グリーンブック

★★★★☆
製作:2018年 米国 上映時間:130分 監督:ピーター・ファレリー
Greenbook_1
 本作は第91回アカデミー賞及び第76回ゴールデン・グローブ賞において、ともに作品賞、助演男優賞、脚本賞に輝いている素晴らしい作品である。だからといって決して堅苦しい作品ではなく、ロードムービー或いはコメディとしても鑑賞できる全方向のヒューマンドラマといっても良いだろう。
 タイトルの『グリーンブック』とは、Victor Hugo Greenという黒人の郵便局員が、車で旅行する黒人のために1936~1966年にかけて出版したガイドブックのことである。なぜこのようなガイドブックが生まれたのかというと、次のような背景があったからだと言われている。
 当時米国では、裕福な黒人であればマイカーを所有するようになっていたのだが、車で旅行する黒人(厳密には非白人)は、ジム・クロウ法(Jim Crow laws)という州法に基づく人種隔離政策(各人種は平等だが入り交じるべきではないという方針)の影響もあり、次のような不都合に直面していたという。
1.食事や宿の提供を断られる
2.自動車を修理してもらえない
3.給油を断られる
4.暴力を振るわれる
5.白人しか住まない町から追い出される
6.警察に逮捕されやすい
 地域によっては、黒人にサービスを提供する事業者のほうが稀で、黒人は広い国土を自動車で旅行するのがとても大変だったという。従って黒人がマイカーで旅行しようとする場合には、トイレを利用させてもらえない場合に備えて、車のトランクに簡易トイレやバケツを用意しておいたり、飲食店やガソリン・スタンドを利用させてもらえない場合に備えて食料やガソリンを余分に用意しておく必要があったのである。
 そんな時代に Green 氏が私費出版したのが、"The Negro Motorist Green Book" なのだ。これこそ黒人が利用できる飲食店・ホテル・民宿・ガソリンスタンド・娯楽施設・ガレージなどの名称と住所を記載してある黒人必携のガイドブックだったのである。
 本作では、黒人差別が続いていた1962年に、黒人ジャズ・ピアニストのドクター・シャーリーが米国南部を8週間に亘るコンサート・ツアーを実行する。だが米国南部は人種差別が激しい地域であり、黒人が旅をするには大変危険であった。そこで彼は移動中のトラブルを回避するために、粗野な白人バウンサーのトニー・リップをボディーガード兼ドライバーとして雇うことになるだ。さらに道中で困らないためのガイドブックとして、シャーリーの所属事務所がトニーに与えるのが「グリーンブック」だったのである。
 はじめは黒人嫌いのトニーだったのだが、シャーリーの天才的なピアノ演奏や文章力に脱帽してゆく。またシャーリーのほうもトニーのトラブル解決能力や、荒々しさの中に潜む心優しさに気付きはじめる。そして旅の終わりに近づく頃は、二人ともが主従の関係から友人の関係に心が転換してゆくのである。
 笑いあり涙あり、ラストのクリスマスイヴ風景も良かった。だが何といってもトニーの妻・ドロレスを演じたリンダ・カーデリーニが、とてもチャーミングで素敵だったよね。

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2019年3月14日 (木)

しあわせの絵の具

★★★★☆

製作:2016年 カナダ・アイルランド合作 上映時間:116分 監督:アシュリング・ウォルシュ

 カナダの女性画家モード・ルイスとその夫の半生を描いた実話ドラマである。モードは先天性のリウマチを患い手足が悪く、なかなかまっとうな仕事につけない。また夫となるエベレットは孤児院育ちで学がなく、武骨で人付き合いが苦手な魚売りだ。そんなはみ出し者同士が同居することになり、初めはお互いにすれ違いが多かったが、共同生活を重ねてゆくうちに次第に惹かれ合うようになる。

 モードは住み込み家政婦としては、充分な働きは出来なかったものの、何事にもひた向きに取り組み、こつこつと絵を描くことが生き甲斐になっていた。そんなある日、エベレットの顧客であるサンドラに絵の才能を認められ、絵の制作を依頼される。
 やがてモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン副大統領から依頼が来るまでになるのである。そして彼女はマスコミにも紹介されて名士となるのだが、暮らしぶりは相変わらず地味で質素であった。

 そんなある日、疎遠にしていた叔母と久し振りに逢い、彼女から過去のある出来事について、衝撃の告白を聞くことになる。その事実を知ったモードは思案にくれ、エベレットに相談するのだが・・・。

