龍は眠る

著者:宮部みゆき

 古い本であるが、久々に宮部みゆきの本を読んだ。やはり読み易いし、細部にわたって調査が行き届いており、筆運びも達者なのでどんどん引き込まれてゆくのだ。本書はミステリー風味を漂わせているのだが、実は超能力者二人の苦悩を描いた社会ドラマと言ってもよいかもしれない。逆に言えば、派手な超能力合戦を期待すると裏切られることになるだろう。超能力と言っても、テレパシーとか予知とかいった類なのだが、一人のほうだけはテレポートもできるらしい。

 従って真の主人公は超能力青少年の二人なのだが、それにしては登場時間が短い。その代わり高坂昭吾というちょっぴり偏屈だが真面目で心優しい雑誌記者が、狂言回しとしてあたかも主人公のように立ち振る舞っているのである。彼が偏屈になったのは「子種がない」ということが原因らしい。だがその割には意外に女性にもてるところが羨ましいね。

 ストーリーは台風の夜に車を走らせていた高坂が、路上でパンクした自転車を引きずっている少年を、車に乗せて助けるところから始まる。少年は超能力者で近くのマンホールに子供が落ちたこと、さらにはマンホールの蓋を開けっ放しにした二人の男がいたことも知っていた。
 その二人の男は、悪気があって蓋を開けたのではなかったが、少年に責められてノイローゼになる。そしてこれを苦にした一人が自殺してしまうのだ。このあたりから摩訶不思議な手紙が、高坂のもとに届くようになるのである。
 
 一体謎の手紙は誰が書いたのか、さらにはこの手紙と関連したかのような拉致事件が勃発するのだが……。と著者はなかなか手綱を緩めず、少しづつ難問を振り撒いて行く。もうこうなったら、最後まで一気読みするしかなかろう。さすが宮部みゆきだね。ただ途中で犯人が想像できてしまったことと、その動機がいま一つ手垢がつき過ぎていたことだけが、ちょっぴり残念であった。

 この古い本を読んだ直後、奇しくも本作をTVドラマとして再放映していたので、さっそく録画して鑑賞してみた。前半はほぼ原作通りであったが、後半はやや端折って脚本を書いたようで、少し話の辻褄が合わなかった。唯一良かったのは聾唖者の女性だけだったかな。


評:蔵研人

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2023年12月 2日 (土)

夢工場ラムレス

著者:川邉徹

 著者の川邉徹は、WEAVERというロックバンドのドラマーで、ほぼ全ての楽曲の作詞も担当していた。その作詞の才能をさらに生かして、2018年に本作を書き上げて小説家デビューを果たしたという。また本作のほかにも『流星コーリング』など6作の小説を書き、漫画や写真集も上梓し、多彩な才能を披露している。

 夢の中で夢を夢だと認識したとき、もし青色の小さな扉を見つけたら、そこは夢をコントロールできる夢工場の入口なのだという。そしてそこで夢を修正することによって、現実も変えられるというファンタジックなお話集なのである。

 その中身は『未来の夢』、『過去の夢』、『理想の夢』、『他人の夢』、『管理人の夢』の5つのショートストーリを、オムニバス方式で繋ぎ合わせた構成になっている。また最終章では4つのストーリーを括りながら、夢工場の管理人の正体も明かされることになる。なかなかよくまとまった作風で、まさにデビュー作に相応しい堅実な出来栄えと言えよう。

 なお本作はタイムトラベルとは直接関係ないが、「夢の世界は過去も未来も思うが儘」ということになるので、あえてタイムトラベル系列の中に含ませてもらった次第である。

評:蔵研人

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2023年11月28日 (火)

ゴジラ-1.0

10

★★★★
製作:2023年 日本 上映時間:125分 監督:山崎貴

 本作はゴジラ映画の原点に立ち戻り、巨大化した本格的なゴジラ登場は、戦後まもない東京を舞台にしている。それにしても本作は、過去の全ゴジラシリーズの中でも、圧倒的な恐怖と迫力と完成度を誇っているではないか。また今回のゴジラは完璧なVFXだけではなく、涙を誘う人間ドラマとしても十分堪能できてしまうのだ。子役の女の子もいじらしいし、自らが犠牲になり、戦後の日本を若者たちに託してゆく男たちの生きざまにも感動してしまうだろう。
 さらに試作ながらも『震電』と呼ばれた当時世界最速の戦闘機が、ゴジラに向かってゆく姿が初々しくて堪らない。この震電の開発がもっと早ければ、もしかすると米国に勝利したかもしれないと言われたほど優れた新鋭機で、私たちは子供の頃に、プラモデルの震電の雄姿に打ち震えたものである。
 
 ところで本作は『シン・ゴジラ』と比べると、キャスト陣がやや小粒であり、政治家は介入してこないし、登場人物の数も圧倒的に少数である。だが少人数だからこそ人間ドラマが描けたのだと言えばその通りだし、時代背景も異なるので仕方がないのかもしれない。
 またシン・ゴジラは、優秀な官僚と日本独自の技術をしてゴジラに立ち向かうという、日本的思考で塗り固めた作品だったのに対して、本作は個人優先のハリウッド的思考を前面に押し出しているところが興味深い。ただ在日米軍が、ソ連対策のため全く動けないという設定だけはよく理解できなかった。

 さてネタバレになるので詳しくは書けないのだが、ラストの奇跡的なハッピーエンドはいかがなものであろうか。「自己犠牲をする必要はない」という現代流のメッセージは理解できるとしても、少なくともどちらか一人が死ななければ余りにも嘘臭いし、真の感動も生まれ得ないことは、山崎監督なら百も承知のはずだが……。
 また典子の首に残っていた黒いアザが、一体何を意味しているのかが不明であり、その理由如何ではアンハッピーに繋がる恐れがあるのかもしれない。まあ裏の意図はともかく、表向きはハッピーエンドで収め、本作を米国へ輸出し易くするための妥協なのだろうか。

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2023年11月23日 (木)

時の行者 全三巻

作者:横山光輝

 戦国時代末期から江戸時代中期にかけて、10年ごとに変らない風貌で現れる謎の少年。この少年は未来からのタイムトラベラーで、その目的はなかなか明かされないのだが、ラスト間近になってやっと明確にされる。
 少年は高熱線銃やバリヤー発生装置を身に着けているため刀や鉄砲などが通じず、昔の人々にはまるで超能力を駆使する行者に見えてしまう。ただ反撃を行う際には、一時的にバリアーを解除しなくてはならないし、長時間バリアーを張っていると窒息するという弱点がある。そのため二度不覚を取ってしまい、捕まって拷問にかけられてしまう。

 主な登場人物は、織田信長、豊臣秀吉、石田三成、後藤又兵衛、徳川家康、本多正純、徳川忠長、天草四郎、由井正雪、堀田正信、徳川吉宗、天英院、徳川吉通、大岡越前、紀伊国屋文左衛門、徳川宗春、徳川家重など錚々たる歴史上の人物が多い。また関ヶ原の戦い、大坂の役、宇都宮釣り天井事件、島原の乱、生類憐みの令、享保の改革、天一坊事件、宝暦の一揆などなど歴史上の重大事件を扱っているので、歴史入門書としても役に立つかもしれない。
 ただタイムトラベルものとしては、タイムパラドックスも発生せず、タイムトラベル手法についても今一つはっきりしないため、時間系のSFとしては少々物足りなさを感じてしまうだろう。まあ忍者を未来人に置き換えた『伊賀の影丸』だと思って読めば、かなりのめり込めるかもしれないね。

