣向、長続きしない職場など、普通の感性を持っている人なら、何となく感情移入し難い感があることも否めない。まあFBIもそのあたりの状況に囚われて、彼を容疑者扱いしてしまったのかもしれないね…。

 それにしても、マスコミたちの大騒ぎは、よくある話だが、名誉棄損で訴えたくなるよな。それに起訴はされなかったものの、家宅捜査や盗聴までしていたFBIにも賠償責任はあるはず。それと弁護士報酬はどこから捻り出したのだろうか…。

 そんなことを考えながら、この映画のエンドロールを眺めていた。それでよく調べてみたら、免罪後、リチャードは、主にNBC NewsとThe Atlanta Journal-Constitutionに対して訴訟を起こし、正式な謝罪を主張。莫大な和解金を得て、その多くは弁護士に流れていったということである。そりゃあそうだよね。誰がタダ働きなどするものか。一方あの巨体のジュエルは、糖尿病の合併症で心不全とになり、残念ながら44歳の若さで亡くなってしまったという。

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2020年10月 9日 (金)

コンフィデンスマンJP

★★★

製作:2019年 日本 上映時間:116分 監督:田中亮
 
 コンフィデンスマンとは「詐欺師」の意味で、本作はフジテレビ系で放送された人気TVドラマの劇場版である。主な出演者はTV同様長澤まさみ 、東出昌大 、小日向文世である。
 私自身はTVドラマを観ていなかったため、その世界観とかバックボーンを全く理解しておらず、前半のおバカなバタバタ展開について行けず、睡魔に襲われ困ってしまった。その内容は詐欺師同士の騙し合いと言ったところか…。

 いずれにせよ、このような大きなスケール感のある作品は邦画には向かないようだ。どうしても「ありえねー」という気持ちが先行し、まるで子供向けのヒーロードラマと錯覚しそうになり、しまいには馬鹿々々しいという気分に染まってしまうのである。
 そんな中途半端で乗りの悪い展開に我慢を重ねていたのだが、やっとラスト20分前頃になって俄然面白くなり始めた。この終盤のどんでん返しの応酬だけは実に見事であった。まるでこの20分のために製作された映画、といっても過言ではないかもしれないね。
 

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2020年10月 7日 (水)

イエスタデイ

★★★★
製作:2019年 英国 上映時間:117分 監督:ダニー・ボイル
 
 イギリスの小さな海辺の町で、シンガーソングライターのジャックは、スーパーでバイトをしながら、時々ライブ活動をしている。幼馴染みで教師をしているエリーが、マネージャー役を買ってくれていたのだが、彼の歌は誰にも振り向かれない。
 虚しくなったジャックは、そろそろ売れないライブ活動を辞めたい胸の内をエリーに打ち明けるのだった。そして自転車で帰宅途中、突然全世界に12秒間の大停電が訪れ、暗闇の中でジャックは、自転車もろともバスにはねられてしまう。

 不幸中の幸いで、ジャックは前歯を2本折っただけの状態のまま、病院のベッドで目覚めるのだった。その後退院祝いに友人たちから新しいギターをプレゼントされ、誰もが知っているビートルズの『Yesterday』を演奏するのだが…。
 それを聞いた友人たちは茫然となり、「なんて素晴らしい曲だ、いつ作ったの?」と大絶賛する。なんと彼が目覚めた世界は、ビートルズが現れていない世界だったのである。

 それを知ったジャックは、ビートルズの曲を次々に演奏し、大スターへと昇りつめてゆく。といった流れのドラマなのだが、実はかわぐちかいじのマンガ『僕はビートルズ』をパクったのではないかと思われるほどよく似ているのだ。しかし天下のユニバーサルやアカデミー監督ダニー・ボイルが、日本のメジャーでもないマンガをパクるであろうか…。まあいずれにせよその真偽は闇の中だ。

 本作はビートルズへのオマージュのような感があったのだが、どうも熱狂的なビートルズファンには不評のようである。それはビートルズの名曲に潜む「こころ」の解析にまでは踏み込まず、単なる美しい曲として紹介されているからだという。またいくらビートルズの名曲でも、レコード会社の資本力のバックアップがないと、現代の世界では通用しないと言いたげなアイロニーが練り込まれているところが気に入らない。…ということになる。