 それほど製作費はかけていないものの、とにかく映像も音楽も良い、そして感動の涙に濡れる心温まる作品である。さらに起承転結の見極めもしっかりしているし、何といっても障害を持つモードを演じたサリー・ホーキンスの抜群の演技力には脱帽するしかないだろう。まさに映画らしい実に映画らしい珠玉の名作に仕上がっているではないか。

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2019年3月 8日 (金)

待ち伏せ

★★☆

製作:1970年 日本 上映時間:117分 監督:稲垣浩

 三船プロの製作で社長の三船敏郎をはじめとして、石原裕次郎、勝新太郎、中村錦之助、浅丘ルリ子と超豪華キャストを集めたアクション時代劇である。ネットの評価はいま一つだったのだが、これだけ超大物が揃った映画は後にも先にもないと思いDVDで観ることにしたのである。

 ただ結論から言えば、残念ながらネットの評価通り駄作であった。まず脚本も演出も酷すぎる。また石原裕次郎は時代劇には全く向いていないばかりか、その役割そのものが不要だった気がする。また中村錦之助の演技力は買えるものの、あんな役ではもったいない。彼は時代劇の申し子なのだから、もっと強い侍を演じてもらいたかった。

 そして一番残念だったのは、これだけの俳優を揃えながら、誰一人として見せ場が用意されていないことだ。また殆どの時間が、茶店の中での心理劇的展開に終始し過ぎて、安っぽい舞台劇を見せられているような退屈感に襲われてしまったこと。
 さらには期待していた殺陣のシーンは、ラストに申し訳程度の添え物として、ちょこっと用意されただけだったのである。まさに裏切りが裏切りを呼ぶだけの、見どころのない顔見世だけの映画であった。 

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2019年3月 2日 (土)

チャンブラにて

★★☆

製作:2017年 伊・米・仏・スウェーデン 上映時間:118分 監督:ジョナス・カルピニャーノ

Chanb
 手持ちカメラの映像が揺ら揺らして気分が悪くなる。だから薄目を開けて観ていると、今度は眠い、ひたすら眠くなってしてまうのだ。ところが今度は、ガンガン大音響でがなり立てる音楽が、やかましくてたまらない。
 
 タイトルのチャンブラとは、イタリア南部のスラム街の通りを指す。そしてこの映画は、国に縛られずに生きてきたロマというジプシーに焦点を当てた、ドキュメンタリー仕立てのヒューマンドラマなのである。

 本作にはストーリーらしいストーリーは存在しない。差別によりまもな職に就けないロマの人々が、窃盗などで生計を立てている様子を延々と描いてゆくだけなのだ。また兄と父が逮捕されたため、14歳の少年ピオが窃盗を繰り返して家族や仲間を支えることになってしまう。と言うより、彼が周囲の反対を押し切って勝手に窃盗に手を染めるのだが・・・。

 子供たちが酒を飲み、煙草を吸い、女を買うシーンが印象的である。だがアフリカや南米では、それに加えてマシンガンをぶっ放す子供たちがいることを考えれば、まだまだおとなしいほうなのかもしれない。

 いずれにせよ、登場人物の多くは主演のピオ君をはじめ、現地の素人たちで占められているというから、まさにドキュメンタリーと紙一重なのだ。こうした作風は珍しいし、こんな世界の存在を知ることも必要かもしれない。だがこうした直線的な描き方では、ただ窃盗を繰り返しているジプシーたちが悪いだけ、という印象しか残らないではないか。

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2019年2月26日 (火)

きみへの距離、1万キロ

★★★☆

製作:2017年 カナダ 上映時間:91分 監督:キム・グエン

 いやに長ったらしい邦題である。確かに超遠距離恋愛を描いたラブロマンスで、原題の『EYE ON JULIET』も判り辛いので仕方ないか…。
 主人公の青年ゴードンは、デトロイトにある警備会社から、北アフリカの油田に設置してある蜘蛛型ロボットを遠隔操作し、石油泥棒を監視する仕事をしている。そしてそこで巡り合った美少女アユーシャにひと目惚れ。そして監視作業をおっぽり出して、少女の日常を覗き見することに夢中になってしまう。