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2023年11月19日 (日)

スリープ

著者:乾くるみ

 主人公は中学生ながらTVの人気レポーター役として活躍する頭脳明晰な美少女・亜里沙である。彼女は取材で『未来科学研究所』を訪れるのだが、そこで立入禁止区域に迷い込んでしまい、見てはいけないものを見てしまう。
 ここまで到達するまで、亜里沙の紹介や未来科学研究所の説明などに全体の約1/3である100頁も要して、かなり退屈感が募ってくるのだが、ここから先は30年後の世界となり、俄然面白くなるので安心して欲しい。

 亜里沙は30年後の世界で目覚めるのだが、本書ではその30年後の世界について詳しく描写されているところが素晴らしい。ただしSF映画のように空飛ぶ車が跋扈している派手な世界に変貌しているわけではない。本作では、生活の中の細かな仕様や、政治経済などの分野が急激に進化しているのである。
 例えば風呂場と洗濯機を一体化して、服のままで風呂に入っても一瞬にして消毒・乾燥できるシステムが普及していたり、駅のホームが透明の壁で完全に囲まれていることとか、経済的には1ドル40円前後の円高が続き物価が下がっていたり、政治の世界では大統領制が確立し道州制が導入されているのである。このほかにもいろいろな未来描写がなされているのだが、どれも将来現実に起こりそうな事象が多く、著者の慧眼に思わず膝を叩いてしまうことだろう。

 ただストーリー的には、亜里沙が目覚めてからの時間が短すぎて、ことさら大きな進展がないのである。……と思っていたら、九章『胡蝶の夢』から謎の急展開が始まるのだった。もしかしてパラレルワールドなのだろうか、タイトル通りの単なる夢なのだろうか、と考えているうちに最終章に突入して、いきなり「序盤のあの時」と繋がってしまうのだ。なるほど、実に見事な予測不能のドンデン返しではないか。


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2023年11月16日 (木)

ファイナル・スコア

★★★
製作:2018年 英国 上映時間:105分 監督:スコット・マン

 元米国海軍特殊部隊の精鋭だったマイケル・ノックスは、戦死した戦友の故郷・ロンドンを訪れていた。そして実の伯父のように慕ってくれる戦友の愛娘ダニーを誘いサッカーの試合を観戦に出かけるのだが……。そこで待っていたのは、超満員の観客35,000人を巻き込もうとしている恐るべきテロリストたちであった。

 果たしてノックスは、テロリストから観客たちを守れるのだろうか。さらにノックスの弱点であるダニーがテロリストにつかまってしまう、といったハラハラアクション映画である。それにしてもラスト直前まで、ずっとサッカーの試合は続いているし、観客たちは誰もテロの存在を知らない。そんな中で刻々と大量の爆弾が爆発する時刻が迫ってくるのである。

 ノックスは体格もよく米国海軍特殊部隊の精鋭だったので、スーパーマン的に強いのかと思っていたのだが、残念ながら悪人たちと一対一で必死に戦ってやっと勝つ程度の強さなのだ。もっとも現実的にはそれが当たり前なのだが、映画なのでなんとなく物足りない。
 それにいつも一発で球場関係者たちを殺していた女殺人鬼が、ノックスの味方の球場関係者だけは殺さないのだ。またバイクシーンでも敵の弾が全くノックスに当たらないし、人質交換の時も光だけで誤魔化せたのも無理がある。などなどかなりご都合主義的で、突っ込みどころが満載であった。ただハラハラドキドキで面白かったので許してあげようか……。

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2023年11月12日 (日)

イニシエーション・ラブ

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著者:乾くるみ

 イニシエーションとは「通過儀礼」のことである。従ってタイトルの『イニシエーション・ラブ』とは永遠の恋ではなく、大人になる前の一時の恋ということになるのだろうか。また本書はバリバリの恋愛小説だと思っていたのだが、実は「必ず二回読みしたくなる」と絶賛された傑作ミステリーであった。
 本書の裏表紙にある内容紹介文には、「甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説----と思いきや、最後から二行目(絶対先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。」と綴られているのである。

 これは一体何を意味しているのだろうか、ネタバレになるのでここでは解説は避けることにするが、いくつかのヒントだけ紹介しよう。第一のヒントはこの小説のタイトルである。そして第一章、第二章という区分ではなく、かつてのカセットテープのようなside-Aとside-Bという区分も意味深ではないか。さらにside-Aではしつこいくらい細かくじっくりと丁寧な描写に終始しているのだが、side-Bではテンポの速い展開に変化しているのだ。また本作はタイムトラベル系の小説ではないのだが、時系列をゆがめて描いているため、二度読みが必要だということ……。まだほかにも矛盾することがいろいろあるのだが、これ以上記すとネタバレになってしまう恐れがあるのでこのへんで止めておこう。

 なお本作はなかなか映像化し難い部分があるのだが、なんとそれを巧みに凌ぎながら2015年に映画化されているようである。ちなみに監督は堤幸彦で、主演は松田翔太と前田敦子になっている。機会があったら是非観てみたいものである。

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2023年11月 9日 (木)

リピート

著者:乾くるみ

 主人公は、一人暮らしの大学4年生・毛利圭介で、夜は歌舞伎町のスナックでバイトをしている。ある日、風間という見知らぬ男から電話がかかってくる。なんと要件は、過去に戻るリピートツアーに参加しないかということだった。余りにも荒唐無稽な話なのだが、その信ぴょう性を証明するために告げた地震予知が的中し驚いてしまう。その後にまたもや、再度正確な地震予知が大当たりし、このリピートツアーは本物かもしれないし信じ始めるのだ。

 このリピートとは、タイムマシンなどに搭乗するのではなく、ある一定の日に現れる黒いオーロラに突入すると、記憶だけが10か月前の自分の中に上書きされるというものだった。そこで人生のやり直しをするのだが、もちろんそこでは未来の記憶を利用して、競馬や株で儲けることも自由自在だ。
 リピートツアー参加者は風間を含めて10人、その中には一人だけ若い女性が参加していた。この女性の存在が、毛利にいろいろなプレッシャーを与える原因になるのだが、とにかく彼は女性にモテモテなのである。ただこのモテモテが最大の災いを生むことになるのだが……。

 このような記憶だけのタイムトラベルといえば、すぐに思いつくのがケン・グリムウッドの長編小説『リプレイ』である。ただ本作が僅か10か月前の自分に戻るだけなのに対して、『リプレイ』の主人公は25年前の18歳の青年に戻れるのである。さらに43歳になると自動的に心臓発作を起こしてまたまた18歳に戻れるのだ。
 そしてそれが何回も続くのである。それに比べると本作では、もう一度リピートするためには、ある一定の日に現れる黒いオーロラに再突入しなければならないという点が異なっている。
 また『リプレイ』では主人公が、未来の記憶を利用して大儲けしたり、つきあう女性たちを変えてみたりと、「もしもあの時こうしていれば良かった」を次々と実現させてゆく。だが本作ではそんな『リプレイ』のような痛快さは余り楽しめない。どちらかといえば、リピートしたために起こった記憶にない数々の嫌な事件に翻弄されてしまうのだ。そしてなぜそんな事件が起きるのか、犯人は一体何者で何のための犯行なのか、ということがメインテーマとなってくるのである。

