フォルトゥナの瞳

★★★★
製作:2018年 日本 上映時間:111分 監督:三木孝浩

 幼いころに飛行機事故で同乗していた両親を亡くした木山慎一郎。奇跡的に助かった彼は成長し、自動車整備会社で真面目一筋に働いている。
 ところが最近になって、死の近い人が透けて見えることに気が付き始めるようになっていた。そしてその能力を使って彼女や社長の命を救うのだが、その能力を使うたびに自分の命を縮めていることを知らされる。

 それで透けて見える人たちを発見しても、何もせずにじっと我慢するようにした。だが真面目な慎一郎は、彼らの死が分かっていながら、何もできない自分に対してイライラし続け自己嫌悪に陥ってしまう。
 そしてある日、幼稚園児たちが遠足で乗る電車が事故に遭遇し、全員死亡してしまうことが分かってしまうのである。もし彼等を救えば確実に自分も死ぬだろう。そうすると当然彼女とは結婚できなくなり、彼女を悲しませることになってしまう。
 この二つのジレンマに挟まれ、慎一郎は悩みに悩み抜き、ある決断を下すのだが・・・。

 原作は百田尚樹の小説でまだ未読なのだが、映画を見た限りではなかなかの秀作で、かなり凝ったストーリー展開だと感じた。是非とも小説のほうも一読してみたいものである。それにしても、あの終盤のどんでん返しは「皮肉」で塗りつぶされているように感じたのは私だけであろうか・・・。
 またあのエンディングには賛否両論があるかもしれないが、私的にはなんとなく納得してしまった。まあいずれにせよ、総括すれば「ちょっと切なく心残りな、ミステリー風味のラブ・ファンタジー」ということになるだろう。


評:蔵研人

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2021年9月24日 (金)

ロスト・ボディ

★★★☆
製作:2012年 スペイン 上映時間:111分 監督:オリオル・パウロ

 珍しいスペイン発のサスペンス・ミステリーである。殺害された疑いのある死体が死体安置所から忽然と消えてしまう。また唯一それを見たと思われる警備員もトラックと衝突して意識不明状態が続く。
 一体誰が何のために死体を盗んだのか。それとも死体は死んだふりをしていたのだろうか…。答えはこの二つのうち、いずれか一つであることは間違いない。いずれにせよ、殺人または殺人未遂を遂行した犯人はすぐに判明し、警察官に拘束されてしまう。だが死体を盗んだのは彼ではないようだ。では誰が何のために死体を盗んだのであろうか。物語の焦点はこの一点に集中するのだが…。

 警察に拘束されたのは、死体になった製薬会社女性会長の夫で妻よりもかなり若い。そしてやきもち焼の妻に隠れて若い女性と浮気をしているのだ。そして妻がだんだん邪魔になってきたのだが、浮気をして離婚すると妻の財産を一銭も手にすることが出来ない。それで絶対にばれない方法で妻を殺害すれば、巨額の財産が手に入り恋人と水入らずで暮らせる…と考えたのである。

 なかなか良く出来た脚本で、グイグイと観客を引っ張ってゆき、ラストにアッと驚くどんでん返しもしっかり用意されている。だからネットでの評価もかなり高い。
 だが余りにも良く出来過ぎていて…と言うよりまるで整形美女のような型に嵌った脚本と、ご都合主義で不自然な後付けトリックも、いま一つ説得力に欠けていたような気がする。
 またオープニングで登場した姉妹たちはそれっきりだし、舞台がだんだん小さくなって登場人物も限定的に絞られてしまったのも中途半端な気がした。いずれにせよ面白い映画であることは間違いないのだが、手放しで褒めちぎるほどの作品とも思えない。まあ死体安置所が舞台になっていても、『ジェーン・ドウの解剖』のようなグロさやエロさも少ないし、それほど恐怖感も煽られないので、女性でも安心して観ていられる作品と言えよう。

評:蔵研人

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2021年9月22日 (水)

鑑定士と顔のない依頼人

★★★★
製作:2013年 イタリア 上映時間:131分 監督:ジュゼッペ・トルナトーレ

 ある日のことである。天才的審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマンに「資産家の両親が遺した美術品を鑑定して欲しい」という電話がかかってくる。ところが何度会う約束をしても、彼女は一向に姿を見せないのだ。ヴァージルは腹を立てるが、最初は事故に遭遇したと言われ、さらに何度か約束を破られたあとに、彼女は自閉症で人に会えないのだと言い訳する。こんなことが繰り返されていくうちに、ヴァージルはなんとか彼女の姿を見れないものかと切望し、彼女の家に忍び込んで物陰から彼女が部屋から出てくるのを覗き見するのだった。

 このあたりからこの映画の観客たちもヴァージル同様、彼女(クレア)の正体を「見たくてしょうがない状態」に陥ってしまうのだ。
 さてそのヴァージルはかなり年配なのだが、未だに独身で生身の女性には全く興味が湧かない「童貞男」であった。そしてオークションの傍らに友人ビリーとつるんで収集した膨大な「女性絵画」を恋人にしている変態的な人物だったのである。
 こんな変態かつ偏屈な男には、どんな美女でも、正面切ってアプローチしては、相手にされないだろう。だからこそ押したり引いたり、そして姿を見せないなどの手法を用いて、さんざんイライラさせた挙句に、やっと姿を見せて「愛している」と言えば、今度は仕事も手につかないほど夢中になってしまうのであろうか…。

 この作品の邦題はそのものズバリの味気ないタイトルだが、原題は『BEST OFFER』で「最上の出品物」という意味になる。これはオークション中につるんでいるビリーへの合図の言葉でもあり、ヴァージルがクレアに感じていた魅力とも考えられるだろう。
 それにしても、主人公は美術品を見る目は超一流だが、生身の女をしっかり鑑定できなかったという皮肉たっぷりの展開だ。また逆転・逆転と執拗に逆転が続いた後に、やっとハッピーエンドかと思ったのだが、まだ残り時間がかなり残っていたので、「これはきっとまだ何かあるな」と思った途端にまたどんでん返し。
 なんと最後のどんでん返しはかなり厳しい。ヴァージルは驚愕と悲しみの嵐に巻き込まれ失意のまま精神病院へ…、という切なさを遥かに超えた余りにも悲し過ぎる終盤は救い難く観るに堪えられない。

 ただ監督は本作を「ハッピーエンド」だと明言していると言うのだ。うっ…もしかするとラストに頻繁に繰り返される時系列の映像の解釈に、そのヒントがあるのかもしれない。たしか執事が郵便物を持って病院を訪れた回想シーンがあったが、その郵便物の中に彼女からの手紙が混在していたと考えたい。
 そしてその手紙を見たヴァージルが、あの時計だらけの喫茶店で誰かを待っているシーンこそが本来のラストシーンなのかもしれない。その後果たして彼女は本当に現れるのか否かは、もちろん観客の想像力にまかせたのであろうか。