 という訳で、遠距離恋愛と言っても、ゴードンの一方的な思い入れに過ぎない。だがアユーシャには恋人がいた。さらには無理矢理年配の金持ちと結婚させようとする両親のもとから逃げ出して、二人して他国へ駆け落ちしようとしているではないか。アユーシャに同情したゴードンは、二人の駆け落ちを支援するために、彼女宛に大金を送金するのだが・・・。

 序盤はこの作品の意図が分からず、眠くてウトウトしてしまった。だが徐々にこの映画が放つ独特な雰囲気にのめり込んでしまった。なるほど単純なラブロマンスではないし、ロボット絡みのストーカーとは、なかなかユニークな発想である。
 ただちょっと荒唐無稽で無理が目立ち、終盤をはしょり過ぎたところも残念だが、ファンタジーロマンスと考えれば腹も立たないだろう。

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2019年2月21日 (木)

今夜、ロマンス劇場で

★★★★☆

製作:2018年 日本 上映時間:109分 監督:武内英樹

 最近の邦画はマンガを実写化したものや、東野圭吾などの人気作家の小説を原作としたものばかりで、かなり食傷気味であった。ところが本作は良い意味で期待を裏切り、久々に映画らしい邦画を観た気分にさせて貰い嬉しくて堪らない。
 時代背景は1960年頃、モノクロ映画の中から現実世界に飛び出したお姫様と映画監督志望の純真な青年のラブファンタジーである。なんとなく作品全体に『ローマの休日』や『ニュー・シネマ・パラダイス』あるいは『ある日どこかで』などを彷彿させられる雰囲気が漂う。だからオールド映画ファンにはとても心地よいのだ。まさに映画好きが創った映画ファンのための映画といってよいだろう。

 また姫役の綾瀬はるかの凛とした品の良い美しさに、様々に変化してゆく衣装がぴたりとはまりとても印象的であった。そして若き日の純真な青年牧野に坂口健太郎、老いた牧野を演じてこれが映画遺作となった加藤剛と、ともに真面目さを売りにする二人を起用したことも成功している。

 そしてラストに赤いバラと同時にモノクロがカラーに変わるシーンはとても感動的であった。「君の一番欲しかったものをプレゼントしてあげる」とは、まさにこのシーンのことなのだろうか・・・。
 難を言えばストーリーに深味が足りなかったことと、製作費が不足していたことかもしれないが、映像・音楽・配役・衣装・ノスタルジー・初恋・切なさ・涙などを見事に配合した素晴らしい映画だと思う。邦画も捨てたものではないよね。これからもマンガの実写版だけではなく、映画の原点に戻ってこんな真摯な作品も創って欲しいものである。
 

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2019年2月17日 (日)

坂道のアポロン

★★★☆

製作:2017年 日本 上映時間:120分 監督:三木孝浩

 原作は小玉ユキの少女コミックである。原作は未読であるが、マンガとしては上質な作品であり、登場人物たちがマンガにそっくりだったのも微笑ましい。
 オープニングは多忙な毎日を送る医師・西見薫が子供たちにせがまれてピアノを弾くシーンからはじまる。そして10年前に彼が転校先の高校で、不良の川渕千太郎とその幼なじみで委員長の迎律子と運命的な出会いを果たした時代に遡って行く。

 ここから延々と学園ドラマが始まるのだが、彼ら三人は音楽で繋がり、そこに千太郎の兄貴格の桂木淳一とその恋人である深堀百合香が絡んで三角いや五角関係になってしまう。なかなか世の中は上手く行かないものである。そしてやっと落ち着いたかなと思った矢先、またまた残念な事態が勃発してしまうのだ。なんだかわざと不幸を煽っているような展開にかなりストレスが溜まってしまうのだが、ラストは絵に描いたようなハッピーエンドで締めくくられるのでご安心を。

 クライマックスはやはりジャズの演奏シーンなのだが、西見薫役・知念侑李のピアノと川渕千太郎役・中川大志のドラム演奏がともに代役なしで演奏したと知って驚いた。また迎律子を演じた小松菜奈は、決して美人ではないのだが、クールでピュアで何となく謎めいた雰囲気に染まっていて好感を持ってしまった。いずれにせよ爽やかな気分に浸れる作品であることは間違いないだろう。

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2019年2月13日 (水)