 それにしても著者の巧みなブラックパズルのような悪魔的展開にはいつも脱帽せざるを得ない。中盤からはなんとあの『罪と罰』のラスコーリニコフのような心情に堕ち込んでしまったではないか。まさに乾くるみは天才としか言いようがないね、と思い込み続けてどんどんページをめくっていったのだが、ラストが余りにもあっけなく、無理やり感が残ってしまったのが非常に残念であった。

評:蔵研人

 

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2023年11月 4日 (土)

セブン

★★★☆
著者:乾くるみ

 著者は女のような名前だが、れっきとした59歳のおじさんである。また別名の市川尚吾名義では評論活動を行っている。1998年に『Jの神話』で第4回メフィスト賞を受賞し、34歳で作家デビューしているが、主な著作には本書のほか『イニシエーション・ラブ』、『スリープ』、『リピート』などのファンタジック系のミステリー作品が多い。なお本書は、2014年に単行本として角川春樹事務所より刊行されたものである。

 本書はそのタイトル通り「7」という数字絡みの作品が7作収録されている。
1.ラッキーセブン
2.小諸-新鶴343キロの殺意
3.TLP49
4.一男去って……
5.殺人テレパス七対子
6.木曜の女
7.ユニーク・ゲーム

 7作全てが楽しめたのだが、特に面白かったのは『ラッキーセブン』と『ユニーク・ゲーム』である。前者はA~7までの7枚のトランプを使ったカード対戦を7人の女子高生で争い、負けたほうは首を切られるという恐ろしいゲームであり、後者は捕虜になった7人の多国籍兵に課せられた0~7の数字絡みの生き残りゲームである。
 どちらも似たような数字を使ったシンプルなゲームなのだが、その勝利方法の思考過程がくどいほど綿密に解説されている。一体この著者の頭の中には、どれほど複雑な歯車が絡み合っているのだろうかと唸ってしまうことだろう。ことにミステリーファン、SFファンにはのめり込める一冊である。

評:蔵研人

 

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2023年10月31日 (火)

オルカ

★★☆
製作:1977年 米国、伊国 上映時間:92分 監督:マイケル・アンダーソン

 あの大ヒットした『ジョーズ』のシャチ版といったところだろうか。簡単に言えば、メスと胎児を人間に殺された「オスシャチの復讐劇」である。そして乗組員たちが次々にシャチに襲われて殺されてしまうのだが、なんとも人間たちの無気力さにはついて行けない。

 とにかく燃料がなくなることを承知の上で、いつまでもシャチの言いなりに北極まで船を走らせて行くのは、納得できないどころか不愉快であった。もし船長がメスシャチを殺したことを悔いて死ぬ覚悟で出航したのなら、他の乗組員を連れて行くのは不可解だからである。そのうえその乗組員たち全員が、理解不能で不要な人物ばかり。彼らはただ殺され役として存在しただけで、乗船する必然性も全く感じられない。まさにB級ホラーの常套手段と言っても過言ではないだろう。

 またいくらシャチが利巧と言っても余りにも賢すぎるよね。その執拗な復讐行為もまるで人間と変わらないし、何と言ってもゴジラ並の不死身さも苦笑するしかない。
 前半は恐怖感を煽られ、これからどうなるのかと、ドキドキワクワクしたものだが、残念ながら後半になって、人間たちの無能さとシャチの無敵ぶりに呆れ果ててしまった。またシャチとの戦いは別として、せめて人間ドラマとしての面白さがあればもう少し評価できるのだが……。
 
評:蔵研人

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2023年10月26日 (木)

死は存在しない

著者:田坂広志

 著者は東京大学卒業後に同大学院を修了し、工学博士(原子力工学)号を取得。その後三菱金属株式会社原子力事業部での勤務を経て、株式会社日本総合研究所取締役、多摩大学経営情報学部教授、多摩大学大学院経営情報学研究科教授、内閣官房参与などを歴任している。さらに現在は、多摩大学名誉教授・大学院経営情報学研究科特任教授、グロービス経営大学院大学特別顧問・経営研究科特任教授、株式会社日本総合研究所フェロー、シンクタンク「ソフィアバンク」代表、田坂塾塾長、社会起業家フォーラム代表、社会起業大学株式会社「名誉学長」を歴任するという、実業界・学界において大活躍している人物である。

 そんな唯物主義の塊のような著者が、なんと死後の世界観を科学的に分析し、SF映画や小説なども交えて分かり易く解説してくれるのが本書なのだ。従ってサブタイトルは、ちょいと気取って「最先端量子科学が示す新たな仮説」となっているのであろうか。
 書店の店頭で本書を見かけたとき、もうそのタイトル・サブタイトルだけで、どうしても本書を読みたくなってしまったのだ。さらに細かく分離した小見出しや、ゆったりとした文章間スペースなど巧みな編集の妙も加わって、実に読み易い環境を創りあげているではないか。従って350頁以上の新書本であるにも拘わらず、遅読の私でも、僅か3日間であっという間に読破してしまったのである。

 ただし本書の中身は、タイトルから想像していたような「死後の世界」の在り様などを解説したものではなく、どちらかと言えば宇宙論と死をドッキングさせたような仮説を展開しているのだ。その中でも著者が執拗に語る『ゼロ・ポイント・フィールド』とは、直訳すると零点エネルギーということであり、量子力学における最も低いエネルギーで、基底状態のエネルギーと言いかえることもできる。つまり宇宙が誕生する前から存在する量子空間の中に存在している『場』のことであり、「何もないところに全てがある」という禅問答のような場所らしい。

 そしてこのゼロ・ポイント・フィールドには、宇宙が誕生してから、現在、さらには未来の情報までもが波動として記憶され、時間と空間を遥かに超越した情報の保持が可能になるというのである。ちなみに宗教の世界でも、不思議なことにこのゼロ・ポイント・フィールドと酷似している思想が語られている。
 仏教の「唯識思想」における「阿頼耶識」と呼ばれる意識の次元では、この世界の過去の出来事全てや未来の原因となる種子が眠っているという。また古代インド哲学の思想においても、「アーカーシャ」と呼ばれる場のなかに宇宙誕生以来の全ての存在について、あらゆる情報が記録されているというのだ。

 さらに著者は、ゼロ・ポイント・フィールドに蓄積される全ての情報は、「波動情報」として記録されていると付け加えている。つまり量子物理学的に見るなら、世界いや宇宙の全ては「波動」であり、情報は「波動干渉」を利用した「ホログラム原理」で記録されているというのだ。別の言葉で説明すれば、波動の干渉を使って波動情報を記録するということになるのだろうか。