 まあ確かにそんな見方も出来るし、ジャックが家族に『Let It Be』を歌うときは、観ているほうもイライラとむかむかを禁じえなかったことも否めない。ただそこまで小難しく考えず、ビートルズの名曲に浸りながら、アメリカンドリームとラブコメを掛け合わせたコメディー映画を観ているのだ、と言い聞かせれば決して腹も立たないだろう。

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2020年10月 5日 (月)

記憶にございません

★★★☆
製作:2019年 日本 上映時間:127分 監督:三谷幸喜

 国民の支持率2.3%という不人気総理黒田啓介。ある日演説中に石を投げられ頭に命中。記憶喪失に陥ってしまう。だがそのお陰で、悪徳政治家から普通の優しいおじさんに変貌するのであった。

 政界ものをリアルに描くと、どうしてもシリアスな展開になりやすいものだが、それを見事にコメディー風味に仕上げてしまうところが、三谷監督の三谷流たる所以である。またこのおかしな総理役に中井貴一を選んだのも大正解であろう。さらには秘書役の小池栄子も、ぴったしカンカンのはまり役だったね。

 ただあともうひと捻りがあるともっと面白い作品に仕上がったと思うのだが、そこそこ笑えて楽しめる作品であったことだけは否めないだろう。いずれにせよ、レンタルDVDで観る分には、全く文句のない映画と言っても良いかもしれない。

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2020年10月 3日 (土)

ターミネーター:ニュー・フェイト

★★★★
製作:2019年 米国 上映時間:129分 監督:ティム・ミラー

 ターミネーター映画は、度重なる権利の移動が続き、連続性を欠きながらも、人気シリーズのため何とか延命してきた推移がある。ただし生みの親であるジェームズ・キャメロンは、これを良しとせず第1作から2作へと引き継がれてきた世界観を引き戻すため、本作をキャメロン版第3作として位置付けて製作に携わったという。

 そして舞台は米国からメキシコへと移り、未来から来たターミネーター「REV-9」が、メキシコシティの自動車工場で働いている21歳の女性ダニーに襲い掛かる。このダニーは未来において活躍する大切な女性の一人だったのである。
 危機一髪の状況で彼女を救うのが、やはり未来から送られてきた強化型兵士のグレースであった。だが一度は危機を脱出したものの、絶対に破壊されない「REV-9」が、執拗に二人を探し当てて追いかけてくる。

 とにかくすごい迫力だ。もしかするとシリーズで一番のド迫力かもしれない。だが第2作・T2とほぼ同じようなストーリー展開なので、大好評だったT2のような驚きは全くなかった。
 またシュワちゃんのターミネーターが年を取ったのは、それなりに理屈があるようなのでそれは良いとしても、家族をもって人間のように暮らしている姿はアンバランスな感がある。それから年取ったリンダ・ハミルトンが、再びサラ・コナー役を演じる必然性も全く感じない。大した活躍も出来ないわけだし、彼女は単なる客寄せパンダだったのだろうか。

 何となくT2をバージョンアップしたような作品で、その製作意図がいまひとつ理解できない。もしマッケンジー・デイヴィス演じるグレースが登場しなければ、★はひとつ減らしただろうな…。


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2020年9月30日 (水)

ラヴソング

★★★★
製作:1996年 香港 上映時間:118分 監督:ピーター・チャン

 香港の主権が英国から中国へ返還されたのは、1997年7月1日である。従ってこの映画は返還直前に創られた映画と言うことになる。私自身が出張で香港を訪れた時は、既に返還後数年が経過していたが、この映画の冒頭で主人公が載っていた電車に乗って、深センから香港へ移動したものである。

 天津から電車で香港に出稼ぎにきたシウクワンの夢は、金を貯めて故郷に残してきた恋人・シャオティンを呼び寄せて結婚することだった。ある日マクドナルドでバイトをしているレイキウと知り合い、口は悪いがざっくばらんで明るい彼女と友人となる。
 香港人を気取るレイキウだったが、実は彼女は広州人でシウクワンと同じ電車で香港に来たのだった。彼女の夢は、故郷の母親に大きな家を建ててやることだった。

 友人関係を続けてきたシウクワンとレイキウだったが、テレサ・テンという共通の絆を見いだした二人は、ある晩はじめて夜を共にしてしまうのである。翌日、レイキウはさばさばしているのだが、シウクワンはその日を境にして、故郷に居る恋人とレイキウの狭間の中で心が揺れ始めるのだった。それにしても、いやに艶めかしいキス・シーンが印象的である。