まともな男

★★★★

製作:2015年 スイス 上映時間:92分 監督:ミヒャ・レヴィンスキー

 どうも邦題の『まともな男』とは、一体何を意味するのか判断するのが難しい。主人公の「まともな男でありたい」という願望なのだろうか。原題の『NICHTS PASSIERT/A DECENT MAN』はドイツ語なのだろうか。正確には翻訳出来ないのだか、『何も起こらない/まともな男』だとしたらほぼ邦題と変わらないのだが…。

 家族三人(倦怠期の夫婦と高校生の娘)のスキー旅行のつもりが、父親トーマスの優柔不断さから赤の他人が加わって四人になってしまう。それはトーマスが上司に頼まれて、その娘ザラを一緒に連れて来てしまったからである。だが家族団らんの旅行を期待していた妻も娘も、突然のザラの参加には不快感を隠せない。

 ロッジに到着した夜、娘とザラがロッジの管理人の息子セヴェリンに誘われてパーティーに行くことになってしまう。はじめは反対していたトーマスだったが、娘たちの執拗な懇願に負けて外出を許してしまうのである。
 そもそもこれが全ての悲劇の始まりであった。トーマスが深夜に娘たちを迎えに行くと、荒れて不機嫌な娘と街角で悲嘆に暮れるザラを発見する。

 そこでザラは、セヴェリンに強姦されたことをトーマスだけに告白する。彼女は警察には行きたくないし、このことは誰にも喋るなとトーマスにくぎを刺すのだが・・・。
 このあとザラは悩み苦しみ、思考が何度も反転し始める。またトーマスのほうも、このことを誰にも相談出来ず、責任感と保身が絡みあい追い詰められてゆく。そして彼はとうとう封印していた禁断の掟を破ってしまうのである。そして次々と重大な事件が勃発することになってしまうのだった。

 一応この作品のジャンルはコメディ・ドラマとなっているのだが、サスペンスとかスリラーと仕訳したほうが適性のように感じる。ただそうであればあの後味の悪いハッピーエンドはどのように説明すればよいのだろうか。
 スイス映画を観るのは久しぶりだが、やはりハリウッド映画とは全く視点が異なっていてなかなか印象深い作品に仕上がっている。また地味ではあるが、かなり丁寧に練り込まれた脚本と心理描写には脱帽せざるを得ない。

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2019年2月10日 (日)

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ

★★★☆

製作:2017年 米国 上映時間:120分 監督:マイケル・ショウォルター

 米国在住のパキスタン人であるコメディアン「クメイル・ナンジアニ」の実話である。主役のクメイルを演じたのは、なんと本人のクメイル・ナンジアニであり、脚本は彼と妻のエミリーの共同執筆だという。

 本作はパキスタン人のクメイルと米国人のエミリーのラブストーリーなのだが、一般的にパキスタンでは、パキスタン人同士の見合い結婚が多いらしい。もちろんクメイルの両親は見合い結婚であり、息子にも見合い結婚を強要し、他国の女性と付き合うなら勘当も辞さないのだ。
 一方のエミリーの両親も、エミリーを傷付けたクメイルに対して好感は抱いていない。だがエミリーが昏睡入院し、その間に共同生活を営んでいるうちに、次第にわだかまりが解け始めてくる。

 この物語は国境と人種と異文化を越えたラブストーリーが謳い文句である。だがそれよりも、クメイルとエミリーの両親とのほんわかとした人間関係にうっとりとするヒューマンドラマとも言えるだろう。そして感情的だが正義感に燃える義母と、包容力のある優しい義父のカップルもなかなか魅力的だったね。

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2019年2月 3日 (日)

天のろくろ

著者:アーシュラ・K・ル=グウィン

 ジョージ・オアという神経症患者が夢を見ると、現実世界はその夢を微妙にアレンジして大きく改変されてしまう。だがその事実に気が付いているのは、オアと精神科医のヘイバー博士だけであった。
 ヘイバー博士は、脳に刺激を与えて強制的に夢を見させる『増幅機』を駆使して精神治療を続けた。そのためかオアの夢はパワーアップしてしまい、世界はいつの間にか、70億人が消滅したり異星人が到来したりする状況に陥ってしまうのである。

 まともなストーリーなら、夢落ちはタブーなのだが、本作は夢・夢・夢で構成されており、夢落ちだって何でもありだろう。但し結末は単純な夢落ちという訳でもなかった。もしかするとこの世界は、自分自身が創り出した妄想のようなもので構成されているのかもしれない。果たしてそんな哲学的発想が根底にあるのだろうか。