 この解説を読みながら、私の脳裏をかすめたのが、最近話題になっているチャットGPTである。チャットGPTとはインターネット上にある全ての情報を収集し、AIがそれを学習して様々な仕事をこなしてゆくシステムである。ところでこのインターネット上の全ての情報という部分が、なんとなくゼロ・ポイント・フィールドと似ていないだろうか。チャットGPTが有形のデジタル仕様なのに対して、ゼロ・ポイント・フィールドは無形で無限大のアナログ仕様という感覚がある。

 さてゼロ・ポイント・フィールドの話にばかり終始し過ぎたが、それではタイトルである『死は存在しない』とはどういうことなのだろうか。現実社会での死とは、肉体が滅びることであり、心臓の停止やら脳死によって判断される。また意識とか想念については、脳とともに消滅していると考えられているようだ。ところがもし意識や想念の存在が、脳とは別物だと考えると「死の定義」そのものが覆ることになる。

 本書では死によって私という『自我意識』が、ゼロ・ポイント・フィールドに移動し一体化すると、徐々に消滅してゆきエゴから解放された『超自我意識』に変貌してゆく。その後国境を越えた『人類意識』へ拡大し、やがては地球自体も巨大な生命体と考え、地球上の全ての意識である『地球意識』へと変貌してゆくのだ。そしてさらに究極の意識である『宇宙意識』へと昇華してゆくというのである。
 つまりは宗教的に表現すると、「神の領域」に到達するということなのだろうか。またゼロ・ポイント・フィールドとの一体化ということは、ある意味で唯我論にも通じる思考ではないだろうか。だからこそ「死は存在しない」と言い切れるのかもしれない。まだ100%理解できないのだが、なんとなく生と死の意味が、朧げに見え始めてきた気がする。「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」
 

評:蔵研人

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2023年10月22日 (日)

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

製作:2017年 米国 上映時間:116分 監督:スティーヴン・スピルバーグ

 監督がスティーヴン・スピルバーグ、主演がメリル・ストリープとトム・ハンクスという超豪華なキャストであり、しかも実話をもとにした作品だというのだ。そしてテーマは、戦争と政治というかなり重いストーリーであり、当然アカデミー賞に輝くと思っていたのだが、残念ながらノミネートに留まってしまった。

 ペンタゴン・ペーパーズとは、ベトナム戦争時にアメリカ政府が作成した極秘文書のことである。そこには歴代政権がベトナム戦争を行うために不正を繰り返してきたこと、またアメリカがベトナムに勝てないなどの分析が記載されていたのだ。だがそれは政府にとって不都合な事実として隠蔽され、多くの若者がベトナムで命を失ってしまったのである。本作ではこの事実を報道するまでの経緯と、関係者たちの葛藤などを見事に描いている。

 新聞社の中にも、正義を貫き報道の自由を主張する者、反逆罪に問われ経営の破綻を心配する者と意見が分かれるのだが、最終決断するのがメリル・ストリープ扮するところの社主ケイ・グラハムであった。彼女は自殺した夫の後を継ぎ、ワシントンポストの経営を司っているのだが、それまでは子育てに専念していた主婦であり、全くのド素人で取締役会でも疎外感に襲われていた。

 そんな彼女が国家を揺るがすほどの大決断を迫られるのだから、気の毒を通り越して残酷とも言えよう。だが本作は終盤の約30分間で、彼女がその大決断を下してから最高裁の判決が発表されるまでの過程が一番の見所なのである。さらに最後の最後に、あのニクソン大統領が辞任にまで至った「ウォーター・ゲート事件」の幕開けシーンが皮肉のように付け加えられていたのには苦笑してしまった。


評:蔵研人

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2023年10月18日 (水)

日本映画史110年

著者:四方田犬彦

 110年というタイトルは中途半端なのだが、実は本書に先駆けて2000年に同著者による『日本映画史100年』が刊行されているのである。そしてその書はいくつかの大学で映画学の教科書に選定されて版を重ねている。さらにイタリア語、ドイツ語、中国語、韓国語にも翻訳され世界的な読者を獲得したという。そんな経緯もあり、2014年に2000年以降の日本映画の動向についても補足した増補改訂版として上梓されたのが本書なのである。だからこそ110年となったのであろう。

 さすが大学の教科書に選定されただけあって、なかなか充実した内容で書き綴られている。これほど丁寧に分かり易く映画の歴史をひも解いた書籍は、なかなか見当たらないだろう。いずれにせよ、四方田犬彦氏の勤勉さと懐の広さには、ほとほと感心するばかりである。
 さて世界の映画史は、1893年にトーマス・エジソンがキネマスコープを発明したことが原点と言ってよいだろう。そして日本映画の出発点は、1896年(明治29年)に「活動写真」としてスタートする。そのころはもちろん無声映画だったので、字幕に加えて「活動弁士」と呼ばれる解説者の活躍が重要なファクターであった。この活動弁士とは、今日でいうところのナレーターの前身とも言えるかもしれない。いずれにせよ、講談などが好まれていた日本独特のシステムだったのである。

 また俳優たちは歌舞伎からの転入者が多く、歌舞伎同様男性による女形が常識であったが、時代の推移とともに生の女優も出現するようになる。それどころか、やがては多くの若い女性監督が活躍する現代に突入してゆくのだから、時代の変遷とは恐ろしくもあり面白いものだ。
 もちろん俳優や監督の変遷だけではなく、社会情勢の変化(ことに戦前・戦中・戦後)に伴う作品内容の大幅な変貌、さらにはTVやビデオの出現による映画界そのものの危機による映画会社の興亡なども織り込みながら、本書は悠々と紡がれてゆく。
 さてそろそろコロナ後の日本映画界を見据えながら、著者が元気なうちに是非とも『日本映画史120年』も上梓して欲しいものである。

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2023年10月14日 (土)

エデンの東

★★★☆
製作:1955年 米国 上映時間:115分 監督:エリア・カザン

 あの名曲で有名になった名作映画『エデンの東』を久し振りに鑑賞してみた。本作はなんと60年前に製作されたのだが、今日でもほとんど色褪せていない。オープニングから約5分間は、あの名曲をバックに延々と岩礁だけのシーンが映し出されるのだが、このシーンは何を意味しているのだろうか……。
 銀行から出てくる女性を付け回す若者、これが主役のキャル青年を演じるジェームズ・ディーンなのだが、まさか強盗でもストーカーでもあるまい。次第に分かってくるのだが、つまり彼女はキャルが幼い頃に、家族を捨てて家を出てしまった母親だったのである。

 キャルは無断で家を出たり、暴言を吐いたりとかなり不良ぽい、だから父親にも愛されない。ところが本当は、淋しがり屋で繊細な神経の持ち主だった。一方弟のアーロンは優等生で父親に溺愛されており、すでに美人の婚約者アブラもいる。だが彼女は生真面目過ぎるアーロンに退屈感を抱き始め、次第に逞しいキャルに惹かれてゆくのだが……。

 本作の原作はジョン・スタインベックの小説で、時代背景は第一次世界大戦中の1917年、舞台はカリフォルニア州の小都市サリナスの農場である。テーマは戦争への疑問と家族愛と葛藤、さらには淡い恋愛といったところであろうか。
そもそもタイトルの「エデンの東」とは、旧約聖書の一節に出てくる言葉で、アダムとイヴがエデンの園を追われた後に生まれた兄弟の間で、神への貢物による神の愛の差を巡り、兄弟殺しと嘘という罪が発生し、罪を犯した兄がエデンの東に追放される という物語である。本作では父親の誕生日に贈られたキャルとアーロンのプレゼントに対する父親の反応を巡って、平和だった一家に不幸が舞い降りてくるという流れになっている。