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2021年9月20日 (月)

スペシャルアクターズ

★★★
製作:2019年 日本 上映時間:109分 監督:上田慎一郎

 『カメラを止めるな!』でインディーズ映画として空前のヒットを記録した上田慎一郎監督の劇場長編映画第2弾だ。従ってこの映画を観たほとんどの人たちか前作を上回る面白い作品を期待して劇場に足を運んだはずである。
 なるほど上映が始まるとすぐに上田監督の臭いを嗅がされたのではないだろうか。またも超低予算、そして超無名のキャストに学芸会レベルの演技力。確かにそれは継承されているのだが、だからそれで良いということではない。

 ただ今回は少なくとも大松竹の配給になっているのだから、もう少し予算をかけても良かったのではないだろうか。確かに第一作同様終盤にどんでん返しが用意されていたが、余りにも単純などんでん返しに思わず「あれっ?」と声をあげてしまった。この声は驚きの声と言うよりも疑問の声と言ってもよいかもしれない。

 そもそも私は第一作目の『カメラを止めるな!』自体も、なぜあれほどの熱狂的フィーバー現象が勃発したのか疑問符を投げかけた人なのだ。そしてそれをコミカルタッチの種明かし映画と評したものである。
 本作の場合は「種明かし」ではなく、二重どんでん返しと定義したほうがよいだろう。ただ映画の創り方自体は全く前作と同じ穴のムジナであった。これは監督だけに責任があるとは言い難い、配給した天下の松竹にも問題があったのではないだろうか。前作の『カメラを止めるな!』が僅か300万円の製作費で大ヒットしたのは運も含めた奇跡であり、柳の下に何匹も泥鰌が泳いでいるはずがないよね。


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2021年9月18日 (土)

ニューイヤーズ・イブ

★★★☆
製作:2011年 米国 上映時間:118分 監督:ゲイリー・マーシャル

 大晦日のニューヨーク、過去の絆を取り戻そうと奔走する8組の男女を描いた群像劇である。よく観るとキャストは、ロバート・デ・ニーロ、ヒラリー・スワンク、ハル・ベリー、ジェシカ・ビール、サラ・ジェシカ・パーカー、ザック・エフロンという超豪華メンバーなのだ。

 またタイムズスクエアで行われた実際の「年越しカウントダウンイベント」中に撮影を敢行したことも話題になったようである。まあこうした映画では、英国製の『ラブ・アクチュアリー』などが有名だが、とにかく序盤は登場人物を見分けるのが大変である。

 ただ本作は米国製なので知っている俳優が多かったせいか、序盤はそれほど苦ではなかった。いずれにせよこうした映画は決して毒にはならず、必ず心温まるハッピーエンドが約束されているので、安心して観ることが出来るところが嬉しいよね。

 
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2021年9月16日 (木)

ジム・キャリーはMr.ダマー

★★★
製作:1994年 米国 上映時間:105分 監督:ピーター・ファレリー

 ロイド(ジム・キャリー)は、一目惚れした女性・メアリーが空港でスーツケースを置き忘れたのを見て、スーツケース拾って彼女を追いかける。だがタッチの差で、飛行機は飛び去ってしまう。
 だがロイドはその程度では諦めない。なんとそのスーツケースをメアリーに届けるために、彼女が向かった高級リゾート地アスペンへと向かうのだ。ただ職を失い金欠病のロイドは、友人のハリーを無理矢理誘って、彼の車でアスペンを目指す。そして早速おバカな珍道中がはじまり、旅先でいろいろなトラブルを引き起こすというコミカルロードムービーなのだ。

 さて気になるのはスーツケースの中身なのだか、中盤までロイドはその中身を確認しようとしなかった。ところがハリーと喧嘩をしてスーツケースが放り投げられたときに、その中にぎっしりと大金が入っていることに気がつくのだった。
 実はその大金は、誘拐されたメアリーの夫を返してもらうための身代金だったのである。そんなことを知らぬロイドとハリーの二人を、誘拐犯たちが執拗に追いかけてくるのだが・・・。

 製作年が1994年なので、携帯もなく公衆電話が登場したり、古くさいファッションだったりと、多少陳腐化している感もある。また昔は大笑いしたジム・キャリーの下品でわざとらしい演技も、かなり鼻をつくようになってしまった。やはりお笑いも時代の推移には勝てないのかな・・・。


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2021年9月14日 (火)

100歳の華麗なる冒険

★★★☆
製作:2013年 スウェーデン 上映時間:115分 監督:フェリックス・ハーングレン

 原作はスウェーデンのベストセラー小説「窓から逃げた100歳老人」で、ヨーロッパ各国で大ヒットを記録したという。100歳の誕生日に老人ホームの窓から逃げ出したお爺ちゃんが繰り広げる、成り行きまかせの珍道中であり、コメディー仕立てのロードムービーと言ってもよいだろう。

 なんと若かりし頃のアランも100歳のアランも、スウェーデンを代表するコメディー俳優ロバート・グスタフソンが演じているという。そりゃあそうだよね。本物の100歳のお爺ちゃんにあんな過酷なロケはできないものね。最初はかなり年配の俳優なのかと思っていたのだが、若かりし頃のフィードバック映像がそっくりだし、顔の皺がほとんど動かないので途中で老人メーキャップだと気付いた。

 それにしてもお爺ちゃんに接触する悪者たちはみんな簡単に死亡してしまうし、いきなり象が登場したりと荒唐無稽な脚本には呆れてしまう。だがコメディーなので細かいことに目くじらを立てるな、と言われれば「はいそのようですね」と縮こまるしかないよね。
 また若い頃の話と現代の話がパラレルで進んでゆくのだが、何のために若い頃の話をくどくどと挿入しているのか疑問である。せっかく現代の話が佳境に入った途端に、全く関連のない昔の話にチェンジでは、なんだかはぐらかされたようで調子が狂っちゃうのだが…。まあこのお爺ちゃんそのものが、調子はずれな存在なのだから仕様がないのかもね。


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2021年9月12日 (日)

トロッコ

★★★☆
製作:2009年 日本 上映時間:116分 監督:川口浩史

 日本映画だが、登場する日本人は夕美子を演じた主演の尾野真千子と子役2人だけ。あとはすべて台湾人なのである。それもそのはず、台湾人の夫の遺骨を持って、夫の実家での数日間を描いたヒューマンドラマだからである。原作はなんとあの芥川龍之介の同名短編小説で、それを現代の台湾を舞台に置き換えた脚本となっているのだ。