 本書はSFなのか宗教小説なのか、いま一つはっきりしない趣であるが、とにもかくにも読み難いこと甚だしい。これは内容そのものが分かり難いのか、翻訳が下手なのか、その両方なのだろうか。テーマ的には、人口過剰の排除、全惑星の生態学的バランス回復、癌の克服、核と戦争の廃絶、人種差別・貧困・経済的不平等の解消など、非常に興味深いのだが、ほとんどが言葉の羅列だけに終始しているだけなのが残念である。
 また前半は登場人物がたった三人だけだし、最後まで読んでもちょと出の人や異星人を含めてもせいぜい6~7人くらいしか登場しないのだ。さらに状況説明がくどくどと長過ぎてテンポが悪くすぐ眠くなってしまう。この作品や著者の信奉者には申し訳ないけれど、寝苦しい夜には睡眠薬代わりになって、だいぶ役に立ったけどね・・・。(苦笑)

 本作は1969年に発表され、原題は『The Lathe of Heaven』、1972年にローカス賞長編部門賞を受賞していると言う。また2002年にはカナダ・米国の共同制作で映画化も実現している。
 日本では1979年にサンリオSF文庫から出版されているが、いつの間にか絶版となり手に入り難い作品になっていた。だが2006年に復刊ドットコムにより、再び日の目を見ることが出来たという訳である。
 それほど期待されて復刊した本書であるが、前述した通りかなり読み辛く、登場人物が少なく、ストーリー展開が後付けされているだけなので物足りないのだ。もしかすると映像でフォローできる映画のほうが面白いのかもしれない。是非DVDを探して鑑賞してみたいものである。

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2019年1月27日 (日)

ラバーズ・アゲイン

ラバーズ・アゲイン ★★★

製作:2017年 米国 上映時間:94分 監督:アザゼル・ジェイコブス

 それほど期待してはいなかった。ところがちょっぴり変わった視点で少しエッチで、そこそこ楽しめる大人の雰囲気が漂う映画だった。ただ・・・。

 更年期の夫婦がそれぞれ不倫しているのだが、お互いなかなか離婚を言い出せない。そしてそれぞれの相手が、「早く離婚しろ」と迫っているのだが、うっかり久し振りにキスしてしまったことから肉体関係が復活してしまうのである。
 そしてなんと愛が再燃してしまい、さらに離婚を言い出せない状況に陥ってしまうのだ。それでもお互いの不倫相手から執拗にせっつかれ、「一人息子が彼女と一緒に帰省したあとに離婚する」と言い訳をする。

 とにかくこのあたりのやり取りはとても面白く笑えたのだが、息子が登場してから急に詰まらなくなってしまった。息子の恋人は心身ともにちっとも可愛くないし、息子はイケメンだが精神的に大人になり切っていないね。
 そしてあっという間のエンディングと、予想通りのどんでん返しにやや興ざめ状態。「我慢の足りない夫婦はまた同じ過ちを繰り返すよ」とまさに皮肉たっぷり。序盤はまずまずだったのだが、終盤の締めくくりに失敗した残念な作品だったと言いたい。

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2019年1月23日 (水)

狐狼の血

★★★☆

製作:2017年 日本 上映時間:126分 監督:白石和彌

 原作は柚月裕子の同名小説であり、直木三十五賞や吉川英治文学新人賞の候補となり、第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を獲得している。
 映画のほうは実録ヤクザ映画のメッカである東映が製作している。背景は昭和63年、広島の呉原で地元の暴力団組織「尾谷組」と、新勢力である広島の巨大組織五十子会系「加古村組」との抗争劇を描いている。

 いまさらなぜヤクザ映画なのかと思ったのだが、従来のヤクザ映画とは異なり、本作は刑事側の視点で描かれているところがユニークなのだ。またヤクザ映画とは余り縁がなさそうな役所広司と松坂桃李が主演だったことにも興味をそそられてしまった。

 なにしろグロいシーンが満載で、ヤクザ以上に横暴で残虐な大上刑事の強引な捜査手法が見ものである。ただやはり役所広司のイメージや人柄ではかなり無理があり、徹底的な極悪刑事を演じることは出来なかった。
 だから終盤に大上刑事の本性が明かされても、「やっぱりね」と言う程度の想定内反応しか得られないのである。だからこの役どころは役所広司ではなく、共演していたピエール瀧あたりのほうがはまり役だったかもしれないと感じたのは私だけであろうか。それにしても、女性がこの原作者だということが凄いよね。