 つまり本作は旧約聖書のオマージュ作品でもあり、父親からの愛を切望する息子の葛藤、反発、和解などを巧みに描いている。ただラストが余りにもあっけなかったのだけが心残りであった。
 なお主演のジェームズ・ディーンは、本作で初主演しアカデミー主演男優賞にノミネートされる。さらに続けざまに『理由なき反抗』でも主役を演じ脚光を浴びるものの、残念ながら自動車事故に遭い24歳の若さでこの世を去った伝説的俳優である。
 
評:蔵研人

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2023年10月 9日 (月)

1Q84「BOOK3」

著者:村上春樹

 この怪物小説が初めて世に出たのが、2009年5月27日である。かなりの大作でBOOK1、BOOK2と二冊の分厚い上製本に分冊されて発売された。そして当然のように大反響を呼びこんで、あっという間に完売されてしまったのである。お陰で中古本の買取価格はうなぎ登りとなり、なんと読み終えた中古本を1冊1000円で買い取ってもらった記憶がへばりついている。
 ただ『1Q84』はこれで完結ではなく、翌年に「BOOK3」が発売される予定になっていた。ところが猛爆発した人気パワーに後押しされてか、「BOOK3」は当初予定よりかなり前倒しの2010年4月16日に緊急発売されたのだった。

 私自身もこの「BOOK3」の登場を心から待ち望んでいたはずである。ところがそのころは新しい仕事が忙しかったのか、『1Q84』という小説の存在そのものをすっかり失念していたようだ。そしてそれから13年後になって、ひょんなことからいまだ1Q84「BOOK3」を読んでいなかったことに気付いたという訳である。それにしてもなんとこの13年間は一体何だったのだろうか。まるで浦島太郎の竜宮城状態だったのかもしれない……。

 『1Q84』の存在を思い出した途端に、どうしても「BOOK3」を読みたくて堪らなくなる。もちろん発売されてから13年も経過されているので、あっさり図書館で借りることができ、むさぼるように読みふけてあっという間に読了してしまった。また13年間も経過しているにもかかわらず、読み進めるうちに忘れていたストーリーの概要が呼び戻されてきたのが不思議でしようがない。
 遅読症の私が、これほどあっという間に分厚い本を読んだのは何年ぶりであろうか。さすが全世界で注目されている村上春樹作品だと、つくづく感心してしまった。相変わらず文章は巧みだし、奇抜なストーリー展開にもぐいぐいと惹かれてしまう。さらに主体を青豆、天吾、牛河の三人に分割することにより、読み易いだけではなく、それぞれの心象風景を浮き彫りにし、この作品の世界にのめり込まされてしまうのだ。

 そして青豆と天吾の「君の名は」状態にイライラしながらも、恐怖の牛河節におどおどしてしまう自分自身を制御できなくなってしまうのである。ところが実のところ、その牛河は「怖いというより気の毒な存在」であり、本当に怖いのはタマル、いやカルト教団ではないだろうか、と改めて認識せざるを得なかった。
 ただラストは期待通りの幕引きであったにも拘わらず、なんとなく物足りなかったのはどうしてであろうか。まだまだ続編が出ると想像してもおかしくはなさそうだが、月が二つの世界から脱出できたのだし、13年間続編が出ていないことを考えればこの「BOOK3」で完結したと決めつけてしまおう。
 それにしても『1Q84』という小説の正体は、ファンタジーかミステリーか、はたまたある種の哲学書なのか。これこそ「村上ワールドの世界」と呼ぶしかないのだろうか。

 さて『1Q84』を読み終わったら、時々ベランダに出て月が二つ出てないか確認する癖がついてしまった。ただいまのところ月は一つきりなのでひとしきり安心しているのだが、いつ何時二つの月が現れるのではないかとオドオドしている次第である。

参考までに、13年前に掲載した1Q84「BOOK1」~「BOOK2」の評論文を読みたい場合は、下記をクリックしてね。

1Q84の世界


評:蔵研人

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2023年10月 3日 (火)

リトル・ブッダ

★★★☆
製作:1993年 英国 上映時間:141分 監督: ベルナルド・ベルトルッチ

 ある日シアトルに住む9歳の少年・ジェシーの家に4人のラマ僧が訪れる。ラマ僧はジェシーがブッダの魂を受け継いでいた高僧ラマ・ドルジェの生まれ変わりであると告げるのだった。両親は動揺するのだが、意外にもジェシー本人は仏教に惹かれてゆくのである。
 本作はブッダが悟りを得るまでの回想シーンを織り込みながら、チベットの次期ダライラマ探しの様子をドキュメンタリー風に描くという一風変わった映画である。従ってのめり込めるようなストーリー展開もなく、ただただ淡々と時が流れて行くという趣であった。

 風景は美しいし坂本龍一の音楽も素晴らしい。ただラストがはっきりせず消化不良の感があったのが残念である。それはそれとして、はじめは分からなかったがブッダを演じたのが、若かりし頃のキアヌ・リーヴスだったとは。男性から見ても実に美しい、あんなに美形だったのか……。
 まあいろいろ意見の分かれる作品だが、私自身は決して嫌いではない。輪廻転生も信じたいね。

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2023年9月29日 (金)

ストーリー・オブ・スーパーマン

★★★★
製作:2006年 米国 上映時間:110分 監督:ケビン・バーンズ

 スーパーマンファン必見の「スーパーマンの歴史をひも解く」ドキュメンタリー作品である。これまで世界中の人々に最も多大な影響を与えてきた最強のヒーローと言えば、何と言ってもスーパーマンであろう。

 その歴史をひも解くと、まず1938年に原作ジェリー・シーゲルと作画ジョー・シャスターによって創造され、アクション・コミックス誌第1号で初登場したのが始まりと言われている。その後コミックと並行してアニメ、ラジオ、映画、TVドラマなどが繰り返し製作されることになる。
 その中でも我々団塊の世代に一番馴染んでいるのは、1950年代にTVドラマとして放映された ジョージ・リーヴスのスーパーマンと1978年~1987年に製作されたクリストファー・リーヴのスーパーマンである。
 しかしながら奇しくも二人とも若くして自殺や事故が原因で亡くなっているし、その他の俳優やスタッフにも不幸が降りかかってくるという。これを「スーパーマンの呪い」と呼び、スーパーマン映画に出演したがらない俳優もいるというのだ。

 本作ではそれらの事実も踏まえながら、歴代のコミック、アニメ、実写映画、TVドラマなどの映像をふんだんに紹介してゆく。ただし本作は2006年に製作されたブランドン・ラウスの『スーパーマン リターンズ』のプレゼン的な作品のため、当然ながらそれ以降に製作されている『マン・オブ・スティール』、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』、『ジャスティス・リーグ』などについては言及がないので念のため。まあ私自身の中では、『マン・オブ・スティール』以降のダークなスーパーマンは、スーパーマン映画の本流ではないと思い込んでいるのだが……。
 
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2023年9月24日 (日)