 ラブストーリーなのだが、かなり中味が濃い。返還前の香港の状況や、北京語も通じない当時の中国の貧弱さがひしひしと伝わってくる。本作は香港アカデミー作品賞を受賞しているが、レイキウ役で主演女優賞を獲得したマギー・チャンの抜群の演技力も見逃せない。

 優しさゆえの風見鶏でありながらも、直球一直線なシウクワン。そして二転三転するレイキウの女心。なかなか見応えのある脚本構成である。ただ元カノのシャオティンには何の罪もないし、あれでは彼女が余りにも気の毒ではないか・・・。

 さて香港ロケで製作された名作映画『慕情』と、主演のウィリアム・ホールデンは、香港人の憧れだったのであろうか。また本作の中で何度か流れてくるテレサ・テンの歌も、実にしっとりと心の中に沁み込んでくる。そしてまさに彼女の歌こそが、二人を結び付ける愛の詩だったのであろうか。

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2020年9月28日 (月)

グッバイ、ケイティ

★★★☆
製作:2016年 フランス・米国 上映時間:88分 監督:ウェイン・ロバーツ

 17歳のケイティは、アリゾナ州の貸屋で母親と二人暮らしをしている。彼女の夢は、貧困から逃げ出し、サンフランシスコで美容師の学校へ行くことだった。
 その費用を貯めるため、また働かない母親に代わって家賃を支払うために、レストランでウエイトレスをしながら、店に来る客を相手に売春をしていたのである。

 男遊びにうつつを抜かしている母親の影響か、ケイティは売春にもさほど罪悪感を抱いていなかった。だが前科持ちの修理工ブルーノと恋に落ちてからは、売春から足を抜こうとする。だがそれを祝福してくれる客もいたが、許さない客もいた…。
 
 本作は日本では劇場未公開作品になっている。それをデマンドのU-NEXTが買い上げてオリジナル作品としたようである。確かに評価はそこそこ良いし、惹きこまれる作品なのだが、余りにも負の連鎖が重なり過ぎる。
 また周囲の人々の身勝手な行動に散々振り回されても、相手を責めずにじっと辛抱している。そんなしっかり者で心優しい主人公が、気の毒過ぎて観るほうも辛くて堪らないし、イライラが膨張し続けてしまうのだ。

 それでもラストには、せめてささやかな幸せぐらいは訪れるだろうと考えていたのだが、その淡い期待も空しく裏切られてしまった。かなり後味が良くないのだ。
 これではたいした興行成績を上げられないだろう。だからこそ劇場未公開作品としてお蔵入りしていたのかもしれない。

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2020年9月26日 (土)

さくらんぼ 母ときた道

★★★★
製作:2007年 中国・日本 上映時間:107分 監督:チャン・ジャーペイ

 日中合作と言っても、音楽担当が安田芙充央であること以外は、舞台もキャストも監督も全て中国仕様だ。とにかく泣ける、久し振りに涙腺が破壊されてしまったようである。

 中国の片田舎の話である。足の悪い葛望は、知的障害を抱えている桜桃を妻にするが、なかなか子どもができない。子供が欲しい桜桃は、村に捨てられていた赤子を拾うのだが、葛望は桜桃が昼寝している間に、山向こうの町に住む夫婦に売り飛ばしてしまう。気付いた桜桃は、赤子を追いかけて山を超え町まで辿り着き、狂気に駆られたように赤子を探し回るのだった…。

 知的障害を抱えながらも、娘に無償の愛を注ぐ母親。だがさくらんぼを採ってやること以外は、なかなか上手に愛情表現が出来ない。やがて思春期を迎えた娘に疎んじられることになるのだが、それでも必死に娘を守ろうとする母の姿には、熱い涙がとどめなく落ちてくるはずである。

 良い映画だ、ほぼ満点に近い出来だが、ラストの曖昧さがいまひとつ納得できなかった。ただ何と言っても、知的障害者の母親を演じたミャオ・プゥの熱演には大喝采を送りたい。言葉も喋れない、字も知らない母親を、表情と身振りだけで完璧に演じ切ったのである。
 中国の貧しい時代、一人っ子政策の裏に綴られた家族愛が感動的で、なんとなく『初恋のきた道』と同じような匂いを感じたと思ったら、実は脚本家が同じパオ・シーであった。なるほどね…。

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