 登場人物も少なく、台湾の田舎村での小さな出来事を淡々と描いているだけの低予算映画である。だが何かが心の中に染み込んでくる。主役の夕美子をはじめ、義父母、義弟夫妻、さらに子供たちまでが、それぞれが葛藤に憑りつかれているのである。
 その中でも義父の悩みは重く深く、日本人にのしかかってくる。彼は第二次世界大戦で日本人に占領されたにも拘らず、日本人を尊敬し必死で日本語を覚え日本のために戦い、自らも日本人になりきろうと心底努力してきた。
 だが日本が敗戦するとそのまま切り捨てられて、いまだに年金も支給されず「ご苦労様」のねぎらいもないのだ。その悲しみを目の当りにしたら、なんだか日本人として申し訳ない気分で一杯になってしまった。

 そしてクライマックスのトロッコシーン。トロッコを押して山奥へ入ってゆく兄弟と、日本に憧れているお兄さん。奥へ進むとだんだん靄が濃くなってきて弟が泣き出して走り去ってしまう。それをなだめながら追いかける兄。結局帰り道は延々と線路伝いに二人だけで泣きながら帰路に就くことになる。
 このあたりの風景描写は実に美しい。また夕暮れに二人の物悲しさが漂うようだ。さらにこのあとは、誰もがあの日あの時を思い出して、感動の涙に溺れてしまうことだろう。

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2021年9月10日 (金)

著者:佐藤正午

 アルファベットの「Y」というタイトルの意味は、人生の分岐点と考えて欲しい。つまりあの日あのとき、もし別の選択をしていたら、現状とは全く異なる人生を歩んだかもしれない、ということで言葉を変えれば「パラレルワールドの世界」ということになる。

 1980年9月6日、井の頭線・渋谷駅のプラットホームで、ある青年がかねてより想いを募らせていた女性を見かけて、同じ車両に乗り込むところからはじまる。そして彼は車内で彼女に声をかけることに成功し、二人して下北沢で降りることになる。だが手違いが重なって、ドアが閉まる直前に、一度ホームに降りた彼女が再び車内に戻ることになってしまう。この電車はそのまま発車し、そして運悪く次の駅の手前で凄惨な事故に遭遇してしまうのである。

 それから18年後の8月に、主人公の秋間文夫は自宅で不審な電話を受ける。声の主は北川健と名乗り秋間の高校時代の親友だと言うのだが、秋間には全く心当たりがなかった。戸惑う秋間だったが、北川の必死な願いを受けて、彼の代理人と名乗る女性から、1枚のフロッピーディスクと巨額の預金通帳を受け取ることになってしまう。そして18年前に井の頭線で起こった大惨事の顛末を知ることになる。

 というような荒唐無稽でミステリアスな時間SFである。そして秋間文夫の現状の生活と、フロッピーディスクに記載されている北川健の過去の話が並行して語られてゆく。なんとこの創作手法もまた、ある意味でパラレルワールドなのであろうか・・・。

 本作は作中でも言及されているとおり、18歳から43歳までの25年間を何度も生き直す男の話を描いた、ケン・グリムウッドの『リプレイ』が下敷きになっている。さらに北村薫の『リセット』、筒井康隆の『時をかける少女』、さらに映画『恋はデジャヴ』などを参考にしているようだ。

 いずれにせよ「あの日あの時、ああすれば良かった」「あの時に戻ってやり直しをしたい」という人間の永遠のテーマを描いたストーリーはかなり魅力的だ。もし私自身が現在の記憶を持ったまま過去の自分に戻れるとしたら、小学生になりたての頃に戻りたい。そして沢山の失敗を正してみたいのである。そしてその結果と現在の自分とを比較してみたいのである。もしかすると失敗ばかりの現在の自分のほうが、幸せなのかもしれないことを確認するために・・・。

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2021年9月 8日 (水)

パパVS新しいパパ

★★★
製作:2015年 米国 上映時間:96分 監督:ショーン・アンダース

 離婚大国の米国ならではのコメディー。ママが再婚した相手、つまり義理の父と離婚した実の父親の「どちらが子供たちに好かれるか」というお話である。
 義父のブラッドは真面目で、子育てだけではなく、学校やご近所の人間関係にも気を配る誠実な男である。ただ真面目過ぎて面白みがない。それに比べて実父のダスティは、ハンサムで派手好きで誰からも好かれるキャラ。さらに筋肉モリモリで喧嘩も強く、有名人の知り合いも大勢いる。

 まあ誰が見てもブラッドには全く勝ち目がないのだが、それでもブラッドは必死になってダスティと張り合うのであった。やっとブラッドが勝ちそうになっても、すぐにダスティに逆転されてしまうのだ。なんだか気の毒になってしまうのだが、ブラッドは悔しくって酔っぱらって大醜態を晒してしまい完全にノックアウト。
 ところがそんな完璧なブラッドだったら、なぜ離婚したのかを考えてみよう。結局子供や友人に好かれても、スーパーマンのように何でもこなしても、家庭生活とはそんな甘いものではないのである。

 まあ結論は観てのお楽しみとするが、最後のオチが実に面白い。因果応報というか、ループと言ったらよいのやら。それでなんとなく続編がありそうだと思ったら、やっぱり続編が創られていた。ただそれほどヒットしたとは思えないのだが…。
 

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2021年9月 5日 (日)

ジェイコブス・ラダー 新作

★★☆
製作:2019年 米国 上映時間:89分 監督:デヴィッド・M・ローゼンタール

 評価が高かったので鑑賞したのだが、どうもよく分からないまま推移し、大した高揚感も味わえないままエンディングになってしまった。そこで後でもう一度調べたら、評価の高かったのは1990年に製作されたエイドリアン・ライン監督の作品であり、なんと本作はそのリメイク版だったのである。
 ストーリーは、死んだはずの兄が生きていることを知った主人公が、だんだん悪夢を見るようになり、しまいには人生が崩壊してしまうという話である。いずれにせよ、次から次へと幻覚映像が映し出されるため、どれが現実なのか幻覚なのかよく分からなくなってしまう。

 そしてさんざん引っ掻き回しておいて、あの結末はないだろう。あれではそれまで観てきたのは一体何だったのか。これは夢落ちと同じで反則ではないだろうか。それでも面白ければ許せるのだが、本作にはその味わいさえも感じられなかったのが残念である。
 では評価の高いオリジナルはどうだったのだろうか。こちらもよくよく調べたら、だいぶ以前に鑑賞済だったのだが完璧に失念していた。つまりそれほど印象的ではなく、本作ほどではないものの、たいして面白くなかった感想文を記しているのだ。これらを知っていれば、たぶん本作は観なかったのにね…。またまた時間の無駄遣いをしてしまったようである。


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2021年9月 3日 (金)