時をとめた少女

著者:ロバート・F・ヤング

 タイトルとカバーイラストがとても魅力的ではないか。と言っても、もちろん著者があの『たんぽぽ娘』のロバート・F・ヤングだから本書を購入したのである。なぜかヤングは、日本では人気があるのに本国アメリカではマイナーな作家のようである。よく分からないが、これもお国柄の違いであろうか……。

 本作に収められているのは、タイトルの『時をとめた少女』のほか、『わが愛はひとつ』、『真鍮の都』、『妖精の棲む樹』、『花崗岩の女神』、『赤い小さな学校』、『約束の惑星』の7編が収められている。なおこのうち冒頭の3作がタイムトラベル絡みの話である。


 個人的には、メル・ギブソン主演映画『フォーエヴァー・ヤング 時を越えた告白』そっくりの『わが愛はひとつ』が一番面白かった。また時間と愛を絡ませたラブファンタジーは、ヤングの真骨頂であり、本作は最高傑作『たんぽぽ娘』の原点なのかもしれないね。タイムトラベルファンなら、是非とも読み比べて欲しいものである。

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2023年9月17日 (日)

スーパーマン4 最強の敵

★★☆
製作:1987年 米国 上映時間:93分 監督:シドニー・J・フューリー

 45年前にクリストファー・リーヴ版スーパーマンを初めて観たときは、感動に打ち震え自分もすっかりスーパーマンになりきっていて、劇場を出たときに思わず両手をあげてジャンプしてしまった記憶がある。それからずっとスーパーマンに取りつかれペンネームも蔵研人(クラ・ケント)とクラーク・ケントをもじっているのだ。さらにその後上映されているスーパーマン映画は全て劇場で観ているし、TVドラマも含めたDVDも全て所持している。

 さて久し振りに、クリストファー・リーヴ版スーパーマンシリーズ最終作を再鑑賞してみた。本作は主演のクリストファー・リーヴ自身がストーリー構成を考えたというが、残念ながらシリーズ中で最低の評価作になってしまったようである。
 日本では宿敵のルーサーが、スーパーマンの髪の毛から生み出したニュークリアマンとスーパーマンの対決が売りということで、『最強の敵』というサブタイトルをつけているようだ。ただ原題は『Superman VI The Quest for Peace』なので、「The Quest for Peace・平和の探求」つまりスーパーマンが核廃絶に力を尽くすということが、メインテーマになっているようである。

 評価の低い理由のひとつは、第二作でのロイス・レインとの関係がチャラになっていたり、彼女の扱いが雑だったりするところだろうか。というよりストーリーそのものが大雑把でインチキ臭いということかもしれない。太陽の中からニュークリアマンが服を着て産まれたり、スーパーマンが月を動かしてしまったり核ミサイルを収集したりと、余りにもマンガ的ハッタリシーンが多過ぎるのだ。
 さらには原題になったメインテーマの「平和の探求」も中途半端な形で終始し、いつの間にかニュークリアマンとの生産性のない戦いだけにスポットライトが当てられる流れだけになってしまったのも残念である。いずれにせよ、回を重ねるごとに天文学的に強くなり過ぎたスーパーマン映画の難しさ、いや限界点なのであろうか……。

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2023年9月13日 (水)

美女と野獣

★★★★
製作:2017年 米国 上映時間:130分 監督:ビル・コンドン

 エマ・ワトソン主演の実写映画である。ただ実写と言っても今どきのファンタジー映画ならCG満載ということになり、厳密にいえば実写とアニメの融合ということになるのかもしれない。
 そもそも『美女と野獣』と言えば、フランスの異類婚姻譚であり、1740年にヴィルヌーヴ夫人によって最初に書かれた小説だが、現在広く知られているのはそれを短縮して1756年に出版されたボーモン夫人版だという。その後数々の映画やテレビドラマ、あるいはバレエ、オペラ、ミュージカルなどの舞台で演じられているのだが、なんと言っても誰もがよく知っているのはディズニーのアニメであろう。

 本作はそのディズニーが製作した実写映画なのである。従って本作はアニメを忠実に再現したようだ。ただ完成度を高めるために、若干細かい部分で修正したらしい。いずれにせよ、ラストはディズニーのお約束である大団円で締めくくるので老若男女すべてが安心して楽しめることになる。
 

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2023年9月10日 (日)

隣のヒットマン

★★★☆
製作:2000年 米国 上映時間:99分 監督:ジョナサン・リン

 歯科医を開業しているオズ(マシュー・ペリー)は、妻ソフィの父が残した借金を抱え、テンテコ舞いの日々を送っている。もちろん思いやりゼロでわがまま放題のソフィとの仲もすっかり冷えきっていた。そんなとき、隣に殺し屋のジミー(ブルース・ウィリス)が引っ越してくる。シカゴを牛耳るマフィア、ラズロを裏切ったうえ死刑に追いやり、本人は刑期を終えて出所してきたばかりの身であった。
 だが隣人のよしみでジミーに無理やり付き合わされたオズは、ジミーが以外に悪い人間ではないと感じる。同様にジミーも生真面目でお人好しのオズを気に入ってしまうのだった。

 ところが妻ソフィは父親の残した借金返済のため、ジミーをラズロの息子ヤンニに売れと嫌がるオズに迫る。さらに生命保険目当てに、オズをも殺害しようとしていた。美人だが性格ブスで、とんでもない悪妻なのだ。さらに込み入ったことには、歯医者で助手をしているジルまでが絡んできてとんでもない展開になってくる。
 
 いずれにせよ、腕利きだが気の良い殺し屋という役柄としては、まさにブルース・ウィリスは適役だったね。またその妻シンシアを演じたナターシャ・ヘンストリッジの美しいこと。さすがモデルをしていただけあってスタイルも抜群で、本作では「可憐な名花」となっていた。ただ肝心の主役オズを演じたマシュー・ペリーが太り過ぎていて、かなりおバカなイメージがつきまとっていたのがちょっぴり残念だったね……。

 また本作はコメディー仕立てのアクション映画なので、ダイハードのような派手なシーンだけは期待しないように。ただし質のいいコメディタッチと、二組の幸せカップル誕生の瞬間を楽しめることだけは間違いないだろう。
 
 
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2023年9月 6日 (水)

ブルーベルベット

★★★
製作:1986年 米国 上映時間:121分 監督:デビッド・リンチ

 デビッド・リンチ監督と言えばカルトの帝王とか鬼才と称される映画監督で、若いころは『イレイザーヘッド』や『エレファント・マン』などの作品に痺れたものである。ただ年を取るに従い、単に分かり難い映画としか感じられなくなってしまった。

 父親の急病で倒れたため、休学届を出して田舎町ランバートンに帰郷した大学生のジェフリーが主人公である。まずこの父親が捻れたホースで散水している途中で倒れるのだが、その原因がいま一つよく分からない。そして父親が入院している病院の近くの草むらで、ジェフリーが『人間の耳』を発見するのだが、何となくそれも無理やり感が漂っていた。
 