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2019年1月19日 (土)

マチルダ 禁断の恋

★★★☆

製作:2017年 ロシア 上映時間:108分 監督:アレクセイ・ウチーチェリ

Machi
 ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世と美貌のバレリーナマチルダとの、禁断の恋を描いた壮大なラブストーリーである。

 舞台は19世紀後半のロシア・サンクトペテルブルク。ロシア皇帝の皇太子であるニコライ2世(通称ニキ)は、世界的なバレリーナのマチルダに盲目の恋心を抱いてしまう。
 だが父のニコライ1世が、列車事故で急激に体調を崩し、王位継承の日が刻々と近づいてしまう。そしてヘッセン大公国の大公女アレクサンドラ・フョードロヴナとの政略結婚を迫られる。さらには外国勢力の台頭や国内の情勢が、マチルダとの恋の成就を難しくするのだった。

 それほど期待しないで観たのだが、豪華絢爛で映像も美麗で音楽は荘厳な雰囲気を漂わせており、劇場向けで見応えのある映画であった。またロシアの歴史の一端を垣間見ることも出来、サスペンス、オカルト、復讐などを盛り込んだ欲張りな作品なのだが・・・。

 ただニキの優柔不断で煮え切らない心情と、マチルダのまるでターミネーターのような執拗な追いかけが、かなりこの映画を安っぽく仕立ててしまったようだ。そしてあれだけ引っ張り続けて、あの解説だけで中途半端なまま終幕してしまったラストも、手抜きのようで非常に残念でたまらない。

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2019年1月14日 (月)

31年目の夫婦げんか

★★★

製作:2012年 米国 上映時間:100分 監督:デヴィッド・フランケル

 結婚31年目を迎えた熟年夫婦の結婚感と性を描いた作品である。これをあの仏頂面ボス・CMのトミー・リー・ジョーンズとメリル・ストリープが好演している。それにしてもメリルは流石だね。キャリャウーマンや悪女を難なくこなしたこと思うと、本作では可憐で自身のなさそうな普通の主婦を淡々と演じている。

 本作は導入部で倦怠期の夫婦をさりげなく描き、あとはほとんど性科学ドクター(スティーヴ・カレル)のカウンセリングを受ける一週間のバカンスに終始する。だから主な登場人物も夫婦とドクターのほぼ三人、そして会話の多い舞台劇のような作品である。

 結婚して約30年が過ぎ、子供たちも独立して二人だけで大きな家に住む老夫婦。寝室は別々で、夫は新聞を読み妻が朝食を作る。そして夫は妻のことは振り向かず、カバンを手にそそくさと会社に向かう。仕事が終わって家に帰っても、黙々と妻の作った夕食を食べ、ゴルフ番組を観ながらウトウトしてしまう。そして妻が片づけを終わると、二人は二階にあるそれぞれの寝室に向かうのである。

 何の問題もなく結婚生活はうまく行っていると考える夫と、何もなさ過ぎる結婚生活に危機感を募らせている妻とのすれちがい。どこの国でも同じような老後の倦怠パターンを繰り返しているのかと笑ってしまう。他人ごとではないよな、と考える老年期の観客には面白い作品かもしれない。だが若い観客たちには退屈な映画なのかもしれない。

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2019年1月 9日 (水)

ジオストーム

★★★☆

製作:2017年 米国 上映時間:109分 監督:ディーン・デヴリン

 史上最大の転変地変を描いたパニック映画だと思い込んでいたら、とんでもない勘違いであった。そのくだりを詳しく書いてしまうとネタバレになってしまうのだが、天災ではなく人災だと言うことなのである。
 それもたった一人の悪人のために引き起こされたもので、全世界が壊滅というのはちょっとやり過ぎではないだろうか。だからそのくだりが気に入らず、評価もかなり下げてしまった。

 ただ映像は美麗で迫力満点のVFXには驚嘆の連続だ。さらに終盤の30分間はノンストップアクションが続き、かなり緊張し見応えがあった。そしてかなり出来過ぎではあるが、ラストには感動の涙・涙・涙。これで評価はV字回復。
 だがあれだけ大勢の人間を簡単に殺しまくる非人間性には呆れてものも言えない。とにかく評価が揺れ動く作品である。

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