見えない目撃者

★★★

製作:2019年 日本 上映時間:128分 監督:森淳一

 警察学校の卒業式の夜、浜中なつめは車で事故を起こす。同乗していた弟は死亡し、自分は視力を失ってしまう。それで警察官を諦めて盲導犬に導かれる障害者生活を送っていた。
 そんなある日、自動車の中から助けを求める女性の声を聞き、警察に届けるのだが障害者の目撃ということもあり、十分な捜査をしてもらえない。それに不満を持ったなつめは、不自由な身の上にも拘らず、一人で独自の捜査活動を始めちゃうんだな。

 昔なら「座頭なつめ捜査帖」というタイトルが付けられたかもしれないね。だが生まれつき目が見えないのならともかく、視覚障害者になって3年間のうちに、聴覚や嗅覚が異常に発達するという設定にはかなり無理がある。また警察学校を卒業したとはいえ、あの無茶な探偵振りは全く納得できないよな。そのほかにも山のように突っ込みどころがあるのだが、まあそこそこ面白かったので許すことにしようか。
 それにしても主演の吉岡里帆もいまひとつだし、映画というよりはテレビの「土曜サスペンス劇場」という感覚だったな。ただテレビでは絶対にないエグイシーンが多いので要注意。

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2021年9月 1日 (水)

負け犬の美学

★★★☆
製作:2017年 フランス 上映時間:95分 監督:サミュエル・ジュイ

 原題の『SPARRING』そのままで良いのに、なぜこんな感じの悪い邦題を付けたのだろうか。まあそれはそれとして、映画の中身のほうはまあまあの出来だったと思う。
 主人公のスティーブは、40代半ばで49戦13勝3分33敗のロートルボクサーである。だがこの映画を『ロッキー』のようにチャンプに駆け上がるアメリカンドリーム的なスポーツドラマと勘違いしてはいけない。
 どちらかと言えば、貧乏にもめげず、愛妻や娘・息子たちとの平和な暮らしを営むホームドラマかもしれない。いやそれらをバックボーンにしながらも、ボクシングを淡々と続けてゆく男のヒューマンドラマなのだろうか。

 スティーブはレストランで働きながら、間を見てボクシングの試合に出場していたが、最近は年齢や戦績などからなかなか相手が見つからない。そんな情けない父親なのだが、娘のオロールには尊敬されていた。そのオロールの夢を叶えるためピアノを買ってやりたいが金がない。
 そんな折りに、欧州統一戦に出場するタレクのスタッフが、スパーリングパートナーを探しにやってくる。 だが実際の試合よりも危険が孕むことがあるため、妻はスパーリングパートナーの応募には大反対する。しかしどうしても娘にピアノを買ってやりたいスティーブは、妻の反対を押し切って無理矢理スパーリングパートナーになってしまうのだった。

 もしかするとスパーリングで大怪我をしたり死んでしまうのかなと想像していたのだが、無事スパーリングパートナーの役割を終えホットする。その後タレクの好意で、タレクが戦うリングの前座戦に出場することが決まる。そしてこれが50戦目でスティーブの「最後の試合」となるのだった。
 このクライマックスシーンこそ、米国映画なら大いに盛り上がってラストは感動の涙・涙となるはずなのだが、やっぱりこれはフランス映画なんだねえ…。
 なんと娘も応援に来ないし、勝敗もはっきりしないままエンディングとなるのである。やはり尻切れトンボ。これを文学的と考えるか物足りないと思うか、その解答は観る人の感性によって異なることだろう。
 

評:蔵研人

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2021年8月30日 (月)

俺物語!!

★★★★
製作:2015年 日本 上映時間:105分 監督:河合勇人

 派手なアクションと主人公の顔を観れば、すぐに原作はマンガだと気付くだろう。だが少女漫画としてはかなり異色な作風である。そのためか、女性だけではなく男性読者も魅了し、2013年「このマンガがすごい!」オンナ編第1位に輝き、同年の「講談社漫画賞少女部門」も受賞している。
 さらにテレビアニメも放送され、次々に話題を呼び、ついに本作の実写映画化まで駆け上がってしまった。主人公の剛田猛男を演じるのは、まさに彼しか適役はいないと言ってもよいほどぴったしカンカンの実力派俳優の鈴木亮平である。彼はこの役作りのために、わずか1か月で30キロ増量したというから、その役者魂には脱帽するしかないだろう。

 巨体を誇り情に厚い硬派な剛田猛男(鈴木亮平)は、男子には大モテだが女子には全くモテない高校1年生だ。そんな彼といつも一緒に歩いているのは、幼馴染で超イケメンの砂川誠(坂口健太郎)で、彼は猛男と正反対で女子に大モテなのだが女子には興味がない。
 そんなある日、猛男はチンピラのしつこいナンパから女子高生の大和凛子(永野芽郁)を救い出し一目惚れしてしまうのだった。そして奇跡的に凛子も猛男に一目惚れしてしまう。

 ところが二人が後日再会した際、猛男は凛子が好きなのは猛男と一緒にいる砂川なのだと勘違いをしてしまう。以後三人で或いはグループでさらに二人きりで逢っても、猛男はずっと勘違いをしたまま、凛子の気持ちに気付かない。まるで『めぞん一刻』のすれ違いを観ているようでイライラしてしまうだろう。また途中なんとなく、情に厚い猛男が寅さんと重なってしまった。だからこそ感動のラストシーンでは涙が止まらなかったのだろうか。

 従って単なる学園ラブストーリーではなく、しっかり友情や人生訓なども煉り込んであり、さすがに原作が一級マンガだと納得する。ただ本作は実写版なので、全てをマンガチックに描くこともなく、鈴木亮平も過剰メーキャップやド派手な演技をする必要もなくオリジナリティーを主張すればよかったのではとも感じた。
 まあいずれにせよ、本作での永野芽郁ちゃんの可愛いこと。その後NHK朝ドラでヒロインを演じるわけだが、この頃はこんなにも可愛かったとは思いもよらなかったね。

作:蔵研人

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2021年8月28日 (土)

愛唄 約束のナクヒト

★★★
製作:2018年 日本 上映時間:126分 監督:川村泰祐

 「キセキ あの日のソビト」に続きGreeeeNの楽曲「愛唄」を元に創られた作品。前作『キセキ あの日のソビト』と違うのは、GreeeeNが脚本の段階から参加し、彼ら自身の実体験も織り込んだオリジナルストーリーに仕上がっていることである。
 簡単に言えば、難病患者同士の切ない愛を描いた青春映画で、主演に横浜流星、清原果耶、飯島寛騎という若手を配し、成海瑠璃子、財前直見、富田靖子、中山美穂といった豪華キャストが脇を締めている。