 その後ジェフリーが警官の娘・サンディと知り合って、ディープ・リヴァー荘に住む女性歌手ドロシーがこの事件に関係していることを知ってからは、急に素人探偵になって彼女の部屋に忍び込むのも不自然である。またなぜサンディを巻き込んだり、弱いくせに無茶をして危険を冒すのか、そんな彼の行動にも全く共感できないのだ。
 さらにその後の異常セックスや不条理な暴力にも、ほとんど興奮もしないし驚きもない。これはすでにこの映画が製作されて37年も経過しているからかもしれない。時代の推移とは恐ろしいものである。未だに色褪せずに少し引き込まれたのは、ドロシーとオカマが歌う二曲の歌ぐらいかな……。

 いずれにせよ、この監督はストーリーより感覚重視派なので、省略の連発なのだが、余り真面目に考えないほうがよいだろう。とはいえ終盤に突如スッポンポンで路上に現れたドロシーには、観ているほうが動転してしまった。それ以上に彼女の部屋の中で観た異常な光景には、完全に置いてけぼりを食らってしまった。なんであんな状態で二人が死んでいるの一体何だったのだろうか。よく分からないままの終劇であった。


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2023年9月 2日 (土)

徳川家康 弱者の戦略

著者:磯田道史

 2023年のNHK大河ドラマは、松本潤が演じる『どうする家康』で、弱虫だった家康が少しずつ成長して、天下人になるまでを描いてゆくようである。本書ではその弱虫だった家康を歴史学的に検証しながら、逆境に学び続けた天下人の実態に迫ってゆくのである。
 家康は強力な超人パワーと実行力に満ち溢れていた信長や、権謀術数と巧みな人心掌握術に優れ、さらに膨大な兵力と資力を誇る秀吉のようなカリスマではない。だが己が経験したことや見聞きしたことをひとつひとつ地道に積み上げ、信長や秀吉が成し遂げられなかった15代にも及ぶ長期政権の礎を築いた努力と辛抱の人だったようだ。また優れた家臣に恵まれていた……というより家臣の使い方が非常に巧みだったのである。

 また当然のことながら、家康が天下人になるまでには、いくつかの障害と選択肢があった。まずは今川を裏切って織田と同盟を結んだこと、もしこの選択肢を誤っていれば、天下人どころか今川とともに滅んでいたことだろう。さらに武田信玄急死による武田軍廃絶や、本能寺の変で無事伊賀越えと成し遂げたという運の良さ、さらには天正大地震で秀吉側が莫大な被害を受けたことなど、数え上げたらきりがないほど悪運に恵まれていたようだ。

 さて今回の大河ドラマでは、家康の正室である築山殿をかなり美化しているのだが、歴史学的にはそもそも今川出身の築山殿にしてみれば、家康が今川を裏切った時点から恨み続けていたようであり、嫡男・信康においても、気性が激しく日頃より乱暴な振る舞いが多く、家康とは反目しあっていたとも言われている。従って単に信長の命令だけで、築山殿と信康を処断したわけではなく、家康の意向も含まれていたと解釈されているようだ。
 また秀吉による関東転封も、家康自身はさほど不服だったわけではなく、むしろ秀吉との棲み分けや石高の大幅増加、関東平野や江戸湾などの地勢にも惹かれて積極的に受け入れたようである。

 本書ではこのような話を織り込みながら、歴史学者的観点を踏まえながら分かり易く家康が天下人になれた経緯を描いてゆく。また190頁という新書版の薄さも手伝ってか、遅読の私でもたった3日であっという間に読破してしまった。寝苦しい夏の熱帯夜を忘れるためにも、是非手軽に本書を手に取ってみようではないか。

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2023年8月28日 (月)

阪急電車片道15分の奇跡

★★★★
製作:2011年 日本 上映時間:119分 監督:三宅喜重

 始点から終点まで片道15分のローカル線、阪急今津線の電車内を舞台にした群像ドラマで、原作は有川浩の小説である。
 僅か15分の短い区間だが、意外と利用者は多いようだ。本作ではこの沿線を利用する人々の人間模様とエピソードにスポットを当て、それぞれが持つ苦悩を乗り越え、前向きに生きてゆこうと決心する姿を描いて行く。

 婚約中に後輩に彼氏を寝取られてしまう女の話、イケメンの彼氏のDVに耐え、家政婦のようにこき使われている女の話、方言のせいでコンプレックスに怯えて友人のできない大学生の男女の話、高級志向のママ友と嫌々付き合っている主婦の話、一流大学を第一志望に受験勉強しているのに、担任から難しいと言われてヤケになり、彼氏に処女を捧げようとする女子高生の話などなど、興味深い話が紡がれてゆく。

 それにしてもこれらを演じたのは、中谷美紀、戸田恵梨香、谷村美月、南果歩、有村架純、芦田愛菜、宮本信子がズラリとならぶ。実に贅沢な女優たちではないか。一見中谷美紀が主人公のようだが、真の主人公は何と言っても宮本信子御大であろう。多少おせっかいかもしれないが、人生の機微を感じさせる見事なおばあちゃんでした。またストーリー的には、中谷美紀の話が一番充実していたのではないだろうか。
 またあの昔ながらのえんじ色の阪急電車が走る映像にはぐっとこみあげるものがあるよね。いずれにせよ、久々にめくり逢えた秀作であった。

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2023年8月23日 (水)

キングダム 運命の炎

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★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:129分 監督:佐藤信介

 原泰久の人気漫画を実写映画化した大ヒット作「キングダム」シリーズの第3作である。三年前にレンタルDVDで初回作を観て、邦画離れしたスケールの大きさに度肝を抜かれたことだけは覚えている。だが今回は劇場の大画面での鑑賞だったので、映像だけではなく音響も含めた大迫力にとことん圧倒されてしまった。

 さらにスケールの大きさは映像・音響だけではなく、ストーリーやそうそうたるキャスト陣を見ても納得できるだろう。主演の山崎賢人のほか、吉沢亮、高嶋政宏、山本耕史、長澤まさみ、玉木宏、佐藤浩市、大沢たかお、片岡愛之助、杏、吉川晃司、小栗旬と主演級の俳優が惜しげもなく登場するのだ。この豪華俳優陣の中でも、何と言っても大沢たかおの存在感が最大だったね。

 それにしてもコロナ流行後はじめて映画館を訪れたため、約4年ぶりに劇場の大画面に遭遇したことになる。どうせ劇場の大画面で観るならスケールの大きな、迫力あるアクション映画が良いと思った。そして本作かトム・クルーズの『ミッションインポッシブル7』のどちらかにしようと考えたのだが、ミッションインポッシブルは何度も観ているし、やはり国内興行収入NO1が売りである本作を選択してしまったのである。

 まあ本作は期待にたがわず大迫力で見応えのある作品であった。ただ第2作を観ていないためかストーリーの流れにワクワク感が湧かず、完結しないまま次回へ続く、というラストシーンにも多少食傷気味になってしまったかもしれない。それはともかくとして、監督さん、俳優さん、その他スタッフの皆さん、本当にご苦労様でした。
 
  
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2023年8月19日 (土)

ディスタービア

★★★
製作:2007年 米国 上映時間:104分 監督:D・J・カルーソー

 タイトルの『ディスタービア』(原題:Disturbia)とは、disturb と suburbia という2つの語を組み合わせた造語のようだ。disturbを直訳すると「邪魔をする」だが、本作では「動揺させる」というようなニュアンスで使用しているという。またsuburbiaは「郊外」ということで、この作品の舞台となる場所ということになる。