 余命3か月を宣言されたトオル(横浜流星)は、失意のまま自殺しようとしているところを、旧友の元バンドマン・龍也(飯島寛騎)に救われる。そして龍也に、残された時間の中でやりたいことを全うするよう諭されたトオルは、はじめて恋をしようと決意する。そして病院で出会った詩人で難病患者の凪(清原果耶)という少女と出会うのだった。

 まあよくある難病ラブストーリーなのだが、二人とも死を目前にしているというのは珍しいパターンかもしれない。またこの作品はよく分からないことと、突っ込みどころが満載なのである。
 まずトオルの病気がガンだというのは分かるのだが、どの部位のガンなのかは全く説明がない。また凪の病名もよく分からない。まあそこいらはどうでもよいのだが、サブタイトルの「ナクヒト」が意味不明だし、凪が黒板に書いた方程式の意味も今一つよく分からないのだ。

 それに真夜中にどうやって病院に侵入できるの?さらに病人を勝手に連れ出して死期を早めてしまうのは殺人未遂ではないのか。それに余命3か月と言ったって、3か月ピッタリに死ぬわけないし、凪よりトオルが長生きしてどうする。
 またそもそも龍也に再開したのも、詩集を落とした成海瑠璃子と遭遇したのも、その詩集の著者が難病患者の凪だということも、余りにも偶然が重なり過ぎてご都合主義丸出しではないか。

 決してつまらない映画ではないし、言いたいことも分かるのだが、余りにも単調で不自然で子供騙し的な展開におじさんは耐えられなかった。それとラストにビシッと締めなくてはならない唄も今一つだし、肝心の龍也の歌唱力があれではねえ…。そうこう言いつつもおじさんは、なんとか必死で126分間を乗り越えた。まあおじさんは、いろんな映画を観ているから辛抱強いのだ。それにしても、こりゃあやっぱり超・若者映画なのかな。(-_-;)

評:蔵研人

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2021年8月25日 (水)

劇場版 おいしい給食 Final Battle

★★★☆
製作:2020年 日本 上映時間:102分 監督:綾部真弥

 1980年代の中学校で、「給食絶対主義者」の男性教師と「給食マニア」の男子生徒の給食にまつわる闘いを描いた学園グルメコメディである。おおもとは、2019年にテレビ神奈川などで10回に亘って放映されたTVドラマだ。それを劇場版に圧縮したのが本作なのだが、主な登場人物はTVとほとんど変わらない。
 そして本作は一発映画のため、給食バトルシーンは2回だけだが、給食をグルメぽい蘊蓄で執拗に褒めそやし過ぎるところが、かなり鼻についてしまった。確かに1940年代頃の貧しい給食に比べれば格段に改善されているものの、たかが給食にあれ程心酔してしまうのは、かなり不自然な感がある。

 従ってくどい給食バトルシーンよりは、先生同士のほんのりラブストーリーや、校内放送での生徒会演説のほうに惹かれてしまった。また憎々しげだがまさしく現実的な教育委員や、愛すべき優しく可愛い校長先生の演技もなかなか良かったね。
 まあいずれにせよ、良い味を醸し出している映画ではあるが、やはりどう観てもTVドラマそのものであり、映画館で鑑賞する作品としては「重さ」が足りないと言えるだろう。

評:蔵研人

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2021年8月22日 (日)

2012

★★★
製作:2009年 米国 上映時間:158分 監督:ローランド・エメリッヒ

 西暦2012年、古代マヤ文明が予言した世界の終末が現実となり、世界中で大地震、大津波、大噴火といった天変地異が発生する。従来このようなパニック映画では、一般人側あるいは大統領などのトップに属する人間側のどちらかを主人公にし、その視点から描かれることが多かった。だが本作では、家族を守ろうと必死になる一般人、全世界的な対策を練るアメリカ大統領とその顧問の科学者、大金持ちなど様々な人々が登場し、いろいろな視点でドラマを奏でるのである。
 
 何と言ってもCGと模型などを巧みに組み合わせたリアルな都市破壊シーンには、誰もが度肝を抜かれることだろう。またこの破壊映像だけでも本作の存在価値が十分発揮されている。
 ただ終盤の箱船シーンには、いろいろ文句を言いたいことが山ほどある。そもそも人間の乗船を限定し、ノアの箱船よろしく動物を乗せていることに苦笑してしまったが、一番不愉快だったのが、あの黒人科学者の妙な正義感だ。

 あのギリギリの瀬戸際であれはないだろう。結果オーライだったものの、現実なら全員溺死だったはず。それにしてもいつもながら米国映画の特徴なのだが、「1人救うために全員が死ぬようなリスクを犯す正義感」と、離婚大国のくせにまるで「教科書のような家族愛」を恥ずかしげもなく押しつけてくるのは如何なものであろうか。

 さらにハッピーエンドさまさまも良いのだが、アメコミヒーロー映画じゃあるまいし、もう少し現実的な脚本に差し替えて欲しかったね。余りにもご都合主義的なラストに、それまでの高評価がぶっ飛んでしまった。


評:蔵研人

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2021年8月20日 (金)

ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏

★★★
製作:2018年 米国 上映時間:108分 監督:ジャスティン・ケリー

 本作は実話で、架空の美少年作家J・T・リロイに成り済ました女性サヴァンナと、そのマネジャーに扮した実際の女性作家ローラの二人が世間を騙し続けた話である。なるほどサングラスとカツラを被った偽のJ・T・リロイは、マイケル・ジャクソンを彷彿させる中性的な雰囲気を持つ魅力的なアバターではないか。

 初めのうちは書店でのインタビュー程度だったが、ついには映画化されてカンヌ映画祭にまで発展してゆく嘘芝居。マスコミの追求なども厳しくなり、とうとう嘘が公表されて大騒ぎ。という大体想定内のパターンで映画はラストシーンへ向かう。

 最初は小遣い稼ぎのためにJ・T・リロイを演じていたサヴァンナだったが、だんだんことが大きくなるたびに、嘘をつき続ける葛藤に苦しみ、一度はJ・T・リロイ役を断わってしまう。だが映画の主役兼監督を熱望しているエヴァと知り合い、その魅力の虜となってしまう。そしてもう一度彼女に逢うために再びJ・T・リロイになるのだが・・・。

 まあ覆面作家というのは日本でもよくあるが、アバターを使ってまで徹底して自分の存在を隠す作家が実在していたと言うことには度肝を抜かれたな。さすが何でもありの米国である。

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2021年8月18日 (水)

情愛

★★★☆
製作:2002年 韓国 上映時間:106分 監督:ユ・ハ

 「情愛」で検索すると、「情愛中毒」という映画ばかりがヒットする。これも韓国映画なのだが、全く別の作品である。「情愛」のほうはアマゾンとHulu関連でしかヒットしないのだ。もしかすると本作は、日本で上映されていないのかもしれないね。ただし「情愛」は邦題で、原題は「結婚は狂気の沙汰」で、こちらのほうで検索したほうがもう少しヒット数も多くなる。

 内容は原題の通りで、恋愛至上主義者で結婚否定論者の主人公ジョニョンと、結婚と恋愛は別で結婚相手は良い条件の男に限定しているヨニの、ちょっぴりエロいラブストーリーだ。ヨニ役を演じたオム・ジョンファは、K-POPの女王といわれる超人気歌手らしいが、よく大胆な濡れ場を演じたものである。さすがプロ魂といったところか。

 とは言ってもR15指定ではあるが、エロというよりも綺麗なベッドシーンという感があった。また本作の主眼はベッドシーンではなく、恋愛と結婚に対する疑問ということなのだろう。また二人とも本音は結婚したいのだが、結婚後の生活に耐えられないことも分かっているため、いま一つ踏み込めないのである。
 そしてラストシーン、扉の向こう側には一体何が待ち受けていたのだろうか。なかなか洗練された大人のラブストーリーで、観客に様々な疑問を投げかけてくる。ただジョニョンに憧れている女生徒との関係が、宙に浮いてしまって中途半端な感があったのだが…。

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2021年8月15日 (日)

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ

★★★☆
製作:2016年 米国 上映時間:115分 監督:ジョン・リー・ハンコック

 あのマクドナルド・コーポレーションの創業者、レイ・クロックの伝記ドラマである。だがあのマクドナルド・ハンバーガーの真の創業者ではないというのだ。実は本当の創業者は、カリフォルニアの田舎町に画期的なバーガー店をオープンしたマクドナルド兄弟なのである。

 そもそもレイは、ミキサーを売り歩く一介のセールスマンで、口八丁手八丁だけが売りの中年男だった。ところがマクドナルド兄弟の店を見て感動し、店舗拡大が可能なフランチャイズ権を獲得したのである。
 さらに品質重視のマック兄弟の企業理念に反してどんどん店舗を拡大しマック兄弟と争うことになるが、最終的には彼等から約270万ドルで店名と商権の全てを買い取ることに成功する。そして何の躊躇もなく『マック創業者』を名乗るのだった。

 確かに真の創業者であるマック兄弟では、これほど大規模な事業展開は出来なかっただろう。従って現在全世界規模でのし上がってきたマクドナルドは、レイ・クロックが創業者だと崇めても間違いとは言えないかもしれない。だがいずれにせよ、ここらの議論は実に微妙で迷走的なので、決定的な議論は難しいようだ。

 また極めつきは、マクドナルドはハンバーガーを売って儲けているのではなく、世界各都市の一等地に店舗を出店し、フランチャイジーからその好立地に見合った賃借料を徴収し、それを主な収益源としている「不動産投資ビジネス」なのだという事実である。まさに味も素っ気もない資本主義の申し子なのだ。
 なんだかイヤミの漂うような作品である。だがレイ・クロックを演じたマイケル・キートンの絶妙な存在感と、なんとなく憎めない人間味によって毒味が中和されていたような気がしたのは私だけであろうか。
 

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2021年8月13日 (金)

バイオハザード: ザ・ファイナル

★★★
製作:2016年 米国 上映時間:106分 監督:ポール・W・S・アンダーソン

 バイオハザードシリーズの6作目かつ最終作である。初回作から既に14年経過し、主演のミラ・ジョヴォヴィッチも40代になってしまった。それにしても、あの激しいアクションによく耐えられたものである。だがここらが限界であろう。と言うことは、彼女の体力の衰えを察して本シリーズも幕を閉じたのかもしれない。主役のアリス役は彼女以外には誰も演じられないからね。

 本作では日本でモデルやタレントとして活躍中のローラも共演し、シリーズ最大規模の壮大なスケールとアクションシーンが満載である。ただ画面が暗くてよく見えない映像が多いのには辟易してしまった。今どきの撮影技術を駆使すれば、暗いながらも視覚に耐えられるような映像を作り出すことは出来るはずである。

 まあ最後の最後に、これまでの謎がいろいろ解けるところは評価できる。だが何と言っても脚本がつまらないし、SFとはいえ余りにもリアリティーがなさ過ぎるんだね。それにしても休むヒマのない疲れる映画であった。
 

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2021年8月11日 (水)

ファイナル・デッドブリッジ

★★★
製作:2011年 米国 上映時間:92分 監督:スティーヴン・クォーレ

 予知夢によって1度は死を回避するのだが、結局は死の運命から逃れられず、次々にあり得ない事故で死んで行く人々の恐怖を描く『ファイナル・デスティネーションシリーズ』の最新作である。基本的にはシリーズものは観ないことにしているのだが、本作はなんとなくダラダラと全シリーズを観てしまった。いつも同じ展開で先読みできてしまいたいして面白くもないのだが、皮肉にもその単調さに惹かれて観てしまうのだろうか・・・。

 本作も前4作と殆ど同じ展開なのだが、スケールだけは一番でかいと言えるだろう。ただオープニングが凝っていること自体は良いのだが、余りにも長過ぎてうんざり、またエンドロールで過去のシリーズの残酷シーン垂れ流しにも滅入ってしまった。本作が本シリーズの最終回だと宣言したかったのだろうか。まあそんなことはどうでも良く、シリーズ全体を通して余りにも工夫がなさ過ぎる。従って万一続編が創られたとしても、もう絶対に観ないことだけは間違いないだろう。

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2021年8月 9日 (月)

ザ・ウォーキング・デッド

★★★★

米国TVドラマ シーズン10まで全153話

 シーズン10まで約9年間にわたり放映されたとてつもなく長いTVドラマである。なるほど長続きしただけあって実に面白いし、そのスケールも下手な映画を遙かに凌いでいる。また主要人物が大勢登場して、群像劇のような構成にまとめられているのである。
 ただ大都市部は仕方ないとして、ど田舎でもウォーカーたちが無限にウジャウジャ登場しすぎる。シーズン6のウォーカー大移動の戦略は余りにも無謀で、リスクが大きい割には効果が薄い。
 それよりも崖下の中で閉じ込めたまま燃やしてしまうのが一番簡単で、リスクが無く効果大なのにどうして考えつかなかったのだろうか。無理矢理次の展開を創るための苦しいシナリオとしか言いようがないのだ。この死の行進が、このシーズン6の最大のマイナスポイントであろう。

 それにしてもいつも全員が甘過ぎる、リックも含めて砦を守るべき者達が、ときどき大勢で外に出払ってしまう。そしていつまでも外でうろうろして戻ってこないのだ。素人でも考えつくのに、戦闘のプロに近い者達がいつも余りにも迂闊すぎるではないか。さらに戦闘中にあれだけウォーカーの血が、ベトベト体に付いているのにどうして感染しないのだろうか。

 またリックは真面目すぎて、甘過ぎたり辛過ぎたり、極端で柔軟な状況判断が出来ない。清濁併せ呑めないので、リーダーとしては不適格。まだダリルのほうがましなのだが、彼は人前で演説するなどのパフォーマンスを全く持たない。
 その他の者達も総じて甘過ぎて話にならない。良くここまで生き延びたと感心する。もっとも終盤までに殆どの者が死んでしまうので、やはりそんな運命だったのだろうか。それから、もういい加減100人以上は殺しているはずだが、殺しても殺しても次から次へとウジ虫のように湧いて出てくる救世主軍は一体何人いるの?