 高校生のケールは、父親を事故で亡くしてから自暴自棄にはまり、教師に暴力を振るい3か月の自宅謹慎処分を受けるのだった。外出できず暇を持て余していると、ある日近所に美少女が引っ越してきて一目惚れしてしまう。それからは二階の窓から彼女を覗き見するようになるのだが、隣人の中年男の怪しい行動も気になってくるのだった。

 まあこの作品を一言でいえば、「覗き見青年と殺人鬼」とでもくくっておこうか。ヒッチコックの名作「裏窓」のパロディとも言えるし、ちょっとコミカルでエッチなサスペンス・スリラーと言ってもよいだろう。
 
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2023年8月14日 (月)

デモリションマン

★★★

製作:1993年 米国 上映時間:115分 監督:マルコ・ブランビヤ

 デモリションマンとは『破壊者』のことである。それほどこの作品の主人公である刑事は、任務とはいえ破壊的な行動力に満ち溢れていると言うことであろう。さてその主役・デモリションマンことジョン・スパルタン刑事は、若き日の筋肉ムキムキのシルヴェスター・スタローンが演じている。

 本作はアクション映画であるが、SF映画でもある。それは冷凍スリープによるタイムトラベルが絡むからである。
 極悪人フェニックス逮捕のため、行き過ぎた破壊的行動を続けて人質30人を全員死亡させてしまったスパルタン。彼はその責任を問われて、70年間の冷凍刑に処せられてしまう。
 ところで未来社会は、全てがコンピューターに管理され、市民は快適な生活を送っている。またコクトー市長の政策によって犯罪や暴力は姿を消していた。一見とても素晴らしい世界のようだが、実は人々は軟弱化してしまい、武器もなく凶悪犯罪にも対処できなくなっていたのである。
 そんな折に、過去にスパルタン刑事が逮捕した極悪人フェニックスが、解凍され蘇って脱獄し、やりたい放題の大暴れをしてしまう。だが軟弱化している警察が束になってかかっても子ども扱いされどうにもならない。それでやむなく警察は、まだ刑期を迎えていないスパルタンを解凍して、フェニックスを逮捕させようとするのだった……。

 破壊的で暗い背景と荒唐無稽なストーリー展開を観ていると、あの『バットマン』を彷彿させられてしまった。さらにスタローンの暴れっぷりから『ロッキー』やら『ランボー』がオーバーラップしてしまうのだ。
 それはともかくとして、過去と未来のギャップの描き方は、まずまずであったがもう一捻りが欲しかったね。例えばサンドラ・ブロック演ずる相棒の女性警官レニーナが、実は自分の娘だったとか……。まあどうしてもスタローンの映画は、ストーリー展開よりアクション・アクションに塗り固まってしまうんだよな。

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2023年8月10日 (木)

バトルフロント

★★★☆
製作:2013年 米国 上映時間:100分 監督:ゲイリー・フレダー

 なんと本作はあのシルベスター・スタローンが製作・脚本を務めており、『エクスペンダブルズ』でタッグを組んだジェイソン・ステイサムが主演を務めたクライムアクションである。
 潜入捜査官のフィル(ジェイソン・ステイサム)は、一人娘マディを危険から守るため、潜入捜査官の仕事を辞し、亡き妻の田舎で娘と穏やかに暮らすことを決めたのだが……。決してここも平和な町ではなかった。そして2年前に組織に潜入して逮捕したマフィアのボスに居場所を密告されてしまう。そして娘を含めて皆殺しを企んだ刺客が彼の家を襲うのだった。

 相変わらずだが、とにかくステイサムは強い、まさにスーパーマンなのだが、唯一の弱みが娘であり、その娘のために田舎に引っ越してきたことが仇になってしまうという、まさに皮肉な展開であった。ただ敵方は小物ばかりで、戦闘は一方的で迫力感に欠けていたのが物足りなかった。それに女性教師とのラブラブもなかったし、とにかく戦闘三昧なところは、やはりスタローンの脚本だね。まあタイトルが『バトルフロント』だから仕方ないか……。

 
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2023年8月 4日 (金)

タイムマシンの作り方

著者:矢沢サイエンスオフィス

 本書は2001年9月に学研から刊行されたムック『タイムトラベルの謎』に大幅な加筆・改稿を加え、図版を一新して単行本化したものである。

 まず『宇宙論的タイムマシンの作り方』として、お馴染みの「ブラックホール」、「円筒型」、「ワームホール」、「宇宙ひも」などを利用したタイムトラベルを紹介している。ただしこれらは理論的には可能なものの、それこそ天文学的な時間と費用と労力を必要としているため現実的ではない。そこで考えられたのが、超光速粒子タキオンを使った「量子論的タイムマシン」や時空のゆがみを利用したワープ航法などである。もちろんこれらもSF的な発想と敬遠されがちだが、なんと米国のNASAやロシア・中国などでは、その実現に向かって真剣に研究しているというのだ。

 さて未来へのタイムトラベルについては、比較的簡単に実現可能なのだが、過去へのタイムトラベルは不可能だとされてきた。それは原因があり結果に繋がるという因果律がある限り、様々なタイムパラドックスを生じてしまうからである。だがそれはパラレルワールドの存在を認めることにより解消される。ただしその場合は、別次元の世界へ移動するわけだから、厳密には過去へのタイムトラベルではなく、別次元への移動ということになるらしい。

 このようなタッチで、小説・映画などの話も織り込みながら、難解な物理理論を紐解いているのだ。従って肌に馴染み、実に読み易いのだ。だからあっという間に読破してしまった。ことにラストに付録として、タイムトラベルの疑問をまとめて綴った『タイムマシンQ&A』が超・分かり易く面白かったね。


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2023年7月30日 (日)

バットマン フォーエヴァー

★★★
製作:1995年 米国 上映時間:119分 監督:ジョエル・シューマカー

 スパーヒーローであるバットマンが登場する映画は、正確にはこれまでに20作品もあるのだが、記憶に刻まれ始めたのは1989年に公開されたティム・バートン監督、マイケル・キートン主演の『バットマン』からであろう。
 その後クリストファー・ノーラン監督の描いた『バットマン ビギンズ』からは、かなりダーク色の濃い作品にイメージチェンジされていゆく。さらに『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』をきっかけに、他のアメコミヒーローとの共演というパターンに染まってゆくのである。
 そんな過去の作品群の中で、唯一見逃していたのが、本作の『バットマン フォーエヴァー』だったのだが、今更感もありそのまま放っておいた。ただ最近本作がTV放映されたので喜んで観賞した訳である。

 ストーリー的には、ロビン誕生の経緯を盛り込んではいるものの、特に目新しい展開は見られない。ただキャスト陣が豪華なのだ。ニコール・キッドマンをはじめ、敵役を演じたジム・キャリーとトミー・リー・ジョーンズの怪演が本作を盛り上げていた。
 逆に言うと、主役のバットマンを演じたヴァル・キルマーはイケメンなのだが、この敵役に食われて何となくぱっとしないのだ。そんな評価を得たためか、彼のバットマンは本作限りとなってしまったのである。

 
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