 それにしても主人公のニックをはじめメンバー全員が、家族や恋人が死んだときの悲しみや落ち込み方が尋常ではない。ほとんどが自己喪失となったり、狂人の一歩手前にまで落ち込んでしまうのだ。もちろん誰でも家族が亡くなれば悲しくてやりきれないのは理解出来るが、本作では余りにも極端に描きすぎている感がしてならない。それともそれが米国人の感性なのだろうか。

 さて非常事態下では子供といえども、大人と一緒に働くはずである。それなのにヘンリーに悪い遊びを教えたヒルトップの中高生達が、いつも遊び呆けているのは非現実的だ。あれでは現代の裕福な家庭の少年達とほとんど変わらないではないか。
 またウィスパラーズと言う集団が、ウォーカーのスキンマスクを被ることでウォーカーに襲われず、彼等を先導することが出来るのだが、そんなことが可能なら誰もウォーカーに対して苦労することがないじゃないの。とうとう、そもそものストーリーをぶち壊すアイデアに頼らざる得なくなったということは、もうこのドラマもお終いに近づいているということだろうか。
 
 それにしても、総督→救世主→ウィスパラーズと、いつまでも悪人集団が次から次へと登場して落ち着かないし、同じようなパターンに辟易してしまうよな。それになぜ今までこの3集団が鉢合わせしなかったのかも納得できない。またいつも1人救うために大勢の仲間が犠牲になる、というパターンはどうにかならないのだろうか。
 決して正義感ぶることが悪いわけではないが、世界が破綻している状況の中では、もっと現実的に物事を処理しなくては生き残れないはずである。だからリックたちの集団がここまで生きているのは奇跡としか言いようがない。そんな意味では、最大の悪党かと思い込んでいたニーガンの生き方が、一番現実的なのかもしれないと考え直すようになってしまった。
 なおシーズン10には、6話のエピソードが追加されているが全てが過去の外伝であり、第22話「ここにニーガンあり」以外は全く面白くない。そして16話から繋がるストーリーは、シーズン11を待たなくてはならないのだが、今までのように夜を徹しても観たいという気にはなれないかもしれないね。


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2021年8月 7日 (土)

ビッグ・アイズ

★★★★
製作:2014年 米国 上映時間:106分 監督:ティム・バートン

 1950年代~1960年代に、憂いの漂う大きな目の子供を描いた絵画「BIG EYES」シリーズが世界中で人気を博した。だが本当は妻が描いた絵を、会話と宣伝力に長けた夫が、自分名義で販売して名声を手にしていたのであった。夫に脅かされ強要されて10年以上に亘って代理絵を描き続けた妻だったが、とうとう我慢しきれなくなり、ラジオで秘密を公開することになる。

 これは実話であり、ラストには実際人物の若かりし日の写真が写されるのだが、夫婦共々まるでそっくりさんが演じたように似ていたのが印象的だった。ただ妻が孤独にたえながら1日16時間も絵を描き続ける中、夫は次から次へとメディアに登場し、セレブたちと派手に遊び歩く。妻は友人とも逢えず、娘にさえ嘘をつき続ける毎日を10年以上も続けた、ということが私には理解も納得も出来ない。

 当時は米国も男尊女卑の世の中だったのだろうか。いやそんなことはないはず。この妻が世間知らずで弱かったのかもしれない。
 しかしながら中盤は、そのあたりの描写が延々と続くので、観ているほうはイライラが治まらない。ラストでやっと裁判になるのだが、最初からああすれば何の問題もなかったのにね・・・。それから終盤はなんだか「エホバの証人」の宣伝をしているような気がしたのは私だけであろうか。
 
 
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2021年8月 4日 (水)

無垢なる証人

★★★★☆
製作:2019年 韓国 上映時間:129分 監督:イ・ハン

 実力はあるのだが、良心を捨てきれないため出世街道から外れ、質素な生活に甘んじている弁護士のスノ。だが父親が友人の保証人になったため借金を抱えることになり、より給料の良いイケイケの大手弁護士事務所に移籍することになる。
 ただこの事務所は、弱者救済を軽視して企業の利益だけを追求する事務所で、スノも現実の波にのまれて信念と情熱を見失いつつあった。そんな彼の変化を察知した恋人からは「人が変わってしまった」と、愛想を尽かされてしまう始末。そんなある日、彼はある殺人事件の国選弁護人に指名される。

 被害者はウンテクという老人で、容疑者は長年ウンテクの家政婦を務めていたミランという女性だった。ミランはウンテクの顔にビニールを被せて窒息死させた疑いがかけられている。ミランは弁護人のスノとの面会時に、「ウンテクは2年前に妻を亡くしたためか常に自殺願望があった」と話す。さらに自殺しようとしてビニール袋を被ったウンテクを止めようとしたが、死のうとしている者の怪力にはかなわず、とうとうウンテクはそのまま死んでしまったのだと聞かされる。

 だがこのミランの言い分を覆したのが、向かいの家に住む自閉症の少女ジウだった。彼女はミランがウンテクにビニールを被せて殺したと証言したのである。しかしながら余り人前に出たことのないジウが、証人として出廷できるのだろうか。さらに自閉症の少女の証言能力が認められるのだろうか。本作ではこのあたりが最優先テーマになっているようだ。
 「夢は弁護士になること。でも自閉症の自分には無理なのは分かっている。だからせめて証人になって世の中の役に立ちたい」ジウのこの言葉が胸に刺さって感動の嵐を呼ぶ。

 結果は観てのお楽しみだが、終盤には感動の涙を流さずにはいられないだろう。本作では韓国映画特有のおふざけもないし、自閉症の少女ジウを演じたキム・ヒャンギのピュアな演技が光り輝いていた。いずれにせよ久し振りに良い映画に巡り会ったことに感謝したい。また余談であるが、弁護士スノを演じたチョン・ウソンが、まるで兄弟の如く福山雅治に似てるので驚いてしまった。


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2021年8月 2日 (月)

ファイナル・デッドコースター

★★★
製作:2006年 米国 上映時間:93分 監督:ジェームズ・ウォン

 「ファイナル・デスティネーション」「デッドコースター」に続き、死の運命から逃れようとする若者たちを描くサバイバル・ホラーの3作目である。遊園地でジェトコースターに乗る寸前に、オイル漏れが原因で墜落する予知夢を見てしまったウェンディ。それで大騒ぎして発車寸前のジェットコースターから降りることに。またこの騒ぎでウェンディだけではなく、搭乗していた10人が降車することになる。

 その後ジェトコースターは発車し、ウェンディの予知夢通り墜落してしまう。さてせっかく難を逃れた10人だったが、なんと座席順に次々に奇怪で恐ろしい事故に巻き込まれて命を落としてしまうのだった。

 まあある程度怖くて面白いのだが、ただ事故の内容が異なるものの、全てのパターンが第1作から変わらないのだ。本作をシリーズ通して初めて観る人はともかく、前2作を鑑賞している者にとってはかなりかったるい。それはともかくとして、ジェットコースターには絶対乗りたくなくなってしまったぜ。

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2021年7月31日 (土)

パパのお弁当は世界一

★★★☆
製作:2017年 日本 上映時間:76分 監督:フカツマサカズ
 
 離婚し高校生の娘のために3年間お弁当を作り続けた父親と娘の実話を映画化したものらしい。最初は見栄えが悪くしょっぱい弁当だったが、最後は形も良く美味しい弁当に成長して行く経緯が面白い。

 仕事があるのに良く作ったものであるが、あんなに酷かった弁当を食べてくれた娘も優しいのだろうか。ただ弁当箱も洗わずテーブルに置きっ放し、夕食後も食器の片付けもせず、さっさと自分の部屋に引っ込んでしまう娘も如何なものだろうか。さらに彼氏の弁当まで作らせるとは、開いた口が塞がらなかった。娘がだらしないのか父親が甘過ぎるのかどちらかであろう。
 映画のほうは低予算で、上映時間も短いのでTVドラマ以下の感はあったが、そこそこ面白かったので許すことにしようか。

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2021年7月29日 (木)

AI崩壊

★★★
製作:2020年 日本 上映時間:131分 監督:入江悠

 2030年の世界を描いた日本発のSF映画である。そもそも妻をガンから救うために開発した医療用AIだったが、労働厚生省の認可が間に合わず、妻は死亡。それから数年後にやっと認可されたAIのぞみは、医療だけではなくあらゆる生活の中に浸透し、人々の暮らしを支える存在に進化していた。
 ところが開発者の桐生が総理大臣賞を受賞する当日に、突如のぞみが暴走を開始するのだった。なぜ暴走したのか、のぞみのプログラムを書き換えたのは何者なのか、そしてその目的は何なのだろうか。
 と言う状況の中で、まず開発者の桐生が疑られてしまう。さらに間の悪いことに、桐生の娘がのぞみが設置されているマシンルームに閉じ込められ、室内の温度が急激に冷却されてしまうのだ。

 医療に特化したほうが現実的で納得できるシナリオが出来たのではないだろうか。わずかあと10年足らずで、これだけ生活圏に浸透するシステムが完成するはずがない。それにかなり使い古されたテーマで、目新しさが全く感じられなかったのが残念である。
 また桐生が逃げまくる意味が理解出来ない。逃げれば逃げるほど怪しまれるだけだし、現実ならあれだけ巧みに逃げおおせるはずがないぜ。映像を含めて前半はまあまあの出来だったが、桐生が逃亡を開始してからはちょっとね・・・。真犯人もすぐ分かっちゃったしさ。

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2021年7月27日 (火)

閉鎖病棟 -それぞれの朝-

★★★★
製作:2019年 日本 上映時間:117分 監督:平山秀幸

 さまざまな過去を持つ患者達が入院している精神科病院でのお話である。患者全員が重い過去を引きずり、世間だけではなく家族からも疎まれ遠ざけられながらも、精一杯明るく生きて行こうとする患者たち。だがそんな平和な日常を一瞬にして破壊してしまった殺人事件。
 その犯行の原因を知っていたのは3人だが、それぞれがそれを公表できない事情があった。実に切ない、だがその切なさを乗り越えようとする前向きのエネルギーが、なんとラストの感動へと繋がって行くのだ。

 本作は山本周五郎賞に輝いた帚木蓬生の小説を映画化したもので、第43回日本アカデミー賞で優秀監督賞・優秀脚本賞(平山秀幸)、優秀主演男優賞(笑福亭鶴瓶)、優秀助演男優賞(綾野剛)、優秀助演女優賞(小松菜奈)の5部門で受賞している。ただ原作が1994年に出版された小説なので、時代背景にチグハグしたものが感じられる。また映画では笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈の三人に焦点を絞っているようだ。その三人を簡単に紹介すると次のようになる。

梶木秀丸(笑福亭鶴瓶) 過去に殺人罪で死刑執行されたのだが、執行後になんと存命という稀なケースのため、施設送りとなったが死刑の後遺症で車椅子生活を送っている。
塚本中弥(綾野剛) チュウさんと呼ばれ施設では人気者の好青年なのだが、突然発作が起こり「何かが聞こえてくる」とわめき散らす。
島崎由紀(小松菜奈) 病気というよりは、義父に犯されて妊娠し実母からも見放され、何度か自殺未遂を繰り返している悲しい少女。

 暗く切ない過去と現在を持つ人々。それにしても彼等に明るい未来はあるのだろうかを問う好作品である。ただやむを得ないのだが、台詞が少なくハッキリしないところが少々イライラしてしまうのだ。

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2021年7月25日 (日)

ザ・ゴーレム

★★☆
製作:2018年 イスラエル 上映時間:95分 監督:ドロン・パズ

 日本では珍しいイスラエル製のホラー映画である。背景は17世紀中期、疫病と異教徒の脅威にさらされたユダヤ系コミュニティ。村人達は戦うことを拒否していたが、気の強いハンナだけは、カバラの禁断の秘術を使って、泥人形に命を与えた『ゴーレム』を生み出す。

 とここまでは面白そうな展開なのだが、なにせ低予算過ぎてこのあとが全くの期待外れだった。通常ゴーレムは巨大な岩人形で、大魔神やパンプキンヘッドを想像していたのだが、なんと普通の幼い少年なのだ。ハンナが亡くした幼い息子と混在させているいうなのだが、余りにも迫力がなさ過ぎるんだね。そしてその少年が念力を使って戦うという仕組みなのだ。
 ホラーというほど怖くもないし、登場人物も少なく、戦闘シーンもこじんまりとして迫力がない。ラストも想像通りの平凡で全く工夫の無いエンディングと、なんだか騙されたような気分で一杯である。


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